第三話 アリスの支配
超機動戦記ローゼンガンダム 第三話 アリスの支配「ピチカート起動!メイメイ照準!てぇーーー!!」サクラダに迫り来るミサイルをレーザーが打ち落とし間髪要れずに6連装のミサイルが発射される。未だに続く戦闘。背後の敵は翠星石と蒼星石が殲滅したものの、数に勝るアリス軍との戦闘は続いていた。「っ・・・しつこい!」白を基調にされたキラキショウがバーズにライフルを放つ。放たれた銃弾は頭部を撃ち抜くが撃墜には至っていない。人工知能の詰まれたバーズにとって頭部などは飾りでしかない。至る所に装備されているセンサーやカメラがある限りバーズは動き続ける。バーズはセンサーで敵機を察知するビームライフルとマシンガンと二つ装備されている銃器のうちマシンガンを選択するとキラキショウへ銃口を向け連射する。パラララララと小刻みな音と共に弾が排出される。キラキショウは回避運動をするが、いかんせんばら撒かれる大量の弾の前に完全な回避はできていない。たいしたダメージではないが、右脚部の装甲が削り取られる。「しまった!?隊長機め・・・作戦を変えてきたか・・・」雪華綺晶の言うとおりだった。さきほどまでは、威力は高いが直線で目視の効くビームライフルがバーズの兵装だった。しかし、挟撃に失敗するや否やマシンガンでとにかく当てにきている。「ちょっとぉ、さすがにコレを完全にかわすのは無理じゃないのぉ~?」迫り来る無数の弾丸を背部の翼を展開させて防ぐスイギントウ。ダメージはないが、エネルギーの消耗が大きいのが問題だ。「きゃぁ!?うゅ・・・痛いの~。」懸命に回避をしてはいるものの、雨のようにふる弾丸を腹部にうけるヒナイチゴ。貫通には至っていないがコクピットが近いせいか衝撃も大きい。「早く・・・早く隊長機を探さないと・・・」弾丸を回避しながらバラスイショウがサーベルで1機を叩き落す。間髪入れずに左腕に武装されているビームガトリングガンが火を吹く。機体全体的に穴だらけにされたバーズはそのまま爆散する。「・・・!分かったかしら!人工知能に命令を与えてる機体!真紅!あなたの右手の機体かしら!」金糸雀が通信越しに叫ぶ。カナリアの機能は音を鳴らすだけではない。隊長機が人工知能機に命令を飛ばす際の電波すら感知する事ができる。「上出来よ、金糸雀。私に任せるのだわ。」真紅が金糸雀に言われた機体にサーベルを抜き向かっていく。それを察知した機体はライフルを放つ。真紅はそれを左に回避し、そのまま切りつける。「見つけた・・・あなたが隊長機ね?今隊長機以外はライフルは使わないはずなのだわ。」ブオンと音を立てて右腕がサーベルを振り下ろす。しかし、敵機はそれを回避すると同じようにサーベルを抜き切りかかってくる。真紅もそれに反応し切り結ぶ。「ふん・・・その程度か・・・」敵機からの声が真紅の耳に伝わってくる。「大きなことを言うのね。でも、あなたは勝てないわ。」若干後方に下がり左腕でツインテールを振り回すシンク。自由自在に動き回る鞭はバーズに襲い掛かるものの、被弾には至らない。「くっ・・・なかなかやるのだわ。」「この程度でか?笑わせるな・・・高尚なアリスの支配を受け入れられぬ劣等種が私に勝つなど!」隊長はツインテールをかわしながら今度をマシンガンに持ち替えシンクに向け連射する。大量の弾をばら撒かれれば完全回避は難しい距離。シンクは回避しきれずに右肩と左脚部に被弾する。「アリスの支配ですって・・・?」「そうだ、アリスの支配だ。素晴らしいぞ、アリスは!アリスの言うとおりにすれば全て上手くいくのだ。アリスの計算に狂いなどはない!私は失敗しないのだ!」隊長が右に旋回しながらマシンガンを放つ。シンクもそれを追うように右に旋回しながら回避する。「でも・・・そこに貴方の意思は存在しないのだわ。それでは生きてるなんて言わない!」機動力では勝るシンクは旋回を続けるバーズに徐々に接近していく。「黙れ小娘!全てアリスの計算どおりに進む世界・・・その素晴らしさが分からぬから劣等種なのだ!全てはアリスの御心のままに!」「っ・・・貴方は・・・何故そこまで!?」シンクがサーベルを抜きバーズを急襲する。バーズはシンクに向かって弾を連射する。シンクはそれを意に介さず左腕の破損を覚悟で左腕を盾にし、突貫する。そしてサーベルが突き出される。「ぬあ・・・私が死んでも家族にはまた新しい父が与えられ何もないような生活が進む・・・素晴らしいぞ・・・アリスは・・・ジーク・・・アリス・・・」コクピットを貫いたシンクのサーベル。それと共に人工知能機は動きが止まる。「真紅!防衛は成功だ。旗艦するんだ。」通信からJUMの嬉しそうな声が聞こえる。しかし、真紅はどこか浮かない顔を浮かべていた。「あらぁ~?真紅、やったじゃなぁい。まぁ、私なら損傷なしで倒したと思うけおどぉ~。」真紅が艦に戻り、機体から降りると水銀燈が絡んできた。しかし、真紅はそれを聞き流して部屋へ戻っていく。「・・・真紅・・・」そんな姿を心配そうに見つめるのは蒼星石だった。「真紅ったらまた凹んでやがるですか?ま~ったく、いつまでたってもあんな感じですぅ。」「そんな事言うものじゃないよ、翠星石。真紅は・・・隊長機を撃ったんだから。」翠星石に向かって雪華綺晶が言う。それにつられて薔薇水晶も言った。「真紅は・・・いつも人を撃つとああだもんね・・・」「うゆ・・・でもいつもより落ち込んでる気がするの・・・心配なの~。」雛苺が真紅を見つめながら心配そうにする。(うう・・・カナは会話聞いちゃったかしら・・でも・・・言うべきか言わないべきか・・・困ったかしら。)一方、真紅の異変の原因を握っている金糸雀。しかし、彼女はこれを他の面々に言うべきか迷っていた。「は~い、みんなご苦労様~。今日は、花丸ハンバーグでーーーす!」戦闘の処理もすみ、落ち着いた面々は食堂に向かう。JUMの姉であるのりが切り盛りする食堂でその食事はクルーに非常に評判が高い。「わぁ~、はっなまるはっなまる~♪」雛苺がご機嫌そうにハンバーグを食べる。「あらぁ~?雛ちゃん、真紅ちゃんはどうしたのかな?」「うぃ・・・真紅はお部屋なの・・・」「真紅はまた部屋で凹んでやがるですぅ。ま~ったく、いつまでたっても有人機に慣れねぇですから。」翠星石が御飯を口に運びながらあっけからんと言う。しかし、それにのりが反応を示す。「だ、ダメー!!」その大声の食堂中の目がのりに集まる。「そんなのダメ!いくら・・・いくら戦争だからって・・・人を撃って喜んじゃ・・・めっめっようぅ。」のりが翠星石を諭すように言う。これには翠星石も少しシュンとなり「失言ですぅ・・・ごめんなさいです・・・」と素直に反省する。そんなやり取りの中、放送が入る。「召集です。MSパイロットはミーティングルームに集まってください。繰り返します・・・」「すまないな、みんな。さっき他のレジスタンスから暗号文が届いた。柏葉。」「はい。レジスタンス『SAIYA』からです。まぁ、纏めるとリュウキュウに集まって一緒に攻撃しようという事です。」JUMは暗号文を読めといったのだろうが、巴は意訳する。まぁ、文面はそうだから問題ないのだが。「SAIYAでリュウキュウか・・・どこに攻め込むんだろう。」蒼星石がうーんと考える。「近場だとヨコハマ基地ですかね?アリスは日本はあまり重要視してないみてぇですから。」「いいんじゃなぁい?私たちの故郷を奪回するなら文句ないわよぉ?」「もしかしたら日本にみっちゃんが逃げてるかもしれないかしらー。」と様々な声があがる。どれもが賛成を促すものだった。「分かった。じゃあ、補給が済み次第メイデンはリュウキュウでSAIYAと合流する。いいな?」JUMが面々を見渡し確認する。誰もがOKと言った感じだ。「じゃあ会議は終わりね?私はまだ休んでおくのだわ・・・」すると早々に真紅が部屋に戻っていく。そんな真紅にクルーは不安を隠せない。「真紅の奴・・・今回はいつもより・・・」「う・・・み、みんなに聞いて欲しいかしら!じ、実は・・・」心配するJUMを遮るように声をあげる金糸雀。金糸雀は全てを話した。そう、真紅と隊長の会話を・・・「サクラダ発進します。目的地はリュウキュウ。」会議から数時間後、巴の声が流れる。真紅は未だに部屋に篭ったままだった。「・・・アリスの支配・・・私は・・・」「真紅?いるか?入るぞ?」と、ドアをノックする音と共にJUMの声がする。「JUM?ええ、入っていいのだわ。」とりあえず鏡で身支度チェックをしてからJUMを招き入れる真紅。「あら、艦長がこんなトコに来ていいのかしら?」「ま、移動だけだしな・・・金糸雀から聞いたよ。お前と・・・あの隊長機の会話。」JUMの言葉に真紅がビクッとする。「そう・・・私は・・・戦いとは言え、また殺してしまったのだわ・・・」真紅がボソボソという。その表情は暗い。「ああ・・・戦争だからな。でもさ・・僕やっぱりアリスは間違ってると思うんだ。」「・・・・・・・・」JUMの言葉に真紅は答えない。さらにJUMは続ける。「最後にさ・・あいつ自分の代わりに新しい父親が派遣されてまた変わらない生活になるって言ったよな。やっぱりそれってオカシイよ。感情まで支配されて、大切な人が居なくなったのに変わらないだなんて・・・そりゃあ・・・殺した僕らが言える事じゃないけどさ・・・」真紅はJUMの言葉を聞き続ける。「なぁ、真紅。僕らが戦わないとこの世界はその感情のない世界になっちゃうんだ・・・機械的で冷たくて・・・それはとても悲しい事じゃないかな・・・」JUMは真紅の隣に来るとその美しい金色の髪を撫でる。普段は髪を触られるのは嫌いな彼女だが今は大人しくしている。というか・・・JUMだけは別だった。「真紅、外・・・見てみなよ。僕らは奪いもしたけど・・・でもこれだけの笑顔を守ったんだよ。」JUMに言われるままに真紅は外をみる。そして、目を見開いた。そこにはメイデンが防衛した街の人々が声援を送っていた。プラカードにはどれも『ありがとう』とかかれている。「・・・これは・・・」「真紅、君の苦悩は分かるよ。でも、その罪はみんなで分かち合おう。一人で抱えちゃいけない。そして・・・この笑顔も分かち合おう。僕たちは・・・メイデンだろ?」JUMが言う。真紅は相変わらず窓の外を見ている。鏡越しに写る真紅ははっきりは見えないが目尻に汗がたまってるように見えた。「JUM・・・食堂にいくわよ。お腹がすいたのだわ。ダッシュで行ってのりにW花丸ハンバーグを作らせなさい。」するとJUMはハハッと笑って食堂に向かっていった。それを追うように真紅はもう一度外をみて目を拭うと食堂へ向かっていくのだった。次回予告 べジータをリーダーとする反アリス組織の一つ「SAIYA」と合流したメイデン。べジータが蒼星石にハァハァする場面はあるものの次の攻撃目標が伝えられる。果たして次の戦場は・・・次回超機動戦記ローゼンガンダム 第四話 共同戦線 その力 見せ付けろ蒼星石!
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