- ?「反応が遅いですよ、と言うよりまず驚かないでくださいよ。」
金「そんな事言っても・・。」
?「まぁそれは置いときましょう・・。」
金「で・・・あなたは何なのかしら?」
?「言ったでしょう、私は誰でもあって誰でもない。」
?「つまりはあなたであってあなたでも無いのですがね。」
金「?」
一体何を言ってるのかしらと思いつつ首を傾げる。
こんな者までいるなんて変な夢だ。
?「まぁ名前を言うならば“ラプラスの魔“と名乗っておきましょう。」
金「変な名前かしらー。」
ラ「まぁそうは言わず・・まぁ折角ですから何かお話でも・・。」
金「少しぐらい聞いてやるかしらー。」
どうせ夢かしら、なら聞くに越した事は無いかしらーと思いそう言う。
ラ「ふむぅ・・・私はあなたの隠れている思いについて聞きたかったのですがね。」
金「何を言うかしらー?」
ラ「あなたはほんと良い人ですね、他人の幸せを祝いその為に頑張れる。」
金「て、照れるかしらー!」
ラ「しかしあなたは他人を思い過ぎている、故に本当の自分を殺している。」
金「な、何を言うかしらー。カナは常にオープンかしらー!」
思わず反論する、自分を殺す?
ラ「ええ、あなたは常に自分を表に出しているつもりでしょう。」
ラ「しかしそれは本当の自分を隠す為の隠れ蓑、あなたはまだ自分を出し切っていない。」
金「な・・・。」
ラ「出しなさい、本当のあなた、本当の思い、自分の恋心を。」
金「な、何言ってるかしらー!うるさいかしらー!」
もう言わないで!!心の何処かで叫ぶ。
- ラ「あなたは恋をしている、それも叶わぬ恋。」
金「・・・。」
ラ「恐らくあなたはあの男性の事が好きなのでしょう、それ故に祝福する。」
ラ「あなたは友達として祝福しているつもりなのでしょう、だが本当は違う、好きだか」
金「もう言わないでかしらー!!!!」
心で叫んでたものが遂に声に出る。
ラ「・・・失礼、ちょっと言い過ぎたのですかな。」
ラ「では最後に1つ伝えましょう。」
金「・・・。」
ラ「最初に言葉があった、言葉は神と共にあった、言葉は神だった。」
ラ「聖書の言葉ですね。まぁ私なりに解釈すると・・・。」
ラ「神にも伝える物があった、伝えたい事があったという事ですかな。」
ラ「生きてるもの全てには伝える事があるでしょう。」
ラ「伝えるものとは思い、思いとはいつか古めき思い出となる・・。」
ラ「そして思い出が欲しい故に人は思いを伝える。」
ラ「それが言葉にしろ、絵にしろ、動きにしろ、音楽にしろ。」
ラ「あなたの場合はそれを音楽にしようとしている。」
ラ「しかし足りない、あなたのバイオリンには1つ足りない物がある。」 - ラ「それは本当の自分を解放して得るものです。」
金「そ、それは何なのかしら・・。」
ラ「それを見つけるのはあなたですよ。」
ラ「では私は去りましょう・・・。」
- 金「・・・しかしあなたは何者なのかしら、そんな事私に言って。」
ラ「言ったでしょうに私は誰でもあって誰でもない。」
ラ「誰にでもある“思いそのもの“ですよ、故に誰でもあるのです。」
ラ「逆に言えばあなた達人間が作ったものでしょうか?」
金「?」
ラ「神とは人の一種の妄想、願い、思い、そんな物が生んだです。」
ラ「神とは人を創りしものでなく人から創られしもの。」
ラ「思いであり、言葉であり、全てであり。」
ラ「そういう物なのです、私は。」
ラ「人はそれを神、悪魔、全、思想、などと言いますがね。」
ラ「お喋りがすぎましたね、それではまた・・。」
ラ「トリビァル!」
金「ま、待つかしらー!」
気が付くと私は自分のベッドの上で叫んでいる。
そういやあれは夢だったのだ。
金「(奇妙な夢だったかしら・・。)」
ベッドから立ち考えてみる。 - 金「本当の自分かしら・・。」
思わず声に出る。
金「(そ、そんな事より早く病院に行くかしらー!)」
そう思い慌てて着替え家を出て病院に向かう。
が、いつもと違って早すぎた。
金「ちょっと喫茶店へと寄るかしらー。」
そう言い喫茶“ローゼンメイデン“へと走る方向を変える。
- 此処の喫茶店でよく金糸雀はバイオリンを弾かしてもらっている。
店長との会話も楽しいもので金糸雀は此処によく行っていた。
金「着いたかしらー。」
そう言い勢いおくドアを開ける。鈴の音がなったかと思うと声がする。
白「やぁようこそローゼンメイデンへ。この紅茶はサービスだからまず飲んで落ち着いて欲しい。」
白「って金糸雀さんじゃないですか。」
金「おはようかしらー。」
そう言い席に着く。
白「注文は何にしますか?」
金「んーそうねぇ・・・。」
金「あなたのお話でお願いするかしらー。」
金「(足りないものもこの人ならわかるかしら。)」 - 金糸雀は夢に出てきた兎の話をする。
その兎から聞いた話、兎いわく金糸雀の音楽に足りないもの。
そしてそれは教えてくれなかった事など。
- 白「ふむぅ、中々深い夢ですね。」
金「深い上に変な夢だったかしらー。」
白「で・・・あなたに足りないものですか。」
白「一度あなたの曲を聞かせてもらえませんでしょうか?」
金「勿論いいかしらー。」
白「ではあそこのバイオリンを使ってどうぞお願いします。。」
金糸雀は店との使い分け用にバイオリンを二つ持っている。
もう一つはこの店にずっと置いてあるのだ。
金「では始めるかしらー。」
そう言いバイオリンを弾き始める。
ずっと練習してきたので今ではミスは無くなったほぼ完璧な演奏。
やがて曲は終わる。
白「いつも通り中々のお手前ですね。」
金「当たり前かしらー。金糸雀のバイオリンは世界一かしらー。」
白「ふふ・・・今の曲、ほぼ完璧でしたよ。」
金「そう言われると嬉しいかしらー。」
白「ですが確かに一つ足りないものがあるようですね。」
金「そ、それは一体何かしらー。」
兎にも言われて気になった事を白崎へと尋ねる。
白崎はゆっくりと言い始める。
- 白「あなたのその曲は友への祝福の曲・・ですがそれは少し歪んでいる。」
白「あなたはその曲に喜びなど色んな気持ちを込めている。」
白「ですが一つだけ足りない気持ちがあるのです。」 金「だからそれは何なのかしらー。」
必死になって白崎に聞いてみる。
白「それを一番知っているのはあなたですよ、金糸雀さん。」
白「その真の気持ちを偽りで隠しているのはあなたなのですから。」
白「その答えはあなた一人で見つけれる筈ですよ。助言はここまでですよ。」
金糸雀は黙っていた。本当の事を言われたからだろう。
金「・・・そうね、そうかしら。」
金糸雀は決心した。
金「今日はありがとうかしらー。また後で演奏しにくるかしらー。」
金糸雀はチップを置くとすぐさま立ち去っていく。
そしてジュンの入院する有栖川病院へと直行した。
金「(本当の自分の・・・気持ちかしら・・。)」
考えながら走ってると病院が見えてくる。
病院に入るとジュンの部屋へと走っていく。
今なら水銀燈もいない時間帯だ、ジュンに言うなら今。
金「ジュン!」
ジュンの個室の扉を思いっきり開けて部屋に飛び込む。
息を切らしてる金糸雀を心配しジュンは声を掛ける。
J「大丈夫か?」
金「大丈夫かしらー。ジュンに伝えたい事があるかしらー。」
- 金糸雀の真剣な表情にジュンは思わず息を呑む。
金「カナは今までずっとあなたを友達として祝おうと“努力“してきたかしら。」
金「でもホントは違った、自分の本当の気持ちを隠してあなたの為に“努力“してたかしら。」
金「ホントはホントは。」
金「あなたの事がずっと好きで好きでしょうがなかったかしらー!」
金糸雀は涙を目に浮かべている。
それでも必死に堪えて続きを言おうとする。
金「カナの“友への祝い曲“はいつしか歪んであなたへの叶わない恋の哀しさを出してたかしら・・・。」
金「カナはいつしか“愛してる人への祝い曲“を奏でてたかしら・・・。」
金「カナは友達としてではなく好きな人の為に頑張ってたかしら・・。」
涙を堪えてたが遂に溢れ声に覇気が無くなってくる。
金「だからっ・・・ヒック・・私はここであなたと約束・・・ヒック・・・したいかしら・・。」
J「金糸雀・・・。」
金「告白の返事は・・・ヒック・・・最初から決まってるから・・・ヒック・・いらないかしら・・。」
金「カナはあなたを・・・これからは・・ヒック・・“大好きな友達“として・・祝福するかしら・・ヒック・・。」
金「だからジュンは・・・必ず・・ヒック・・・幸せに・・・なって・・かしら・・。」
泣きつかれてもう声も出なくなる。
そんな金糸雀の手を握りジュンは言う。
その目には涙が浮かんでいた。
- J「金糸雀・・・ありがとう・・・そして御免な・・・。」
J「約束する・・・僕は幸せになるよ・・・“努力“する・・・。」
J「だから・・・金糸雀も・・・幸せになって・・・!」
ジュンも涙が堪えれなくなり遂に溢れでる。
金「ほんと・・・あなたは・・・人に優しいかしら・・。」
金糸雀はベッドで上体だけを起こしているジュンに抱きつきそう呟くと泣き喚いた。
重く・・・哀しい・・・そんな叫びだった。 - -夕刻
病院から家へと金糸雀は帰ってる途中だった。
金「(わかっていた・・・あの曲に何が足りないか・・。)」
金「(私は“愛してる人への祝福曲“を弾いてた・・・けど気持ちを偽って・・隠して“友への祝福曲“を弾いていた。)」
金「(何故なら結果は分かっていたから、ジュンには水銀燈がいるのに叶わない恋をしていたから。)」
金「(だから私は自分を偽って“友への祝い曲“を弾いていた・・・。)」
金「(それ故に曲には気持ちが足りなかった・・・“諦め“っていう気持ちが・・。)」
金「(そんな風な歪んだ曲を奏でたならジュンに伝えたいものも伝えきれない曲になってたかしら。)」
金「(でももう大丈夫・・・私はようやく叶わない恋を諦めれた。)」
金「(約束通りかけがえのない大好きな友達のあなたの為に祝い曲を弾くかしらー!)」
金糸雀はそう再び決心すると走り出した。
歩いていると諦めきれなかった恋をしていた過去に飲み込まれそうになるから・・・。
家に着いても泣かなかった。
曲を弾いても泣かなかった。
ジュンの事を考えても泣かなかった。
- そして金糸雀は友への祝い曲の完全を目指す為にひたすら努力した。
ひたすらひたすら弾き続けた。
その曲には足りない気持ちが含まれていた。 - -後日
白「やぁようこそローゼンメイデンヘ・・・って金糸雀さんじゃ無いですか。」
金「この前は御免だったかしらー。演奏しに来るって約束忘れちゃってー。」
白「あなたのそういうドジには慣れてますよ。」
金「ドジとはなにかしらー!ドジとはー!」
そう言いながら金糸雀はバイオリンの方へと向かっていく。
金「じゃあ早速弾かしてもらうかしらー!」
ローゼンメイデンの小さな舞台に立ち金糸雀は曲を弾き始める。
弾き始めた曲は祝い曲とは違う決別の曲。
弾きながら金糸雀は考えていた。
金「(さよなら・・・過去の哀れな恋する自分・・・。)」
金「(私は・・・友達の為に“努力“する頑張り屋なのかしらー!)」
そう考えながら曲を弾き終わると金糸雀は少し天井を見上げる。
涙が出そうになるが必死に堪える。
金「(もう泣かないかしらー!)」
カウンターに居る白崎の差し出したサービスの紅茶の方へと金糸雀は走り出した。
過去の自分と決別した金糸雀が。 -結婚式当日
金糸雀は病院のタクシー乗り場にベジータと二人で
二人が一緒に降りてくる事を祈って待っていた。
告白が成功すれば二人共を結婚式会場の学校まで
連れて行くという算段だった。
金「ジュン・・・告白うまくいってるかしら・・?」
ベジータにそう声をかけてみる。
ベ「銀嬢ならOKするに決まってるぜ、あんなにもジュンが好きなんだからな。」
金「そうよね・・。」
ベ「しかし豪快なプロポーズを提案したもんだ。」
入院生活中でジュンは前々からウェディングドレスを作っていた。
無論、ジュンの師匠なる人物の助けがあったから出来たらしいのだが。
それで告白の際、指輪の代わりに豪快にウェディングドレスを見せようと言うのだ。
金「そっちの方がインパクトは強いかしらー!」
ベ「そりゃごもっともだがな・・・金嬢・・。」
そうやって談笑しながら二人を待つ。
するとベジータがある事を聞いてくる。
ベ「そういやバイオリン大丈夫か?随分ボロボロみたいだが。」
金「アンティークみたいなもんかしらー!心配ないかしらー!」
金「それもわからないのかしらー!?」
ベ「悪いな、素人から見たらわかんないもんさ。」
なら良かったと内心ベジータは思う。
金「ジュン頑張ってるかしらー。」
告白が成功するかどうか不安になりまたそんな事をいってみる。
ベ「大丈夫さ。」
再びベジータが答える。
その時病院の入り口に二人の影が見える。
様子からするとプロポーズをOKしたとまどう水銀燈をジュンが連れてきたようだ。
プロポーズをした日に結婚をしようなんて言われれば誰でもとまどうだろう。
金「きたかしらー!」
ベ「流石ジュン!そこに痺れる憧れるぅ!」
ベジータがジュンにそんな賛美の言葉を送ってると車のドアが開く。
ベ「来たな。」
金「来たのかしらー!」
プロポーズが成功した事に対する喜びを鎮め冷静を装って水銀燈に言う。
水「え・・あなた達っ!?どうしてここへ・・!?」
J「そりゃあ会場への案内役だからな。」
金「そういう事かしらー!早く行くかしらベジータ!」
運転席に座るベジータにそう命令する。
ベ「OK!任せてな!」
ベジータはレンタカーを走らせる。
少し走った所でベジータが口を開ける。
ベ「ちょっと早いが銀嬢・・おめでとうな。」
金「うらやましいかしらー!」
ほんとにうらやましい、だが私はあなたがジュンと幸せになれるのなら
それでいい、それでいいのかしら。
銀「い、いきなり結婚て・・!?」
J「いいっていってくれたじゃないかw。」
銀「(///)そりゃそうだけど・・。」
金「(そりゃ誰でもビックリするかしらー。)」
そんな事を頭に浮かべる。
J「善は急げって言うしな。こいつらにも頼んでいたんだ。」
銀「(///)」
金「(照れて何も言えないかしらー。可愛い所もあるかしらー。)」
そんな事を考えてると学校に着く。
ベ「さて・・ついたぜ。ここからが本当の・・極楽地獄だ・・!」
いつもとは少し違う台詞を述べ車を止めるベジータ。
金「先に行ってるかしらー!まだ私達は準備はあるかしらー!」
そう言い車の所で止まる。
J「わかった。先に言っておくな。」
ジュンは頭の上に?マークを浮かべながら言う。
そりゃそうだ、準備は本来ならここで終わりの筈。
ここからは私達の秘密の大仕事の始まりなのかしら。
水「わかったわ。」
水銀燈も返事する。
何も知らない為に疑問など浮かべてはいないみたいだ。
J「じゃあ行こう・・!」
ジュンがそう言うと体力の無いジュンの代わりに
ウェディングドレスの入った箱を水銀燈が背負いジュンと共に
校舎に向かっていく。
ジュンの姿が見えなくなった所で私達は行動に移る。
金「じゃあ始めるかしらー。」
ベ「ああ。」
そう言うと二人は車に戻り再び車を走らせる。
向かう先は近くの緑地公園だ。
少し走らせると公園の駐車場に着く。
着くと二人は広場の方へと向かう。
広場には人だかりが出来ていた。
人だかりの正体は学校の教員、生徒達だった。
笹「来たか二人共!どうだった!?」
私達の友達である笹塚という男が私達に聞く。
他の教員、生徒らも私達の答えを息を呑みながら待つ。
金「うまくいったかしらー!」
瞬間、歓声が広がる。
此処にいる全員はジュンが今日プロポーズをする。
成功するかはわからないが成功した場合学校で結婚式を挙げる。
そう連絡網で伝えられて集まった者達だ。
つまりはジュンのプロポーズの答え待ちだった訳だ。
笹塚にはその統率をしてもらっていた。
ベ「じゃあそろそろみんな行くか・・!」
笹「ああ!」
笹塚の他にもほぼ全員がそう声をあげる。
そして金糸雀、ベジータ、笹塚が全員を率いて学校に向かった。
何故これが秘密の計画だったはと言うと病院でジュンが言った事を
金糸雀が叶えてやりたいと思ったからだ。
それは何かというと
J「一杯の人に祝われるのは嬉しいし出来るならそうしたいよ。」
J「一杯の人に水銀燈との愛を知ってもらえるという事だからな。」
金糸雀はそれを叶えてやりたいと思い秘密で一杯の人で祝う
計画を立てていたのだ。
暫く道を歩く。
余りの人数に人は新手の宗教かなんかか?とそんな目で見ている。
視線が少し気になるものの学校に着く。
校庭に着くと金糸雀たちは静かに待機するように指示する。
金「笹塚含めた全員暫くそこに立ってるかしら!」
そう言い金糸雀は校舎に向かっていった。
ベジータもそれについて行く。
急いで走って向かって屋上の扉を開けるとジュンが
ウェディングドレスに何故黒を加えたかの理由を言っていた。
意外と深い理由だったので思わず
金「策士の私でもわかんなかったかしらー!」と言う。
ベ「全くだ。」
賛同するようにベジータも言う。
水「おかえりぃ。二人ともぉ。」
金「ただいまかしら。水銀燈とても似合ってるかしらー!」
見事にウェディングドレスは似合っていた。
私もあんなのをいつか着てみたいかしらー。
水「ありがとねぇ。ふふ・・。」
水銀燈がそう言い終わると金糸雀が叫び始める。
金「さて・・スーパーアドバイザー策士のカナの提案の結婚式の始まりかしらー!」
水「スーパーアドバイザー?」
水銀燈が疑問に思い聞いてくる。それに真紅が返事を返す。
真「今回の結婚式のセッティングや考案は自称策士さんとジュンが行ったのだわ。」
J「そういう事だな。」
水「ふふ・・ありがと・・おばかさぁん。」
金「おばかじゃないかしらー!策士かしらー!」
微笑みながらそんなやり取りをする。
その後蒼星石が会場もとい白色の舞台に進むように言う。
蒼星石に言われると二人は舞台に向かう。
舞台にはさらにその後ろの舞台を隠す為の壁一つだけで
他には何も無かった。
金「かえってそんなのがいいかしらー。」
と金糸雀が提案した為である。
そしてその舞台で指輪交換を終えると真紅がもう一つの舞台へと誘導する。
校庭によく見える位置に設置された舞台へと二人は向かう。
ジュンは疑問に思いつつ水銀燈は危ない舞台だわなどと言いつつ舞台の階段を上る。
校庭からは上りきった瞬間に姿が見えただろう。その瞬間歓声が沸く。
J「どういう・・・事・・?」
金「策士の思うがままかしらー!」
本当に思うがままにいって良かったと思うかしらー。
双子に真紅と雛苺達が説明し始める。
説明を受けて理解して喜んでくれたようだ。
本当に良かったかしらー。
そんな事を考えると誓いが始まる。
真「さぁ・・二人とも誓いなさい。」
真「友と恋人・・そしてこの薔薇に誓いなさい、永遠を。」
真紅はそう言うと二人の指輪を指す。
J「ああ・・・。」
水「ええ・・。」
返事をすると水銀燈とジュンは唇を重ねる。
本当に良かったかしら・・。
目の前の誓いを見てそう思う。
本当に良かった、大切な人が幸せになってくれて。
はっとするともう薔薇のブーケ投げが始まっていた。
綺麗・・・。
なんて思うが見とれてる場合じゃない。
金糸雀がバイオリンを構える。
そして構えてる内にブーケ投げが終わり仲人(双子)によるスピーチが始まる。
いよいよだ。
大仕事の大詰め。緊張しながらも早く終わって欲しいと思う。
早く弾きたいと思ったから。
そんな事を考えてるとスピーチが終わる。
ジュンが双子と話し終えると私は駆け寄っていく。
金「ジュン!」
ジュンはこちらを振り向く。
金「あなたに・・・祝福の思いを伝えたくてこの曲を作ったかしら・・・。最後まで聞いて欲しいかしらー!」
金糸雀はそう言い終えるとバイオリンを弾き始める。
もう曲に迷いは無かった。
その曲から伝わってきたのは切実な大切な友への祝福の思いだった。
金「(幸せに・・・なってかしら・・・。)」
金糸雀の“努力“の結晶が輝きを見せる。
“努力“とは結晶のように崩れやすく作りにくいものだ。
しかしそれによって作り出されるのは綺麗な輝き。
切実な金糸雀がこつこつと頑張って“努力“してきた曲が
思いとなり皆の耳に入っていく。
金「(これがあなたへの・・・気持ちの全て・・。)」
祝い曲が終わる。“努力“の結晶の輝きがおさまる。
J「金糸雀・・有難う・・・。」
ジュンは泣きそうになっていた。
金「も・・・もう泣くのはやめるかしらー!」
私も泣きたい。喜びからくる涙だろうか?
私は泣かないと自分に誓った。
自分の悲しみが結晶となり涙となり頬を伝っていくのを
他人に見せてもう二度と悲しませたくないと思ったからだ。
だが・・・
金「(喜びの涙なら・・・少しぐらいいいよね・・。)」
金糸雀の頬に喜びの結晶が伝う。
J「本当に・・・ありがとう・・。」
ジュンも泣き始める。
泣きながら私はそれに返事する。
金「大切で・・・大好きな・・・友達の為なら・・・いくらでも弾く・・かしらー・・。」
そう、私が“努力“出来るのはあなたという大切で大好きな友達がいるから。
私は“努力“の結晶を見せた。あなたの為に頑張れたかしら。
それだけで本当に幸せかしら。だから約束・・・守ってかしら。
金「幸せに・・・なってかしら・・・。」
ジュンは静かに、力強く頷いた。
-一週間後
ジュンは死に葬式が訪れた
そういえば彼は言っていたかしら。
僕はもう半年ももたないと思う・・・って。
頑張ったねジュン、命が尽きるまで必死に頑張ったのかしら。
もうすぐ訪れるとわかっている死の恐怖に耐えて・・・。
本当に“努力“したかしらー・・・。
金「悲しいかしら・・・。」
雛「なの・・。」
葬式が終わり火葬場で呟く。
涙を見せないと自分に誓ったのだがやはり涙目になる。
水銀燈は泣きながら必死に笑おうとしている。
彼女も悲しむ姿は見せたくないのかしら?・・。
そんな事を考えながら周りを見回してみる。
皆泣いている、皆悲しんでいる。
金「(私も悲しいかしら・・・。)」
必死に涙を堪えてるつもりなのだが頬に悲しみの軌跡が出来る。
意識はしていないがいつしか泣いていたみたいだ。
金「(涙は見せないと自分に誓ったのに・・・。)」
いつしか皆と別れ一人で帰路についている。
とぼとぼと歩く先には喫茶“ローゼンメイデン“が見える。
気付くと静かに扉を開けて店に入っていた。
白「やぁようこそローゼンm・・・金糸雀さん?」
泣いたままの、しかも喪服姿で入店したので白崎は驚いた表情で金糸雀を見る。
金「白崎さん・・。」
白「ひとまず涙を拭いて下さい、あなたは涙を見られるのが嫌そうですしね。」
そう言い金糸雀にハンカチを渡す。
金「(涙を見られるのが嫌だなんてよくわかったかしら・・・。)」
金「(カナの事をホントによく知ってるかしらー・・。)」
そんな事を頭に浮かべつつハンカチを受け取る。
金「ありがとかしら・・白崎さん・・・。」
ハンカチを受け取り涙を拭く。
白「そうですか・・・ジュンさんが・・。」
白崎がサービスの紅茶をカップに注ぎ言う。
そして静かに金糸雀に渡す。
金「私は・・・。」
金「ジュンに幸せになるって約束したかしら・・・。だからジュンには約束してはないけど・・。」
金「悲しむ姿は見せたくないって思って泣かない・・・って自分に誓ったかしら・・・。」
金「けどこんな様じゃ・・・あの世でジュンに顔を合わせれないかしら・・・。」
ハンカチで涙をずっと拭き続けながら金糸雀は言う。
そして暫くした後白崎が口を開く。
白「まぁ悲しんでいるのはあなただけじゃないですよ。」
金「・・・。」
白「無論あなたの他にも皆が悲しんでいるでしょう、しかしそれ以上に。」
白「ジュンさんは悲しんでいるのでは無いでしょうか?」
金「・・・。」
そりゃ自分が死んだのだからあの世で悲しんでいるだろう。
白「ジュンさんはあなたの姿を見て悲しんでいるでしょうね、あの人はそういう人ですから。」
金「・・・。」
白「あの人は何よりも人と感情を共感出来る人・・・他人の幸せを祈れてそして一緒に悲しむ事が出来る人。」
白「そんなあの人があなたの姿を見て悲しまない訳は無いでしょう。」
金「・・・。」
白「あなたが幸せでない姿を見せて顔向け出来ないというならこれからもっと幸せになりなさい。」
白「生きて生きてそして死んで地獄で幸せな姿をお見せしなさい。」
白「きっと彼も地獄であなたの幸せを祈ってるでしょう、そしてそれこそが彼の幸せ。」
白「あなたの幸せは彼の幸せ、彼の幸せはあなたの幸せ。」
白「“努力“して幸せに生きていきなさい。」
白崎さんの言葉がやけに重く感じられる。
金「(そうね・・・今度こそ本当に泣いちゃ駄目・・・)」
金「(・・・こんな姿を・・・見せないように・・・頑張る・・・かしらー。)」
金「そうね・・・私は・・・ジュンの幸せを祈れるだけで幸せかし・・らー・・。」
金「だから・・・幸せの曲を・・ずっとずっと弾いて・・・幸せな姿をジュンに見せて・・・。」
金「あの人を幸せに・・するかしらー・・・。」
白崎に涙声で必死に笑顔を作りながら言う。
白「それが一番でしょう。」
白崎が微笑みながら言う。
金「(ジュン・・・今度はあなたに誓うかしら。)」
金「(もう涙は見せない・・・あなたの幸せを祈り幸せになるかしら・・。)」
声を出さずに金糸雀が紅茶を飲みながら誓う。
今度は自分ではなく今はまだ会えない亡きジュンへ。
最も大切で最も大好きな友達へ。
-次の日
金糸雀は喫茶“ローゼンメイデン“へ行くと
勢いよく扉を開けて白崎に向かって叫ぶ。
金「私を雇ってかしらー!」
いきなりそう言う金糸雀の言葉に戸惑いつつ
白崎はOKを出す。
元々たまにバイオリンを弾いてもらったりしてたので
アルバイトの内容もバイオリンの演奏とした。
それから毎日毎日金糸雀は“幸せの曲“を引き続ける。
そしてずっと弾いてる内にジュンの死のショックで声を失った
真紅と悲しみから立ち直った雛苺もアルバイトとなり
一緒にローゼンメイデンで頑張って働いていった。
それから気が遠くなるような年月が過ぎ
すっかり歳をとって正職員となった金糸雀の前から
いきなり真紅と雛苺の二人が行方不明になっても涙を見せず弾き続けた。
幸せの曲を。
幸せになる為に“努力“し
友の幸せを祈る為に“努力“し
金糸雀はローゼンメイデンでバイオリンを弾きながら
命が尽きるまで弾き続けた。
幸せの曲を。
これが死後の世界という所かしら?
金糸雀は不思議な空間を歩きながら考える。
暫く歩いていると歌声が聞こえてくる
それは色んな人への愛を含む終わりの無いラブソング。
金糸雀は歌のする方へと向かっていく
そこには大好きな友達らがいた
生前、他人の幸せばかりを祈り“努力“し生きてきた優しい私の大好きで大切な友達
生前、その人の愛に尽くしてきた麗しい大切な友達
生前、罪を背負っていた愛する乙女とそれに恋する姉の哀しくも大切な友達
生前、自分の前からいきなり姿を消した声が出なくなった高貴な乙女とそれに尽くす純粋で大切な友達
皆がいた
私はバイオリンを弾きながら向かっていく
それは“努力“という結晶が輝く幸せの曲、自分と友の幸せを祈る終わらない、皆への愛を含んだ曲
久しぶりかしらー
遅かったのだわ
久々なのー
久しぶりだね
遅かったですぅ
久しぶり
皆と会話を交わす、そして楽しむ
ああ・・・幸せかしら
そう思いながら再び
バイオリンを握る
みんな歌うのかしらー!
歌うは弾くは勿論・・・
終わり見えなき幸せの愛歌
私達の幸せは終わらない
fin