ジュンと雛苺と水銀燈
「よしっ!」顔を洗い終え、気合いを入れるため頬を叩く。そして部屋に戻り制服に着替える。「ジュンく~ん、雛ちゃん来たよ~。」僕が制服に着替え終えるとほぼ同時に、姉からそう連絡が入る。「はーい。」僕はそう答えた。それにしてもなんでいっつもこんな絶妙な時間に来るんだ?あいつ、僕を監視してるんじゃないだろうな?などとくだらない事を考えながら、リビングに向かう。「ジュン~!」と言う声が聞こえたのと同時に腹に鈍い痛みが走る。「お前はいっつもいっつも抱きつきやがって・・・」「雛ちゃんとジュン君はいつ見てもラブラブね~。」「違ーう!」これだから朝は嫌いだ。
「行って来ます!」少々不機嫌になりながら、吐き捨てるように僕は言った。「あっ、ジュン待つのよ~!じゃ、のり行って来ま~す。」そう言うと雛苺は俺の横まで走って来た。「二人とも~車には気をつけるのよ~。」と姉が言ったので「分かってる~。」と返事一つ。俺の横でいろいろ話してるこいつの名前は雛苺。いわゆる幼馴染み。僕と同じ歳。背は小さいが、これでもちゃんとした高校一年生。身長・体重・性格すべて小さい頃から変わってないと思う。魔法使いより珍しいかも知れない。「ジュンちゃんと聞いてるの~?」少々顔を膨らませたような顔で言う。「聞いてる。聞いてる。」僕は期待通り全く聞いて無かった。「じゃ、さっき言った事言ってみて!」「えっ?」これは予想外な事になった。どうしよう・・・「早く言うの~!」「そっ、それより早く水銀燈の所行くぞ!待たせるのは悪いしな!」そして僕は少し歩くのを早めた。「ジュンごまかすなんてズルいの~!」そう言いながら、雛苺は僕の元へ走ってきた。
「ピンポーン」僕と雛苺は水銀燈の家の前に来ていた。水銀燈の家は凄いデカい。そして広い。この家に来るたび「社長ってやっぱ儲かるだな」とつくづく思う。ちなみに雛苺の家は僕の家とさほど変わらない。そんな事を考えてるとインターホンの受話器を取る音が聞こえた。「はい。」「あっ、桜田です。」「少々お待ちください。」と言うメイドさんとのいつもと変わらない会話を終えると、鉄で出来た柵が自動的に開く。ふと雛苺の方を見ると、満面の笑みで目をキラキラさせそれを見ている。何が面白いんだ?
鉄の柵が開ききるのを見た後、僕らは玄関まで歩いた。雛苺はキョロキョロ辺りを見回しながら歩く。「ねぇねぇジュン、あれ凄いのー!」「お前いつも見てるだろ。飽きないのか?」「凄いのは凄いのー!」と笑顔を僕に向けて言った。可愛いな・・・あぁこれが娘をもつ父親の心境なのか。こんな事を思ったり、雛苺と話をしたりしてたら、いつの間にか玄関に着いた。水銀燈が出て来るまで待つ。雛苺は今日も扉やその周りの彫刻などを見ている。よく飽きないな。
しばらく待っていると扉が開いた。「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」「お留守番よろしくねぇ。」と言いながら水銀燈が出て来た。「銀ちゃんおはようなのー!」雛苺は片手を挙げてそう言った。「雛ちゃんおはよぉ。ジュンもおはよぉ。」「あぁ、おはよう。」体をかがめ雛苺の頭を撫でながらそう言ってきた水銀燈に、僕はそう言葉を返した。水銀燈とは小学校六年間・中学校三年間・そして高校も同じクラス。いわゆる腐れ縁。そういや、なんで社長の娘なのに公立の学校に通ってたんだ?まぁどうでも良いか。雛苺とは性格を含め全てが正反対だ。共通してる点はどちらも何をしでかすか分からない所だけだな。
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