「=さらば!我が愛しき日々よ=第十六話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
翠星石はジュンの部屋を出た後、のりの部屋へ向かった。<br>
翠「ジュンなんて・・・ジュンなんて・・・。」<br>
翠星石は、乱暴にのりの部屋のドアを開け、押入れからコートを一枚乱暴に引っ張り出すと、それを着て階段を一目散に駆け下りた。<br>
翠「翠星石の気持ちも知らないくせに・・・、ひどいです・・・。」<br>
<br>
心は完全に潰れ、目からは涙が止まるところを知らない―――<br>
<br>
翠「ジュンの、ジュンの馬鹿・・・。」<br>
袖で涙をぬぐい、ブーツを履くと、玄関を開けて外に出る。<br>
<br>
翠星石はとにかく離れたかった。愛する人から。<br>
<br>
翠星石は、行く所もなく、ただただ走った。<br>
翠「ぐす、ひっく、もうジュンなんて知らないです・・・」<br>
道行く人の視線を感じるが、今はそれころではない。<br>
<br>
ただ離れたい。それだけの思いで、翠星石は走った。<br>
<br>
<br>
ジュンの部屋<br>
<br>
蒼「ジュン君・・・。」<br>
蒼星石は、小声でジュンに話しかける。<br>
他の薔薇姉妹達を起こさないためだ。<br>
ジ「何だよ・・・お前もさっさと出てけよ・・・。」<br>
ジュンはベッドの中から面倒くさそうに、適当に返事を返す。<br>
蒼星石は少し傷つくが、踏みとどまる。<br>
蒼「君は・・・翠星石にひどいことをしたって、自覚してるのかい?」<br>
ジ「んん?あんまり感じないよ・・・。お前らのせいで、僕は死にかけたんだ。」<br>
ジュンは気だるそうに、もごもごと喋る。<br>
蒼「そうかも知れない。けど、翠星石が君のためにどれだか尽くしたのか、<br>
君は寝ていたから知っているわけないけど、僕は知っている。」<br>
蒼星石は、真剣な眼差しで、ジュンの方をじっと見つめている。<br>
ジ「あいつが僕に何をしてくれたって言うんだよ!・・・いてて、」<br>
大声で、蒼星石を威嚇する。<br>
それでも蒼星石は、退かない。<br>
蒼「君が怪我をしたとき、翠星石がどれだけ涙を流して悲しんだと思う?他のみんなも、どれだけ心配したと思う?」<br>
<br>
ジ「怪我をしてから心配するなんて、偽善だな。都合がいいんだな。」<br>
ジュンの言葉はきつくなっていったが、口調は弱々しくなっていた。<br>
蒼「皆付きっ切りで看病してくれたんだよ?翠星石と、雪華結晶なんて、徹夜で君についてたんだよ?そんな彼女に、あんな悪態をつくなんて・・・。」<br>
ジ「そんなの僕が知るわけないだろ・・・。」<br>
蒼星石は構わず続ける。<br>
蒼「それに、翠星石は、君のことが・・・。」<br>
<br>
ジュンにはできるだけ伝えたくない想い―――<br>
<br>
ジ「なんだよ?早く言えよ・・・。」<br>
<br>
―――しかし、双子の姉の傷ついた心をジュンに癒させるためには―――<br>
<br>
蒼「翠星石は君のことが、好きなんだ。」<br>
<br>
―――伝えるしかない、蒼星石は悟った。<br>
<br>
ジ「!!!!・・・そんなわけ・・・。」<br>
ジュンはいきなりの宣言に、困惑する。<br>
蒼「僕が嘘つくと思うかい?」<br>
数秒の沈黙。<br>
ジ「・・・一人にしてくれ、寝たい。」<br>
ジュンの静かな声。<br>
蒼「うん・・・。」<br>
蒼星石は返事をすると、部屋から静かに出て行った。<br>
<br>