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「寝過ごし蒼と翠2」(2006/05/27 (土) 10:55:30) の最新版変更点
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あらすじ<br>
高校の同窓会の帰り。泥酔した蒼と翠は電車に乗って帰ろうとしたが……。<br>
遥か離れた所まで寝過ごしてしまう。折り返しの電車も無く、仕方なくホテル<br>
を探すも、ビジホは全て満室で泊まれず。さらに探してみると空いているホ<br>
テルを見つけるが、そこはラブホテル。<br>
躊躇う蒼をよそに、シャワーを浴びたい一身で、チェックインのボタンを押した<br>
翠だった――<br>
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部屋は結構広く、ソファーと結構大きなテレビがある。<br>
で、その向かい側にはダブルベッドが一つあった。<br>
シンプルなやつで、昔あったような回転ベッドとかいう奇をてらったものではない。<br>
部屋の内装も暖色系統をベースにしたもので、一見すると普通のホテルの部屋と変わらない。<br>
鏡張りになっていたり、けばけばしい色使いではない分、どこか安心できる。<br>
もっとも、窓が見当たらないところが多少の違和感を感じるのだが。<br>
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更に大きな戸棚と冷蔵庫が一つ。<br>
試しに冷蔵庫を開けてみると、ジュースやビールがケースに入れられて並べられている。<br>
どこのホテルにもあるような取り出したら料金をカウントするタイプのものだ。<br>
さらに無料と書かれたケースがあり、そこに2本の缶ジュースがあったので、すかさず取り出す。<br>
喉が渇いてたまらなかったので、一気に飲み干す。<br>
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「何ごそごそしてるですか。早く風呂入りてえです」<br>
見ると何時の間にか服を脱ぎ出している翠星石。<br>
焦りすぎだよ。<br>
「あはは、そうだね。とにかく先に入っておいでよ」<br>
「言われなくても行くです」<br>
翠星石は下着姿になると足早にバスルームへと歩き出す。<br>
その間に僕はというとソファーに腰掛けて、テレビのスイッチを入れた。<br>
時間は深夜の2時過ぎということもあり、過去のドラマの再放送とか映画ばかりだった。<br>
適当にチャンネルを回してみる。衛星放送もあったが特に面白い番組はなさそうだ。<br>
さらにチャンネルを回すと……男と女が裸で抱き合う……<br>
って、アダルトビデオじゃない!?<br>
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思わず、テーブルの上にあった番組案内に目を通すと、案の定アダルト放送もあったりする。<br>
しかも一般のホテルと違い無料で見られるらしい……。<br>
この辺がラブホテルなのかなと思いつつも、結局テレビのスイッチを切った。<br>
退屈を紛らわせるものが無いかと戸棚の扉を開けると、そこにはさらに小ぶりな収納庫とパチスロが置かれていたりする。<br>
パチスロは現金を横に入れたら勝手にクレジットがあがる、ゲームセンターによくあるタイプのやつだった。<br>
だが、手持ちの金があまり無いので敬遠することにして、収納庫を開けてみた。<br>
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中は……アダルトグッズの販売機になっていた。<br>
思わず収納庫の戸を勢いよく閉める。<br>
何となく顔が熱くなっているのを感じる。鏡でみたらそれこそ真っ赤になっていると思えるぐらいに。<br>
やっぱりラブホテルなんだね、ここ。<br>
僕はため息をつきながら、ソファーに腰掛ける。<br>
灰皿があったのでシャツの胸ポケットからマルボロを取り出して、一本吸い出す。<br>
今年で20になってようやく煙草を吸うようになった。<br>
大学の先輩に勧められてやりだしたときは結構煙にむせた。<br>
でも、1ヶ月もしないうちにそれにも慣れて、今では1日に少なくとも10本は吸うようになってしまっている。<br>
おかげで煙草を吸わない翠星石からは「体を壊すからやめるです」なんて口やかましく言われているが。<br>
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しばらくして、翠星石がバスタオルで体を拭いながらバスルームから出てきた。<br>
すっきりして気分爽快といった感じの表情だった。<br>
「ふぅ、気持ちよかったですぅ……蒼星石も入るです」<br>
「そうだね……」<br>
そう口にしながら、思わず翠星石の体に目が行く。<br>
ほっそりとした体型に、すべすべした肌。そして、大きすぎたり小さすぎることもない程よいぐらいの大きさの胸。<br>
結構バランスが取れている彼女の体に思わず見とれてしまう。<br>
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「ちょっと、何ボケッとしてるですか!煙草の灰が床に落ちるです!」<br>
彼女の声に僕は我に返った。手元の煙草を見ると灰が今にも落ちそうな勢いで垂れ下がっていた。<br>
咄嗟に灰皿に煙草を持っていき、もみ消す。<br>
「まったく危ねえたらありゃしねえです。火事になったらやばいですよ」<br>
「ごめんごめん。とにかく僕も風呂入ってくるね」<br>
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脱衣所で服やら下着やらを脱いでバスルームに入る。<br>
浴槽はジャグジーバスになっていて、テレビなんかも付いている。結構豪勢な造りだ。<br>
椅子や湯桶は2人分あるところが、微妙に違和感を感じるが。<br>
まあ、その辺は深く気にせず、体の汚れを落としきって風呂につかる。<br>
手元のジャグジーのスイッチを入れると、背後から勢いよく泡が吹き出てくる。<br>
なんというか気持ちいい。体の疲れが一気に取れる気分になる。<br>
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思わず自分の体を眺めてみる。<br>
翠星石と同じくほっそりとしているものの、胸は多少小ぶりな気がする。<br>
双子で顔も同じなのにこの辺が微妙に違うことに妙な気分になる。<br>
翠星石は高校の頃から結構異性にもてていたりする。<br>
もっとも、彼女自身はそれらの男はあまり意識していないようだが。<br>
それに対して僕も結構憧れの的になっていたりするのだが……同姓から。<br>
あまり悪い気はしなくは無いのだが、どことなく不満のようなものを感じる。<br>
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ふう、と一つため息をつくと、僕は風呂からあがる。<br>
脱衣所で体をバスタオルで拭う。タオルなどが入った籠に2人分のガウンがあったので、それを手にして部屋に戻る。<br>
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翠星石はソファーに腰掛けていた。何時の間にかビールを手にしてグラスに注いでいた。<br>
そして、僕の方をじっと見つめているのだが……今にもビールの泡がグラスから溢れ出そうとしている!<br>
「ちょっと、翠星石!泡があふれるよ!」<br>
「え……?あ、た、大変ですぅ!」<br>
僕の声に慌ててグラスから溢れ出そうとしていた泡を一気に吸い込む翠星石。<br>
危なっかしいなとその様子を目にしながらも、翠星石もさっきの僕のように見とれていたのかななんて思ってしまう。<br>
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「どうでもいいけど、さっき酔いが酷くて大変だったのにまた飲むのかい?」<br>
「何言ってるですか。風呂上りの一杯は欠かせねえです」<br>
彼女の言うように、翠星石は20になってから酒を飲むようになった。<br>
やはり大学のコンパで飲みだしたのだが、1ヶ月もしないうちにすっかり慣れてしまっていた。<br>
おかげで、夕食の後やら風呂の後でビールを必ず飲むもので、1日に少なくとも缶ビール3本は空ける。<br>
僕も口酸っぱく「体を壊すかもしれないからあまり飲み過ぎないようにね」とは言っているものの、<br>
彼女は晩酌を欠かしたことは無い。<br>
酒がほとんど飲めない僕とは本当に対称的だ。<br>
「とにかく、これ着なよ。バスタオル巻いたままだったら風邪ひくよ」<br>
僕は手にしていたガウンを彼女の足元に放り投げる。<br>
「ありがとです」<br>
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僕らがガウンを身につけたあたりで、呼び鈴が鳴る。<br>
一瞬動きを止める。<br>
「何かあったのかな?」<br>
「多分、注文してたクレープとケーキが来たです。デザート2人分までタダってパンフレットに書いてあったから頼んでおいたです」<br>
翠星石が差し出した案内のパンフレットに目を通すと、確かにウェルカムサービスとやらでデザート2品無料と書かれていた。<br>
「ついでに朝食もタダみたいだから頼んでおいたです」<br>
なんというか……勝手というか、仕事が速いよ、本当に。<br>
僕は少し呆れながらもドアの方に向かう。<br>
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ドアで従業員の人が待っているんだろなと思いつつ、ドアノブをひねるが回らない。<br>
どうやら鍵が掛かっているようだった。<br>
ノブの上に鍵のつまみがあり回して、ふたたびノブをひねるが回らない。<br>
どうやって空けるんだよ、これ。<br>
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「すみません、ドア開かないみたいですけど」<br>
僕は思わず声を掛けたが返事が無い。<br>
どうなってるのと困惑しながら周囲を見回すと、ドアの横に小さなポストのような戸棚があり、<br>
開けると中には2人分のデザートが置かれていた。<br>
どうやら物の受け渡しをここでするみたいだけど、外に出たい時はどうするのだろう。<br>
そんなことを思いつつ、デザートの載った盆を手にして部屋に戻る。<br>
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「ドアが開かないみたいだけど、どうなってるの?」<br>
僕はケーキをつまみながら、翠星石に尋ねる。<br>
「多分、金を払ったら開く仕組みになってるですよ。ドアの横に支払い機があって、それに金を入れたら開くみたいです」<br>
翠星石は特に動じる様子もなく、クレープを口にしながら答える。<br>
確かに彼女の言うように、受け渡しの戸棚の横に銀色の機械があった。それが支払機だろう。<br>
「ふーん、そうなんだね。で、こんなことよく知ってるね」<br>
「連れから聞いたですよ。多分クレジットカードもいけるはずです」<br>
「なるほど。しかし、なんか閉じ込められているようでいい気がしないけど」<br>
「その辺は仕方ねえです。従業員と基本的に顔を合わさないようにするのがこのテのホテルですから」<br>
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- to be continued -<br>