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「「しっぽの話」 レンピカ編」(2006/05/27 (土) 09:06:10) の最新版変更点
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<dd>「しっぽの話」 レンピカ編<br>
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我輩は犬である。名前はレンピカ。<br>
どこで生まれたかとんと見当もつかぬ。何処かの家の居間で、他の姉妹たちと共にきゃうきゃう<br>
鳴いていた事だけは記憶している。<br>
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…犬猫のエッセイは、これで始まるのがお決まりなのだ、と、以前スィドリームが言っていました。<br>
なので、僭越ながらこのような書き出しではじめさせていただきたいと思います。<br>
ともあれ、皆さんおはようございます。僕はレンピカ。2歳のゴールデンレトリーバーです。<br>
今日はこの家の住人の皆さんを紹介したいと思います。<br>
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ふなーーーーぉ<br>
『…さっきから何をぶつぶつ言ってるですか。人が朝の惰眠を貪っている時に五月蝿ぇですよ。』<br>
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今、窓際の指定席から起き上がったのが、猫のスィドリーム。<br>
長い尻尾と、毛皮の綺麗な黒白茶色の三色がチャームポイントです。<br>
最近は、ご主人様の双子の姉である翠星石さんに似て、口が悪くなってきたのが玉に瑕です。<br>
…あいた!<br>
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ふー!<br>
『余計なお世話です!』<br>
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鼻先を引っかかれてしまいました。彼女の爪はよく研いであるのでとても痛いです。<br>
ううん、鼻先がちょっと鉄の味。<br>
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「レンピカ!スィドリーム!ご飯だよ!!」<br>
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ご飯!その言葉に反応して尻尾が自然にぱたぱた揺れます。<br>
僕とスイドリームは、それまでの事なんてすっかり忘れて一目散に声のするほうへ。<br>
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呼んでいたのは、何を隠そう僕のご主人様、蒼星石。<br>
僕は彼女が大好きです。今つけている綺麗な蒼い首輪も蒼星石がくれたのです。<br>
優しい優しい、僕の大好きなご主人様です。<br>
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「どうしたの?そんなに僕の顔を見て。ご飯食べたくないの?」<br>
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いえいえ、そんなことはないです。ご飯の時間は僕の毎日の楽しみなんですから。<br>
思いながら慌てて下を向くと、そこには、小さな三色頭。<br>
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「うわ、ダメだよスィドリーム!レンピカのご飯取っちゃ」<br>
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僕が呆然とお皿を見下ろしていると、ご主人様が慌ててお皿から彼女を引き離してくれました。<br>
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ふなーぉ…なーぅ!<br>
『食べないからいらないと思ったですよ?レンピカはご飯いらないですよ!』<br>
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いるよ!いるってば!うう、ひどいなあ…<br>
減ってしまったドライフードを慌てて掻っ込みます。<br>
もう。そんなに食い意地が張ってると、テレビに出てるみたいな巨大デブ猫になっちゃうぞ!<br>
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ばしっ<br>
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食べている僕の頭に容赦の無い猫パンチ。うー、スィドリームの乱暴者ー!<br>
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結局、優しいご主人様は、減ってしまった分のご飯の代わりに犬ガムを一つくれました。<br>
これはスィドリームには食べられないものなので、とられちゃったりもしないの安心です。<br>
僕が尻尾を振りながらながらそれを齧っていると、玄関の方から声がしました。<br>
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「蒼星石!そろそろ出る時間ですよー!」<br>
「わかった、今行く!」<br>
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犬ガムをくわえたままご主人様のあとを追うと、玄関で待っていたのは、<br>
さっきも話題に出たご主人様の双子の姉で、スィドリームの主人である翠星石さん。<br>
お二方は「制服」を着て、今日も「学校」にいくみたいです。<br>
カバンを持って、見送りに来た僕とスィドリームに手を振って玄関から出て行きました。<br>
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「「いってきまーす!」」<br>
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ばたん!と扉が閉まります。<br>
学校ってどんな所だろう。僕が此処に来る前にちょっとだけいた、訓練所みたいな所かなあ…<br>
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「いってらっしゃい」<br>
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一拍遅れて台所から出てきたのは、この家の最高齢の女の人、おばあさんです。<br>
おばあさんは、台所にいるときはたまに僕におやつをくれるいい人です。<br>
そう、台所。もしかしたらまた何かもらえるかもしれません。<br>
中に入ると怒られるので、入り口の前でお座り。<br>
ポイントは、そのあとジーっと顔を見上げる事です。<br>
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「あら。おじいさんならもうお店の方にいるわよ?散歩に連れて行ってもらいなさい」<br>
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おばあさんは、そう言って僕の頭をなでました。残念。今日は何ももらえないみたいです。<br>
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なーぅ……うなー!<br>
『どっちが食い意地ですか。レンピカこそおやつを食べてばっかりででぶでぶ犬になるですぅ!』<br>
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そんな憎まれ口が後ろから聞こえてきます。<br>
そんなことを言っても、スィドリームだって、お腹がすくと<br>
おじいさんやおばあさんのところに行ってにぼしをもらっているのです。僕は知っています。<br>
振り向くと、彼女は二階へ上がって行く所でした。<br>
きっと屋根の上にでも上がって朝寝の続きをするつもりなんでしょう。<br>
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そんな彼女と別れて、僕はおばあさんに言われたとおりにお店の方に向かいます。<br>
この家は時計やさんなので、一階がお店に繋がっているのです。<br>
あ、時計っていうのは、部屋の壁にかかっていたり、<br>
人間が手に巻きつけているカチコチ音のする物の事ですよ。<br>
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お店に向かう途中には寄り道をして、もらった犬ガムをちゃんと隠しました。<br>
犬ガムは確かにスィドリームには取られないんですけれど、<br>
でもまちがって捨てられてしまったりしないようにしっかり隠さないといけません。<br>
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お店の入り口から顔を出すと、おじいさんは椅子に座って机の上の小さなものとにらめっこ。<br>
僕は控えめにわふっと吠えてから、その背中に出してきた散歩用の綱を押し付けます。<br>
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「おわっ!」<br>
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びっくりしたおじいさんが振り向きました。<br>
座った僕が、少し控えめにしっぽを振っていると、おじいさんはにっこり笑ってくれました。<br>
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「おお、レンピカか。もう朝の散歩の時間だな」<br>
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立ち上がったおじいさんは、大きく伸びをしてから机の上を片付けます。<br>
しばらく待っていると、振り返って僕の首輪に綱をつけてくれました。<br>
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「よぅし、じゃあ散歩に行こうなぁ」<br>
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シャッターを開けたお店の扉から外に出ると、今日の空はきれいな快晴。<br>
春の明るい青空が広がっています。<br>
おじいさんの歩調に合わせて歩く朝の道。<br>
少し離れてから家を振り返ると、二階のベランダから三毛の尻尾が垂れているのが見えました。<br>
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朝の散歩はいつも穏やかです。たまにすれ違う犬達とも仲良くご挨拶できるし、<br>
電柱周りの匂い嗅ぎやマーキングに多少時間がかかっても、おじいさんは鷹揚に許してくれるのです。<br>
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そのまま町内を一回りして、家に戻るとおばあさんが出迎えてくれました。<br>
おじいさんは、そのままお店に残るので、裏の玄関で僕の足を拭いてくれるのはおばあさんです。<br>
言われるままに、前足、後ろ足、と差し出して拭いてもらっていると、<br>
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「いつもおじいさんを散歩に連れ出してくれてありがとうねえ。<br>
あなたが来てからおじいさんもとても健康になった気がするわ」<br>
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そんな事を言われながら頭をなでてもらいました。<br>
いえいえ、こちらこそ。おじいさんには毎朝散歩に連れてもらって、僕のとても嬉しいです。<br>
この言葉はおばあさんには聞こえないけれど、いっぱい尻尾をふれば気持ちは伝わるでしょうか。<br>
僕がおばあさんに鼻面をこすりつけると、おばあさんはにっこり笑って、<br>
台所から持ってきたサツマイモの切れっぱしをくれました。<br>
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