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~第三十一章~」(2006/05/20 (土) 23:34:25) の最新版変更点

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<p> <br>  <br>  <br>   ~第三十一章~<br>  <br>  <br> 一瞬。ほんの一瞬だけ、雷光が夜空と大地を照らし出す。<br> それを追いかけるように、轟音が空気を震わせた。<br> 木々の枝葉に溜まっていた滴が、一斉に流れ落ちて、泥濘の上で砕け散る。<br> その中を、泥水を跳ね上げ、疾走する四騎の影。<br> <br> もうすぐ狼漸藩との國境。この先には、兵が常駐する詰所が必ず在る。<br> だが、耳を澄ませ、敵の気配を探るものの、激しく笠を叩く大粒の雨に邪魔されて探知できない。<br> 邪気を辿ろうにも、忘れた頃に轟く雷鳴に阻害され、気の集中が巧くいかなかった。<br> 頼れるのは、自分たちの視力と、培ってきた経験のみ。<br> <br> 突然、目も眩むほどの稲妻が空を切って、周囲を真昼のように明るくした。<br> 目と鼻の先に浮かび上がる、國境の高い柵。<br> 詰所の前では、何本もの槍の穂先が、冷たい輝きを放っていた。<br> やはり――全員の顔に、緊張が走る。<br> <br> 接近する蹄の音を聞きつけた穢れの者どもが、長槍を構えて向かってくる影が見えた。<br> その背後では、数体の弓足軽が、弦に矢を番えようとしていた。<br> <br>  「ここは、私の出番ねぇ」<br> <br> 水銀燈は背負った太刀の縛めを解いて、片手で軽々と構えた。<br> 幅広で肉厚な太刀の身が、ぱちぱちと黒い火花を散らしている。<br> <br>  「冥鳴っ!」<br> <br> 夜闇よりもなお暗い球体が、切っ先から放たれる。<br> 冥鳴は、向かってくる長槍の足軽たちを呑み込み、全ての弓足軽を押し潰した。<br> <br> <br> ざわざわざわ――<br> <br> その一撃が穢れの者どもを目覚めさせたらしく、詰所は勿論、森の中からも、<br> 刀を手にした骸骨の足軽が沸き出してくる。<br> <br>  「あ、あらぁ? まさか、余計なコトしちゃったぁ?」<br>  「ここは穢れの者が支配する土地よ。遅かれ早かれ、こんな状況になるのだわ」<br>  「そう言うこと。気にすることないよ、水銀燈」<br> <br> 蒼星石が愛剣『月華豹神』を引き抜き、煉飛火を起動した。<br> 炎を纏った刀身に落ちた雨粒が、小気味良い音を立てて、一瞬で蒸発する。<br> 真紅は馬の背から飛び降りて、神剣を構えた。<br> 泥が跳ねて緋袴が汚れたが、瑣末なことを気にする余裕など無い。<br> <br> 怒濤の如く押し寄せる敵を、蹴って殴って、斬り伏せる。<br> 真紅と翠星石は、一匹ずつ確実に。<br> 薔薇水晶は二本の小太刀を変幻自在に操り、二匹ずつ屠っていく。<br> 水銀燈と雪華綺晶は長い得物の一振りで、数匹を薙ぎ祓う。<br> 蒼星石に斬られた穢れは、消滅するまで篝火と化した。<br> 金糸雀は氷鹿蹟を起動できないものの、短筒の精密射撃で、みんなを支援する。<br> そして、最後の仕上げとばかりに、雛苺が縁辺流を起動した。<br> <br> 周囲一帯が白日の輝きに呑み込まれて、全ての穢れは討ち果たされた。<br> しかし、いつまた増援が来るか解ったものではない。<br> <br>  「さあ、今の内に急ぎましょう。敵が防備を固める前に」<br> <br> 言って、真紅は蒼星石の手を借りると、馬の背に飛び乗った。<br>  <br>  <br>  <br>  <br> 雨が止んで、風が収まった頃――<br> 雪華綺晶に案内された一行は、鈴鹿御前の居城を望む丘に立っていた。<br> ここに至るまで、可能な限り戦闘を回避してきたお陰で、負傷や疲労は少ない。<br> 水を吸って重くなった蓑と、笠を脱ぎ捨て、身軽になる。<br> しかし、この場の空気が足取りを重くさせた。<br> <br> 鈴鹿御前の居城までは、広い盆地を通過しなければならない。<br> けれど、その盆地には、風が止んだことで発生した霧が深く立ちこめていた。<br> 足元も満足に見えない中で、馬を走らせる事は出来ない。<br> しかも、雪華綺晶によると、盆地には水田が広がっていると言う。<br> 真紅たちは、やむなく馬を降りた。ここからは徒歩になる。<br> <br>  「あの霧を抜けるのは、容易じゃないわね」<br> <br> 神剣の束を巫女装束の袖で拭いながら、真紅は眉を曇らせた。<br> その隣で望遠鏡を覗いていた金糸雀が、彼女の言葉を継ぐ。<br> <br>  「敵を見付けにくいし、下手をすれば同士討ちしかねないかしら」<br>  「濃霧の中で、雛苺の精霊が効果を発揮できるかどうかも疑問だね」<br> <br> 蒼星石の危惧は、誰もが抱いているものだった。<br> 浄化の光も、届かなければ意味がない。<br> 細かい水の粒子の中では、清らかな光芒も忽ち、散乱してしまうだろう。<br> それに、下手に霧の中へ踏み込めば、道に迷って離ればなれになる危険がある。<br> 真紅は、この土地に最も詳しい娘に、縋るような瞳を向けた。<br> <br>  「雪華綺晶。どこかに、城への抜け道は無いの?」<br>  「在るのでしたら、最初から、そちらへ案内していますわ」<br>  「そうよねぇ。ホぉント、真紅ってば、おばかさぁん」<br>  「う、うるさいわねっ! そう言う貴女には妙案があるの、水銀燈っ?」<br>  「さ、さぁて……どうしたものかしらぁ」<br> <br> 間髪入れずに切り返されて、水銀燈は霧に煙る盆地に、眼を彷徨わせた。<br> この中に冥鳴を撃ち込んでも、全てを吹き飛ばすことは不可能だろう。<br> と言って、霧が晴れるまで待ち続ける訳にもいかない。<br> やはり、危険を承知で、濃霧を突っ切っていくしか――<br> <br> その決断を真紅が下そうとした寸前、霧の中から無数の矢が飛んできた。<br> <br> 真紅と薔薇水晶が精霊を起動して、直撃軌道の矢を得物で叩き落とす。<br> 水銀燈は禄に狙いも付けず、濃霧に向けて冥鳴を撃ち込んだ。<br> バキバキと骨や鎧が砕ける音が、霧の中で湧き上がる。<br> しかし、この一撃で弓足軽を全滅したなんて楽観はしなかった。<br> <br> 水銀燈が冥鳴を格納した直後、立て続けに雪華綺晶が獄狗を解き放った。<br> 獄狗の咆哮と、骨を噛み砕く耳障りな音が響きわたる。<br> 霧を突き抜けて、弓足軽が一匹、上空高くに放り投げられた。<br> 金糸雀は懐から短筒を素早く抜いて、一発で頭蓋骨を撃ち砕いてみせた。<br> <br>  「ちぇっ。今のは、私が仕留めようと思ってたですぅ」<br> <br> クナイの切っ先を指で弄びながら、翠星石が不満を漏らす。<br> が、直後に鳴り響いた法螺貝の音と、地を震わす鬨の声に、やおら表情を強張らせた。<br> 金糸雀が望遠鏡を覗き込んで、城の様子を窺う。<br> <br>  「うっわぁ……これは拙いかしら」<br>  「なにが、です?」<br>  「城門が開いて、騎馬軍団が出てきたかしら」<br>  「騎馬ですか……そりゃ厄介ですね」<br> <br> 戦力差は歴然。いつまでも持久戦を続けられる筈がない。<br> 霧の中には、無数の敵が犇めいていることだろう。<br> <br> 待っていては、包囲されて潰される。<br> 濃霧の中に攻め込んでも、数で圧されてしまうだろう。<br> どっちにしろ、死が待っているだけだ。<br>  <br>  <br> ――では、どうすれば良い? 何が最善?<br> 翠星石は考えた。<br> おそらく、今までの人生で最も、知恵を振り絞っただろう。<br> <br> ふと、閃く。これが天啓というものか。<br> しかし、その発想は突拍子もなく、実現できるか解らなかった。<br> 試したことがないし、そもそも今まで、思い付きさえしなかった事だ。<br> <br>  「それでも……やってみるしかねぇです」<br> <br> この非常時に、ぶっつけ本番など以ての外だが、殺されては元も子もない。<br> だったら、ダメで元々、やってみるだけだ。<br> 翠星石は睡鳥夢を収納した玉鋼の板を両手で握って、瞑想に入った。<br> 穢れの者どもが発する鬨の声は、刻一刻と近付いてくるが、気にしない。<br> みんなが護ってくれることを信じて、ただひたすらに精神を集中していく。<br> 流れ矢に当たったら、所詮、それまでの寿命だったと言うことだ。<br> <br> <br> 頭の中に、ひとつの光景を思い浮かべる。<br> どこまでも、どこまでも、果てしなく伸びていく睡鳥夢の姿を。<br> 先端が霞んで見えなくなるくらい、遙か高く……遙か遠くへ――<br> すこやかに……。<br> のびやかに……。<br> いつしか、睡鳥夢は天高く聳え、ありとあらゆる方角に枝を伸ばし、<br> 世界を覆い尽くすまでに成長していた。<br> <br> ――世界樹。<br> <br> その一言が脳裏をよぎった瞬間、翠星石は目を見開き、精霊を起動した。<br> <br>  「睡鳥夢ぅっ!!」<br> <br> 突如、彼女たちの周囲で大地が躍動を始めた。<br> 地中から何本もの太い樹木が飛び出し、城の方角へ、ぐんぐん伸びてゆく。<br> 突進してきた骸骨騎馬の一団は、巻き添えを食って弾き飛ばされ、砕け散った。<br> <br>  「な、なんなの、これは?!」<br>  「知るワケないでしょぉっ! 私に訊かないでよ、おまぬけ真紅っ!」<br>  「姉さんっ! 一体、何を――」<br> <br> 敵も味方も、訳が分からず右往左往する中、睡鳥夢は成長を続ける。<br> ついには城門に達して、成長の勢いそのままに、分厚い門扉をブチ破った。<br> <br>  「…………巧く……いったです」<br>  「これは……想定外だったかしら」<br>  「凄ぉいっ! 翠ちゃん、凄いのっ!」<br>  「ま、まぁ、私にかかれば、この程度は余裕ってヤツですぅ」<br> <br> 余裕という割には、憔悴の色を露わにする翠星石。<br> しかし、彼女は気丈に笑って、他の娘たちを促した。<br> 睡鳥夢の上を、率先して歩いていく。<br> <br>  「折角、橋を架けたですから、早く渡っちまえです」<br>  「そうね。蒼星石と薔薇水晶が先導して、進路を切り開いてちょうだい」<br>  「解ってる。行くよ、薔薇しぃ」 <br>  「……良いよ。いつでも」<br> <br> 翠星石の脇を擦り抜け、蒼星石と薔薇水晶が、睡鳥夢の架け橋を渡っていく。<br> その後を、金糸雀と雛苺、雪華綺晶が続いた。<br> 何本もの幹が絡み付いたものなので、足場は良くない。むしろ、悪すぎる。<br> 悪戦苦闘しながら渡っていく二人の背中を心配そうに見送りつつ、<br> 雪華綺晶は、翠星石に獄狗を託した。<br> <br>  「翠星石さんは、獄狗と共に、ヒナさんとカナさんを守って下さい」<br>  「それは構わねぇですけど、きらきーは、どうするです?」<br>  「私は、真紅や水銀燈と、殿(しんがり)を務めますわ」<br> <br> 翠星石を見詰める雪華綺晶の瞳には、全てを見抜いている風な光が宿っていた。<br> 貴女が疲労困憊していることは、お見通しですよ……と、言わんばかりに。<br> バレているなら、強情を張って断るのも馬鹿馬鹿しい。<br> <br>  「しゃ~ねぇです。そこまで言うなら、頼まれてやってもいいです」<br> <br> 翠星石は獄狗の背中に飛び乗り、金糸雀と雛苺の後を追い掛けた。<br> こういう悪路なら、四つ足の方が走破性に優れている。<br> 現に、翠星石を乗せた獄狗は、すぐに追い付いてしまった。<br> <br> まだ幾らも進んでいないのに、二人はもう息を切らしている。<br> そもそも、金糸雀と雛苺は実戦向きの体躯や、筋力を持ち合わせていない。<br> 高所と言うことで、足が竦んでいるのも理由のひとつだろう。<br> <br>  「金糸雀! 雛苺! お前たちは獄狗に乗って行けです」<br>  「はぁはぁはぁ……で、でも……翠ちゃん、は……どうするかしら?」<br>  「私は忍びの修行も積んできたですよ。<br>   お前たちみてぇなひ弱な連中とは、根本的に違うですぅ」<br> <br> 台詞がいちいち癇に障るが、自分達を気遣っての事だと金糸雀は理解していた。<br> 変に意地を張れば、余計、みんなに迷惑をかけてしまう。<br> 金糸雀は「お言葉に甘えるかしら」と応じて、雛苺と共に獄狗の背に跨った。<br> 後ろを振り返れば、真紅たちも、すぐそこまで辿り着いていた。<br> <br>  「貴女たち、まだ、こんな所に居たの?」<br>  「蒼ちゃんと薔薇しぃが孤立するでしょぉ! 早く行きなさぁい」<br>  「殿は、私と水銀燈で何とかするから、雪華綺晶も行ってちょうだい」<br>  「承知しましたわ。皆さん、急ぎましょう」<br> <br> 雪華綺晶は獄狗に指示を出すと、翠星石と並んで走り出した。<br> まだ、半分も渡っていない。<br> 後方を見遣ると、穢れの足軽どもが、睡鳥夢の根元から続々と登り始めていた。<br> <br>  「もう来たのね。私たちも行くわよ、水銀燈」<br>  「その前に……っと」<br> <br> 至近まで迫っていた数匹の足軽を、水銀燈の太刀が薙ぎ祓う。<br> 両断された残骸が、眼下に広がる濃霧の海に沈んでいった。<br> 直後、濃霧の中から、矢と銃弾が飛んできた。<br> 偶然を伴った一発の銃弾が頬を掠めた事に驚いて、真紅はつい後ずさり、足を滑らせてしまった。<br> <br>  「あっ……」<br> <br> 呟いた時には、身体がふわりと浮いていた。<br> どれだけ高いかは分からないが、下に落ちれば、全身打撲で死ねるだろう。<br> 仮に生きていても、穢れの者どもが嬲り殺してくれる筈だ。<br> <br>  (どっちみち、ロクな死に方じゃないわね)<br> <br> しかし、真紅は地面まで落下しなかった。<br> 彼女が……水銀燈が腹這いになって、しっかりと腕を掴んでくれていたから。<br> <br>  「なぁに勝手に諦めてるのよぅ。バっカじゃないのぉ?」<br>  「あ、ありが……と」<br>  「惚けてないで、さっさと上がって来なさい。さもないと本当に手ぇ放すわよぉ」<br>  <br> ごめんなさい、と謝って、真紅は睡鳥夢の上によじ登った。<br> 際どいところだったが、まずは助かって、ホッと一息。<br> だが、悠長に構えてもいられない。敵は畏れを知らずに、群がってくる。<br> <br>  「早く立って、真紅。腰が抜けたとか、言わないわよねぇ?」<br>  「バカ言わないで。これしきのこと、慣れたものよ」<br>  「それなら心配いらないわね。お先にぃ」<br> <br> 水銀燈は、ひらひらと手を振って、城に向かって走り出した。<br> 何度も助ける気は無いらしい。<br> 勢いよく飛び起きた真紅は、仲間たちの元へと急いだ。<br>  <br>  <br> 時々、思い出したように振り返る。<br> 穢れの足軽どもは、執念深く追い掛けてきた。<br> 草臥れた陣笠や、どす黒い旗指物を背負った足軽が、遙か後方から陸続と並んでいる様子は、<br> 真紅を質の悪い仮装行列を眺めている気分にさせた。<br> <br>  「大人気じゃないの真紅ぅ。有名人は辛いわねぇ」<br>  「貴女も、その一人よ。他人事みたいに言わないで」<br> <br> 真顔で語る真紅に「まぁねぇ」と笑い掛けて、水銀燈は穢れの列に精霊を撃ち込んだ。<br>  <br>  <br>  <br> 最前列では、蒼星石、薔薇水晶、雪華綺晶の三人が、進路を切り開いている。<br> 対岸から上ってきた穢れの者どもを斬り伏せ、残骸は脇へと蹴り落とす。<br> 蒼星石は破壊された城門を潜り、城内の土を踏んだ。<br> 城の中にも、濃い霧が流れ込んでいて、とても視界が悪かった。<br> <br> 城内に怒号が轟き、三方向から得物を振り翳した足軽の群が、<br> 大挙して押し寄せてくる。<br> 櫓の上からは、弓足軽と鉄砲足軽が、得物を構えて狙いを定めていた。<br> 金糸雀の短筒が火を噴き、櫓上の敵を撃ち落とすが、如何せん数が多すぎる。<br> どこかの櫓から放たれた銃弾が、雪華綺晶の兜を弾き飛ばした。<br> <br>  「雪華綺晶!?」<br>  「だ、大丈夫ですわ、蒼星石さん……ちょっとクラクラしますけど」<br>  「真紅たち、まだ来ないわ。んもぅ! 何してるのかしらっ」<br>  <br> ――このままでは、数の勢いに圧倒される。<br> 誰もが焦燥感を覚えたその時、漆黒の固まりが夜闇を裂いて飛び越し、櫓のひとつを直撃した。<br> 衝撃で、弓足軽や鉄砲足軽が宙に投げ出される。<br> 櫓の上半分が傾き、押し寄せていた足軽の一団が、倒壊に巻き込まれた。<br> <br>  「お待たせぇ。真紅が途中でコケたから、遅くなっちゃったわぁ」<br>  「遅ぇですよ! まあ、とにかく一旦、睡鳥夢を格納するです」<br> <br> 真紅と水銀燈が睡鳥夢から降りたのを確かめて、翠星石は精霊を格納した。<br> 夜空に架かっていた睡鳥夢の橋が、忽ち掻き消える。<br> 渡っている途中だった穢れの者どもは、為す術もなく濃霧の海に墜ちていった。<br> 再度、精霊を起動した翠星石は、他の娘たちに向けて叫んだ。<br> <br>  「ここは私に任せるですっ! 真紅たちは、先に行きやがれですぅっ!」<br>  <br>  <br>  =第三十二章につづく=<br>  <br>  </p>
<p> <br>  <br>   ~第三十一章~<br>  <br>  <br> 一瞬。ほんの一瞬だけ、雷光が夜空と大地を照らし出す。<br> それを追いかけるように、轟音が空気を震わせた。<br> 木々の枝葉に溜まっていた滴が、一斉に流れ落ちて、泥濘の上で砕け散る。<br> その中を、泥水を跳ね上げ、疾走する四騎の影。<br> <br> もうすぐ狼漸藩との國境。この先には、兵が常駐する詰所が必ず在る。<br> だが、耳を澄ませ、敵の気配を探るものの、激しく笠を叩く大粒の雨に邪魔されて探知できない。<br> 邪気を辿ろうにも、忘れた頃に轟く雷鳴に阻害され、気の集中が巧くいかなかった。<br> 頼れるのは、自分たちの視力と、培ってきた経験のみ。<br> <br> 突然、目も眩むほどの稲妻が空を切って、周囲を真昼のように明るくした。<br> 目と鼻の先に浮かび上がる、國境の高い柵。<br> 詰所の前では、何本もの槍の穂先が、冷たい輝きを放っていた。<br> やはり――全員の顔に、緊張が走る。<br> <br> 接近する蹄の音を聞きつけた穢れの者どもが、長槍を構えて向かってくる影が見えた。<br> その背後では、数体の弓足軽が、弦に矢を番えようとしていた。<br> <br>  「ここは、私の出番ねぇ」<br> <br> 水銀燈は背負った太刀の縛めを解いて、片手で軽々と構えた。<br> 幅広で肉厚な太刀の身が、ぱちぱちと黒い火花を散らしている。<br> <br>  「冥鳴っ!」<br> <br> 夜闇よりもなお暗い球体が、切っ先から放たれる。<br> 冥鳴は、向かってくる長槍の足軽たちを呑み込み、全ての弓足軽を押し潰した。<br> <br> <br> ざわざわざわ――<br> <br> その一撃が穢れの者どもを目覚めさせたらしく、詰所は勿論、森の中からも、<br> 刀を手にした骸骨の足軽が沸き出してくる。<br> <br>  「あ、あらぁ? まさか、余計なコトしちゃったぁ?」<br>  「ここは穢れの者が支配する土地よ。遅かれ早かれ、こんな状況になるのだわ」<br>  「そう言うこと。気にすることないよ、水銀燈」<br> <br> 蒼星石が愛剣『月華豹神』を引き抜き、煉飛火を起動した。<br> 炎を纏った刀身に落ちた雨粒が、小気味良い音を立てて、一瞬で蒸発する。<br> 真紅は馬の背から飛び降りて、神剣を構えた。<br> 泥が跳ねて緋袴が汚れたが、瑣末なことを気にする余裕など無い。<br> <br> 怒濤の如く押し寄せる敵を、蹴って殴って、斬り伏せる。<br> 真紅と翠星石は、一匹ずつ確実に。<br> 薔薇水晶は二本の小太刀を変幻自在に操り、二匹ずつ屠っていく。<br> 水銀燈と雪華綺晶は長い得物の一振りで、数匹を薙ぎ祓う。<br> 蒼星石に斬られた穢れは、消滅するまで篝火と化した。<br> 金糸雀は氷鹿蹟を起動できないものの、短筒の精密射撃で、みんなを支援する。<br> そして、最後の仕上げとばかりに、雛苺が縁辺流を起動した。<br> <br> 周囲一帯が白日の輝きに呑み込まれて、全ての穢れは討ち果たされた。<br> しかし、いつまた増援が来るか解ったものではない。<br> <br>  「さあ、今の内に急ぎましょう。敵が防備を固める前に」<br> <br> 言って、真紅は蒼星石の手を借りると、馬の背に飛び乗った。<br>  <br>  <br>  <br>  <br> 雨が止んで、風が収まった頃――<br> 雪華綺晶に案内された一行は、鈴鹿御前の居城を望む丘に立っていた。<br> ここに至るまで、可能な限り戦闘を回避してきたお陰で、負傷や疲労は少ない。<br> 水を吸って重くなった蓑と、笠を脱ぎ捨て、身軽になる。<br> しかし、この場の空気が足取りを重くさせた。<br> <br> 鈴鹿御前の居城までは、広い盆地を通過しなければならない。<br> けれど、その盆地には、風が止んだことで発生した霧が深く立ちこめていた。<br> 足元も満足に見えない中で、馬を走らせる事は出来ない。<br> しかも、雪華綺晶によると、盆地には水田が広がっていると言う。<br> 真紅たちは、やむなく馬を降りた。ここからは徒歩になる。<br> <br>  「あの霧を抜けるのは、容易じゃないわね」<br> <br> 神剣の束を巫女装束の袖で拭いながら、真紅は眉を曇らせた。<br> その隣で望遠鏡を覗いていた金糸雀が、彼女の言葉を継ぐ。<br> <br>  「敵を見付けにくいし、下手をすれば同士討ちしかねないかしら」<br>  「濃霧の中で、雛苺の精霊が効果を発揮できるかどうかも疑問だね」<br> <br> 蒼星石の危惧は、誰もが抱いているものだった。<br> 浄化の光も、届かなければ意味がない。<br> 細かい水の粒子の中では、清らかな光芒も忽ち、散乱してしまうだろう。<br> それに、下手に霧の中へ踏み込めば、道に迷って離ればなれになる危険がある。<br> 真紅は、この土地に最も詳しい娘に、縋るような瞳を向けた。<br> <br>  「雪華綺晶。どこかに、城への抜け道は無いの?」<br>  「在るのでしたら、最初から、そちらへ案内していますわ」<br>  「そうよねぇ。ホぉント、真紅ってば、おばかさぁん」<br>  「う、うるさいわねっ! そう言う貴女には妙案があるの、水銀燈っ?」<br>  「さ、さぁて……どうしたものかしらぁ」<br> <br> 間髪入れずに切り返されて、水銀燈は霧に煙る盆地に、眼を彷徨わせた。<br> この中に冥鳴を撃ち込んでも、全てを吹き飛ばすことは不可能だろう。<br> と言って、霧が晴れるまで待ち続ける訳にもいかない。<br> やはり、危険を承知で、濃霧を突っ切っていくしか――<br> <br> その決断を真紅が下そうとした寸前、霧の中から無数の矢が飛んできた。<br> <br> 真紅と薔薇水晶が精霊を起動して、直撃軌道の矢を得物で叩き落とす。<br> 水銀燈は禄に狙いも付けず、濃霧に向けて冥鳴を撃ち込んだ。<br> バキバキと骨や鎧が砕ける音が、霧の中で湧き上がる。<br> しかし、この一撃で弓足軽を全滅したなんて楽観はしなかった。<br> <br> 水銀燈が冥鳴を格納した直後、立て続けに雪華綺晶が獄狗を解き放った。<br> 獄狗の咆哮と、骨を噛み砕く耳障りな音が響きわたる。<br> 霧を突き抜けて、弓足軽が一匹、上空高くに放り投げられた。<br> 金糸雀は懐から短筒を素早く抜いて、一発で頭蓋骨を撃ち砕いてみせた。<br> <br>  「ちぇっ。今のは、私が仕留めようと思ってたですぅ」<br> <br> クナイの切っ先を指で弄びながら、翠星石が不満を漏らす。<br> が、直後に鳴り響いた法螺貝の音と、地を震わす鬨の声に、やおら表情を強張らせた。<br> 金糸雀が望遠鏡を覗き込んで、城の様子を窺う。<br> <br>  「うっわぁ……これは拙いかしら」<br>  「なにが、です?」<br>  「城門が開いて、騎馬軍団が出てきたかしら」<br>  「騎馬ですか……そりゃ厄介ですね」<br> <br> 戦力差は歴然。いつまでも持久戦を続けられる筈がない。<br> 霧の中には、無数の敵が犇めいていることだろう。<br> <br> 待っていては、包囲されて潰される。<br> 濃霧の中に攻め込んでも、数で圧されてしまうだろう。<br> どっちにしろ、死が待っているだけだ。<br>  <br>  <br> ――では、どうすれば良い? 何が最善?<br> 翠星石は考えた。<br> おそらく、今までの人生で最も、知恵を振り絞っただろう。<br> <br> ふと、閃く。これが天啓というものか。<br> しかし、その発想は突拍子もなく、実現できるか解らなかった。<br> 試したことがないし、そもそも今まで、思い付きさえしなかった事だ。<br> <br>  「それでも……やってみるしかねぇです」<br> <br> この非常時に、ぶっつけ本番など以ての外だが、殺されては元も子もない。<br> だったら、ダメで元々、やってみるだけだ。<br> 翠星石は睡鳥夢を収納した玉鋼の板を両手で握って、瞑想に入った。<br> 穢れの者どもが発する鬨の声は、刻一刻と近付いてくるが、気にしない。<br> みんなが護ってくれることを信じて、ただひたすらに精神を集中していく。<br> 流れ矢に当たったら、所詮、それまでの寿命だったと言うことだ。<br> <br> <br> 頭の中に、ひとつの光景を思い浮かべる。<br> どこまでも、どこまでも、果てしなく伸びていく睡鳥夢の姿を。<br> 先端が霞んで見えなくなるくらい、遙か高く……遙か遠くへ――<br> すこやかに……。<br> のびやかに……。<br> いつしか、睡鳥夢は天高く聳え、ありとあらゆる方角に枝を伸ばし、<br> 世界を覆い尽くすまでに成長していた。<br> <br> ――世界樹。<br> <br> その一言が脳裏をよぎった瞬間、翠星石は目を見開き、精霊を起動した。<br> <br>  「睡鳥夢ぅっ!!」<br> <br> 突如、彼女たちの周囲で大地が躍動を始めた。<br> 地中から何本もの太い樹木が飛び出し、城の方角へ、ぐんぐん伸びてゆく。<br> 突進してきた骸骨騎馬の一団は、巻き添えを食って弾き飛ばされ、砕け散った。<br> <br>  「な、なんなの、これは?!」<br>  「知るワケないでしょぉっ! 私に訊かないでよ、おまぬけ真紅っ!」<br>  「姉さんっ! 一体、何を――」<br> <br> 敵も味方も、訳が分からず右往左往する中、睡鳥夢は成長を続ける。<br> ついには城門に達して、成長の勢いそのままに、分厚い門扉をブチ破った。<br> <br>  「…………巧く……いったです」<br>  「これは……想定外だったかしら」<br>  「凄ぉいっ! 翠ちゃん、凄いのっ!」<br>  「ま、まぁ、私にかかれば、この程度は余裕ってヤツですぅ」<br> <br> 余裕という割には、憔悴の色を露わにする翠星石。<br> しかし、彼女は気丈に笑って、他の娘たちを促した。<br> 睡鳥夢の上を、率先して歩いていく。<br> <br>  「折角、橋を架けたですから、早く渡っちまえです」<br>  「そうね。蒼星石と薔薇水晶が先導して、進路を切り開いてちょうだい」<br>  「解ってる。行くよ、薔薇しぃ」 <br>  「……良いよ。いつでも」<br> <br> 翠星石の脇を擦り抜け、蒼星石と薔薇水晶が、睡鳥夢の架け橋を渡っていく。<br> その後を、金糸雀と雛苺、雪華綺晶が続いた。<br> 何本もの幹が絡み付いたものなので、足場は良くない。むしろ、悪すぎる。<br> 悪戦苦闘しながら渡っていく二人の背中を心配そうに見送りつつ、<br> 雪華綺晶は、翠星石に獄狗を託した。<br> <br>  「翠星石さんは、獄狗と共に、ヒナさんとカナさんを守って下さい」<br>  「それは構わねぇですけど、きらきーは、どうするです?」<br>  「私は、真紅や水銀燈と、殿(しんがり)を務めますわ」<br> <br> 翠星石を見詰める雪華綺晶の瞳には、全てを見抜いている風な光が宿っていた。<br> 貴女が疲労困憊していることは、お見通しですよ……と、言わんばかりに。<br> バレているなら、強情を張って断るのも馬鹿馬鹿しい。<br> <br>  「しゃ~ねぇです。そこまで言うなら、頼まれてやってもいいです」<br> <br> 翠星石は獄狗の背中に飛び乗り、金糸雀と雛苺の後を追い掛けた。<br> こういう悪路なら、四つ足の方が走破性に優れている。<br> 現に、翠星石を乗せた獄狗は、すぐに追い付いてしまった。<br> <br> まだ幾らも進んでいないのに、二人はもう息を切らしている。<br> そもそも、金糸雀と雛苺は実戦向きの体躯や、筋力を持ち合わせていない。<br> 高所と言うことで、足が竦んでいるのも理由のひとつだろう。<br> <br>  「金糸雀! 雛苺! お前たちは獄狗に乗って行けです」<br>  「はぁはぁはぁ……で、でも……翠ちゃん、は……どうするかしら?」<br>  「私は忍びの修行も積んできたですよ。<br>   お前たちみてぇなひ弱な連中とは、根本的に違うですぅ」<br> <br> 台詞がいちいち癇に障るが、自分達を気遣っての事だと金糸雀は理解していた。<br> 変に意地を張れば、余計、みんなに迷惑をかけてしまう。<br> 金糸雀は「お言葉に甘えるかしら」と応じて、雛苺と共に獄狗の背に跨った。<br> 後ろを振り返れば、真紅たちも、すぐそこまで辿り着いていた。<br> <br>  「貴女たち、まだ、こんな所に居たの?」<br>  「蒼ちゃんと薔薇しぃが孤立するでしょぉ! 早く行きなさぁい」<br>  「殿は、私と水銀燈で何とかするから、雪華綺晶も行ってちょうだい」<br>  「承知しましたわ。皆さん、急ぎましょう」<br> <br> 雪華綺晶は獄狗に指示を出すと、翠星石と並んで走り出した。<br> まだ、半分も渡っていない。<br> 後方を見遣ると、穢れの足軽どもが、睡鳥夢の根元から続々と登り始めていた。<br> <br>  「もう来たのね。私たちも行くわよ、水銀燈」<br>  「その前に……っと」<br> <br> 至近まで迫っていた数匹の足軽を、水銀燈の太刀が薙ぎ祓う。<br> 両断された残骸が、眼下に広がる濃霧の海に沈んでいった。<br> 直後、濃霧の中から、矢と銃弾が飛んできた。<br> 偶然を伴った一発の銃弾が頬を掠めた事に驚いて、真紅はつい後ずさり、足を滑らせてしまった。<br> <br>  「あっ……」<br> <br> 呟いた時には、身体がふわりと浮いていた。<br> どれだけ高いかは分からないが、下に落ちれば、全身打撲で死ねるだろう。<br> 仮に生きていても、穢れの者どもが嬲り殺してくれる筈だ。<br> <br>  (どっちみち、ロクな死に方じゃないわね)<br> <br> しかし、真紅は地面まで落下しなかった。<br> 彼女が……水銀燈が腹這いになって、しっかりと腕を掴んでくれていたから。<br> <br>  「なぁに勝手に諦めてるのよぅ。バっカじゃないのぉ?」<br>  「あ、ありが……と」<br>  「惚けてないで、さっさと上がって来なさい。さもないと本当に手ぇ放すわよぉ」<br>  <br> ごめんなさい、と謝って、真紅は睡鳥夢の上によじ登った。<br> 際どいところだったが、まずは助かって、ホッと一息。<br> だが、悠長に構えてもいられない。敵は畏れを知らずに、群がってくる。<br> <br>  「早く立って、真紅。腰が抜けたとか、言わないわよねぇ?」<br>  「バカ言わないで。これしきのこと、慣れたものよ」<br>  「それなら心配いらないわね。お先にぃ」<br> <br> 水銀燈は、ひらひらと手を振って、城に向かって走り出した。<br> 何度も助ける気は無いらしい。<br> 勢いよく飛び起きた真紅は、仲間たちの元へと急いだ。<br>  <br>  <br> 時々、思い出したように振り返る。<br> 穢れの足軽どもは、執念深く追い掛けてきた。<br> 草臥れた陣笠や、どす黒い旗指物を背負った足軽が、遙か後方から陸続と並んでいる様子は、<br> 真紅を質の悪い仮装行列を眺めている気分にさせた。<br> <br>  「大人気じゃないの真紅ぅ。有名人は辛いわねぇ」<br>  「貴女も、その一人よ。他人事みたいに言わないで」<br> <br> 真顔で語る真紅に「まぁねぇ」と笑い掛けて、水銀燈は穢れの列に精霊を撃ち込んだ。<br>  <br>  <br>  <br> 最前列では、蒼星石、薔薇水晶、雪華綺晶の三人が、進路を切り開いている。<br> 対岸から上ってきた穢れの者どもを斬り伏せ、残骸は脇へと蹴り落とす。<br> 蒼星石は破壊された城門を潜り、城内の土を踏んだ。<br> 城の中にも、濃い霧が流れ込んでいて、とても視界が悪かった。<br> <br> 城内に怒号が轟き、三方向から得物を振り翳した足軽の群が、<br> 大挙して押し寄せてくる。<br> 櫓の上からは、弓足軽と鉄砲足軽が、得物を構えて狙いを定めていた。<br> 金糸雀の短筒が火を噴き、櫓上の敵を撃ち落とすが、如何せん数が多すぎる。<br> どこかの櫓から放たれた銃弾が、雪華綺晶の兜を弾き飛ばした。<br> <br>  「雪華綺晶!?」<br>  「だ、大丈夫ですわ、蒼星石さん……ちょっとクラクラしますけど」<br>  「真紅たち、まだ来ないわ。んもぅ! 何してるのかしらっ」<br>  <br> ――このままでは、数の勢いに圧倒される。<br> 誰もが焦燥感を覚えたその時、漆黒の固まりが夜闇を裂いて飛び越し、櫓のひとつを直撃した。<br> 衝撃で、弓足軽や鉄砲足軽が宙に投げ出される。<br> 櫓の上半分が傾き、押し寄せていた足軽の一団が、倒壊に巻き込まれた。<br> <br>  「お待たせぇ。真紅が途中でコケたから、遅くなっちゃったわぁ」<br>  「遅ぇですよ! まあ、とにかく一旦、睡鳥夢を格納するです」<br> <br> 真紅と水銀燈が睡鳥夢から降りたのを確かめて、翠星石は精霊を格納した。<br> 夜空に架かっていた睡鳥夢の橋が、忽ち掻き消える。<br> 渡っている途中だった穢れの者どもは、為す術もなく濃霧の海に墜ちていった。<br> 再度、精霊を起動した翠星石は、他の娘たちに向けて叫んだ。<br> <br>  「ここは私に任せるですっ! 真紅たちは、先に行きやがれですぅっ!」<br>  <br>  <br>  <a href= "http://www9.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/855.html">=第三十二章につづく=</a><br>  <br>  </p>

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