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「「あなたの呼ぶ」後日談」(2006/05/15 (月) 20:52:57) の最新版変更点
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ジュンと、その彼女が歩いているところを見てから、<br>
ずいぶん時間がたったわ。<br>
私は、大分落ち着いてきたわ。<br>
紅茶も、ジュンほどとはいかないにせよ、<br>
おいしく淹れれるようにもなったわ。<br>
紅「あら、ダージリンの葉がもうないわね。」<br>
たしか、友達から聞いた話だと、<br>
大学から2駅のところに、いいお店があるらしいわ。<br>
帰りに行ってみようかしら。<br>
<br>
駅から、10分ほど歩くと、<br>
こじんまりとした白を基調とした建物があったわ。<br>
店の看板には、Teegesellschaftと書かれていたのだわ。<br>
紅「たしか、お茶会って意味だったかしら。<br>
なかなか、素敵な名前ね。」<br>
大学のドイツ語の授業を記憶から引っ張りだすのに苦労したわ。<br>
あまり使わないものだけれども、<br>
授業はもう少し、キチンと聞いたほうがいいみたいだわ。<br>
?「いらっしゃいませ、ようこそ、Teegesellschaftへ」<br>
右目に眼帯をした、白を基調とした服を着た店員は、<br>
ハキハキとした声で迎え入れてくれたわ。<br>
?「……いらっしゃい……」<br>
左目に眼帯をした、紫を基調とした服を着た店員は、<br>
抑揚のない声でつぶやいたわ。<br>
二人とも、色の基調こそ違うけれども、<br>
髪の長さや、結び方、顔立ち、体形まで良く似ているわ。<br>
<br>
紅「双子……かしら」<br>
?「残念ながら違いますよ。私は雪華綺晶。彼女は薔薇水晶といいます。<br>
でも、私達も驚くくらいそっくりですよね。」<br>
白を着た、雪華綺晶と名乗った店員は、明るく答えたわ。<br>
紅「えぇ、ほんとうにそっくりだわ。」<br>
雪「はじめてのお客様には、<br>
まず、私達の店を知っていただきたいということで、<br>
紅茶をお出ししています。<br>
コチラが勝手に出すものなので、御代は結構です。<br>
お出ししてもかまいませんか?」<br>
紅「ええ、よろしくお願いするわ。」<br>
かなりの自信を持っているようだわ。楽しみだわ。<br>
カウンターのほうに目を向けると、<br>
薔薇水晶という店員が、お湯を沸かしていたわ。<br>
店の内部を見渡す。<br>
時間のせいかお客はいないけれど、<br>
カウンターといくつかのテーブルがあるのだわ。<br>
棚には茶葉が、産地と茶園ごとに分かれて、綺麗に並べられているわ。<br>
雪華綺晶がお盆を持って出てきたわ。<br>
お盆にティーポットとカップ、それに砂時計が載せられているわ。<br>
雪「砂が落ち終わった時が飲み頃ですので、その後お飲みください。」<br>
そういって、彼女は、カウンター内の定位置に戻ったわ。<br>
砂が落ちたので、カップを口に運んだわ。<br>
花のような芳醇な香り。<br>
えぐみや青臭さもなく、口当たりのよい味。<br>
<br>
雪「いかがでしょう?」<br>
紅「ええ、素晴らしい紅茶だわ。<br>
淹れる人もかなりの腕前ね。<br>
葉は、……シャングリラかしら。」<br>
雪「ご名答。お詳しいんですね。」<br>
紅「日本では、珍しい茶葉なのに……、<br>
初見の客に出すなんて、なかなかできることではないわ。」<br>
雪「誠心誠意、紅茶をお出しするのが、私達のポリシーですから」<br>
紅「素晴らしいお店ね。」<br>
薔「……えっへん……」<br>
店の奥から抑揚のない声が聞こえたわ。<br>
雪「ありがとうございます。」<br>
カウンターの雪華綺晶は嬉しそうに答えたわ。<br>
しばらく、紅茶を楽しんだのだわ。<br>
<br>
茶葉の棚を覗いてみたわ。<br>
お手ごろな値段のものから<br>
100g1万円の茶葉もあったりと、<br>
品揃えはかなり豊富なので、目移りするのだわ。<br>
これは正直に聞いたほうがよさそうだわ。<br>
紅「ダージリンの葉が欲しいのだけれども、<br>
オススメはあるかしら。」<br>
雪「そうですね……。<br>
失礼ですけど、予算のほうお聞きしてもよろしいでしょうか?」<br>
その後、予算と、私の好みを聞くと、<br>
雪華綺晶は、予算にあった茶葉を選んでくれたわ。<br>
<br>
かなりいい店だ、また来よう、そう思っていると、<br>
奥から薔薇水晶がポスターを持って出てきたわ。<br>
紅「あら、なにかしら」<br>
薔「……私の力作……」<br>
ポスターには、かわいらしいウェイトレスの絵と丸文字が並んでいたわ。<br>
アルバイト募集のポスターみたいだわ。<br>
雪「実は、東京に二号店を出す予定でして、<br>
人手が足りなくなるので募集中なんです。」<br>
紅「私、このお店なら、働いてみたいわ。」<br>
雪「え、本当ですか。」<br>
紅「でも、紅茶をうまく入れたりできないわ。」<br>
雪「そこは、薔薇水晶がきっちり教えてくれるから大丈夫です。<br>
基本的には、薔薇水晶が調理担当なので、<br>
アルバイトさんは、ウェイトレス的なお仕事がメインです。」<br>
紅「雇ってもらえるかしら。」<br>
雪「はい。もう、喜んで。よろしくお願いします。<br>
………え~っと、」<br>
紅「私の名は、真紅。」<br>
雪「よろしくお願いします。真紅さん」<br>
薔「……よろしく……」<br>
ということで、私は、紅茶専門店、Teegesellschaftで働くことになったわ。<br>
紅茶が好きだからと理由もあるけれども、<br>
自分を変えたいからという気持ちもあったわ。<br>
せめて、おいしい紅茶くらいは淹れられるようにがんばろう。<br>
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