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「「あなたを呼ぶ」~プロローグ~」(2006/05/05 (金) 21:55:14) の最新版変更点
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「あなたを呼ぶ」<br>
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<dd>紅「……ジュン、お茶を入れて頂戴」<br>
ジ「はいはい」<br>
僕はいつもどおり紅茶を淹れる。<br>
真紅と僕だけのいつもどおりの部屋。<br>
違うのは、真夜中であること。<br>
紅「……ねぇ?」<br>
ジ「ん?」<br>
紅「……本当にいってしまうの?」<br>
ジ「ああ、僕は、東京の学校に行って、服飾について学ぶ」<br>
真紅に言い聞かすように、そして、僕自身にも言い聞かすように言った。<br>
真紅には、ずっと前から言っていた事だ。<br>
でも、真紅は、信じられない、いや、<br>
信じたくないのだろう。<br>
ジ「ほら、できたぞ」<br>
真紅はいつもどおり優雅に紅茶を口に運ぶ。<br>
いつもどおり、静かな空間。<br>
違うのは、その沈黙が心地の良いものではないこと。<br>
紅「……明日は早いんでしょ?遅いのに呼び出して悪かったわね」<br>
ジ「別にいい。じゃあな、真紅」<br>
僕は立ち上がる。<br>
紅「待って」<br>
ジ「ん?」<br>
僕は振り返らず立ち止まった。<br>
紅「私は、……その……<br>
……いいえ、お茶を淹れてくれてありがとう。」<br>
ジ「…………うん」<br>
僕は、そのまま振り返らず、真紅の家を出た。<br>
多分、真紅は泣いていたと思う。<br>
見たら、決意が鈍る気がして、振り向かずに外に出た。<br>
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東京に行く電車には、友達が見送りにきてくれた。<br>
「元気でやれよ」<br>
「たまには、帰ってこいよ?」<br>
いろいろな人に、いろいろな声をかけられたが、<br>
真紅の姿はなかった。<br>
でも、そっちのほうが良かったのかもしれない。<br>
真紅とはずっといっしょにいた。<br>
恋人や親友って表現が適切ではないにしろ、ただの友達でもない。<br>
何も言わなくとも、大体のことはわかる、居心地のいい関係。<br>
僕自身、真紅としばらく会えなくなるのが、<br>
嘘のように思えるくらい、日常の欠かせない、空気みたいな関係。<br>
だから、真紅の泣き顔を見てると、<br>
僕も泣いてしまうだろう。<br>
いろいろ考えているうちに、電車は、走り出した。<br>
紅「ジュン!」<br>
ふと、真紅が僕の名を呼ぶ声が聞こえた。<br>
窓の外を振り返ってみても、真紅の姿は見えない。<br>
幻聴が聞こえるなんて、相当参ってるな。<br>
僕は、自分を笑いながら、少し、泣いた。<br></dd>
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