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「~心のある場所~」(2006/04/09 (日) 12:25:23) の最新版変更点
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~心のある場所~<br>
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ジ「やぁ…」<br>
メ「また来てくれたのね」<br>
ジ「…うん」<br>
メ「退屈、とても退屈。ねぇ、世界に私は必要なのかな?」<br>
ジ「…何言ってるんだよ」<br>
メ「だってね、小さい頃からずっとここにいるのよ?私は外を知らない…、生まれたときから世界には組み込まれていないの…」<br>
ジ「そんなことない!君がいない世界は、考えられない…」<br>
メ「ふふっ。それって告白かしら?」<br>
ジ「違ぁぁぁう!!」<br>
メ「そんなに必死にならなくても…」<br>
ジ「わああああ!ご、ごめん!!謝るから泣くなよ!」<br>
メ「ふふふ、また騙されたね。泣くわけないじゃない♪」<br>
ジ「こ、このぉっ!」<br>
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ジュンがめぐに出会ったのは去年の夏<br>
水銀燈の紹介だった<br>
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柿崎メグ<br>
彼女は先天的に心臓が弱く、生まれたときからずっと病院で過ごしてきた<br>
ジュンと出会うまでは、水銀燈が唯一の友達だった<br>
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桜田ジュン<br>
彼は登校拒否で、中学にはまともに通わなかった<br>
高校に入っても仲のよい友達は少なかった<br>
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二人が出会ったとき、お互いに奇妙な感情を抱いた<br>
「私にそっくり…」「僕と同じだ…」<br>
境遇はまるで違ったけれども、心の奥底にある闇が互いにひかれあったのだ<br>
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メ「今日はどんな話を聞かせてくれるの?」<br>
ジ「そうだなー…。あっ、最近真紅の勧めで『錬金術と無意識の心理学』って本を読んだ<br>
んだ。それに付いて話そうか?」<br>
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ジュンは学校が終わるとすぐにメグの部屋にくる<br>
そして、メグが経験できないようなことを代わりに話す<br>
本のことだったり、学校のことだったりと…<br>
二人ともこの時間が一番好きだった<br>
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ジ「でね、心っていうのは心臓にあって…どうした?」<br>
メ「えっ?どうもしてないわ…」<br>
ジ「だって、…泣いてるぞ」<br>
メ「あれ、本当だ…。私ったら、何で泣いてるのよ」<br>
ジ「…」<br>
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ジュンは少し後悔していた、メグは心臓が悪かったのだ…<br>
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ジ「ごめん、無神経だった」<br>
メ「ううん、いいのよ。ジュンは悪くない。悪いのは私のこれよ」<br>
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そう言って胸を指差す<br>
発育途中の小さな胸…<br>
その鼓動は消え入りそうなほど弱いのだろう<br>
透き通った白い肌が、目にするものの目を瞑らす<br>
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五歳までに死ぬ、七歳までに死ぬ、次は十歳までには…<br>
もう疲れ切っていた、死への恐怖など早くに無くした<br>
「死ぬことが決まっているのなら、今すぐにでも死にたい」が彼女の口癖だった<br>
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<dd>ジ「…」<br>
メ「はぁ、飛びたいなぁ。翼を広げて、羽ばたくの。それはとても素晴らしいこと<br>
だとおもうわ…」<br>
ジ「…」<br>
メ「ねぇ、ジュン?私を連れていって、どこかとおくへ」<br>
ジ「…」<br>
メ「こんな小さな部屋で死ぬのは嫌。どうせなら、どこか広いところで…」<br>
ジ「だめだよ…、お前はここを離れちゃ」<br>
メ「言ってるでしょう?どうせ死ぬんだから…、最期は私が決めるの」<br>
ジ「死ぬなんて、そんなこと簡単に言うな!」<br>
メ「…なによ!ジュンは何も知らないでしょ!病気も、私の気持ちも!」<br>
ジ「お前もだろ!お前が死んで悲しむ人がいるってこと、知らないじゃないか!」<br>
メ「この命は私のモノ。捨てることは私の勝手だわ!!」<br>
ジ「くそっ…、もういい。今日は帰る!」<br>
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いつも仲が良かったわけではなかった<br>
口喧嘩なんてしょっちゅうしてたし、お互いに素直になれないところもあった<br>
ただいつもは直ぐに仲直りをしていたのだ<br>
だけど、今回は違った<br>
次の日も、そのまた次の日もジュンは来なかった<br>
メグは次第に塞ぎ込むようになっていった<br>
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一週間後<br>
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銀「ジュン、ちょっと来なさい!」<br>
ジ「?」<br>
銀「どういうこと?説明してくれるかしら?」<br>
ジ「…なんのことだよ」<br>
銀「とぼけないで、メグのことよ」<br>
ジ「知らないよ、あんなやつのことなんて…」<br>
銀「昨日久しぶりに会いに行ったわ、ひどくやつれてた。食事もまともにとらないんだっ<br>
て。喧嘩したのでしょう?」<br>
ジ「…」<br>
銀「こんなことは本人が言った方がいいのだけれど、時間もないし私が言うわ。ジュン、<br>
メグは貴方のことが好きなのよ。わかるでしょう?好きな人に嫌われることがどれほ<br>
ど恐ろしいことか…」<br>
ジ「…僕も柿崎のことが好きなのかもしれない。でも、あいつは死にたがっていて…」<br>
銀「メグはね、もうすぐ手術するの。心臓移植よ。たぶん恐がっているの…」<br>
ジ「き、聞いてないぞ!!」<br>
銀「やっぱりね、そんなことだろうと思った…って、もう行っちゃった」<br>
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水銀燈が話し終わる前に、ジュンは教室を飛び出した<br>
行く先はもちろん、病院のあの部屋<br>
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ジ(くそっ、何で気付いてあげられなかった!)<br>
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メ(心のあり場所は…心臓…。頭ではない、心臓…。手術したら私が私でなくなるの?<br>
私の心はどこへ?…教えて、ジュン…)<br>
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バンッ!!勢い良く扉が開く。そこに立っているのは…ジュン<br>
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メ「ジュン!……もう会えないかと…」<br>
ジ「泣くなよ。僕は泣かせにきたんじゃないぞ」<br>
メ「ごめんなさい…、ごめんなさい…。ごめ…んなさ…いっ…」<br>
ジ「…手術、するのか?」<br>
メ「水銀燈から聞いたの?」<br>
ジ「うん、どうして教えてくれなかったの?」<br>
メ「あの日、喧嘩したあの日に話すつもりだった…。でも…、ジュンは言ったでしょう?<br>
心は心臓にあるって。…手術すると、心が無くなると思ったの」<br>
ジ「…あの話は、所詮本の話だよ。誰も証明できない」<br>
メ「できる、私が証明できる。…ジュンといると鼓動が高鳴る…、同時に心が弾むの。こ<br>
れはね…心臓に心があることの証明なの…」<br>
ジ「…」<br>
メ「私は手放したくない、ジュンへの純粋な心…」<br>
ジ「僕も、柿崎のことが好きだ。…死んだら悲しい」<br>
メ「もう死ぬなんて言わない、死よりも甘美なことを見つけたのだから。ただ、この心は<br>
死んでしまう…」<br>
ジ「…ない。心は…死なない!知ってる?僕らはよく似ていた。そして繋がっていた、心<br>
の奥底で…。柿崎といると、柿崎の意識が時々流れてくるんだ。嬉しいとか、寂しい<br>
とか、喜怒哀楽の意識が…。君が器をなくしても中身は僕がもてる。心は共有できる<br>
んだから」<br>
メ「心の共有…。ジュン、行くね、手術してくる。成功したら…恋人になってくれる?」<br>
ジ「うん、…待ってるよ」<br>
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それから一ヵ月後に彼女は退院した<br>
手術後は順調で、僕らは手をつなぎ街などで遊んだりもした<br>
そして、大学を卒業すると同時に結婚した<br>
結婚2年目にできた子供には、心(しん)と名付けた<br>
とても楽しく、とても充実した10年間だった<br>
今は一つの墓の前で手を合わせている<br>
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ジ「もう五年になるな、…少し寂しくなってきたよ。今日は心も一緒だ」<br>
心「ままー♪僕は元気だよ、ままは元気ぃ?」<br>
ジ「心、お母さんは元気にしてるぞ。こことここでね…」<br>
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自分と息子の胸に手をあてる<br>
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ジ「ここにお母さんが生きている。大切にするんだ」<br>
心「うん、わかった!」<br>
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生憎の空模様、もうすぐ雨が降りそうだ<br>
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もう一度、手を胸に…<br>
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『柿崎メグ、元気ですか?あなたの心はここにあります…』<br>
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Fin<br></dd>
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