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<p>【悪戯】</p>
<p>夕刻<br>
どこの家庭からも食欲をそそる匂いがあふれ出てくる時間<br>
ここ桜田家でもほかの家と同じように住人たちが食事を取っていた。<br>
因みに桜田家の今日のメニューはビーフシチューである。<br>
のり「そうそう、ジュンくん、今週末なんだけど私お夕飯作れそうにないのよ」<br>
JUM「うん、なんでさ?」<br>
のり「大学の部活の合宿があるのよ、それでね金土日と留守にするから」<br>
JUM「うん、わかった」<br>
のり「ごめんね~ジュンくん」<br>
JUM「いいよ、別に」<br>
中学までは過保護なほどにJUMの世話を焼いたのりもJUMが高校に上がってからは<br>
それほど世話を焼くこともなくなっていた。<br>
もっともJUM達の両親は共働きをしており二人とも仕事の関係で家に帰ることは<br>
少なかったので家事全般は今ものりがこなしているのだが。<br>
のり「うん、でもJUMくん一人で大丈夫?」<br>
訂正しよう過保護はいまだ健在のようだ。<br>
JUM「もう子供じゃないんだから、自分で何とかするって」<br>
のり「そう、ならお留守番お願いね」<br>
JUM「わかってるよ」<br>
まるで小さな子供に言い聞かせるような姉の態度にJUMは心の中で大きなため息をついた。</p>
<p>そして、時は流れ金曜日のお昼<br>
JUMははれて恋人となった水銀燈と一緒に屋上で昼食をとっていた。<br>
銀「あらぁジュン、珍しいわねパンなんてぇ?」<br>
いつもは彼の姉のお手製の弁当なのだが今日のJUMの昼食は珍しく学校の購買のパンであった。<br>
というのものりは今朝方珍しく寝坊した<br>
その為部活の合宿に慌しく発つことになり彼のお弁当を作る暇がなかったのである。<br>
ちなみに両親はどうやら泊り込みで仕事をしているらしく木曜日から帰っていない。<br>
JUM「ああ、姉ちゃんが今日から部活の合宿でいないんだよ」<br>
銀「のり先輩いつもなら朝早く起きて作っていくんじゃなぁい?」<br>
水銀燈はJUMと付き合う前から互いの家によく行き来していたのでのりとはかなり親しい間柄なのだ<br>
のりは水銀燈が大層気に入ったらしく猫かわいがりしていた。<br>
ちなみに水銀燈はそののりの対応とJUMに対する過保護ぷりに苦笑いを浮かべていたのだが・・・<br>
JUM「姉ちゃん今朝寝坊してな、作ってる暇がなかったんだよ」<br>
銀「のり先輩らしいわねぇ」<br>
そう言って水銀燈はクスクスと笑った。<br>
そんな水銀燈みながらJUMは手にした餡パンの最後の一切れを口に放り込んだ。<br>
銀「それだけで足りるぅ?」<br>
JUMとて育ち盛りの男子、菓子パンの一つ二つではいささか足りない。<br>
とはいえ、購買にそれしかめぼしい物が残っていなかったのだからしかたがない。<br>
JUM「正直ちょっと足りないかな」<br>
銀「うふふ、なら、私のお弁当すこしあげるわぁ、はいあーん」<br>
そう言うと水銀燈は自分の小さなお弁当箱からエビフライを一つ箸で摘むとそのままJUMに差し出した<br>
JUM「いいのか、じゃあ遠慮なくもらうよ・・・うん、うまい」<br>
差し出されたエビフライを躊躇うことなく口に入れた</p>
<p>
普通なら多少たじろぐ所なのだが一々そんな反応をしていては彼女と付き合うことなど到底無理なのだ。<br>
なにせ水銀燈は日常的に今のようなことをしてくるので一々反応していては身が持たないのである。<br>
そんなJUMをみて水銀燈は面白くないと言った顔をする。<br>
JUM「なんだよ」<br>
銀「最近のジュンの反応は面白くないわぁ」<br>
JUM「毎日そんなことされれば嫌でも慣れるさ」<br>
銀「はぁ~あ、昔のジュンのが面白かったなぁ」<br>
JUM「免疫力つけたのはお前だろ」<br>
JUMは肩を窄めて見せた。<br>
銀「そうねぇ、それで話を戻すけどぉ、じゃあ今週のり先輩はいないのぉ?」<br>
JUM「ああ、日曜日の昼には帰ってくるらしいけど」<br>
銀「おじ様たちは?」<br>
水銀燈が言うおじ様たちとはJUMの両親たちのことである。<br>
互いに面識はないが<br>
JUM「なんか仕事が片付かないから日曜まで仕事場に缶詰だってさ」<br>
銀「あらぁ、じゃあ日曜までジュンは家に一人なんだぁ」<br>
JUM「まぁそうなるかな」<br>
それを聞いた水銀燈はにんまりと笑った。<br>
どうやら何かを思いついたらしい。<br>
銀「ねぇ~え、それなら私がその間のり先輩に代わってお世話をしてあげるわぁ」<br>
JUM「お前、家事とかできるのかよ」<br>
銀「うふふ、ジュンいま私が実質一人暮らしってこと忘れてなぁい?」<br>
水銀燈は母親と幼いころ死別しており父親によって育てられた。<br>
その父親も現在短期の海外出張で水銀燈の言うとおり一人暮らし同然なのだ。<br>
銀「こう見えても私、家事万能なのよぉ、さっき食べたエビフライも私のお手製だしねぇ」</p>
<p>JUM「ならお願いしようかな・・・」<br>
JUMはその言葉に素直に頷いた。<br>
ここで反対してみせてもどうせ無駄なのだとわかっているからだ。<br>
銀「なら、放課後一緒に買い物に行きましょう、今日はJUMのリクエストに答えてあげる」<br>
JUM「ああ、わかった」<br>
もはや完全にJUMは水銀燈の尻に敷かれているようだ。</p>
<p>さてさて又しても時間は流れて放課後<br>
近所のスーパーの買い物袋をさげJUMは一人帰宅した。<br>
水銀燈はといえば着替えなどを持ってくるために一度家に戻ったのだ。<br>
どうやら、水銀燈はJUMの家に泊まる気でいるらしい。<br>
無論JUMはそれに異を唱えることはしなかった。<br>
言っても無駄というのもあるが、別段反対する理由もなかったからだ。<br>
JUMは週に一度は水銀燈の家に泊まっている。<br>
その場所が自分の家になっただけなのだから別段反対する理由などないわけだ。<br>
JUMは台所に買い物袋を置くと着替えるために二階の自分の部屋へと階段を上っていく。<br>
自分の部屋に入ったところで玄関から「おじゃまします」という声が聞こえた。<br>
JUM「ああ、もう来たのか、僕は着替えてるから勝手に上がっててくれ」<br>
多少大きな声をだして下階にそう言うと大急ぎで着替えた。<br>
JUMが台所に入ると水銀燈はすでに水色のエプロンをつけ調理の真っ最中であった。<br>
JUM「調味料の場所とかわかるか?」<br>
銀「ええ、のり先輩が整理して置いてあるから大体の場所はね」<br>
JUM「そっか、なら僕は風呂掃除してくるから」<br>
銀「わかったわぁ、少し時間かかりそうだから、おわったらテレビでも見てて」<br>
JUM「っん、わかった」<br>
そう答えてJUMは風呂場へと向かった。</p>
<p>
結論から言ってしまえば水銀燈の手料理は非常に美味なものでJUMは少々食べ過ぎてしまったぐらいだ。<br>
食卓に並んだのは以外にも煮物や焼き魚といった和食<br>
食後にヤクルトを飲まされたのを除けばJUNにとってそれは満足のいくものであった。<br>
そうして食後二人はソファーに水銀燈がJUMの膝の間に座りJUMはそれを抱きかかえるようにしてお茶を飲みながらテレビを見ていた。<br>
JUMが何の気なしに時計を見上げるとその針は8時を指していた。<br>
JUM「もうこんな時間か」<br>
銀「どうしたのぉ?」<br>
JUM「いやそろそろ風呂に入らないとと思って」<br>
水銀燈も時計のほうを見る。<br>
銀「そうねぇ、JUM先に入っていいわよぉ、私まだ洗物があるから」<br>
JUM「わかった」<br>
そう言うとJUM抱いていた水銀燈を開放するとゆっくりと立ち上がり着替えをもって風呂場に向かった。<br>
そうして、脱衣場でパンツ一枚だけの姿になったところで普段は脱衣場にあるバスタオルがないことに気がついた<br>
JUM「水銀燈ーー」<br>
銀「なぁにJUM?」<br>
JUM「悪いんだけどさ、バスタオルもって来ておいてくれないか」<br>
銀「わかったわぁ」<br>
水銀燈の返事を聞くとJUMは最後の一枚を脱ぎ去り<br>
浴室の中へと入っていく。<br>
そして、頭と体を洗い湯船にゆったり使っていると脱衣場からゴソゴソという音と人の気配がした。<br>
JUM「水銀燈か?」<br>
銀「そうよぉ、湯加減はどう?」<br>
JUM「ああ、ちょうどいいよ」<br>
そう言ったジュンに水銀燈は<br>
銀「ねぇジュン一緒に入らない?」<br>
などというとんでもないことを言った。<br>
それにJUMは・・・<br>
JUM「ああ、別にかまわないけど」<br>
っと答えた。</p>
<p>JUMはこう考えたのだ。<br>
「どうせいつも通りからかってるんだろう」っと<br>
もしかしたら本当に入ってくるかもしれないがその場合は水着でも着てるのだろうと<br>
そのもしもに備えてJUMは一応タオルで隠すところだけは隠した。<br>
それとほぼ同時に後ろから浴室のドアが開く音がした。<br>
JUM「残念だったな、僕もそうそうお前に遊ばれてば・・・・か・・・り・・じゃ・・・」<br>
そう言いかけたところでJUMは固まった。<br>
なぜならタオルで長い銀色の髪をアップにまとめた水銀燈はJUMの予想を裏切り<br>
本当に裸で入ってきたのだ。<br>
一応タオルで前だけは隠している。<br>
固まるJUMの横を涼しい顔をした水銀燈が通り抜け、洗面器にお湯をため身体を流す。<br>
よく見ればその頬は桜色に染まっているのだがJUMは固まっているためそれに気がつかない<br>
そして、身体を洗い終わった水銀燈「おじゃまするわねぇ」と言って湯船に入った。<br>
さすがに二人も入って余裕があるほど浴槽は広くないため二人の身体は自然と密着する。<br>
水銀燈は座り方などをいろいろ試行錯誤した挙句、先ほどソファーに座っていたような形でJUMの膝の上に座った。<br>
ちなみにその間JUMは固まったままだったが目線だけは水銀燈追っていたことも記しておく。<br>
銀「ふぅ、う~ん気持ちいい」<br>
JUMはまだ固まったまま<br>
銀「さすがに二人で入ると少し窮屈ねぇ」<br>
水銀燈は首だけJUMの方に向け話しかけるが<br>
しかしJUMは固まっている。<br>
銀「ちょっと、ジュン聞いてるのぉ?」<br>
このままJUMが固まったままでは話が進まないのでそろそろ再起動してもらおう<br>
JUM「・・・っは!、お前なにやってるんだよ!!!」<br>
再起動したJUMは思わず叫んだ。</p>
<p>その声は浴室の壁に反響して二人の鼓膜を直撃した。<br>
銀「ちょっと、ジュン大きな声出さないでよぉ」<br>
JUM「ゴメン、っじゃなくて何で入ってくるんだよ」<br>
銀「あらぁ一緒に入ろうっていったらあなた「別にかまわない」っていいたじゃない」<br>
そう言った水銀燈の顔は悪戯の成功した子供のような笑みが張り付いていた。<br>
JUM「だからってなあ、第一恥ずかしくないのかよ」<br>
銀「それは多少はねぇ、でもジュンはもう何度も見てるじゃないわたしのか・ら・だ」<br>
JUM「・・・っぐ」<br>
銀「それに最近のジュンは昔みたいに可愛い反応しなくなったしぃ」<br>
JUM「それは慣れたからだって言っただろ」<br>
銀「だから、慣れてないことしようと思ってねぇ、さっきのジュンの顔最高だったわぁ」<br>
そう言って水銀燈は本当に嬉しそうに笑った。<br>
JUM「はぁ」<br>
JUMは諦めのため息をつくとそっと水銀燈の腰に両手を回すと抱き寄せその髪に顔を埋めた。<br>
銀「あぁん、ちょっとジュン」<br>
JUM「何もしないよ、ただ抱きしめてるだけ」<br>
銀「ふぅん、でも、私のお尻の下の子はそうじゃないみたいだけどぉ」<br>
それは悲しき男の性<br>
JUM「仕方ないだろ、好きな女の子の身体が目の前にあるんだから」<br>
JUMはそう言って口を尖らせた。<br>
それを見た水銀燈は小さく笑みを浮かべる。<br>
銀「言っておくけどぉここじゃダメよぉ」<br>
JUM「わかってるよ」<br>
銀「ふふふ、お風呂から出た後にベッドでねぇ」<br>
そう言って水銀燈はJUMの首筋にチュっとキスをした。<br>
その後二人は風呂から出た後一緒にヤクルトを飲み<br>
高校生が就寝するには少々早い時間に共にベッドに入ったのだった。</p>
<p>終わり</p>