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「翠星石のちょっとした苦悩」(2010/05/17 (月) 13:31:29) の最新版変更点
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<p>「うぅ~……一体どうすればいいですかね……」<br /><br />
私は、自室のベッドの上でため息をついていた。<br />
理由は私の友人のチビ、桜田ジュンのことだ。<br />
つい2、3年前までは私のほうが身長が高かったのだが、この前ひょんなきっかけで背比べをしたところ、僅かだが抜かれてしまっていたのだ。<br /><br />
「このままじゃあ翠星石の方がちびじゃないですか!翠星石のプライドにかけても、そんな事は許さんのですぅ」<br /><br />
とは言っても、一体全体どうすればいいのか分からない。</p>
<p>あの嫌な数学のテストを解いている気分ですよ、全く。<br /><br />
「そうだ、蒼星石に相談しに行くですぅ!」<br /><br />
うっかり声が出てしまった。しかし、我ながらナイスアイデアですぅ!<br />
私は飛び起きて階段を駆け下りる。そしてコタツに入ってくつろいでいる蒼星石を見つけた。<br /><br />
「ちょっと、相談があるですぅ」<br />
「……翠星石が僕に相談?何かな?」<br /><br />
蒼星石は私の真剣な眼差しを受けて、少しだけ姿勢を良くしてから、私の方へと向き直った。<br /><br />
「それでですね、蒼星石、あの……背を伸ばすにはどうすればいいと思いますか?」<br /><br />
背の事についての悩みを一気に口に出す。蒼星石は私の喋る事を、黙ったまま目を閉じて聞いてくれた。<br />
そして、私が話し終わった後ちょっとだけ間を置いて、こう言ってくれた。<br /><br />
「チビで何が悪いの?」<br /><br />
蒼星石の言う通りだ。私は、つまらないプライドにこだわっていた事を思い知らされた。<br />
……身体中を覆っていたもやもやとした物が、全て溶け落ちた感覚がした。</p>
<p> </p>
<p> </p>
<p> </p>
<p>翌朝、朝練で私よりも家を早く出る蒼星石を見送ったあと、私はジュンと一緒にのんびりと歩いて学校へと向かう。<br />
道中、私はジュンにいつも先に話しかける。<br /><br />
「ちび」<br />
「僕はちびじゃない!」<br /><br />
いつも通りの応酬だ。<br /><br />
「大体、今は僕の方が大きいじゃないか」<br /><br />
胸をそらせてちょっとでも体を大きく見せようとするジュン。<br /><br />
「うぅ~……翠星石だってもうちっと大きくなるはずなんですがね」<br />
「その頃には僕はもっと大きくなってるだろうな」<br />
「じゃあ、翠星石はもっと大きくなるですぅ」<br />
「それなら僕はその倍大きくなってやる!」<br /><br />
……まるで小学生だ。周りの目も「何あのバカップル……」という感情をこめているのが分かる。<br />
いや、実際はカップルでもなんでもないんですけどね。<br />
けど、ジュンもそれに気づいたのか、顔を紅くして咳払いを、一つ。<br /><br />
「や、やめとくですぅ」<br />
「そ……そうだな」<br /><br />
もう一度、私達は二人で並んで歩き出す。<br />
並んだ二つの肩は、ジュンの方が少しだけ高かった……ような気がした。<br />
なんの、翠星石も負けんですぅ!</p>
<p>「うぅ~……一体どうすればいいですかね……」<br /><br />
私は、自室のベッドの上でため息をついていた。<br />
理由は私の友人のチビ、桜田ジュンのことだ。<br />
つい2、3年前までは私のほうが身長が高かったのだが、この前ひょんなきっかけで背比べをしたところ、僅かだが抜かれてしまっていたのだ。<br /><br />
「このままじゃあ翠星石の方がちびじゃないですか!翠星石のプライドにかけても、そんな事は許さんのですぅ」<br /><br />
とは言っても、一体全体どうすればいいのか分からない。</p>
<p>あの嫌な数学のテストを解いている気分ですよ、全く。<br /><br />
「そうだ、蒼星石に相談しに行くですぅ!」<br /><br />
うっかり声が出てしまった。しかし、我ながらナイスアイデアですぅ!<br />
私は飛び起きて階段を駆け下りる。そしてコタツに入ってくつろいでいる蒼星石を見つけた。<br /><br />
「ちょっと、相談があるですぅ」<br />
「……翠星石が僕に相談?何かな?」<br /><br />
蒼星石は私の真剣な眼差しを受けて、少しだけ姿勢を良くしてから、私の方へと向き直った。<br /><br />
「それでですね、蒼星石、あの……背を伸ばすにはどうすればいいと思いますか?」<br /><br />
背の事についての悩みを一気に口に出す。蒼星石は私の喋る事を、黙ったまま目を閉じて聞いてくれた。<br />
そして、私が話し終わった後ちょっとだけ間を置いて、こう言ってくれた。<br /><br />
「チビで何が悪いの?」<br /><br />
蒼星石の言う通りだ。私は、つまらないプライドにこだわっていた事を思い知らされた。<br />
……身体中を覆っていたもやもやとした物が、全て溶け落ちた感覚がした。</p>
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<p>翌朝、朝練で私よりも家を早く出る蒼星石を見送ったあと、私はジュンと一緒にのんびりと歩いて学校へと向かう。<br />
道中、私はジュンにいつも先に話しかける。<br /><br />
「ちび」<br />
「僕はちびじゃない!」<br /><br />
いつも通りの応酬だ。<br /><br />
「大体、今は僕の方が大きいじゃないか」<br /><br />
胸をそらせてちょっとでも体を大きく見せようとするジュン。<br /><br />
「うぅ~……翠星石だってもうちっと大きくなるはずなんですがね」<br />
「その頃には僕はもっと大きくなってるだろうな」<br />
「じゃあ、翠星石はもっと大きくなるですぅ」<br />
「それなら僕はその倍大きくなってやる!」<br /><br />
……まるで小学生だ。周りの目も「何あのバカップル……」という感情をこめているのが分かる。<br />
いや、実際はカップルでもなんでもないんですけどね。<br />
けど、ジュンもそれに気づいたのか、顔を紅くして咳払いを、一つ。<br /><br />
「や、やめとくですぅ」<br />
「そ……そうだな」<br /><br />
もう一度、私達は二人で並んで歩き出す。<br />
並んだ二つの肩は、ジュンの方が少しだけ高かった……ような気がした。<br />
なんの、翠星石も負けんですぅ!</p>
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