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【☆円盤皇姫キらきしょ~★】」(2009/08/05 (水) 23:42:41) の最新版変更点

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<p>「夏休みの自由研究に、天体観測をしようと思うのだわ」<br />  <br /> キッカケは、いつもの如く。<br /> 僕のプライベートタイムに、いきなり押しかけてきたと思えば、真紅は出し抜けに言った。<br /> 目ヂカラMAXな蒼い瞳にチキンハートを貫かれた僕は、まさしくヘビに睨まれたカエル。<br />  <br /> 「2週間ほど我が家の山荘に籠もるつもりだから、手伝いなさい、ジュン」<br /> 「だが断る」<br />  <br /> 次の瞬間、必殺『巻き毛ウィップ』の餌食になってたともさ、ああ。<br /> こういう反応されるのは、長年の経験から、分かり切ってたんだけどね。<br /> 懲りないヤツと笑われても構わない。僕は、この刺激がたまらなく好きなんだ。<br />  <br /> 「殴ったね…………もっと殴ってくれ!」<br /> 「……はぁ。まったく、減らず口ばかり達者になるのね。躾が足りないようだわ」<br />  <br /> しれっと返してくる。なーにが躾だよ、まったく。<br />  <br /> こいつは昔っから、こうだ。事ある毎に、上から目線な保護者面をする。<br /> たまたま、家が隣同士で、たまたま、同い年で。<br /> それでもって、たまたま、示し合わせたわけでもないのに、高校まで同じになったりして。<br /> 諸々の偶然が重なっただけの、単なる腐れ縁だってのにさ。<br />  <br /> これはもう、保護者なんて生易しいものじゃなく、専制君主と言い表すべきじゃないか。<br /> 僕を一介の従者としてコキ使うことに、真紅はカケラほどの疑問も抱いてないだろう。<br /> そして最も厄介なことには、僕の中に、真紅に奉仕して喜んでいる別の僕がいることだ。<br />  <br /> 思えば……出会った瞬間から、僕らは主従関係にカチッと嵌まってたんだよな。<br /> もう10年も前のことになるのか――当時はまだ、僕は小学生だった。<br /><br /> ある日のこと、僕は近所の公園で、遊びの輪に加われずに泣いてる真紅を見かけた。<br /> それまで外国で暮らしてた真紅には、親友なんて、当然いるはずもない。<br /> 向こうっ気の強い真紅の性格も、子供社会においては災いしたんだと思う。<br />  <br /> 真紅は色褪せた木のベンチにぽつんと座り、犬のぬいぐるみを抱きしめていた。<br /> 僕は、子供ながらに居たたまれない気持ちになって――<br /> 一大決心の末に、話しかけたんだ。<br />  <br /> もうだいぶ記憶が曖昧だけど、あの時、僕は真紅を慰めるつもりが怒らせてしまった。<br /> 礼儀も知らない子供だったし、なにか彼女の気に障る物言いをしたんだろう。<br /> あれ以降だ……真紅が礼節について、口喧しく注意するようになったのは。<br />  <br />  <br /> 「返事は、ジュン?」<br />  <br /> とにもかくにも、こういった突然の申し出には、もう慣れていた。<br /> それに翻弄されてるくせに、いつも応諾してしまう僕にも、非があるんだろうけどね。<br />  <br /> 「しょうがないな。はいはい、わかったよ。手伝わさせていただきますよ」<br /> 「ふふ……いい子ね」<br />  <br /> だって、そうすれば真紅は、この胸を焦がすほどのチャーミングな笑顔をくれるから。<br />  <br />  <br />     ▼    <br />  <br />  <br /> その翌日、観測地点の山荘へと移動した。<br /> けっこうな奥地で、着いたときには、山の早い夕暮れが迫っていた。<br /><br /> 「もう……だめだ……。足が痛くて、これ以上は歩けないよ」<br /> 「だらしがないわね。日頃から、パソコンばかりしているからよ」<br /> 「いいだろ別に。僕の趣味にまで、いちいち口出しすんなって」<br />  <br /> 強く言い返したつもりが、疲労の極致で、声に勢いがない。<br /> 着替えなどの荷物の他に、小学生の頃に買ってもらった天体望遠鏡も担いできたからな。<br /> ばかりか、真紅の望遠鏡まで運ばされたんだ。これじゃあ疲れて当然だろう。<br />  <br /> しかし、救いもあった。<br /> 山荘は新築かと見紛うほど綺麗だし、涼しいし、快適に過ごせそうだったんだ。<br /> 食事に関しても、山荘を管理する老夫婦が準備してくれるという。<br /> バカンスを楽しむには、いい避暑地だ。それだけは間違いなかった。<br />  <br />  <br />  <br /> その晩は、機材の調整がてら、山荘の一室から目的もなく夜空を眺めた。<br /> 僕の望遠鏡も、久々の活躍の場に歓喜して、えらく張り切ってるようだ。<br /> ずっと放置してきた僕の罪悪感が、そう見せているだけかもしれないけどね。 <br />  <br /> 「素敵……。やっぱり、見え方が桁違いね」<br /><br /> 望遠鏡を覗き込んだまま、真紅がいつになく嬉しそうな声をあげた。<br /> 「都会では夜空が明るすぎて見えない星も、ここでは見えるのだわ」<br />  <br /> そんなこと、昨日今日に始まったことじゃない。<br /> 『光害』なんて言葉が造られるほど、日本の夜空は光で満たされてるんだ。<br /> 本気で満天の星空を観測しようと思ったら、こんな山奥に籠もるしかない。<br /> この時期、都会の河川敷なんかは、花火に興じるDQN連中で騒々しいしな。<br /><br /> 夢中で星を眺めながら、時折、歓声をあげる真紅。<br /> そんな彼女の後ろ姿を見つめながら、来てよかったなと、しみじみ思ってしまう。<br /> いつしか僕は、心の中で、誘ってくれた真紅に感謝していた。<br /> たとえ荷物持ちとしか見なされてなかったとしても、ね。<br />  <br /> だがしかし、事件は思いがけないところから起きる。<br />   <br /> 「えっ?」<br /> 真紅が、突如として息を呑んだ。「なんなの、あれは」<br />  <br /> いつも冷静沈着な真紅にしては、珍しい狼狽ぶりだ。<br /> そんなにも彼女を動揺させる事象とは、いったい……。<br />  <br /> 「どうしたんだ、真紅?」<br /> 「ジュン! ちょっと、こっちに来てちょうだい。早く」<br />  <br /> 言われるまま近づくと、今度は望遠鏡を指差して、唇を戦慄かせる。<br /> 「これを見て」<br />  <br /> 真紅と場所を入れ替わって、望遠鏡を覗く。<br /> だが、その先に広がっているのは、なんの変哲もない夏の星空だ。<br />  <br /> 「なんだってんだよ。普通の夜空じゃないか」<br /> 「よく見なさい! 位置は、月から僅かに下がった辺りよ」<br /> 「んん?」<br />  <br /> もう一度、真紅に言われた辺りを見ると……今度は、僕にも分かった。<br /> なにかが、オレンジ色に眩く輝いている。UFOという名詞が脳裏を掠めた。<br /><br /> 「恒星じゃないな。彗星の色でもなさそうだし」<br />  <br /> 独り言を並べながら、尚も観察を続けていると、新たな事実が判明した。<br /> そのオレンジ色の輝きは、移動していたんだ。それも、僕たちのいる方角へと。<br />  <br /> 「ひょっとして、隕石なのか?」<br /> 「隕石……? 嫌だわ。この辺に落ちたりしないかしら」<br /> 「あれだけ激しく輝いてるってことは、地上に達する前に、燃え尽きるだろ」<br />  <br /> それなら安心と、ぎこちない笑顔を見合わせる僕たちだったが……<br /> 次の瞬間、真紅はまたもや、端整な顔を強ばらせていた。<br />  <br /> どうして、そんな顔をする?<br /> 彼女の凝視する先へと振り返って、僕も理解した。<br /> そのオレンジ色の輝きが、ぐんぐん大きさを増していたからだ。<br /> すごいスピードで飛んでくるのが、肉眼でも確認できた。<br />  <br /> 「ジ、ジュンっ?!」<br /> 「真紅っ!」<br />  <br /> 逃げる余裕なんてなかった。咄嗟に真紅を庇うべく、抱きしめただけで。<br /> 僕と真紅の足は根が張ったように動かず、身を寄せ合って竦み上がるばかりだった。<br />  <br />  <br /> そして――<br /><br /> 部屋が眩いオレンジ色に染まり、目を開けていられなくなった。<br /> 死ぬんだと思ったさ、マジで。この状況じゃあ、助かるわけがないって。<br /><br /> 「……ジュン」<br />  <br /> だから、僕の名前を呼ぶ真紅の声が近くに聞こえたときには、奇妙な気がした。<br /> 天国とやらに、一瞬で辿り着いたのかと思ったんだけど――やっぱり違った。<br />  <br /> 「いつまで抱きついてるのよ! 離しなさい!」<br />  <br /> 突き飛ばされるが早いか、頬をひっぱたかれた。それも、気持ちいいほど強烈に。<br /> それで、僕も真紅も我に返ったけれど……<br /> 二人が冷静でいられたのは、これまた極めて短い間だけだった。<br />  <br />  <br /> 「な、な、な…………なんじゃあ、こりゃあぁ?!」<br /> 「嘘……でしょう? なんなの、いったい……」<br /> 「おい、真紅! どうなってるんだよ! なんなんだよ、これ!」<br /> 「私に訊いたって、判るわけないでしょう!」<br />  <br /> がなりあう僕たちの見つめる先には、オレンジ色に明滅するコピー機大の塊が鎮座していた。<br /> あれだけ燃えてたんだから、まだ少し燻っている……かと思いきや、放射熱が感じられない。<br /> 奇妙なことに、床のカーペットも、まったく焦げていなかった。<br />  <br /> だが、驚愕の事態はまだ続く。<br /> なんと、そのオレンジ色の塊が、パカッと割れて大輪の花を咲かせたんだ。<br /> お釈迦さまが蓮の花に乗ってる絵を想像してくれたらいい。あんな感じだった。<br /> しかも中の人が、神々しいまでに純白の美少女だったから、二度……いや、三度ビックリ。<br />  <br /> 「ウソだろ……まさか、本物の宇宙人? 未知との遭遇かよ」<br /> 「なにを言うの、ジュン。UFOなんてプラズマよ! 有り得ないのだわ」<br /><br /> 動揺を隠せない僕らを余所に、純白の美少女は静かに瞼を開いた。<br /> そして、やおら――<br />  <br /> 「qあwせdrftgyふじこlp;@:」<br /> 「日本語でおk」<br /> 「日本語でおkなのだわ」<br />  <br /> 口々に言うと、謎の少女は「おや?」という風に首を傾げた。<br /> すかさず、手元のリモコンみたいな物をピポパと操作して、もう一度……。<br />  <br /> 「……あ、あー、テステス。……ごきげんよう、地球のみなさん」<br /> 「おおっ、喋った?!」<br /> 「同時通訳機ですって?!」<br /> 「その反応、どうやら言葉は通じているようですわね。よかった」<br />  <br /> こいつ、ただ者じゃない。見かけは人間だけど、マジで宇宙人なのは、確定的に明らかだ。<br /> 衝撃のあまり呆気にとられている僕と真紅に、少女は礼儀正しくお辞儀をした。<br />  <br /> 「はじめまして。私は雪華綺晶。遙々、月から旅して参りました」<br /> 「……はぃ? 僕の聞き間違いかな。どこから来たって?」<br /> 「月からですわ。私は【月花美人】――かぐや姫の遠縁の子孫なのです」<br /> 「百歩譲って、貴女のヨタ話を信じるとして……なんの目的で来たというの?」<br />  <br /> 謎の少女を見据えながら、真紅が怯えを滲ませた声で訊ねる。<br /> すると、少女は我が意を得たとばかりに、婉然と微笑んだ。<br />  <br /> 「実を申しますと、私……旦那様を迎えに参りましたのよ」<br /><br /> な、なんだってー?! 旦那って、つまり伴侶……夫のことだよな、常識的に考えて。<br /><br /> いま、この場にいる男といったら……僕しかいないんだけど。<br /> ――って、マジか?! こんな美少女に結婚を迫られるなんて、漫画でなきゃ有り得ないだろ。<br /> いやはや~、こりゃまいったなぁ。どうする? どうするよ、桜田ジュン!<br /> 苦悩のあまり悶絶失神しそうになっている僕の前に、少女が進み出てきた。<br />  <br /> 「さあ、旦那様。私と共に、月の御殿に参りましょう。<br />  そして二人、身も心も、とろ~りとろとろ濃密な蜜月に酔いしれるのです」<br />  <br /> 歌うような囁きと共に伸ばされた少女の細腕は、僕に―― <br /> ――は掠りもしないで、隣に佇んでいた真紅を捕らえていた。<br /> 当然、真紅は双眸をパチクリさせて、あんぐりと口を開きっぱなしだ。<br />  <br /> 「お、お待ちなさい! なにをトチ狂っているの! 私は女の子よ!」<br /> 「ふふふ……なにを仰るウサギさん。性別など瑣末なこと。<br />  私にとって、旦那様は貴女だけですのよ」<br /> 「無茶苦茶なのだわ! ジュン、なんとかしなさい!」<br />  <br /> と、言われてもね。僕にどうしろと? うん……どうすりゃいいんだろうね。<br /> 人智を超越した、笑うしかない展開に、僕の思考も閉鎖されそうだよ。<br />  <br /> 「さあさあさあ! 今宵はもう遅いですから、一緒に床入りしましょう旦那様っ!」<br /> 「ちょ、や、やめ! ジュン、助けなさあああああああああぁぁぁ――」<br />   <br /> 真紅は純白の美少女に引きずられて、隣の寝室に吸い込まれてしまった。<br /> すっかり置いてきぼりの僕は、風速1000メートルの暴風圏に放り込まれた心境で――<br /> ……敢えて言おう。なんかもうワケワカメ。<br />  <br />  <br />  【☆円盤皇姫キらきしょ~★】 第2話に続くよっ!<br /><br /><br />   な / ______<br /> ぁ 訳/        ̄ヽ<br /> ぁな /          \<br /> ぁ い レ/ ┴┴┴┴┴| \<br /> ぁ じ /   ノ   ヽ |  ヽ<br /> ぁ ゃ&gt; ―( 。)-( 。)-|  |<br /> んぁ &gt;   ⌒  ハ⌒ |  / <br /> !ぁ>  __ノ_( U )ヽ .|/<br />   ん  |ヽエエエェフ | |<br />   \  | ヽ ヽ  | | |<br />  √\  ヽ ヽエェェイ|/<br />     \  `ー― /ヽ<br /><br /> 【月花美人】&【瞳に映る夏の夜空】<br /> 本当は前スレに投下しそびれたネタだけど、折角なので使い回したでござる。</p>

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