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「翠星石とペプシソ」(2009/07/02 (木) 12:13:40) の最新版変更点
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<p>「どうするですか、コレ……」<br />
翠星石は机の上に置かれた、ペットボトル飲料を見つめながら、小さく呟いた。<br /><br />
怪しげな蛍光グリーン。<br />
鼻を突く葉緑素の香り。<br />
それを一層際立たせる、不気味な炭酸。<br /><br />
現在、絶賛(?)販売中の、某・しそ味ドリンクだった。<br /><br /><br />
始まりは、コンビニにて。<br /><br />
「おお!?この緑色からは何とも言えん迫力を感じるですよ!!」<br /><br />
好きな色は緑色。イメージカラーも緑色な彼女は、てっきりメロンソーダだと思って手を伸ばした。<br />
そしてお会計を終えて、早速開けてみて一口。<br />
時が、凍りついた。<br /><br />
甘くてシュワシュワなメロンソーダだと、気持ちは既に準備を終えていた。<br />
なのに口の中に広がるのは、しそ。紫蘇。SHISO。<br />
予想外の方向からの奇襲を受けた翠星石の味覚は、計り知れないダメージを受ける事となった。<br /><br />
そのままガッカリと肩を落とし、背中からは哀愁を滲ませながら、翠星石はてくてく歩き……<br />
そして、冒頭に至る。</p>
<p>「捨てるのはもったいないですし……かといって……」<br />
一口飲んだだけのペットボトルをジト目で眺め、一人ぼやく。<br /><br />
そして、はぁ、とため息が漏れそうになった時だった。<br /><br />
「たーだいまーかしらっ!!」<br />
玄関の方から、やけに威勢の良い声が聞こえてきた。<br /><br />
翠星石の脳裏に、名案が浮かぶ。<br />
同時に、抑えても抑えきれない笑みが、口の端を持ち上げる。<br />
ことイタズラにかけては、彼女の右に出る者は居なかった。<br /><br />
早速、しそ飲料をコップに注ぎ、何食わぬ顔をして待ち構える。<br />
そして……<br /><br />
「翠星石、もう帰ってたのかしら」<br />
リビングの扉を開けてやって来た獲物に<br />
「おおチビカナ、おかえりですぅ。いやー、それにしても今日は暑いですねぇ。<br />
本当に暑いですぅ。なので、特別にメロンソーダを用意してやったですよ」<br />
とっても優しい笑顔を向けながら『しそ飲料』を差し出した。<br /><br />
「……何だか優しい翠星石はとっても危険な予感がするかしら……」<br />
金糸雀はあからさまに顔を引き攣らせながら、蛍光グリーンの液体を見つめる。<br /><br />
「チビカナにも、翠星石の『危険な大人の魅力』が理解できるですか」<br />
何気なく誤魔化しながら、翠星石は金糸雀にコップを手渡そうとして……<br />
「カナは全てお見通しかしらっ!ここは……逃げるかしらー!」<br />
見事に失敗した。<br />
</p>
<p>「……チッ!翠星石の作戦を見破るとは、チビのくせに侮れんですぅ!」<br /><br />
ギッと金糸雀が逃げ出した方向を睨みつけるも、何の意味もなく。<br />
翠星石の手元には、なみなみとコップに注がれた『しそ飲料』だけが残されていた。<br /><br />
コップに入れてあるので、こうしている間にも、どんどん炭酸は空に消えてしまう。<br />
そうなれば……後に残るのは、生ぬるぅい『しそ飲料』<br />
正直、これはいろんな意味でいただけない。<br /><br />
そうなる前に、責任を取って自分が飲むべきか。<br />
「……南無さん!ですぅ!!」<br />
覚悟を決めて、翠星石がコップを持ち上げた時。<br /><br />
救いの天使がやって来た。<br /><br />
「はぁ……ホント、暑いわねぇ……」<br />
気だるげな言葉を口にしながらリビングへと来た水銀燈。<br /><br />
翠星石はパァァ!と表情を輝かせ、ランランと輝く瞳を水銀燈へと向けた。<br /><br />
そんな大げさなリアクションだと、気が付くなという方が無理な話。<br />
当然、水銀燈も蛍光グリーンの飲み物をもって自分を見つめる翠星石に気が付いた。<br /><br />
『イタズラにかけては翠星石。嫌がらせでは水銀燈でしょうね』とは、真紅の言葉。<br /><br />
水銀燈はニヤリと口の端を持ち上げると、それこそ疾風のように翠星石の手からコップを奪い取った。<br />
「ふふふ……貰っちゃった、貰っちゃった。翠星石のメロンソーダ、貰っちゃった」<br />
さらには嬉しそうに表情をほころばせてまでいる。<br />
「かえせー、かえしやがれですー」<br />
思いっきり棒読みで、翠星石はとりあえずそう言っておいた。</p>
<p>そんな翠星石の反応を見て、気を良くした水銀燈。<br />
演技だとは夢にも思ってない様子。<br /><br />
「うふふふ」と微笑んでから、蛍光グリーンの飲み物を、こくこくと飲み始めた。<br />
(ひーっひっひ!まんまと引っかかりやがったですぅ!)<br />
と翠星石が思っているなんて、気が付くわけも無く。<br /><br />
そして、コップの中身を半分ほど飲んでから。<br />
「……あらぁ?これって……不思議な味ねぇ」<br />
水銀燈はキョトンとした表情を浮べた。<br /><br />
もっとキョトンとしてたのは、翠星石。<br />
「な…何とも無いですか?」<br />
恐る恐るといった感じで、感想を聞いてみる。<br /><br />
「……何よ。変わった味だけど、普通に美味しいわよぉ?」<br />
水銀燈はそう答え、それから……<br />
「前にめぐと行った、ゲロみたいな料理出してくるお店とは比べ物にならないわねぇ」<br />
とか言っていた。<br /><br />
(ああ……水銀燈の味覚は、悪友のせいですっかり破壊されちまったですぅ……)<br />
翠星石にそんな風に思われてるとはつゆ知らず。<br /><br />
「ホント、アレはめぐの言う通りサイアクな味だったわねぇ……<br />
一口でいいから、なんて言われたから食べてみたけど……アレは酷かったわぁ」<br /><br />
水銀燈はめぐと行った料理屋の事を思い出していた。<br />
ごく自然な感じで、蛍光グリーンが素敵な『しそ味ドリンク』を飲みながら。</p>
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