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複数短編130」(2008/12/24 (水) 00:49:26) の最新版変更点

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<p align="left">雛「がったん、ごっとん♪」<br /> 薔「……がったん、ごっとん」<br /> 雛「電車さん、がったんごっとんなのー」<br /> 薔「……ね」<br /> ――まもなく○○、○○――<br /> 雛「あれ? 薔薇水晶、薔薇水晶! あれ、トモエとジュンなのー」<br /> 薔「……ホントだ……まったく仲良さそうにしちゃってブツブツ」<br /> 巴「あら、雛苺に薔薇水晶じゃない」<br /> ジ「げっ、なんでおまえらが……」<br /> 雛「お買い物の帰りなのー! トモエとジュンは? 」<br /> 巴「あっ、そのえっと……」<br /> ジ「買い物だよ、買い物!! 」<br /> 薔「……怪しい」<br /> ――まもなく発車します。閉まるドアにご注意ください――<br /> 雛「がったん、ごっとん♪がったん、ごっとん!」<br /> 巴「がったん、ごっとん……」<br /> 薔「……がったん、ごっとん……何時の間にジュンに近づいてブツブツ」<br /> ジ「……全く、お前ら子供じゃないんだから……けどこの音ってなんか眠気を誘う音なんだよなぁ。がったん、ごっとんと」<br /><br /> 雛「がったん、ごっとん、がったん、ごっとん! なのー♪」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 蒼「うーん、お昼どうしようかな…」<br /> 翠『ジュンー!オメーまた浮気したですねー!?』<br /> ジ『ま、待ってくれ!アイツには旨いパスタが食べられるって誘われただけで…!』<br /> 蒼「あー、パスタとかいいなぁ」<br /> 翠『じゃあ前の弁当はなんですかぁ!翠星石だって…翠星石だってまだ作ってやってないというですのに!』<br /> ジ『あ、あれは僕がエビチリが好きって言ったら作ってきてくれるって…』<br /> 蒼「エビチリ…そう言えば最近食べてないなぁ。夕食にしようかな?」<br /> 翠『じゃあ昨日の夜はどこで食ってきたか言ってみろですぅ!』<br /> ジ『普通の居酒屋だよ!ちょっとお酒飲んだけどそれだけだって!』<br /> 蒼「あ、ほっけとか良いかも。ご飯もまだあったし…そうしようかな」<br /> 翠『ほほう…じゃあ服についてた口紅はそういう事だと言いたいんですね?』<br /> ジ『は!?何でだって服になんか…あ』<br /> 翠『死ねぇええええ!!』<br /> ジ『いぎゃあー!?』<br /> バキ!ドカ!ぐちゃ!ズカン!<br /> 蒼「あれ?急にユッケが食べたくなったなぁ…何でだろ?」</p> <hr /><p><br /><br /><br /><br /> 今日知り合いの娘(姉妹)が仕事場に来てて大人しくするかとようつべでローゼン見せた時の反応<br /> 真紅<br /> 姉『(*´∀`)♪かわいい』<br /> 妹『(*´∀`)♪キャッキャッ』<br /> 雛苺<br /> 姉『(*´∀`)♪これかわいいの♪』<br /> 妹『(*´∀`)♪ピンク!』<br /> 水銀灯<br /> 姉『( ・∀・)/これアタシ!』<br /> 妹『( ・∀・)/アタシも!』<br /> 翠星石<br /> 姉『( ・∀・)/これもアタシがいい』<br /> 妹『(・ω・)ピンクがいい』<br /> 蒼星石<br /> 姉『(・д・ = ・д・)(水銀灯を探してる)』<br /> 妹『(・д・ = ・д・)(雛苺を探しながら)ピンクがいい』<br /> 薔薇水晶<br /> 姉『( ・∀・)/これもいい!』<br /> 妹『(*´∀`)♪ピンク!』<br /> 雪華結晶<br /> 姉『(・ω・)さっきのや』<br /> 妹『(・ω・)うん』<br /> 金糸雀<br /> 姉『( ´・ω・`)…』<br /> 妹『( ´・ω・`)ちがうのみたい』</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 槐「ばらしーばらしー元気かい?」<br /> ばらしー「(゚∀。)」<br /> 槐「今日のご飯はシュウマイ丼だよ」<br /> ばらしー「(゚∀。)」<br /> 槐「よし! 一緒にお風呂だ!!」<br /> ばらしー「(゚∀。)」<br /><br /><br /> 薔「私の人形作って話しかけるの止めてください、お父様。」<br /> JUM「だから家出されるんですよ……」<br /> ばらしー「(゚∀。)プギャー」<br /> 槐「……」 </p> <hr /><p align="left"><br /><br /> 巴「どうしよう…気がついたらこんなものを作っちゃった…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「凄い…我ながらに完璧…でもどうしよう…人形なのにドキドキしてきた…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「ひっくり返してみたりして」<br /> JUM「(。A゚)」<br /> 巴「…はいてるだ…やっぱり…私ちゃんとブリーフ作ったもんね…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「…もう…いいよね。私…頑張ったよね…もう…ゴールしていいよね…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「桜田君と…初めてのチュー…!」ハアハアハアハア<br /> JUM「(゚∀。)だからお前はダメなのだ」<br /> 巴「!!!???」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 冬がやってきた。しかも毎年おなじみ将軍さまだ。たまには冬頭とか冬大臣とか、そんな親類達でも連れてくればいいのに、厄介な冬将軍だ。<br /> 既に山々には白銀如し雪が降り落ち、山肌を白く染め上げている。<br /> 私はぬくぬくと暖炉の前でそんなことを考えていたわけなのだが。<br /> 「すっかり寒くなっちゃって困るわぁ。ここ、あんまり暖房器具無いから」<br /> 水銀燈が私に温かなココアを差し出してくれる。<br /> 確かにここの教会にはエアコンなんては完備してはいない。礼拝堂にある小さなストーブと、ここの暖炉だけが唯一の安楽所だ。<br /> 「ありがとうございます、お姉様。そういえば今年の年末はどうなさるんですか」<br /> 「そうねぇ……去年はここでクリスマスの催し物をやっただけだったわぁ。後はめぐと温泉くらいかしら」<br /> 「湯治ですか? 」<br /> 「という名の温泉旅行ねぇ、実際」<br /> クスリ、と水銀燈が笑う。成程、やはり年末年始は温泉に限る。私もまとまった資金も出来たことだし、今年は皆と温泉スキー旅行でも行くとしよう。<br /> 「そういえば、去年のクリスマスパーティの写真があるんだけど、笑えるわよぉ」<br /> どこから持ってきたのか水銀燈が私に写真を一枚手渡す。<br /> ……ああ。そんなこともあった。<br /> 写真にはキラキラと光る電イルミネーションが見事に絡まり、目に大粒の涙を浮かべている真紅が写されていた。<br /> 「……輝く乙女、といったところでしょうか」<br /> あの後、確かくんくんの人形が入ったクリスマスプレゼントを貰うまで彼女はご機嫌斜めだった。<br /> 「今年はどんなクリスマスパーティになりますかね」<br /> 「そうねぇ……全ては神次第ねぇ」<br /> 確かに、と私は頷いた。今年はピチカートやベリーベルもいる。去年より盛大なクリスマスパーティになること間違いないだろう。<br /> クリスマスにスキー旅行……まだまだ今年は終わりそうには無いらしい。<br /><br /><br /><br /><br /> 「山は白銀と輝く乙女関係ないじゃない、雪華綺晶ぅ」<br /> 「いや、そのアハハ……」<br /><br /> 『山は白銀』『輝く乙女』</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 「ふ~ふんふふん、ふふふふん~♪」<br /> 「あっ、おねーちゃん珍しいね、PSなんか取り出して」<br /> 「いや、さっき部屋を掃除していたらこんな懐かしいゲームが出てきて」<br /> 「あっ、ホントだ、おねーちゃん、一時期やりこんでたもんね」<br /> 「そうそう。特にこの絵と音楽が好きで好きで」<br /> 「あっ、えーとなんだっけ? ためるためるためるけさ切り? 」<br /> 「そうそう、それでベアクラッシュが出て」<br /> 「切る払うけさ切り切るで」<br /> 「マルチウェイですわ♪ あれが出たときは嬉しくて嬉しくて」<br /> 「夜中叫んでたよね、確か」<br /> 「そ、そうですか……全く記憶にございませんわ」<br /> 「嘘ばっかり。私はゲームあんまり得意じゃないけど、この音楽は好きだったなぁ。ある原曲のアレンジが多くていいよね」<br /> 「さすがばらしーちゃん。私もbattle関連の曲が好きですわぁ♪ 今でもよくお風呂場で歌ってます」<br /> 「あ、あはは(あれはこの曲だったのね……まったく分からなかった) あれ、今はどの場面? 」<br /> 「ソフィー様が死ぬ直前」<br /> 「そ、そんな場面であんな鼻歌を……」<br /> 「いや、ギュス様のシナリオは結構深いからなんどもやり直してるんだけどね。始めの戦争の後とか、ソフィー様の台詞とか……あとはフィリィーーープ!!!」<br /> 「暗殺者ヨハンとか、将軍の思い出とか、サブキャラなのに印象が強い人がいるのもいいところだよね」<br /> 「ネーベルスタンとかシルマール先生とかね」<br /> 「ウィル編にもいるキャラとかでいえばサルゴンとか」<br /> 「あー、あの空に虹をだっけ? いいタイトルだよね」<br /> 「サルゴンのテーマと呼ばれている戦闘曲も好きで好きで。実際はウィル編のほうが色んな戦闘曲があっていいんだけど」<br /> 「だけど? 」<br /> 「ボスが限りなく強い、強い」<br /> 「それがこのげームの魅力でしょ? 」<br /> 「まぁ、そうなんだけど……じゃあまたプレーに戻りますか」<br /> 「……あんまり夜更かししないでね」<br /> 「はいーですわ……懸命なゲーマーさんは何のゲームかすぐに分かりましたよね?? 分からない? それならばサルゴンあたりでググってください。多分見つかりますから保守」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> ジ「うおぉ!?真紅!これはどういう事だ!!」<br /> 真「何よ朝から騒々しい」<br /> ジ「炊飯器カラじゃないか~!」<br /> 真「あら?昨日お米研いでスイッチ入れたハズ…だと思ったのだけど」<br /> ジ「あーもう…月曜日はご飯じゃないと力出ないのに…」<br /> 真「パンがあるわね」<br /> ジ「知ってるよ!パンがあること知ってるよ!焼いてこいよ!」<br /> 真「いやよ、面倒くさい」<br /> ジ「………」<br /> 雛「お困りのようねジュン」<br /> ジ「うん。僕は今どの角度で真紅の頭をひっぱたこうか悩んでいる」<br /> 雛「レデイにそんな事しちゃダメなのよ。その代わりほら、雛の縦巻きロールをお食べ?」<br /> ジ「性的な意味でですね、わかります。おいおい朝からハッスルしちゃうじゃないか僕自重…できるかイヤッホー!!レッツ・イートゥ!!」<br /><br /><br /> ジ「クロワッサン…だと…」サクサク</p> <p> </p> <hr /><p><br /> ジ「携帯電話を買った」<br /> 水「あらぁ、電話番号教えなさいよぉ。(必要なの?携帯)」<br /> 金「最新機種羨ましいかしら。(何に使うのかしら)」<br /> 翠「せっかくだから一緒にアドレス考えてやるですよ。(自宅に電話あるですよね?)」<br /> 蒼「僕のメールアドレス登録してよ。(パソコンのメールで十分だったじゃないか)」<br /> 紅「携帯電話は便利だものね(コメントに困るのだわ)」<br /> 雛「雛も欲しいのー。(学校もバイトも行かないのに)」<br /> 雪「引きこもりのくせになまいきです。(デザインが素晴らしいですね)」<br /> 薔「携帯からのエロサイト閲覧はお勧めしないよ(眠いなー)」<br /><br /> ジ「最後の方おかしいぞ」</p> <p> </p> <hr /><p align="left"><br /> 雛「ねぇ真紅、教えてなの。今日ね、学校で男の子たちが携帯を見ながら『わっふるわっふる』って言ってたの。<br /> だからヒナ、『美味しいワッフルでもあるの?』って言ったら、みんな急に顔を赤くして静かになっちゃったのよ。<br /> なんか変だと思わない?」<br /> 紅「確かにちょっと変ね…。<br /> 多分、その子たちはワッフルについての正しい知識がなかったから恥ずかしくなってしまったのではないかしら?<br /> もし貴女が望むのであれば、この真紅がワッフルと紅茶の美味しい関係について詳しく教えてあげるけれど」<br /> 雛「…だが、お断りしますなの」スタスタスタ<br /><br /> 雛「ねぇ翠星石、教えてなの。今日ね、学校で(ry」<br /> 翠「うーん、何ですかね?さすがの翠星石もお菓子のワッフル以外は思い当たらんですけど…。<br /> ――はっ!そうです、分かったですよ、チビチビ!!“わっふるわっふる”は掛け声なのです。<br /> ほら、何年か前に“ハッスルハッスル”ってのが流行ったじゃないですか。きっと、それの仲間みたいなものなのですぅ」<br /> 雛「今時、ハッスルって…」<br /><br /> 翠「わっふるわっふるって、なんかテンションが上がるですね!これは元気が出る魔法の言葉かもしれないですよ。<br /> ほれ、チビチビも翠星石と一緒にわっふるわっふるしろですぅ!」<br /> 雛「お 断 り し ま す な の」スタスタスタ<br /><br /> 雛「ねぇトモエ、教えてなの。今日ね、(ry」<br /> 巴「そんな…私の口からは言えないわ」<br /> 雛「うゆ…。どうしてトモエまで顔が真っ赤なの?ヒナに何か隠してるのなの?!わっふるわっふるって、何…?」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> J「今年のクリスマスは姉ちゃんが友だちとパーティで出かけちゃうから、<br /> 家には僕だけになるんだよな。はぁ…独りが辛い……」<br /> 紅「お困りのようね」<br /> J「べ、別に僕は困ってなんかいないぞ!」<br /> 紅「クリスマスに一緒に過ごす相手もいないなんて、淋しい人ね。<br /> でも美味しいケーキと紅茶を用意してくれるのなら、遊びに行ってあげてもよくってよ」<br /> J「はぁ?」<br /> 翠「ちょーっと待ったですぅ!せっかくのクリスマスパーティがケーキだけでは淋しいですよ。<br /> この翠星石が美味しい料理の数々を特別に作ってやるですぅ!!」<br /> J「お前もかよ…」<br /> 蒼「パーティにはやっぱり余興が必要じゃないかな、JUMくん。<br /> 幸い僕はシルクハットを使った手品ができるから、参加しても問題ないよね」<br /> J「蒼星石まで…」<br /> 雛「ヒナもヒナもー!」<br /> J「…あ~もう、分かったよ。来たい奴は来ればいいだろ!」<br /><br /> ――JUMのクリスマスは独りから一転して、賑やかなものになりそうです。<br /><br /><br /> 【独りが】【辛い】</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 槐「と…ところで薔薇水晶……クリスマスは…その…親子で……<br /> え?無理?……ああ、そうか……そうだな………いや、僕は気にしなくって良いんだ………<br /> せ…折角なんだし、皆で楽しんで来るといいよ……… 」<br /><br /><br /> 【独りが】【辛い】orz<br /><br /><br /><br /><br /><br /> みっちゃん「あ…あは……あはは!大丈夫!カナは何も気にしなくていいから!<br /> そ…そりゃあもう!会社の男性陣から声かけられまくって、<br /> 『あーあ、今年はカナと過ごせないかなー』って思ってたくらいなんだから!<br /> カナは何も気にせず楽しんできて!わ…私も今からデ…デートのよよよ予定を……… 」<br /><br /><br /> 【独りが】【辛い】orz</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> 翠星石「ヒーッヒッヒ!誰も見てない隙に、ケーキに一つだけ唐辛子を入れてやったですぅ! 」<br /><br /><br /> カラ<br /> 【一人が】【辛い】</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 翠「ぎょへー!!」<br /><br /> 雛「ねえ真紅、なんで甘いケーキなのに翠星石は叫んでるの?」<br /> 真「さあ?虫歯でも出来たんじゃなくって?」<br /><br /> 蒼(自業自得…)<br /> ジ「ん?なんか言ったか?」<br /> 蒼「別に?美味しいねこのケーキ♪」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> ジ「なあ、気になった事があるんだが」<br /> 真「何かしら」<br /> ジ「薔薇水晶の好物はシュウマイだろ?」<br /> 真「周知の事ね」<br /> ジ「でもあいつはコンビニのおにぎり2つでお腹いっぱいとか言う奴だ」<br /> 真「小食だものね」<br /> ジ「で、ここで雪華綺晶だよ。あの食物ブラックホールがいる家で、あいつはシュウマイを楽しむヒマなんかあるのだろうか?買い置きをなんかしても食べきる前に姉にいただかれちゃわないか?」<br /> 真「正直どうでもいいけれど…本人に聞いてみればいいじゃない」<br /> ジ「あ、そか。む、出たな白き黒穴」<br /> 雪「随分と珍妙なあだ名ですねジュン様」<br /> ジ「なあキラキーよ。お前は薔薇水晶のシュウマイをちゃんと食べずにいられてるのか?」<br /> 雪「シュ…シュウマ、イ?はて?それは…食べ物ですか?」<br /> ジ「は?うん…そうだけど」<br /> 雪「そうですか。では機会があれば食してみたいものです。あらいけません、もうこんな時間。お二方、食べ放題チャレンジが終わってしまうのでこれにて御免!」<br /> 真「…行ってしまったのだわ」<br /> ジ「うーん…なんか違和感があったような」<br /> 真「そうね。まるでシュウマイを知らないような…」<br /><br /> 薔「睡眠催眠による一時的記憶障害」<br /> ジ「うおっ!!」<br /> 薔「今のお姉ちゃんには薬と寝た後の治療によって『シュウマイ』という単語が記憶に残らないようにしてあるの…だから家にシュウマイの箱があっても食べ物だと認識出来ないし、食べ物だとわかっても直ぐに忘れてしまう…」<br /> ジ「………」<br /> ジ「きっともう今の会話で出た『シュウマイ』の単語は忘れているよ。だからジュンが何を言ったのか、自分が何を口に出したのかも覚えていない思い出せない…あ、私買い物の途中だったんだ。またね二人とも」<br /> 真「…行ってしまったわね」<br /> ジ「…だな」<br /> 真「どう?二人の話を聞いて何か得るものはあって?」<br /> ジ「うむ。自分の尺度であいつらを計ったのが間違いだった」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> 薔薇と雪の家にて<br /><br /> 雪「もうすぐ今年も終わりを迎えるわ」<br /> 薔「…早かったね…(カキカキ」<br /> 雪「…可哀想な人々…時間は遥か昔から悠久に流れているのに…終焉と権輿に囚われているなんて…」<br /> 薔「…お姉様…?(カキカキ」<br /> 雪「歳が明けたからといって何も変わることなどないのに…人も街も心も…」<br /> 薔「…変わるのは…表層…だけ(カキカキ」<br /> 雪「なのに人は虚妄の変転に狂わされ…安易な希望を…無謀なイデアを抱く…」<br /> 薔「…理想…?(カキカキ」<br /> 雪「そう…貴女のことよばらしーちゃん」<br /> 薔「え?」<br /> 雪「その紙に書いている来年の目標、3年前からずっと変わってないもの」<br /> 薔「´・ω・`」<br /><br /><br /> 今年もあと三週間です</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> 雛「うい~疲れたの~」<br /> 紅「ちょっと雛苺、こんな夜遅くまでどこ言ってたの!?」<br /> 雛「この時期は忘年会が多くて困るの~」<br /> 紅「忘年会・・・?雛苺あなたお酒飲める歳じゃないでしょ!?」<br /> 雛「違うの真紅~。雛はお酒飲んでぐでんぐでんになってるおじさんに甘えてお小遣いもらってるだけなの~」<br /> 紅「な、なんて恐ろしい子・・・」<br /><br /> ほしゅ</p> <hr width="100%" size="2" /><p>ローゼンメイデンが女王だったらという妄想を歴史書風に書くSS<br /> 架空戦記系のSSにありがちな中二妄想が多いので注意。<br /> 舞台は架空のヨーロッパっぽい地域<br /><br /> 歴史書メイデン 1/8<br /> 聖帝・水銀燈(不明〜BS0/生誕地不明)<br /><br /> 成人とともに評議会24名とその護衛をわずか3人の配下だけで殺害し、都市国家を簒奪した彼女は瞬く間に他都市への侵攻を開始し、天才的な軍略を持って3年で自らの名前を冠した帝国を打ち立てた。<br /> この帝国こそが当文明域史上初の国家であった。<br /> 皇帝の野心は一つの文明を手中に収める程度では満足できず、東方蛮域への「大東征」を開始する。<br /> 生まれたての国家、その誕生の熱狂をそのまま外へと振り向けたのである。<br /> 「大東征」は彼女が亡くなるまで継続され、帝国の得た版土は現代に至るも世界最大の座を守っている。<br /><br /> 彼女は自らを侮辱する者の目を潰し牛裂きにする暴帝であったが、蛮帝ではなかった。<br /> 彼女は智を尊び、大図書館を作り、哲学者との議論を好んだ。<br /> あらゆる文化は大パトロン得た事を契機とし、現代にも通じる芸術が次々と生み出され、鉱業・農業は智の集積と勅令による強引な人口移動によりこの時代に大きく発展した。さらに初の統一銀貨と大戦争がその流通を支えたため、『帝国の人間は東西誰もが同じパンを食べる』と讃えられた。<br /><br /> 次々に革新的な行いを打ち出す彼女の発明は当然のように宗教にも及んだ。<br /> ——史上初の一神教の発明である。<br /> この世に全知全能にして唯一絶対の神は聖帝・水銀燈のみと位置づけたその宗教は広大な帝国の全土に発布され、帝国臣民は誰もがこの教えへの帰依と服従を要求された。そしてあらゆる異教および異教徒は、水銀燈の熱狂的な信者達の手で現世の業火に投げ込まれたのである。<br /> こうして全ての分野において神の如き力を示した水銀燈と彼女の帝国は、彼女の死とともに1月と保たずに滅亡した。<br /> 史上初の皇帝が最後に残した物は史上最大の権力と権威の空白であったのだ。<br /><br /><br /> モデル『アレキサンダー大王/アメンホテプ』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 2/8<br /> 妙王・金糸雀(AS162〜222/大陸中央部)<br /><br /> 帝国の崩壊後に起こった大規模な権力闘争は結局あらゆる地方の財貨を吐き出させ、街道等のインフラを衰退させた後、疫病の流行と飢饉により一人の勝者もなしに終結した。<br /> それからというもの大陸中央部はなまじ豊かな生産力がある分、豪族の小競り合いがただ延々と繰り返される時代が長く続いた。<br /> そんな行き詰まった地域史にふらっと冗談のように登場したのが金糸雀である。<br /> 彼女が歴史に観測されるのは対立し合う17の豪族全てに突然送られてきた即位宣言書である。<br /> 『私金糸雀は草国民草大多数の要望により、ここに草国国王になった事を自ら宣言し布告する。』<br /> と同時に当時最大の兵力をぶつけられる場所であった荒れ地を直轄地とする事が宣言された。<br /> 最初豪族達はだれもが他の豪族の奸計を疑った。その後一笑に付そうとした後、とある事実に気がついた。<br /> 金糸雀は100年を越す争いの間に行われた婚姻外交とその結果により、ほぼ全ての豪族の親戚であった。<br /><br /> なんの後ろ立ても兵力も持たない、誇大妄想気味の娘が行幸と称して豪族達の都を訪れても彼らは当主の親戚を無下に殺す訳にも野宿させるわけにもいかない。<br /><br /> そして彼女は見目よく、楽器の名手であったことからだんだんと各行幸先で評判となっていく。<br /> 普通ならばただの人気旅芸人で終わるのだが、彼女はあくまで豪族達の血族である。<br /> ふと気がつけば彼女は外交上の重要なパーティーでも呼びつけられるようになり、<br /> さらに進んで外交上の席にも紛れ込むようになり、時には彼女が条約締結の証人となった。<br /> 証人になると言う事は、彼女には何らかの力があると関係者に認められたと言う事であり、もちろん彼女はそれを裏付ける実力など一欠片も持っていない。それでも時には有力豪族が彼女に感謝を示し、頭を垂れると言う状況が生まれ始めた。<br /> あの領主様に丁重に扱われる金糸雀という人は凄いのではないか?<br /> 詐欺の手口であるが彼女はいつの間にか『権威』の創出に成功していた。<br /><br /> そうやっていくつかの和平条約の締結、緩衝地帯の共同開発などの証人となった彼女はついに全ての豪族が席につく場をもうける事に成功する。<br /> 豪族達の話し合いによる利害調整の場を作り出し、彼女は争い続けていた豪族達に一時的でも剣を置かせる事に成功したのだ。<br /> 豪族達の警戒を解かせたのは、実際的なこすい仕事は全て自称家老のみつがとりしきり、金糸雀自身は常に生々しい利害関係から距離を置いていたことも大きい。<br /> やがてこの場の議長をつとめる金糸雀は豪族達に王として推戴された。<br /> 金糸雀の虚名に実体を与えたのは常に豪族達自身であったことに気がついた者はいたのかどうか。それもふまえて彼女が策士であったのか、天然であったのかで頭を悩ませる歴史家は多い。<br /><br /> 王になってからも彼女の持つ兵力は最大で200名のみであり、その居城は城とは言うものの実際は平地の館にすぎなかったし、みつのとる政策は採算度外視な物ばかりだったので彼女はろくに私財を持たず貧しかった。<br /> それでも権力をほぼ持たず、権威のみを持つ豪族連合政権の旗頭として、彼女はその役割を良く果たし、今までのような剣のぶつかる勢力争いは姿を消して行ったのである。<br /><br /> 彼女の王家があった頃、なにか目覚ましい発展があったわけでもないが、国内はおおむね平和であり、着実に土地は開墾され人口は増えて行った。<br /> そのため草国は地域史家には午睡の時代と称される。<br /><br /><br /> モデル『アメリカ合衆国皇帝ジョシュアノートン/日本の皇室』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 3/8<br /> 昏王・翠星石(AS397〜423/結国ー現芝国)<br /><br /> 芝国人に今でも暗君の典型として嫌われる女王がいる。<br /> 彼女のした事は国庫を顧みない運河整備事業による経済破綻と飢饉が広がる中毎晩城で宴会を繰り広げたという物であり、結局彼女への反感を核に結国は反乱によって滅び、彼女自身も燃え盛る城と運命を供にしてしまった。<br /> 反乱のきっかけになった逸話は飢饉中の宴会をいさめた家臣に「黙ってさっさと食えですぅ」と暴食を強要したというものである。<br /> 確かにこれだけを上げれば彼女は愚かとしか言い様が無い人物であったと言える。<br /><br /> しかし運河の交通/輸送が結国後に立った国家達に莫大な利益をもたらした事を考えると運河整備事業はむしろ先見の明があったし、その宴会と言われた物は飢饉中でも食べられる食物とその調理法を探していたためとも伝わっている。<br /> もしそうならば彼女は運河を整備する大局的な先見性を持ち、飢える国民の事も案じていた賢王という事になる。<br /> もしそうならば彼女の身を危うくさせたのはただ、彼女自身の口の悪さと言う事になるだろう。人々に彼女の真意は伝わらず、ただその言葉のみが広まってしまったのだ。<br /><br /> 後の翠星石擁護派の歴史家はこう嘆く。<br /> 「ああ、ツンデレ国を滅ぼせし——」と。<br /><br /> モデル『隋の煬帝/マリーアントワネット』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 4/8<br /> 傷王・蒼星石(?〜AS449/生誕地不明)<br /><br /> 彼女がどこから来た人物で、本名はなんだったのか知る者はいない。<br /> ただ食い詰め物や罪人が押し込められる集落が点在するだけの痩せた寒冷地に流れ着いたとき、彼女は自分の名前も思い出せず、体は茨でひっかいたように細かな傷だらけであったとされる。<br /> 彼女は植物に関する技術を持ち双剣術に長けていた事からどこかの貴族/騎士階級の人物であった可能性が強い。<br /> またその集落に現れたのが423年だったことと、容姿が似ている事から結国女王翠星石<br /> もしくはその親族が逃げ延びたのではないかという説もある。<br /><br /> 彼女は国民に伝説化されており、正しい業績は判別しにくいが以下のようなものであるらしい。<br /> 周辺を支配していた盗賊団を斬り捨てて女王に即位した。寒冷地でも育つよう作物の品種改良所を建て、薬草の煎じ方を伝えた。全ての集落から参加者の出る祭りを始めた。<br /> 功績の多い彼女であるが何よりも大きかったのは、孤立集落が点在していただけのこの場所に共同体意識を育てた事であった。<br /><br /> 彼女の死後、現代でも400万前後の人口しか持たないこの国は何度も歴史上から姿を消した。<br /> 時には成長した国に併合され、時には大国同士の合戦場として蹂躙された。<br /> 独立国としての形を保っている時の方が短いくらいであったが、それでも国民は自分達の共同体意識を持ち続けた。<br /><br /> そして現代に至も彼らは自分達を『蒼女王の子供達』と自称し、国の事を『蒼女王の庭』と呼ぶ。<br /><br /><br /> モデル『特になし/地域→東欧・北欧』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 5/8<br /> 太陽王・真紅(AS1311〜1387/桜国)<br /><br /> 草国の豪族連合型の政体はだんだんと時代に合わなくなって行った。<br /> 開墾できるような土地はあらかた開墾してしまったし、それでいて人口は増え続ける。<br /> 街道と馬車組合は整備され、草国建国当初よりも遥かに流通の速度を早めていたのに、豪族の領地ごとにある関所がその動きをせき止め、関税を奪う。<br /> それら不協和音を止めえる国体をそもそも持っていなかった草国は遂にいくつかの国家に分裂する形で崩壊した。<br /> 享年1031歳。一王朝としても一国家としても最長不倒記録であった。<br /><br /> 草国の子供達はそれぞれに不和であり、誰が主導権を握るかで大きく対立した。<br /> 草国建国時とは違うのは、人口と農業生産の増加により騎士(職業軍人)が数多くなってきたため、いよいよ国家間の戦争が激化する時代となって行った事である。<br /> 現実の都合により世界の形は変わったが、誰も次の時代を明確に描けるものは決して多くなく。<br /> とにかくどこよりも領土を広げようという戦国時代がひたすらに続いた。<br /><br /> そのなかで一頭地抜けたのが大穀倉地帯の旧草国南西部にあった桜国である。<br /> そもそも食うに困らないため、温厚な人物が多く存在感の薄い国だったが、王女真紅がごく若い時期から政治的に活動を始めると事態は変わる。<br /> 真紅は余剰の小麦を餌に戦火で焼けだされた人々や傭兵、食い詰め者をかき集めて一つの兵団を作った。戦争を本業とし、農作業に捕われない常備軍の結成である。<br /> 農繁期に捕われず、身軽に動ける戦い方により、豊穣の秋に真紅が突如奇襲したのは旧草国のどの国でもなく、西の隣国、芝国であった。<br /> そもそも商人ギルドの傀儡王しかおらず(当時の王は最新機器である時計オタクで少年性愛者のぼけ老人であったという)、国家としてのまとまりに欠ける芝国正規軍は兵力三分の一にすぎない真紅軍に敗走した。<br /> 結局は商人ギルドに以前と同じ商売を続ける事を許した真紅が桜国・芝国連合国の王となることでこの戦争は終結した。<br /> 連合国とはいうものの軍権徴税権司法権その全てを一元化され、政治の首脳部には真紅とその側近である桜国人しかいなかったが。<br /><br /> 五年ほど内政・外交に努め力を蓄えた真紅は満を持して四万からなる軍を進発。<br /> 旧草国首都に向けて上洛を成功させる。<br /> 真紅は自らも金糸雀の係累である事を権威づけには利用しつつ——その実今だ旧首都に根強い合議制の政治は完全に破壊した。<br /> 彼女が旧首都に必要としていたのは百万の人口でも受け止められる都市としてのポテンシャルのみであり、その他の悪弊は全て切り捨てた。<br /><br /> 最大の穀倉地帯。運河を軸とする商業交易。人と物の集積地である大都市。<br /> 絶大の兵力。莫大な金。自らの指示に即応するトップダウン型官僚組織。真紅はそれら全ての主となった。絶対王政の開始である。<br /> 真紅が志向したのは国内の全てが一元化され風通しの良い中央集権国家だった。<br /> 彼女は王の血筋に生まれつきながら、天性の革命家であった。<br /><br /> 先祖である金糸雀王が水銀燈帝の末裔を自称していた(金糸雀王は自らを聖帝の妹と称する事すらあった。あまり誰にも相手にされなかったが)事と、その覇業と誇り高さゆえ真紅はよく水銀燈帝と比較されるが、水銀燈帝が自らを神と称したそのうぬぼれも含めて希代の英雄であったのに対して真紅は水銀燈帝よりもリアリストであった。<br /> それぞれに違う文化背景を持つ国家を全てなぎ倒し帝国を樹立するというような、大きな反発と流血が予想される事業を彼女は望まなかったのだ。<br /> そのため桜国自身の領土拡大も基本的にはここまでで終了した。<br /> とはいえ潰しても反桜国同盟のような大きな反発が予想されない限り、真紅は武力を用いる事に容赦無かったのだが。<br /> その後の彼女の活動は対外的にもやはり冴え渡っていた。<br /> 旧草国北部諸国には二度ほど戦争で痛めつけてから、外交を駆使し自らの親族を送り込み、彼らにその王位を継がせた。 大陸西部には運河での商業を活かし、常に莫大な貿易黒字を稼ぎ続けた。<br /> 大陸東部は群小国家が数多く存在し、特にうまみもないので単純に従属させた。<br /><br /> 余談だが、東部地域掌握時に唯一起こった波乱が蒼国との戦争である。<br /> 当時桜国は書状により、東部国家群に従属や譲歩を迫った。<br /> 他の国が消極的に言い訳、無視を決め込む中で唯一徹底抗戦・独立固持を叫んだのが蒼国である。<br /> その政治的センスの無さがまた、蒼国らしいとも言われる。<br /> また、蒼国が他の東部諸国とは違い、桜国が貿易赤字を計上するほど魅力的な高級品—— 薬草、寒冷地独自の魚(キングサーモン)、白熊、国花である蒼い花などを有していた事が余計にまずかった。<br /> 桜国に戦争をしてでも蒼国を併合するメリットがあると思われてしまったのだ。<br /><br /> 真紅は紅・桃・翠薔薇の三軍団一万五千を派遣し、蒼国討伐を命じた。<br /> 最初、桜国側は単純に蒼国二千の軍を蹴散らし王都を囲めば片がつくと思っていたし、結果的にはそうなった。<br /> 唯一誤算だったのは蒼国軍が思い詰める国民性のせいか玉砕するまで戦った事である。<br /> 信じられない速度で展開する一万五千の兵にあっさり包囲され矢尽き果て槍折れても、彼らは自分たちの誇りである双剣を持って殺されるまで戦い続けた。<br /> もちろん小国である蒼国に常備軍等あるはずも無くその二千の兵は普段魚を釣り、動物を狩り、痩せた土地を耕し、所帯を持つ蒼国の男達であった。<br /> それが誰一人として帰らぬ人となったのである。<br /> この時紅薔薇騎士団団長ホーリエが、我々は蒼国王都に乗り込む道を間違えて、葬儀場に乗り込んでしまったのかと思うほど、街中に女子供の慟哭と我々への怨嗟の視線に満ちあふれていた、と晩年に記述している。<br /> この時の一件が現代でも桜国人と蒼国人のあいだの反目の種となる桜蒼戦争である。もっとも蒼国人はもっぱら『大虐殺』と呼ぶが。<br /> そのため現代でも人類の傑物に数えられる真紅だが蒼国人の間では例外的に酷く人気が低い。<br /><br /> 会戦からたった十日で蒼国の名前を地図上から消滅させる桜国の力を目の当たりにした東部国家群はこぞって桜国への従属を表明した。<br /> この時の威名は恐れを持ってその他の地域にも伝わり、さらに桜国に表だって逆らう者を減らした。<br /> 蒼国のような見せしめの犠牲を生み出す事に躊躇は無かったが、真紅は基本的に寛大な王であり、中世の戦国時代は桜国による平和のもと一応の集結を見せたのである。<br /><br /> 彼女は桜国を拡大するのではなく、各国家を傘下に収める事によって彼女は世界一の高見に上ったのである。<br /><br /><br /> モデル『ルイ14世/織田信長 地域→フランク王国と東ローマ帝国(草国)/フランスの一部とドイツの一部(桜国)』<br /><br /> 歴史書メイデン 6/8<br /> 狂王・雛苺(AS1573〜1608/桜国)<br /><br /> 桜国による平和。それに幕を引く人物がこの雛苺である。<br /> 彼女が政治的な人物ではなかったことと、桜国の崩壊は彼女の人生に密接に関わっているため、この項は彼女の人生に近づいてしまう。<br /><br /> 彼女は真紅王の直系の子孫であり、その父もまた桜国王であった。<br /> 本来祝福されて生まれてくるべきだった雛苺がその存在を秘匿されたのは、不義の子であったためだ。<br /> それでも母親のコリンヌ・フォッセーに引き取られ、表面上はフォッセー家に出された里子として幼少期は平和に過ごすことができたのだが、何よりまずかったのは雛苺が真紅の一族に現れる外見的特徴を全て持ち、なおかつ長じれば耳目を集めるほど美しくなる事が子供の頃からうかがい知れるような、そんな容姿をしていた事だった。<br /> 彼の父親は冷たかった。<br /> ある日雛苺を遠目に見た父王は極秘に彼女の殺害命令を出す。<br /> 母親であるコリンヌの必死の嘆願、と無言の恫喝によって命だけは助けられた雛苺だったが、フォッセーの家からは取り上げられてしまう。<br /> フォッセー家も名家であり守るべき体面があった。コリンヌ一人の力ではここまでが限界だった。<br /> 別れの日、自分一人が馬車に乗せられるのがなぜか理解できない五歳の雛苺に「かくれんぼをしましょう」とコリンヌはあやしていたそうである。<br /> 遠ざかる馬車の中から雛苺はずっと無邪気にコリンヌを見つめていたそうだ。<br /><br /> 彼女のために用意されたのは屋敷とは名ばかりの石造りの元牢獄であった。<br /> そして雛苺は窓一つなく、昼間から蝋燭が必要とされるような屋敷に幽閉された。そして幽閉される際には頭を全て包み込む、まるで鞄のような分厚い仮面をつけさせられ、それはこの幽閉期に基本的に外される事が無かった。<br /> 一体この幽閉期の十五年が彼女の精神にどれだけの重傷を与えたのか。<br /> この薄暗い石室の中で雛苺は常にいもしない友人と会話をしていたそうだ。<br /><br /> やがて父王が梅毒により死去した後、不思議なほど夭折の不幸が桜国王家を襲う。<br /> この時代より後の雛苺研究家の中には父王が死ぬより前に首を吊ったコリンヌの呪いのようだと語る者もいる。<br /> そしてついには真紅王からの直系の血を持つものは雛苺一人なってしまった。<br /> なにもそこまで真紅王の血が神聖視されていた訳ではないが、家臣を巻き込む跡目争いがあった。<br /> 野心と特定の家臣への肩入れを示す血の薄い対抗馬よりも操り人形として使える雛苺のほうが、官僚団と当時の宰相にとってはましに思えたらしい。<br /><br /> 今度はちゃんと正室との間に生まれた第一王女オディール(眠り病にて死去)と雛苺が瓜二つだったこともあって彼女は王室の血筋と認められて世界の中心国の玉座に座った。<br /><br /> 彼女が王座に就く前から国には泰平の世の中での経済赤字と暴食爛熟華美の文化が花開いていたのだが、彼女が王位についてからはその傾向に拍車がかかった。<br /> 都には黄金の雨が降る。そう例えられたほど桜国は国力を疲弊させてまで、宮殿、寺院、オペラハウスを作り続けた。官僚団にとっての市民の雇用対策、貴族にとっては自らの名を社交界に売るための当然の仕事。<br /> もちろん桜国の借金はふくれ続けていた。<br /> そしてそう言った問題はあまり誰も気にしなかった。<br /> 官僚団は王の意を忠実に実行する事だけが存在意義であり、新たな指示が与えられない限り、目の前の仕事さえこなせれば文句はなかった。<br /> 市民と貴族は消費する事に忙しかった。なにせ、あらゆる産品、あらゆる才能が運河を通して世界中から運ばれてくるのだ。<br /><br /> この間、絶対王政の主であり、この事態に一石を投じる事が出来た雛苺は、特に何もしなかった。<br /> 彼女は毎夜のように宴会を開き、疲れ果てて眠るまで常に遊び続けた。<br /> 彼女はいつだって寝室では眠らなかった。常に宴会場の煌々と灯された明かりの中で眠った。一人になる事と暗闇を病的に嫌っていたと言われている。<br /> そして彼女の行動はいつでも寂しがり屋の子供だった。<br /> 子供が新しいおもちゃで友達の気を引こうとするように彼女は次々に新しい芸人を多額の金で呼びつけ、また、それを一緒に観る聴衆すらも金で呼んだ。<br /> 時にはパーティーの出席者全ての人間に自分と同じドレスを着せ、自分の髪型を模したカツラをかぶせるという遊びに興じた。<br /> 彼女はなぜかその光景を見て笑うでも無く、涙ぐみながらほっとしたように身を屈めていた、と召使いの手記に残っている。<br /><br /> 彼女の遊びは古今東西どこを観てもあり得ない規模だったが、それでも桜国の財政から言えばはした金であり、桜国に降る黄金の雨を浴び続けていたい者達にとって雛苺は都合が良かった。<br /> 桜国は絶対王政なのである。王の意向が質素倹約ならば国中の享楽主義者達も襟を正さなければならなかったためだ。<br /> 雛苺の人気は高かった。美しく奇矯だが明るい性格をしており、陰気な荒淫王として知られた父王よりはるかにましだった。<br /> 彼女の考えだす遊びは常に流行の先端になり、彼女のドレススタイルは貴族から下々の者まで喜んで真似した。<br /> いまだ誰もが、桜国の泰平と繁栄が終わる事等夢にも思っていなかった。<br /> それでも、在位の始めはちゃんと公務は回っていた。<br /> 彼女に無私で尽くす奉公人が一人だけいたためだ。雛苺からトゥモエという変なあだ名で呼ばれていた蒼国人(当時は蒼州人)の侍女がそれである。<br /> 彼女は王権や金銭といった雛苺の力目当てに近づいた訳でもなく、ただただ雛苺の無茶な要求と癇癪によって使い潰される侍女達の欠員補充としてやって来たのだが、彼女にだけはなぜか雛苺がよくなついた。<br /> 政治を何も理解しない雛苺に書類へサインをさせるだけでも一苦労だったのだが、トゥモエが来てからは雛苺はすんなりと書類にサインしていた。常にトゥモエが事前に書類に目を通し内容を噛み砕いて雛苺に説明したからだ。<br /> 気づけば官僚や実務を切り盛りする貴族はトゥモエにまず話を通すようになっていた。王の勘気に当てられて生きていられる者等この国にはいないからだ。<br /> 蒼国人の頑固さか桜国の風に染まる事を拒否したのか、彼女は当時当然だった賄賂を受け取らないばかりか、なんの私服も肥やさず、ただただ雛苺の侍女であり続けた。<br /> 雛苺よりも先に目覚め、雛苺に給仕をし、雛苺がどこに出かけるにもついて行かされ、雛苺が寝付くまで絵本を読んでいた。<br /> また閲兵式でたくさんの兵隊を怖がって出てこない雛苺に変わって、軍の先頭で白馬に乗った。<br /> 何者でも手打ちにする権利を持つ雛苺がヒステリーを起こしているときでも、彼女だけはそばにいた。<br /> トゥモエがそばにいる時のみ、雛苺は暗闇も眠りも恐れずに済んだという。<br /><br /> そんな幸運も雛苺の在位十年目に終わる。<br /> トゥモエの死因はオディールと同じ眠り病であったと伝わる。<br /> そして雛苺のたがは完全に外れた。<br /> 手始めは異常なまでに豪華な葬儀だった。普通国王にしか行われないような葬儀がトゥモエに対して執り行われた。<br /> 蒼州出の小娘の棺に対してになぜこのように膝をつかなければならないのか首を傾げる者は多かったが、それすらも関係なく親に先立たれた幼子のように雛苺は身も世も無く泣いていた。<br /><br /> その後、雛苺はまずます自分の遊びにのめり込んで行き、暴発する癇癪の量も増え、突然泣き出した。<br /> 気がつけば当時貴族の間で流行した奇妙な邪宗の拝み屋が彼女の取り巻きとなっていた。<br /> この拝み屋も下手を打てばすぐ殺されるので適当に雛苺から金を奪うとたいてい逃げたので、取り巻きもころころ変わった。結局雛苺は常に孤独だった。<br /> 彼らの吹き込むままに彼女は時に教会を取り壊し、邪宗の祠を建て、奇妙な死者再生の儀式を執り行う。<br /> 効果がなかったので拝み屋を関係ない親族もろとも三百人ほど首を飛ばして晒す。<br /> はたまた占いの結果次第で官僚の配置を簡単に変更した。<br /> そうかと思えば大きな閲兵式を行い、関係の少しこじれた大陸西部を攻めた。<br /> 雛苺を操り人形として扱おうとしていた、即位当時の老練な宰相と貴族達が軒並み引退していた事も大きい。まだ彼らにはこの国の舵取りをする気概があった。<br /> このころ桜国の政治中枢には雛苺に取り入る事で甘い汁を吸おうとするものしかいなくなっていた。<br /><br /> そしてある日、雛苺は宮殿で片手に持っていた人形を取り落とした。それを拾おうとして、そのまま階段から転げ落ちた。<br /> それがそのまま致命傷になった。<br /> 雛苺は3日寝込んで、そのまま息を引き取った。眠る事を恐れるように最後まで話し続けていたと言う。<br /> 彼女の最後の言葉は『雛の後には大洪水が起こってしまうわ』というものであった。<br /> 執り行われる国葬で流される涙についての発言だったであろうと最初は解釈された。<br /><br /> たが雛苺王の逝去とともに黄金の雨が降る時代も終わる。<br /> 借金を重ねてまで浪費し続けて来た桜国の財政はいよいよ破綻しだし、一度狂った官僚団の迷走は治まらず、この局面を乗り切る事が出来そうな人材もいなかった。<br /> 人々の目にも桜国の衰退は明らかになり始めていた。<br /> 雛苺王の逝去とともにそれらの問題は堰を斬ったように噴出し始めるのである。<br /><br /><br /> モデル『ポンパドゥール侯爵夫人 /鉄仮面/中東の王族(噂)』<br /><br /> 歴史書メイデン 7/8<br /> 影王 雪華綺晶(?〜?/桜国)<br /><br /> 雛苺王の治世より4世代前、当時の王位継承問題により王族から廃嫡となったサラとい<br /> う王女がおり、彼女はそのひ孫にあたる人物である。<br /> サラ自身は桜国より追放の憂き目にあったが、その後の子孫は桜国に舞い戻り当事賤業<br /> とされた金融業を細々と営んでいた。<br /> 奇しくもその商会のあった場所は雛苺王が幽閉されていた屋敷の近くである。<br /> この商会は雪華綺晶が働き始めるまで政治とは関わりのない個人商店主向けの融資のみを行う商会にすぎなかったとされる。<br /><br /> しかし、泥濘に落ちれど黄金は黄金。商会の一粒種として生まれた雪華綺晶は雛苺王と<br /> 同じく古来よりこの血筋の持つカリスマ性を有していた。<br /> 金貸しと言うあらゆる場所、あらゆる階層に出入りできる仕事に精を出す傍ら、彼女は<br /> お手製の宗教を客の間に広めはじめる。<br /> 彼女自身が宗教を信じていた事は疑わしく、桜国の権力に近づく事の出来ない彼女のカリスマを存分に活かす方便であったと後の世には解釈されている。<br /> この宗教の最初の布教先となったのはもちろん、雪華綺晶の客先である商店主とその子方達であり、彼らは次々とこの宗教に転ばされて行った。<br /> 当時の爛熟の文化が過去の質素倹約を訴える既存宗教との折り合いが悪かった事もあるが、そもそもが金の貸し手と借り手。本心はどうあれ取引の都合上で改宗を行う者も多かった。<br /> 彼女は宗教の教祖には名目上の傀儡の人物を建てて、自分はあくまでも金貸し兼教会幹部として振る舞った。<br /> そしてあらゆる層に散らばった信者達の持ち寄る情報を集めては、自らの投機の武器とし、勢力が強くなるにつれて、そもそも相場を操る側に回った。<br /><br /> こうして銀行家、投資家として大成功を収めた雪華綺晶はその資金力をバックに当時起こった王位継承問題の弱小側のパトロンとなって、いよいよ桜国の権力に取り付こうと画策し始める。<br /> 彼女の持つ宗教と金の信者はどこにでもおり、隠然とした力を持っているため、暗殺(特に病殺に見せかけた毒殺)を専門とする集団がいるという黒い疑いは現代でもつきまとうが、その噂が生まれたのは当時の桜国王家を襲った夭折の不幸に端を発している。<br /><br /> 雪華綺晶がパトロンを努めた後継者は玉座まで後一歩という所までいくが結局は失敗し、既存の家臣に担ぎ上げられた雛苺王が桜国王として即位する事によってこの問題は収束した。<br /> なお、この失敗した後継者は失意のあまりか早いうちに眠り病で病没している。<br /> この勢力争いの和解案として出された、雪華綺晶の商会に宮廷御用達としての立場を<br /> 与えるという決定が、これ以降さらに彼女を投資家として飛躍させ、その宗教も貴族<br /> や官僚層へ顕著に浸透していくのである。<br /> 雛苺王治世下の散財は彼女の商会の貸し付けが下支えしており、雛苺王自身もトゥモエの病没後、その宗教に改宗している。<br /> また彼女はこの血筋に珍しく多産な方で、出来た五人の子供達を各国に散らばらせて、<br /> それぞれに支店と裏の顔として大司教(この宗教に置ける国毎の責任者)の身分を持たせた。<br /> 雪華綺晶の話をすれば、そこに雪華綺晶が現れると言われた、広範な情報ネットワークの始まりである。<br /> 余談だが、桜国本店を継いだ彼女の長男は蒼国人との間に出来た子供で、かつての蒼星石王にそっくりな顔立ちをしていたといわれる。<br /><br /> 公的な記録において雪華綺晶が観察されるのは雛苺王死の2日前、雛苺王を見舞ったときである。<br /> この時雛苺王が雪華綺晶は長寿なのにいつまでも若々しく元気なのはなぜかと問うた時に彼女は「私、人を食っておりますから」と、取り澄まして答えたとのことである。<br /><br /> 彼女の葬儀は雛苺王とは対照的に密葬で、いつなくなったのかも公表されなかった。<br /> 彼女の子孫達は彼女の作り上げた商会を守り、いよいよ困窮して行く桜国とその貴族達から細心の注意を払いながら血税を取り立て、さらに立て直しのための金を貸しながら、対立軸の革命家達にも金を貸した。<br /> さらに桜国による平和が失われた後に起こった各国の戦争にもどちらの国にもそれぞれの支店が金を貸すという方式でさらに儲けて行く。<br /> そのような事を繰り返した結果これより後の現代史において、もはやこの一族抜きにどのような大事業も戦争もあり得なくなっていくのである。<br /><br /> 桜国最後の財務大臣はギロチンの露と消える前にこう慨嘆したと言う。<br /> 「ああ、桜国は…いや、全ての国は鎖よりも強く絹より細い蜘蛛の糸に絡めとられてしまった」<br /><br /> 彼女の遺訓を守り、今でも雪華綺晶の一族は自らの資産と保有する権力を秘し、公表していない。<br /> ミステリアスさのため今だに雪華綺晶は生きているだのといった都市伝説にも事欠かないが、基本的には雪華綺晶の一族の力を恐れて一族とその宗教の事を口にするのはタブーとされている。<br /> 王のいない、市民の世となった現代とまるでその対をなすように彼女の一族は「影の王」<br /> 「世界経済の主」と呼ばれている。<br /><br /><br /> モデル『マイヤー・アムシェル/曹操/吉田茂/ユダヤ教徒の歴史/日本の仏教系新宗教』<br /> 歴史書メイデン 8/8<br /> あとがきにかえて<br /><br /> さて、この書もいよいよ製本上の余りページを残すのみとなったが、最後に拙の繰り言<br /> を聞かされては読者諸氏もたまるまい。<br /> そこで出来る限り事実のみを記すに留めたこの本であるが、最後の付録に、彼の地域に昔から囁かれるある妖精伝説について書こう。<br /> 紫色の妖精が英明な女王の元にのみ現れ、王の死と共にそこを去ると言う伝説である。<br /> 原型は水銀燈帝の覇業の始まりに従った3人の配下がメイメイ・メグのみはっきりとその後の史書にも登場するのに対し、今だ未詳である最後の一人が子供程度の背丈と紫色の服を着ていた事と当時の土俗的な精霊信仰が混じり合ってこの伝説が生まれたのであろう。<br /><br /> その後その妖精は金糸雀王の元に現れた。<br /> 王に推戴された後も孤児院の設立等で常に国庫を空にしては黒パンだけを齧っていた金糸雀王を見かねて、野鳥から卵を分けてもらい花の蜜と混ぜて焼きそれが今のオムレットになったのだと草国の童話は紡ぐ。<br /> また、翠星石王の最後の治世燃え落ちる城から彼女と想い人の小さな騎士団長を共に逃がしたのはこの妖精だったと古のロマンス詩は綴る。<br /> 蒼星石王の真の名前を取り戻させたのはこの妖精であったと蒼国の伝説は語る。<br /> 真紅王幼少のみぎり、現れた妖精を見ても王は揺るがず「家臣になれ」と命じたとオペラは歌う。<br /> 雛苺王は幽閉されたる頃「紫の妖精さんだけが雛の話し相手だったの」と語り、何もない空中に「ねぇ?」と確認を取ったと、トゥモエは手記に書く。<br /> 雪華綺晶は商会の近くを飛ぶ彼女に見惚れて自らその格好を真似し、その姿を商会のレリーフに刻んだと噂は囁く。<br /><br /> 近年拙は本邦初開催となった万国博覧会に行ったのだが、その中の桜国(今は共和制国家であるー残念な事に)<br /> の新進芸術家槐某氏の展示物として八体の人形が展示されるのを観た。<br /> それは見事な黒黄翠蒼紅桃白紫の人形であり、それぞれに水銀燈帝金糸雀王とレリーフのついていたため、彼の地の各女王に題を取ったのだと拙にも理解する事が出来た。<br /> そして最後の人形には「薔薇水晶」のレリーフがついていたのである。<br /> 事実は単純にその作者が考え名付けたものであろう。しかし拙は天才人形師の前にも現れた妖精が自らの名前を名乗ったのではないかと夢想するものである。<br /> 今でもその妖精は寝物語に人形師へ女王の物語を聞かせているのであろうか。<br /><br /><br /> 一九〇八年 斉藤記す</p>
<p align="left">雛「がったん、ごっとん♪」<br /> 薔「……がったん、ごっとん」<br /> 雛「電車さん、がったんごっとんなのー」<br /> 薔「……ね」<br /> ――まもなく○○、○○――<br /> 雛「あれ? 薔薇水晶、薔薇水晶! あれ、トモエとジュンなのー」<br /> 薔「……ホントだ……まったく仲良さそうにしちゃってブツブツ」<br /> 巴「あら、雛苺に薔薇水晶じゃない」<br /> ジ「げっ、なんでおまえらが……」<br /> 雛「お買い物の帰りなのー! トモエとジュンは? 」<br /> 巴「あっ、そのえっと……」<br /> ジ「買い物だよ、買い物!! 」<br /> 薔「……怪しい」<br /> ――まもなく発車します。閉まるドアにご注意ください――<br /> 雛「がったん、ごっとん♪がったん、ごっとん!」<br /> 巴「がったん、ごっとん……」<br /> 薔「……がったん、ごっとん……何時の間にジュンに近づいてブツブツ」<br /> ジ「……全く、お前ら子供じゃないんだから……けどこの音ってなんか眠気を誘う音なんだよなぁ。がったん、ごっとんと」<br /><br /> 雛「がったん、ごっとん、がったん、ごっとん! なのー♪」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 蒼「うーん、お昼どうしようかな…」<br /> 翠『ジュンー!オメーまた浮気したですねー!?』<br /> ジ『ま、待ってくれ!アイツには旨いパスタが食べられるって誘われただけで…!』<br /> 蒼「あー、パスタとかいいなぁ」<br /> 翠『じゃあ前の弁当はなんですかぁ!翠星石だって…翠星石だってまだ作ってやってないというですのに!』<br /> ジ『あ、あれは僕がエビチリが好きって言ったら作ってきてくれるって…』<br /> 蒼「エビチリ…そう言えば最近食べてないなぁ。夕食にしようかな?」<br /> 翠『じゃあ昨日の夜はどこで食ってきたか言ってみろですぅ!』<br /> ジ『普通の居酒屋だよ!ちょっとお酒飲んだけどそれだけだって!』<br /> 蒼「あ、ほっけとか良いかも。ご飯もまだあったし…そうしようかな」<br /> 翠『ほほう…じゃあ服についてた口紅はそういう事だと言いたいんですね?』<br /> ジ『は!?何でだって服になんか…あ』<br /> 翠『死ねぇええええ!!』<br /> ジ『いぎゃあー!?』<br /> バキ!ドカ!ぐちゃ!ズカン!<br /> 蒼「あれ?急にユッケが食べたくなったなぁ…何でだろ?」</p> <hr /><p><br /><br /><br /><br /> 今日知り合いの娘(姉妹)が仕事場に来てて大人しくするかとようつべでローゼン見せた時の反応<br /> 真紅<br /> 姉『(*´∀`)♪かわいい』<br /> 妹『(*´∀`)♪キャッキャッ』<br /> 雛苺<br /> 姉『(*´∀`)♪これかわいいの♪』<br /> 妹『(*´∀`)♪ピンク!』<br /> 水銀灯<br /> 姉『( ・∀・)/これアタシ!』<br /> 妹『( ・∀・)/アタシも!』<br /> 翠星石<br /> 姉『( ・∀・)/これもアタシがいい』<br /> 妹『(・ω・)ピンクがいい』<br /> 蒼星石<br /> 姉『(・д・ = ・д・)(水銀灯を探してる)』<br /> 妹『(・д・ = ・д・)(雛苺を探しながら)ピンクがいい』<br /> 薔薇水晶<br /> 姉『( ・∀・)/これもいい!』<br /> 妹『(*´∀`)♪ピンク!』<br /> 雪華結晶<br /> 姉『(・ω・)さっきのや』<br /> 妹『(・ω・)うん』<br /> 金糸雀<br /> 姉『( ´・ω・`)…』<br /> 妹『( ´・ω・`)ちがうのみたい』</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 槐「ばらしーばらしー元気かい?」<br /> ばらしー「(゚∀。)」<br /> 槐「今日のご飯はシュウマイ丼だよ」<br /> ばらしー「(゚∀。)」<br /> 槐「よし! 一緒にお風呂だ!!」<br /> ばらしー「(゚∀。)」<br /><br /><br /> 薔「私の人形作って話しかけるの止めてください、お父様。」<br /> JUM「だから家出されるんですよ……」<br /> ばらしー「(゚∀。)プギャー」<br /> 槐「……」 </p> <hr /><p align="left"><br /><br /> 巴「どうしよう…気がついたらこんなものを作っちゃった…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「凄い…我ながらに完璧…でもどうしよう…人形なのにドキドキしてきた…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「ひっくり返してみたりして」<br /> JUM「(。A゚)」<br /> 巴「…はいてるだ…やっぱり…私ちゃんとブリーフ作ったもんね…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「…もう…いいよね。私…頑張ったよね…もう…ゴールしていいよね…」<br /> JUM「(゚∀。)」<br /> 巴「桜田君と…初めてのチュー…!」ハアハアハアハア<br /> JUM「(゚∀。)だからお前はダメなのだ」<br /> 巴「!!!???」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 冬がやってきた。しかも毎年おなじみ将軍さまだ。たまには冬頭とか冬大臣とか、そんな親類達でも連れてくればいいのに、厄介な冬将軍だ。<br /> 既に山々には白銀如し雪が降り落ち、山肌を白く染め上げている。<br /> 私はぬくぬくと暖炉の前でそんなことを考えていたわけなのだが。<br /> 「すっかり寒くなっちゃって困るわぁ。ここ、あんまり暖房器具無いから」<br /> 水銀燈が私に温かなココアを差し出してくれる。<br /> 確かにここの教会にはエアコンなんては完備してはいない。礼拝堂にある小さなストーブと、ここの暖炉だけが唯一の安楽所だ。<br /> 「ありがとうございます、お姉様。そういえば今年の年末はどうなさるんですか」<br /> 「そうねぇ……去年はここでクリスマスの催し物をやっただけだったわぁ。後はめぐと温泉くらいかしら」<br /> 「湯治ですか? 」<br /> 「という名の温泉旅行ねぇ、実際」<br /> クスリ、と水銀燈が笑う。成程、やはり年末年始は温泉に限る。私もまとまった資金も出来たことだし、今年は皆と温泉スキー旅行でも行くとしよう。<br /> 「そういえば、去年のクリスマスパーティの写真があるんだけど、笑えるわよぉ」<br /> どこから持ってきたのか水銀燈が私に写真を一枚手渡す。<br /> ……ああ。そんなこともあった。<br /> 写真にはキラキラと光る電イルミネーションが見事に絡まり、目に大粒の涙を浮かべている真紅が写されていた。<br /> 「……輝く乙女、といったところでしょうか」<br /> あの後、確かくんくんの人形が入ったクリスマスプレゼントを貰うまで彼女はご機嫌斜めだった。<br /> 「今年はどんなクリスマスパーティになりますかね」<br /> 「そうねぇ……全ては神次第ねぇ」<br /> 確かに、と私は頷いた。今年はピチカートやベリーベルもいる。去年より盛大なクリスマスパーティになること間違いないだろう。<br /> クリスマスにスキー旅行……まだまだ今年は終わりそうには無いらしい。<br /><br /><br /><br /><br /> 「山は白銀と輝く乙女関係ないじゃない、雪華綺晶ぅ」<br /> 「いや、そのアハハ……」<br /><br /> 『山は白銀』『輝く乙女』</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 「ふ~ふんふふん、ふふふふん~♪」<br /> 「あっ、おねーちゃん珍しいね、PSなんか取り出して」<br /> 「いや、さっき部屋を掃除していたらこんな懐かしいゲームが出てきて」<br /> 「あっ、ホントだ、おねーちゃん、一時期やりこんでたもんね」<br /> 「そうそう。特にこの絵と音楽が好きで好きで」<br /> 「あっ、えーとなんだっけ? ためるためるためるけさ切り? 」<br /> 「そうそう、それでベアクラッシュが出て」<br /> 「切る払うけさ切り切るで」<br /> 「マルチウェイですわ♪ あれが出たときは嬉しくて嬉しくて」<br /> 「夜中叫んでたよね、確か」<br /> 「そ、そうですか……全く記憶にございませんわ」<br /> 「嘘ばっかり。私はゲームあんまり得意じゃないけど、この音楽は好きだったなぁ。ある原曲のアレンジが多くていいよね」<br /> 「さすがばらしーちゃん。私もbattle関連の曲が好きですわぁ♪ 今でもよくお風呂場で歌ってます」<br /> 「あ、あはは(あれはこの曲だったのね……まったく分からなかった) あれ、今はどの場面? 」<br /> 「ソフィー様が死ぬ直前」<br /> 「そ、そんな場面であんな鼻歌を……」<br /> 「いや、ギュス様のシナリオは結構深いからなんどもやり直してるんだけどね。始めの戦争の後とか、ソフィー様の台詞とか……あとはフィリィーーープ!!!」<br /> 「暗殺者ヨハンとか、将軍の思い出とか、サブキャラなのに印象が強い人がいるのもいいところだよね」<br /> 「ネーベルスタンとかシルマール先生とかね」<br /> 「ウィル編にもいるキャラとかでいえばサルゴンとか」<br /> 「あー、あの空に虹をだっけ? いいタイトルだよね」<br /> 「サルゴンのテーマと呼ばれている戦闘曲も好きで好きで。実際はウィル編のほうが色んな戦闘曲があっていいんだけど」<br /> 「だけど? 」<br /> 「ボスが限りなく強い、強い」<br /> 「それがこのげームの魅力でしょ? 」<br /> 「まぁ、そうなんだけど……じゃあまたプレーに戻りますか」<br /> 「……あんまり夜更かししないでね」<br /> 「はいーですわ……懸命なゲーマーさんは何のゲームかすぐに分かりましたよね?? 分からない? それならばサルゴンあたりでググってください。多分見つかりますから保守」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> ジ「うおぉ!?真紅!これはどういう事だ!!」<br /> 真「何よ朝から騒々しい」<br /> ジ「炊飯器カラじゃないか~!」<br /> 真「あら?昨日お米研いでスイッチ入れたハズ…だと思ったのだけど」<br /> ジ「あーもう…月曜日はご飯じゃないと力出ないのに…」<br /> 真「パンがあるわね」<br /> ジ「知ってるよ!パンがあること知ってるよ!焼いてこいよ!」<br /> 真「いやよ、面倒くさい」<br /> ジ「………」<br /> 雛「お困りのようねジュン」<br /> ジ「うん。僕は今どの角度で真紅の頭をひっぱたこうか悩んでいる」<br /> 雛「レデイにそんな事しちゃダメなのよ。その代わりほら、雛の縦巻きロールをお食べ?」<br /> ジ「性的な意味でですね、わかります。おいおい朝からハッスルしちゃうじゃないか僕自重…できるかイヤッホー!!レッツ・イートゥ!!」<br /><br /><br /> ジ「クロワッサン…だと…」サクサク</p> <p> </p> <hr /><p><br /> ジ「携帯電話を買った」<br /> 水「あらぁ、電話番号教えなさいよぉ。(必要なの?携帯)」<br /> 金「最新機種羨ましいかしら。(何に使うのかしら)」<br /> 翠「せっかくだから一緒にアドレス考えてやるですよ。(自宅に電話あるですよね?)」<br /> 蒼「僕のメールアドレス登録してよ。(パソコンのメールで十分だったじゃないか)」<br /> 紅「携帯電話は便利だものね(コメントに困るのだわ)」<br /> 雛「雛も欲しいのー。(学校もバイトも行かないのに)」<br /> 雪「引きこもりのくせになまいきです。(デザインが素晴らしいですね)」<br /> 薔「携帯からのエロサイト閲覧はお勧めしないよ(眠いなー)」<br /><br /> ジ「最後の方おかしいぞ」</p> <p> </p> <hr /><p align="left"><br /> 雛「ねぇ真紅、教えてなの。今日ね、学校で男の子たちが携帯を見ながら『わっふるわっふる』って言ってたの。<br /> だからヒナ、『美味しいワッフルでもあるの?』って言ったら、みんな急に顔を赤くして静かになっちゃったのよ。<br /> なんか変だと思わない?」<br /> 紅「確かにちょっと変ね…。<br /> 多分、その子たちはワッフルについての正しい知識がなかったから恥ずかしくなってしまったのではないかしら?<br /> もし貴女が望むのであれば、この真紅がワッフルと紅茶の美味しい関係について詳しく教えてあげるけれど」<br /> 雛「…だが、お断りしますなの」スタスタスタ<br /><br /> 雛「ねぇ翠星石、教えてなの。今日ね、学校で(ry」<br /> 翠「うーん、何ですかね?さすがの翠星石もお菓子のワッフル以外は思い当たらんですけど…。<br /> ――はっ!そうです、分かったですよ、チビチビ!!“わっふるわっふる”は掛け声なのです。<br /> ほら、何年か前に“ハッスルハッスル”ってのが流行ったじゃないですか。きっと、それの仲間みたいなものなのですぅ」<br /> 雛「今時、ハッスルって…」<br /><br /> 翠「わっふるわっふるって、なんかテンションが上がるですね!これは元気が出る魔法の言葉かもしれないですよ。<br /> ほれ、チビチビも翠星石と一緒にわっふるわっふるしろですぅ!」<br /> 雛「お 断 り し ま す な の」スタスタスタ<br /><br /> 雛「ねぇトモエ、教えてなの。今日ね、(ry」<br /> 巴「そんな…私の口からは言えないわ」<br /> 雛「うゆ…。どうしてトモエまで顔が真っ赤なの?ヒナに何か隠してるのなの?!わっふるわっふるって、何…?」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> J「今年のクリスマスは姉ちゃんが友だちとパーティで出かけちゃうから、<br /> 家には僕だけになるんだよな。はぁ…独りが辛い……」<br /> 紅「お困りのようね」<br /> J「べ、別に僕は困ってなんかいないぞ!」<br /> 紅「クリスマスに一緒に過ごす相手もいないなんて、淋しい人ね。<br /> でも美味しいケーキと紅茶を用意してくれるのなら、遊びに行ってあげてもよくってよ」<br /> J「はぁ?」<br /> 翠「ちょーっと待ったですぅ!せっかくのクリスマスパーティがケーキだけでは淋しいですよ。<br /> この翠星石が美味しい料理の数々を特別に作ってやるですぅ!!」<br /> J「お前もかよ…」<br /> 蒼「パーティにはやっぱり余興が必要じゃないかな、JUMくん。<br /> 幸い僕はシルクハットを使った手品ができるから、参加しても問題ないよね」<br /> J「蒼星石まで…」<br /> 雛「ヒナもヒナもー!」<br /> J「…あ~もう、分かったよ。来たい奴は来ればいいだろ!」<br /><br /> ――JUMのクリスマスは独りから一転して、賑やかなものになりそうです。<br /><br /><br /> 【独りが】【辛い】</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 槐「と…ところで薔薇水晶……クリスマスは…その…親子で……<br /> え?無理?……ああ、そうか……そうだな………いや、僕は気にしなくって良いんだ………<br /> せ…折角なんだし、皆で楽しんで来るといいよ……… 」<br /><br /><br /> 【独りが】【辛い】orz<br /><br /><br /><br /><br /><br /> みっちゃん「あ…あは……あはは!大丈夫!カナは何も気にしなくていいから!<br /> そ…そりゃあもう!会社の男性陣から声かけられまくって、<br /> 『あーあ、今年はカナと過ごせないかなー』って思ってたくらいなんだから!<br /> カナは何も気にせず楽しんできて!わ…私も今からデ…デートのよよよ予定を……… 」<br /><br /><br /> 【独りが】【辛い】orz</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> 翠星石「ヒーッヒッヒ!誰も見てない隙に、ケーキに一つだけ唐辛子を入れてやったですぅ! 」<br /><br /><br /> カラ<br /> 【一人が】【辛い】</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p align="left"><br /> 翠「ぎょへー!!」<br /><br /> 雛「ねえ真紅、なんで甘いケーキなのに翠星石は叫んでるの?」<br /> 真「さあ?虫歯でも出来たんじゃなくって?」<br /><br /> 蒼(自業自得…)<br /> ジ「ん?なんか言ったか?」<br /> 蒼「別に?美味しいねこのケーキ♪」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> ジ「なあ、気になった事があるんだが」<br /> 真「何かしら」<br /> ジ「薔薇水晶の好物はシュウマイだろ?」<br /> 真「周知の事ね」<br /> ジ「でもあいつはコンビニのおにぎり2つでお腹いっぱいとか言う奴だ」<br /> 真「小食だものね」<br /> ジ「で、ここで雪華綺晶だよ。あの食物ブラックホールがいる家で、あいつはシュウマイを楽しむヒマなんかあるのだろうか?買い置きをなんかしても食べきる前に姉にいただかれちゃわないか?」<br /> 真「正直どうでもいいけれど…本人に聞いてみればいいじゃない」<br /> ジ「あ、そか。む、出たな白き黒穴」<br /> 雪「随分と珍妙なあだ名ですねジュン様」<br /> ジ「なあキラキーよ。お前は薔薇水晶のシュウマイをちゃんと食べずにいられてるのか?」<br /> 雪「シュ…シュウマ、イ?はて?それは…食べ物ですか?」<br /> ジ「は?うん…そうだけど」<br /> 雪「そうですか。では機会があれば食してみたいものです。あらいけません、もうこんな時間。お二方、食べ放題チャレンジが終わってしまうのでこれにて御免!」<br /> 真「…行ってしまったのだわ」<br /> ジ「うーん…なんか違和感があったような」<br /> 真「そうね。まるでシュウマイを知らないような…」<br /><br /> 薔「睡眠催眠による一時的記憶障害」<br /> ジ「うおっ!!」<br /> 薔「今のお姉ちゃんには薬と寝た後の治療によって『シュウマイ』という単語が記憶に残らないようにしてあるの…だから家にシュウマイの箱があっても食べ物だと認識出来ないし、食べ物だとわかっても直ぐに忘れてしまう…」<br /> ジ「………」<br /> ジ「きっともう今の会話で出た『シュウマイ』の単語は忘れているよ。だからジュンが何を言ったのか、自分が何を口に出したのかも覚えていない思い出せない…あ、私買い物の途中だったんだ。またね二人とも」<br /> 真「…行ってしまったわね」<br /> ジ「…だな」<br /> 真「どう?二人の話を聞いて何か得るものはあって?」<br /> ジ「うむ。自分の尺度であいつらを計ったのが間違いだった」</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> 薔薇と雪の家にて<br /><br /> 雪「もうすぐ今年も終わりを迎えるわ」<br /> 薔「…早かったね…(カキカキ」<br /> 雪「…可哀想な人々…時間は遥か昔から悠久に流れているのに…終焉と権輿に囚われているなんて…」<br /> 薔「…お姉様…?(カキカキ」<br /> 雪「歳が明けたからといって何も変わることなどないのに…人も街も心も…」<br /> 薔「…変わるのは…表層…だけ(カキカキ」<br /> 雪「なのに人は虚妄の変転に狂わされ…安易な希望を…無謀なイデアを抱く…」<br /> 薔「…理想…?(カキカキ」<br /> 雪「そう…貴女のことよばらしーちゃん」<br /> 薔「え?」<br /> 雪「その紙に書いている来年の目標、3年前からずっと変わってないもの」<br /> 薔「´・ω・`」<br /><br /><br /> 今年もあと三週間です</p> <p align="left"> </p> <p align="left"> </p> <hr /><p><br /> 雛「うい~疲れたの~」<br /> 紅「ちょっと雛苺、こんな夜遅くまでどこ言ってたの!?」<br /> 雛「この時期は忘年会が多くて困るの~」<br /> 紅「忘年会・・・?雛苺あなたお酒飲める歳じゃないでしょ!?」<br /> 雛「違うの真紅~。雛はお酒飲んでぐでんぐでんになってるおじさんに甘えてお小遣いもらってるだけなの~」<br /> 紅「な、なんて恐ろしい子・・・」<br /><br /> ほしゅ</p> <hr width="100%" size="2" /><p>ローゼンメイデンが女王だったらという妄想を歴史書風に書くSS<br /> 架空戦記系のSSにありがちな中二妄想が多いので注意。<br /> 舞台は架空のヨーロッパっぽい地域<br /><br /> 歴史書メイデン 1/8<br /> 聖帝・水銀燈(不明〜BS0/生誕地不明)<br /><br /> 成人とともに評議会24名とその護衛をわずか3人の配下だけで殺害し、都市国家を簒奪した彼女は瞬く間に他都市への侵攻を開始し、天才的な軍略を持って3年で自らの名前を冠した帝国を打ち立てた。<br /> この帝国こそが当文明域史上初の国家であった。<br /> 皇帝の野心は一つの文明を手中に収める程度では満足できず、東方蛮域への「大東征」を開始する。<br /> 生まれたての国家、その誕生の熱狂をそのまま外へと振り向けたのである。<br /> 「大東征」は彼女が亡くなるまで継続され、帝国の得た版土は現代に至るも世界最大の座を守っている。<br /><br /> 彼女は自らを侮辱する者の目を潰し牛裂きにする暴帝であったが、蛮帝ではなかった。<br /> 彼女は智を尊び、大図書館を作り、哲学者との議論を好んだ。<br /> あらゆる文化は大パトロン得た事を契機とし、現代にも通じる芸術が次々と生み出され、鉱業・農業は智の集積と勅令による強引な人口移動によりこの時代に大きく発展した。さらに初の統一銀貨と大戦争がその流通を支えたため、『帝国の人間は東西誰もが同じパンを食べる』と讃えられた。<br /><br /> 次々に革新的な行いを打ち出す彼女の発明は当然のように宗教にも及んだ。<br /> ——史上初の一神教の発明である。<br /> この世に全知全能にして唯一絶対の神は聖帝・水銀燈のみと位置づけたその宗教は広大な帝国の全土に発布され、帝国臣民は誰もがこの教えへの帰依と服従を要求された。そしてあらゆる異教および異教徒は、水銀燈の熱狂的な信者達の手で現世の業火に投げ込まれたのである。<br /> こうして全ての分野において神の如き力を示した水銀燈と彼女の帝国は、彼女の死とともに1月と保たずに滅亡した。<br /> 史上初の皇帝が最後に残した物は史上最大の権力と権威の空白であったのだ。<br /><br /><br /> モデル『アレキサンダー大王/アメンホテプ』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 2/8<br /> 妙王・金糸雀(AS162〜222/大陸中央部)<br /><br /> 帝国の崩壊後に起こった大規模な権力闘争は結局あらゆる地方の財貨を吐き出させ、街道等のインフラを衰退させた後、疫病の流行と飢饉により一人の勝者もなしに終結した。<br /> それからというもの大陸中央部はなまじ豊かな生産力がある分、豪族の小競り合いがただ延々と繰り返される時代が長く続いた。<br /> そんな行き詰まった地域史にふらっと冗談のように登場したのが金糸雀である。<br /> 彼女が歴史に観測されるのは対立し合う17の豪族全てに突然送られてきた即位宣言書である。<br /> 『私金糸雀は草国民草大多数の要望により、ここに草国国王になった事を自ら宣言し布告する。』<br /> と同時に当時最大の兵力をぶつけられる場所であった荒れ地を直轄地とする事が宣言された。<br /> 最初豪族達はだれもが他の豪族の奸計を疑った。その後一笑に付そうとした後、とある事実に気がついた。<br /> 金糸雀は100年を越す争いの間に行われた婚姻外交とその結果により、ほぼ全ての豪族の親戚であった。<br /><br /> なんの後ろ立ても兵力も持たない、誇大妄想気味の娘が行幸と称して豪族達の都を訪れても彼らは当主の親戚を無下に殺す訳にも野宿させるわけにもいかない。<br /><br /> そして彼女は見目よく、楽器の名手であったことからだんだんと各行幸先で評判となっていく。<br /> 普通ならばただの人気旅芸人で終わるのだが、彼女はあくまで豪族達の血族である。<br /> ふと気がつけば彼女は外交上の重要なパーティーでも呼びつけられるようになり、<br /> さらに進んで外交上の席にも紛れ込むようになり、時には彼女が条約締結の証人となった。<br /> 証人になると言う事は、彼女には何らかの力があると関係者に認められたと言う事であり、もちろん彼女はそれを裏付ける実力など一欠片も持っていない。それでも時には有力豪族が彼女に感謝を示し、頭を垂れると言う状況が生まれ始めた。<br /> あの領主様に丁重に扱われる金糸雀という人は凄いのではないか?<br /> 詐欺の手口であるが彼女はいつの間にか『権威』の創出に成功していた。<br /><br /> そうやっていくつかの和平条約の締結、緩衝地帯の共同開発などの証人となった彼女はついに全ての豪族が席につく場をもうける事に成功する。<br /> 豪族達の話し合いによる利害調整の場を作り出し、彼女は争い続けていた豪族達に一時的でも剣を置かせる事に成功したのだ。<br /> 豪族達の警戒を解かせたのは、実際的なこすい仕事は全て自称家老のみつがとりしきり、金糸雀自身は常に生々しい利害関係から距離を置いていたことも大きい。<br /> やがてこの場の議長をつとめる金糸雀は豪族達に王として推戴された。<br /> 金糸雀の虚名に実体を与えたのは常に豪族達自身であったことに気がついた者はいたのかどうか。それもふまえて彼女が策士であったのか、天然であったのかで頭を悩ませる歴史家は多い。<br /><br /> 王になってからも彼女の持つ兵力は最大で200名のみであり、その居城は城とは言うものの実際は平地の館にすぎなかったし、みつのとる政策は採算度外視な物ばかりだったので彼女はろくに私財を持たず貧しかった。<br /> それでも権力をほぼ持たず、権威のみを持つ豪族連合政権の旗頭として、彼女はその役割を良く果たし、今までのような剣のぶつかる勢力争いは姿を消して行ったのである。<br /><br /> 彼女の王家があった頃、なにか目覚ましい発展があったわけでもないが、国内はおおむね平和であり、着実に土地は開墾され人口は増えて行った。<br /> そのため草国は地域史家には午睡の時代と称される。<br /><br /><br /> モデル『アメリカ合衆国皇帝ジョシュアノートン/日本の皇室』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 3/8<br /> 昏王・翠星石(AS397〜423/結国ー現芝国)<br /><br /> 芝国人に今でも暗君の典型として嫌われる女王がいる。<br /> 彼女のした事は国庫を顧みない運河整備事業による経済破綻と飢饉が広がる中毎晩城で宴会を繰り広げたという物であり、結局彼女への反感を核に結国は反乱によって滅び、彼女自身も燃え盛る城と運命を供にしてしまった。<br /> 反乱のきっかけになった逸話は飢饉中の宴会をいさめた家臣に「黙ってさっさと食えですぅ」と暴食を強要したというものである。<br /> 確かにこれだけを上げれば彼女は愚かとしか言い様が無い人物であったと言える。<br /><br /> しかし運河の交通/輸送が結国後に立った国家達に莫大な利益をもたらした事を考えると運河整備事業はむしろ先見の明があったし、その宴会と言われた物は飢饉中でも食べられる食物とその調理法を探していたためとも伝わっている。<br /> もしそうならば彼女は運河を整備する大局的な先見性を持ち、飢える国民の事も案じていた賢王という事になる。<br /> もしそうならば彼女の身を危うくさせたのはただ、彼女自身の口の悪さと言う事になるだろう。人々に彼女の真意は伝わらず、ただその言葉のみが広まってしまったのだ。<br /><br /> 後の翠星石擁護派の歴史家はこう嘆く。<br /> 「ああ、ツンデレ国を滅ぼせし——」と。<br /><br /> モデル『隋の煬帝/マリーアントワネット』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 4/8<br /> 傷王・蒼星石(?〜AS449/生誕地不明)<br /><br /> 彼女がどこから来た人物で、本名はなんだったのか知る者はいない。<br /> ただ食い詰め物や罪人が押し込められる集落が点在するだけの痩せた寒冷地に流れ着いたとき、彼女は自分の名前も思い出せず、体は茨でひっかいたように細かな傷だらけであったとされる。<br /> 彼女は植物に関する技術を持ち双剣術に長けていた事からどこかの貴族/騎士階級の人物であった可能性が強い。<br /> またその集落に現れたのが423年だったことと、容姿が似ている事から結国女王翠星石<br /> もしくはその親族が逃げ延びたのではないかという説もある。<br /><br /> 彼女は国民に伝説化されており、正しい業績は判別しにくいが以下のようなものであるらしい。<br /> 周辺を支配していた盗賊団を斬り捨てて女王に即位した。寒冷地でも育つよう作物の品種改良所を建て、薬草の煎じ方を伝えた。全ての集落から参加者の出る祭りを始めた。<br /> 功績の多い彼女であるが何よりも大きかったのは、孤立集落が点在していただけのこの場所に共同体意識を育てた事であった。<br /><br /> 彼女の死後、現代でも400万前後の人口しか持たないこの国は何度も歴史上から姿を消した。<br /> 時には成長した国に併合され、時には大国同士の合戦場として蹂躙された。<br /> 独立国としての形を保っている時の方が短いくらいであったが、それでも国民は自分達の共同体意識を持ち続けた。<br /><br /> そして現代に至も彼らは自分達を『蒼女王の子供達』と自称し、国の事を『蒼女王の庭』と呼ぶ。<br /><br /><br /> モデル『特になし/地域→東欧・北欧』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 5/8<br /> 太陽王・真紅(AS1311〜1387/桜国)<br /><br /> 草国の豪族連合型の政体はだんだんと時代に合わなくなって行った。<br /> 開墾できるような土地はあらかた開墾してしまったし、それでいて人口は増え続ける。<br /> 街道と馬車組合は整備され、草国建国当初よりも遥かに流通の速度を早めていたのに、豪族の領地ごとにある関所がその動きをせき止め、関税を奪う。<br /> それら不協和音を止めえる国体をそもそも持っていなかった草国は遂にいくつかの国家に分裂する形で崩壊した。<br /> 享年1031歳。一王朝としても一国家としても最長不倒記録であった。<br /><br /> 草国の子供達はそれぞれに不和であり、誰が主導権を握るかで大きく対立した。<br /> 草国建国時とは違うのは、人口と農業生産の増加により騎士(職業軍人)が数多くなってきたため、いよいよ国家間の戦争が激化する時代となって行った事である。<br /> 現実の都合により世界の形は変わったが、誰も次の時代を明確に描けるものは決して多くなく。<br /> とにかくどこよりも領土を広げようという戦国時代がひたすらに続いた。<br /><br /> そのなかで一頭地抜けたのが大穀倉地帯の旧草国南西部にあった桜国である。<br /> そもそも食うに困らないため、温厚な人物が多く存在感の薄い国だったが、王女真紅がごく若い時期から政治的に活動を始めると事態は変わる。<br /> 真紅は余剰の小麦を餌に戦火で焼けだされた人々や傭兵、食い詰め者をかき集めて一つの兵団を作った。戦争を本業とし、農作業に捕われない常備軍の結成である。<br /> 農繁期に捕われず、身軽に動ける戦い方により、豊穣の秋に真紅が突如奇襲したのは旧草国のどの国でもなく、西の隣国、芝国であった。<br /> そもそも商人ギルドの傀儡王しかおらず(当時の王は最新機器である時計オタクで少年性愛者のぼけ老人であったという)、国家としてのまとまりに欠ける芝国正規軍は兵力三分の一にすぎない真紅軍に敗走した。<br /> 結局は商人ギルドに以前と同じ商売を続ける事を許した真紅が桜国・芝国連合国の王となることでこの戦争は終結した。<br /> 連合国とはいうものの軍権徴税権司法権その全てを一元化され、政治の首脳部には真紅とその側近である桜国人しかいなかったが。<br /><br /> 五年ほど内政・外交に努め力を蓄えた真紅は満を持して四万からなる軍を進発。<br /> 旧草国首都に向けて上洛を成功させる。<br /> 真紅は自らも金糸雀の係累である事を権威づけには利用しつつ——その実今だ旧首都に根強い合議制の政治は完全に破壊した。<br /> 彼女が旧首都に必要としていたのは百万の人口でも受け止められる都市としてのポテンシャルのみであり、その他の悪弊は全て切り捨てた。<br /><br /> 最大の穀倉地帯。運河を軸とする商業交易。人と物の集積地である大都市。<br /> 絶大の兵力。莫大な金。自らの指示に即応するトップダウン型官僚組織。真紅はそれら全ての主となった。絶対王政の開始である。<br /> 真紅が志向したのは国内の全てが一元化され風通しの良い中央集権国家だった。<br /> 彼女は王の血筋に生まれつきながら、天性の革命家であった。<br /><br /> 先祖である金糸雀王が水銀燈帝の末裔を自称していた(金糸雀王は自らを聖帝の妹と称する事すらあった。あまり誰にも相手にされなかったが)事と、その覇業と誇り高さゆえ真紅はよく水銀燈帝と比較されるが、水銀燈帝が自らを神と称したそのうぬぼれも含めて希代の英雄であったのに対して真紅は水銀燈帝よりもリアリストであった。<br /> それぞれに違う文化背景を持つ国家を全てなぎ倒し帝国を樹立するというような、大きな反発と流血が予想される事業を彼女は望まなかったのだ。<br /> そのため桜国自身の領土拡大も基本的にはここまでで終了した。<br /> とはいえ潰しても反桜国同盟のような大きな反発が予想されない限り、真紅は武力を用いる事に容赦無かったのだが。<br /> その後の彼女の活動は対外的にもやはり冴え渡っていた。<br /> 旧草国北部諸国には二度ほど戦争で痛めつけてから、外交を駆使し自らの親族を送り込み、彼らにその王位を継がせた。 大陸西部には運河での商業を活かし、常に莫大な貿易黒字を稼ぎ続けた。<br /> 大陸東部は群小国家が数多く存在し、特にうまみもないので単純に従属させた。<br /><br /> 余談だが、東部地域掌握時に唯一起こった波乱が蒼国との戦争である。<br /> 当時桜国は書状により、東部国家群に従属や譲歩を迫った。<br /> 他の国が消極的に言い訳、無視を決め込む中で唯一徹底抗戦・独立固持を叫んだのが蒼国である。<br /> その政治的センスの無さがまた、蒼国らしいとも言われる。<br /> また、蒼国が他の東部諸国とは違い、桜国が貿易赤字を計上するほど魅力的な高級品—— 薬草、寒冷地独自の魚(キングサーモン)、白熊、国花である蒼い花などを有していた事が余計にまずかった。<br /> 桜国に戦争をしてでも蒼国を併合するメリットがあると思われてしまったのだ。<br /><br /> 真紅は紅・桃・翠薔薇の三軍団一万五千を派遣し、蒼国討伐を命じた。<br /> 最初、桜国側は単純に蒼国二千の軍を蹴散らし王都を囲めば片がつくと思っていたし、結果的にはそうなった。<br /> 唯一誤算だったのは蒼国軍が思い詰める国民性のせいか玉砕するまで戦った事である。<br /> 信じられない速度で展開する一万五千の兵にあっさり包囲され矢尽き果て槍折れても、彼らは自分たちの誇りである双剣を持って殺されるまで戦い続けた。<br /> もちろん小国である蒼国に常備軍等あるはずも無くその二千の兵は普段魚を釣り、動物を狩り、痩せた土地を耕し、所帯を持つ蒼国の男達であった。<br /> それが誰一人として帰らぬ人となったのである。<br /> この時紅薔薇騎士団団長ホーリエが、我々は蒼国王都に乗り込む道を間違えて、葬儀場に乗り込んでしまったのかと思うほど、街中に女子供の慟哭と我々への怨嗟の視線に満ちあふれていた、と晩年に記述している。<br /> この時の一件が現代でも桜国人と蒼国人のあいだの反目の種となる桜蒼戦争である。もっとも蒼国人はもっぱら『大虐殺』と呼ぶが。<br /> そのため現代でも人類の傑物に数えられる真紅だが蒼国人の間では例外的に酷く人気が低い。<br /><br /> 会戦からたった十日で蒼国の名前を地図上から消滅させる桜国の力を目の当たりにした東部国家群はこぞって桜国への従属を表明した。<br /> この時の威名は恐れを持ってその他の地域にも伝わり、さらに桜国に表だって逆らう者を減らした。<br /> 蒼国のような見せしめの犠牲を生み出す事に躊躇は無かったが、真紅は基本的に寛大な王であり、中世の戦国時代は桜国による平和のもと一応の集結を見せたのである。<br /><br /> 彼女は桜国を拡大するのではなく、各国家を傘下に収める事によって彼女は世界一の高見に上ったのである。<br /><br /><br /> モデル『ルイ14世/織田信長 地域→フランク王国と東ローマ帝国(草国)/フランスの一部とドイツの一部(桜国)』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 6/8<br /> 狂王・雛苺(AS1573〜1608/桜国)<br /><br /> 桜国による平和。それに幕を引く人物がこの雛苺である。<br /> 彼女が政治的な人物ではなかったことと、桜国の崩壊は彼女の人生に密接に関わっているため、この項は彼女の人生に近づいてしまう。<br /><br /> 彼女は真紅王の直系の子孫であり、その父もまた桜国王であった。<br /> 本来祝福されて生まれてくるべきだった雛苺がその存在を秘匿されたのは、不義の子であったためだ。<br /> それでも母親のコリンヌ・フォッセーに引き取られ、表面上はフォッセー家に出された里子として幼少期は平和に過ごすことができたのだが、何よりまずかったのは雛苺が真紅の一族に現れる外見的特徴を全て持ち、なおかつ長じれば耳目を集めるほど美しくなる事が子供の頃からうかがい知れるような、そんな容姿をしていた事だった。<br /> 彼の父親は冷たかった。<br /> ある日雛苺を遠目に見た父王は極秘に彼女の殺害命令を出す。<br /> 母親であるコリンヌの必死の嘆願、と無言の恫喝によって命だけは助けられた雛苺だったが、フォッセーの家からは取り上げられてしまう。<br /> フォッセー家も名家であり守るべき体面があった。コリンヌ一人の力ではここまでが限界だった。<br /> 別れの日、自分一人が馬車に乗せられるのがなぜか理解できない五歳の雛苺に「かくれんぼをしましょう」とコリンヌはあやしていたそうである。<br /> 遠ざかる馬車の中から雛苺はずっと無邪気にコリンヌを見つめていたそうだ。<br /><br /> 彼女のために用意されたのは屋敷とは名ばかりの石造りの元牢獄であった。<br /> そして雛苺は窓一つなく、昼間から蝋燭が必要とされるような屋敷に幽閉された。そして幽閉される際には頭を全て包み込む、まるで鞄のような分厚い仮面をつけさせられ、それはこの幽閉期に基本的に外される事が無かった。<br /> 一体この幽閉期の十五年が彼女の精神にどれだけの重傷を与えたのか。<br /> この薄暗い石室の中で雛苺は常にいもしない友人と会話をしていたそうだ。<br /><br /> やがて父王が梅毒により死去した後、不思議なほど夭折の不幸が桜国王家を襲う。<br /> この時代より後の雛苺研究家の中には父王が死ぬより前に首を吊ったコリンヌの呪いのようだと語る者もいる。<br /> そしてついには真紅王からの直系の血を持つものは雛苺一人なってしまった。<br /> なにもそこまで真紅王の血が神聖視されていた訳ではないが、家臣を巻き込む跡目争いがあった。<br /> 野心と特定の家臣への肩入れを示す血の薄い対抗馬よりも操り人形として使える雛苺のほうが、官僚団と当時の宰相にとってはましに思えたらしい。<br /><br /> 今度はちゃんと正室との間に生まれた第一王女オディール(眠り病にて死去)と雛苺が瓜二つだったこともあって彼女は王室の血筋と認められて世界の中心国の玉座に座った。<br /><br /> 彼女が王座に就く前から国には泰平の世の中での経済赤字と暴食爛熟華美の文化が花開いていたのだが、彼女が王位についてからはその傾向に拍車がかかった。<br /> 都には黄金の雨が降る。そう例えられたほど桜国は国力を疲弊させてまで、宮殿、寺院、オペラハウスを作り続けた。官僚団にとっての市民の雇用対策、貴族にとっては自らの名を社交界に売るための当然の仕事。<br /> もちろん桜国の借金はふくれ続けていた。<br /> そしてそう言った問題はあまり誰も気にしなかった。<br /> 官僚団は王の意を忠実に実行する事だけが存在意義であり、新たな指示が与えられない限り、目の前の仕事さえこなせれば文句はなかった。<br /> 市民と貴族は消費する事に忙しかった。なにせ、あらゆる産品、あらゆる才能が運河を通して世界中から運ばれてくるのだ。<br /><br /> この間、絶対王政の主であり、この事態に一石を投じる事が出来た雛苺は、特に何もしなかった。<br /> 彼女は毎夜のように宴会を開き、疲れ果てて眠るまで常に遊び続けた。<br /> 彼女はいつだって寝室では眠らなかった。常に宴会場の煌々と灯された明かりの中で眠った。一人になる事と暗闇を病的に嫌っていたと言われている。<br /> そして彼女の行動はいつでも寂しがり屋の子供だった。<br /> 子供が新しいおもちゃで友達の気を引こうとするように彼女は次々に新しい芸人を多額の金で呼びつけ、また、それを一緒に観る聴衆すらも金で呼んだ。<br /> 時にはパーティーの出席者全ての人間に自分と同じドレスを着せ、自分の髪型を模したカツラをかぶせるという遊びに興じた。<br /> 彼女はなぜかその光景を見て笑うでも無く、涙ぐみながらほっとしたように身を屈めていた、と召使いの手記に残っている。<br /><br /> 彼女の遊びは古今東西どこを観てもあり得ない規模だったが、それでも桜国の財政から言えばはした金であり、桜国に降る黄金の雨を浴び続けていたい者達にとって雛苺は都合が良かった。<br /> 桜国は絶対王政なのである。王の意向が質素倹約ならば国中の享楽主義者達も襟を正さなければならなかったためだ。<br /> 雛苺の人気は高かった。美しく奇矯だが明るい性格をしており、陰気な荒淫王として知られた父王よりはるかにましだった。<br /> 彼女の考えだす遊びは常に流行の先端になり、彼女のドレススタイルは貴族から下々の者まで喜んで真似した。<br /> いまだ誰もが、桜国の泰平と繁栄が終わる事等夢にも思っていなかった。<br /> それでも、在位の始めはちゃんと公務は回っていた。<br /> 彼女に無私で尽くす奉公人が一人だけいたためだ。雛苺からトゥモエという変なあだ名で呼ばれていた蒼国人(当時は蒼州人)の侍女がそれである。<br /> 彼女は王権や金銭といった雛苺の力目当てに近づいた訳でもなく、ただただ雛苺の無茶な要求と癇癪によって使い潰される侍女達の欠員補充としてやって来たのだが、彼女にだけはなぜか雛苺がよくなついた。<br /> 政治を何も理解しない雛苺に書類へサインをさせるだけでも一苦労だったのだが、トゥモエが来てからは雛苺はすんなりと書類にサインしていた。常にトゥモエが事前に書類に目を通し内容を噛み砕いて雛苺に説明したからだ。<br /> 気づけば官僚や実務を切り盛りする貴族はトゥモエにまず話を通すようになっていた。王の勘気に当てられて生きていられる者等この国にはいないからだ。<br /> 蒼国人の頑固さか桜国の風に染まる事を拒否したのか、彼女は当時当然だった賄賂を受け取らないばかりか、なんの私服も肥やさず、ただただ雛苺の侍女であり続けた。<br /> 雛苺よりも先に目覚め、雛苺に給仕をし、雛苺がどこに出かけるにもついて行かされ、雛苺が寝付くまで絵本を読んでいた。<br /> また閲兵式でたくさんの兵隊を怖がって出てこない雛苺に変わって、軍の先頭で白馬に乗った。<br /> 何者でも手打ちにする権利を持つ雛苺がヒステリーを起こしているときでも、彼女だけはそばにいた。<br /> トゥモエがそばにいる時のみ、雛苺は暗闇も眠りも恐れずに済んだという。<br /><br /> そんな幸運も雛苺の在位十年目に終わる。<br /> トゥモエの死因はオディールと同じ眠り病であったと伝わる。<br /> そして雛苺のたがは完全に外れた。<br /> 手始めは異常なまでに豪華な葬儀だった。普通国王にしか行われないような葬儀がトゥモエに対して執り行われた。<br /> 蒼州出の小娘の棺に対してになぜこのように膝をつかなければならないのか首を傾げる者は多かったが、それすらも関係なく親に先立たれた幼子のように雛苺は身も世も無く泣いていた。<br /><br /> その後、雛苺はまずます自分の遊びにのめり込んで行き、暴発する癇癪の量も増え、突然泣き出した。<br /> 気がつけば当時貴族の間で流行した奇妙な宗教の拝み屋が彼女の取り巻きとなっていた。<br /> この拝み屋も下手を打てばすぐ殺されるので適当に雛苺から金を奪うとたいてい逃げたので、取り巻きもころころ変わった。結局雛苺は常に孤独だった。<br /> 彼らの吹き込むままに彼女は時に教会を取り壊し、その宗教の祠を建て、奇妙な死者再生の儀式を執り行う。<br /> 効果がなかったので拝み屋を関係ない親族もろとも三百人ほど首を飛ばして晒す。<br /> はたまた占いの結果次第で官僚の配置を簡単に変更した。<br /> そうかと思えば大きな閲兵式を行い、関係の少しこじれた大陸西部を攻めた。<br /> 雛苺を操り人形として扱おうとしていた、即位当時の老練な宰相と貴族達が軒並み引退していた事も大きい。まだ彼らにはこの国の舵取りをする気概があった。<br /> このころ桜国の政治中枢には雛苺に取り入る事で甘い汁を吸おうとするものしかいなくなっていた。<br /><br /> そしてある日、雛苺は宮殿で片手に持っていた人形を取り落とした。それを拾おうとして、そのまま階段から転げ落ちた。<br /> それがそのまま致命傷になった。<br /> 雛苺は3日寝込んで、そのまま息を引き取った。眠る事を恐れるように最後まで話し続けていたと言う。<br /> 彼女の最後の言葉は『雛の後には大洪水が起こってしまうわ』というものであった。<br /> 執り行われる国葬で流される涙についての発言だったであろうと最初は解釈された。<br /><br /> たが雛苺王の逝去とともに黄金の雨が降る時代も終わる。<br /> 借金を重ねてまで浪費し続けて来た桜国の財政はいよいよ破綻しだし、一度狂った官僚団の迷走は治まらず、この局面を乗り切る事が出来そうな人材もいなかった。<br /> 人々の目にも桜国の衰退は明らかになり始めていた。<br /> 雛苺王の逝去とともにそれらの問題は堰を斬ったように噴出し始めるのである。<br /><br /><br /> モデル『ポンパドゥール侯爵夫人 /鉄仮面/中東の王族(噂)』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 7/8<br /> 影王 雪華綺晶(?〜?/桜国)<br /><br /> 雛苺王の治世より4世代前、当時の王位継承問題により王族から廃嫡となったサラとい<br /> う王女がおり、彼女はそのひ孫にあたる人物である。<br /> サラ自身は桜国より追放の憂き目にあったが、その後の子孫は桜国に舞い戻り当事賤業<br /> とされた金融業を細々と営んでいた。<br /> 奇しくもその商会のあった場所は雛苺王が幽閉されていた屋敷の近くである。<br /> この商会は雪華綺晶が働き始めるまで政治とは関わりのない個人商店主向けの融資のみを行う商会にすぎなかったとされる。<br /><br /> しかし、泥濘に落ちれど黄金は黄金。商会の一粒種として生まれた雪華綺晶は雛苺王と<br /> 同じく古来よりこの血筋の持つカリスマ性を有していた。<br /> 金貸しと言うあらゆる場所、あらゆる階層に出入りできる仕事に精を出す傍ら、彼女は<br /> お手製の宗教を客の間に広めはじめる。<br /> 彼女自身が宗教を信じていた事は疑わしく、桜国の権力に近づく事の出来ない彼女のカリスマを存分に活かす方便であったと後の世には解釈されている。<br /> この宗教の最初の布教先となったのはもちろん、雪華綺晶の客先である商店主とその子方達であり、彼らは次々とこの宗教に転ばされて行った。<br /> 当時の爛熟の文化が過去の質素倹約を訴える既存宗教との折り合いが悪かった事もあるが、そもそもが金の貸し手と借り手。本心はどうあれ取引の都合上で改宗を行う者も多かった。<br /> 彼女は宗教の教祖には名目上の傀儡の人物を建てて、自分はあくまでも金貸し兼教会幹部として振る舞った。<br /> そしてあらゆる層に散らばった信者達の持ち寄る情報を集めては、自らの投機の武器とし、勢力が強くなるにつれて、そもそも相場を操る側に回った。<br /><br /> こうして銀行家、投資家として大成功を収めた雪華綺晶はその資金力をバックに当時起こった王位継承問題の弱小側のパトロンとなって、いよいよ桜国の権力に取り付こうと画策し始める。<br /> 彼女の持つ宗教と金の信者はどこにでもおり、隠然とした力を持っているため、暗殺(特に病殺に見せかけた毒殺)を専門とする集団がいるという黒い疑いは現代でもつきまとうが、その噂が生まれたのは当時の桜国王家を襲った夭折の不幸に端を発している。<br /><br /> 雪華綺晶がパトロンを努めた後継者は玉座まで後一歩という所までいくが結局は失敗し、既存の家臣に担ぎ上げられた雛苺王が桜国王として即位する事によってこの問題は収束した。<br /> なお、この失敗した後継者は失意のあまりか早いうちに眠り病で病没している。<br /> この勢力争いの和解案として出された、雪華綺晶の商会に宮廷御用達としての立場を与えるという決定が、これ以降さらに彼女を投資家として飛躍させ、その宗教も貴族や官僚層へ顕著に浸透していくのである。<br /> 雛苺王治世下の散財は彼女の商会の貸し付けが下支えしており、雛苺王自身もトゥモエの病没後、その宗教に改宗している。<br /> また彼女はこの血筋に珍しく多産な方で、出来た五人の子供達を各国に散らばらせて、<br /> それぞれに支店と裏の顔として大司教(この宗教に置ける国毎の責任者)の身分を持たせた。<br /> 雪華綺晶の話をすれば、そこに雪華綺晶が現れると言われた、広範な情報ネットワークの始まりである。<br /> 余談だが、桜国本店を継いだ彼女の長男は蒼国人との間に出来た子供で、かつての蒼星石王にそっくりな顔立ちをしていたといわれる。<br /><br /> 公的な記録において雪華綺晶が観察されるのは雛苺王死の2日前、雛苺王を見舞ったときである。<br /> この時雛苺王が雪華綺晶は長寿なのにいつまでも若々しく元気なのはなぜかと問うた時に彼女は「私、人を食っておりますから」と、取り澄まして答えたとのことである。<br /><br /> 彼女の葬儀は雛苺王とは対照的に密葬で、いつなくなったのかも公表されなかった。<br /> 彼女の子孫達は彼女の作り上げた商会を守り、いよいよ困窮して行く桜国とその貴族達から細心の注意を払いながら血税を取り立て、さらに立て直しのための金を貸しながら、対立軸の革命家達にも金を貸した。<br /> さらに桜国による平和が失われた後に起こった各国の戦争にもどちらの国にもそれぞれの支店が金を貸すという方式でさらに儲けて行く。<br /> そのような事を繰り返した結果これより後の現代史において、もはやこの一族抜きにどのような大事業も戦争もあり得なくなっていくのである。<br /><br /> 桜国最後の財務大臣はギロチンの露と消える前にこう慨嘆したと言う。<br /> 「ああ、桜国は…いや、全ての国は鎖よりも強く絹より細い蜘蛛の糸に絡めとられてしまった」<br /><br /> 彼女の遺訓を守り、今でも雪華綺晶の一族は自らの資産と保有する権力を秘し、公表していない。<br /> ミステリアスさのため今だに雪華綺晶は生きているだのといった都市伝説にも事欠かないが、基本的には雪華綺晶の一族の力を恐れて一族とその宗教の事を口にするのはタブーとされている。<br /> 王のいない、市民の世となった現代とまるでその対をなすように彼女の一族は「影の王」「世界経済の主」と呼ばれている。<br /><br /><br /> モデル『マイヤー・アムシェル/曹操/吉田茂/ユダヤ教徒の歴史/日本の仏教系新宗教』<br /><br /><br /> 歴史書メイデン 8/8<br /> あとがきにかえて<br /><br /> さて、この書もいよいよ製本上の余りページを残すのみとなったが、最後に拙の繰り言<br /> を聞かされては読者諸氏もたまるまい。<br /> そこで出来る限り事実のみを記すに留めたこの本であるが、最後の付録に、彼の地域に昔から囁かれるある妖精伝説について書こう。<br /> 紫色の妖精が英明な女王の元にのみ現れ、王の死と共にそこを去ると言う伝説である。<br /> 原型は水銀燈帝の覇業の始まりに従った3人の配下がメイメイ・メグのみはっきりとその後の史書にも登場するのに対し、今だ未詳である最後の一人が子供程度の背丈と紫色の服を着ていた事と当時の土俗的な精霊信仰が混じり合ってこの伝説が生まれたのであろう。<br /><br /> その後その妖精は金糸雀王の元に現れた。<br /> 王に推戴された後も孤児院の設立等で常に国庫を空にしては黒パンだけを齧っていた金糸雀王を見かねて、野鳥から卵を分けてもらい花の蜜と混ぜて焼きそれが今のオムレットになったのだと草国の童話は紡ぐ。<br /> また、翠星石王の最後の治世燃え落ちる城から彼女と想い人の小さな騎士団長を共に逃がしたのはこの妖精だったと古のロマンス詩は綴る。<br /> 蒼星石王の真の名前を取り戻させたのはこの妖精であったと蒼国の伝説は語る。<br /> 真紅王幼少のみぎり、現れた妖精を見ても王は揺るがず「家臣になれ」と命じたとオペラは歌う。<br /> 雛苺王は幽閉されたる頃「紫の妖精さんだけが雛の話し相手だったの」と語り、何もない空中に「ねぇ?」と確認を取ったと、トゥモエは手記に書く。<br /> 雪華綺晶は商会の近くを飛ぶ彼女に見惚れて自らその格好を真似し、その姿を商会のレリーフに刻んだと噂は囁く。<br /><br /> 近年拙は本邦初開催となった万国博覧会に行ったのだが、その中の桜国(今は共和制国家であるー残念な事に)<br /> の新進芸術家槐某氏の展示物として八体の人形が展示されるのを観た。<br /> それは見事な黒黄翠蒼紅桃白紫の人形であり、それぞれに水銀燈帝金糸雀王とレリーフのついていたため、彼の地の各女王に題を取ったのだと拙にも理解する事が出来た。<br /> そして最後の人形には「薔薇水晶」のレリーフがついていたのである。<br /> 事実は単純にその作者が考え名付けたものであろう。しかし拙は天才人形師の前にも現れた妖精が自らの名前を名乗ったのではないかと夢想するものである。<br /> 今でもその妖精は寝物語に人形師へ女王の物語を聞かせているのであろうか。<br /><br /><br /> 一九〇八年 斉藤記す</p>

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