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雪華綺晶短編16」(2009/02/10 (火) 15:21:30) の最新版変更点

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<p align="left"><br /> とある日の買い物帰り、私は本屋へと立ち寄った。別に欲しい本があった訳でもない、そもそも私は食べることにしか興味を持てない、と言っては過言だがそれに人生の大半を掛けていると思う。<br /> 妹の薔薇水晶はとっくの昔に諦めているし、雛苺にしては私に食べられるのではないかと恐怖している。もちろん、そんな気はこれっぽっちしかないのだ、信じてほしい。<br /> ともあれ、さっそく私は適当な雑誌に手を伸ばした。本屋に来て本を読まないとはステーキ店でステーキを頼まないと同じくらい愚の骨頂であるくらいはわかっている。<br /> 手に取ったのはテレビ番組が載っている雑誌、表紙の檸檬に引かれたわけではない。そういえば檸檬という名の小説を高校で習ったような気がする。題名しか頭にないがどんな話だったろうか、後から少し探してみるのもいいかもしれない、と私は思った。<br /> パラパラとろくに熟読などせずに適当に流し読みする。ろくにテレビなど見ないのだ、話を合わせる程度の情報さえあればいいのだ、要は『くんくん』と名の付く番組だけでいい。<br /> しかし流し読みとはいえ、時折目につくのは料理だ。例えばあの有名な五人グループが料理を作る番組やゲストと共に巨匠が料理を作る番組などだ。<br /> あういう番組等にはついつい目が行ってしまう。そしてゲストを嫉ましく思う。もちろん、私がゲストだったら、という妄想も欠かさないのだが。<br /> そんな事を思っているとページが無くなっていた。既に読み終えていたことすら気が付かないとは。なんたる間抜けぶりだろうか。 私はほんのちょっと自分を恥じた。<br /> そのまま、私は隣の本へと無意識に手を伸ばした。<br /><br /> ……気が付けば小一時間が経過している。外も薄暗さが一層増しており、そろそろ帰宅しなければ妹に叱られてしまう。一度、夜中に帰ってきたら普段からは想像もつかない鬼の形相の彼女が待っていた。<br /> お説教の内容はあまり覚えちゃいないが確か「年頃の女の子が夜中ふらふらしてはいけない」とかなんとか。<br /> 妹は妹で私を心配してくれるのだろうが私は大丈夫だろう。そんな物好きに出会うのは砂漠で落とした指輪を捜し出すくらいの確率だろうと自負しているからだ。<br /> さて、と私は帰る前にとある文庫を探した。その本は意外に様々な会社で印刷されていて迷ったが表紙が一番おいしそうなものにした。<br /> それを手にレジへと向かう。会計を済ましながら私はこの本の概要を少し思い出していた。<br /> 誰かに知られたくないが知られたい<br /> 妄想の極限、当時の私はそう思ったのだ。それと同時に不思議な親近感を感じた。<br /> 今の私もそう感じるのであろうか、それとも感じないのだろうか。<br /> 私は『檸檬』を持ちながらいつもの帰り道を歩く。しかし気持ちはどことなく、いつもとはまた違う懐かしい気がした。<br /><br /> 続く……ような気もしない</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 「桃薔薇のお姉様、大変なことがわかりました」<br /><br /> 「うゆ?なぜヒナに報告するの?」<br /><br /> 「勿論関係があるからです、が順をおって説明しなければならないのです」<br /> 「私は1日に成人女性の15人分のカロリーを摂取してます」<br /><br /> 「改めて聞くとすごいの」<br /><br /> 「しかしなぜか全く太りませんし、油断すると痩せてしまうのです」<br /> 「有り得ない事ですので思い切って雪華大学病院に入院して徹底的に調べました。」<br /> 「そして大変なことがわかったのです」<br /><br /> 「wktkなの」<br /><br /> 「私が必要なカロリーは普通の成人女性15人分、消化吸収の為にほとんど使われていたのです」<br /><br /> 「つまり雪華綺晶は消化吸収に使うカロリーを補う為にカロリーが必要だったのね」<br /><br /> 「そうなのです、まるで小動物のように、常に食べなければ栄養失調になるのです」<br /> 「ですから、あの~、その~」<br /><br /> 「ヒナが手に持ってるうにゅーが食べたいのね」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「さぁ、お待ちかねのハロウィンですわ」<br /> ジ「いや、早いから」<br /> 雪「カボチャはどうやって食べましょう? やはり甘く煮付け、それとも天ぷら」<br /> ジ「雪華綺晶…そのカボチャは食べれないぞ」<br /> 雪「?!」<br /> ジ「観賞用の馬鹿でかいのは中身もスカスカで不味いってテレビで言ってた」<br /> 雪「……女は度胸。食べれない植物なんて存在するでしょうか、いやしない」<br /> ジ「そうか、頑張ってくれ」<br /> 雪「もしゃもしゃ」<br /> ジ「(結局生で食うのか?)」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「いきなりですが突撃隣の晩御飯のコーナーですわ♪<br /> まずはジュン様のお宅から失礼しまーす!」<br /><br /> 雪「もきゅもきゅ…流石はのり様、ハンバーグの焼き加減も目玉焼きの半熟加減もパーフェクトですわ♪でわ次に行くとしましょう。」<br /><br /><br /> の「きゃぁあーっ!ちょっとトイレに行った間に今晩の花丸ハンバーグがなくなってるぅ~!」<br /> ジ「何ィー!?」<br /><br /><br /> 雪「次は商店街でお馴染みの柴崎時計店にやってまいりました。<br /> ふむふむ…今夜はおでんのようですわね。前々から煮込んでおいたようでグッドな味の染み加減でございます。むしゃらむしゃら…」<br /><br /><br /> 翠「のぁーっ!みんなで水戸黄門を見てる間におでんの大鍋がからっぽになってやがるですぅー!!」<br /> 爺「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」 <br /><br /> 雪「うふふふっ、さてさて次はこのマンションにしましょうか♪でわでわ中を拝見…」<br /><br /> み「……」クチャクチャ<br /> 金「……」クチャクチャ<br /><br /> み「あ…味しなくなった…醤油醤油っと……よし。」クチャクチャ<br /><br /> 雪「……さっきからティッシュに醤油を染み込ませたものをひたすら………くぅっ!」ダッ<br /><br /><br /> 金「…あれ、み…みっちゃん!みっちゃ~ん!!何故かこんなとこに壱万円札が落ちてるかしらぁー!!」<br /> み「嘘ぉー!?やったぁ!これで今夜は久々に卵かけご飯が食べれるわぁー♪」<br /> 金「やったあぁぁー♪あぁ…涙が、涙が……うわぁああああん!!」<br /> み「泣かないでカナ!泣か…ない…で…びぇええええええん!!」<br /><br /><br /> 雪「ふふっ、神様…願わくばあの2人にささやかな幸せを……。」<br /><br /><br /> 例えばそんな心温まる秋の夜の出来事…。</p> <hr /><p><br /><br /> 薔「じゃあお姉ちゃんお休み…」<br /> 雪「はい、お休みなさい」<br /> パフ。<br /> (ふう…寒くなってくると布団が恋しくなりますね…あ、寒くと言えば今日からハロウィンじゃないですか。ハロウィン…いいですわね…特にかぼちゃ)<br /><br /> (かぼちゃ…名前からしてあのまったりとした食感が伺えそうではないですか。あれほど甘味が顕著に現れたお野菜も珍しい…普通甘くても酸味や苦味が付随するものですが。…ふむ、酸っぱいかぼちゃや苦いかぼちゃもそれはそれで…)<br /><br /> (料理と言えば先ずは煮物でしょうか。あのしっとり感と嫌みのない澄んだ甘さがたまらないですわ…タネに近い部分がでろでろに溶けて煮汁と絡まった部分などまるで野菜のフォアグラと表現するに値する食の奇跡…)<br /><br /> (ああ、寒い時期はグラタンも欠かせませんわね。煮た時とは異なりあのホクホクとした感じがまた…それにトロリとチーズを絡めてぇえええ!!…あう、涎が。ティッシュティッシュ)<br /><br /> (ホクホクと言えば天ぷらも負けてはいませんね。基本的に野菜の揚げ物は苦味も薄く自然の甘味を引き立てるものですが…前食べたアスパラやナスやピーマンの天ぷらは最高でしたね…アスパラのジューシーさはお肉かと見間違えるほど…<br /> おっと、かぼちゃの話でしたね。そう、かぼちゃの天ぷらはその味を引き立てるに最適な一品…そこにおろしポン酢などでさっぱりといただくのがまた…)<br /><br /> (そうそう、ポタージュを忘れてはいけません。あの卑怯なほどの濃厚かつ芳醇な甘味と旨味…スプーンですくい口に運べば、ほら何とも言い難い至福の旨味がとろとろと舌に絡まってぇえええ!!…あら、ティッシュが尽きてしまいました)<br /><br /> ガチャ<br /> 薔「うー…ふあ…」<br /> 雪「あら?どうしましたかばらしーちゃん。こんな夜中に」<br /> 薔「夜中…?もう朝だよ…」<br /> 雪「あはは、何をおっしゃい…わーお」<br /> 薔「?…どうしたの?」<br /> 雪「いえ、別に。…ハロウィン…恐ろしい日…」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「JUM様~」<br /> J「どうした雪華綺晶?」<br /> 雪「鯖の味噌煮を作ってみましたの」<br /> J「おお、僕の好物じゃないか」<br /> 雪「頑張って作りましたの」<br /> J「そっか、しかし大変じゃなかった?」<br /> 雪「それはもう、裁いてから湯引きして臭みを消し、<br />   …ウンタラカンタラ」<br /> J「で、肝心の鯖の味噌煮は?」<br /> 雪「それが…味見をしていたらいつの間にか全部…」テヘッ<br /> J「…」<br /> 雪「すみません」シュン<br /> J「いいよ、今度は食べさせてくれよな」<br /> 雪「…JUM様」<br /> 雪「はい!喜んで」ニコッ<br /><br /><br /> 味噌煮食いたい保守</p> <p> </p> <hr /><p align="left"><br /> 雪「うう…寒いですわ」<br /> ジ「確かに寒い、凍えそうだ」<br /> 雪「こんな日は体が温まる物を食べたいですね」<br /> ジ「らーめんがいいなぁ」<br /> 雪「うーん…らーめんもいいのですがやはりお鍋がいいですわね」<br /> ジ「鍋もいいね」<br /> 雪「水炊き、湯豆腐、寄せ鍋、チゲ…ああ、たまりませんわ」<br /> ジ「おいおい、涎たれそうだぞ」<br /> 雪「あら、私としたことが」<br /> ジ「まったく」<br /> 雪「そんなこと言うジュン様にはこうです。えいっ」<br /> ジ「うわ!そんなにくっつくな、歩きにくい」<br /> 雪「うふふ、とても温かいですわ」<br /> 雪「(らーめんもお鍋もいいですが、ジュン様が一番温かいですわ)」  </p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪が降っていました。雪華綺晶は窓から空を眺め、落ちる雪を目で追いました。<br /><br /> 雪に音が食べられているようで、音は聞こえません。雪華綺晶は窓に触れて、その冷たさに驚きつつ窓に『犬』と書きました。<br /><br /> 意味なんてありません。あえて言うなら雪が降っていたからでしょう。<br /><br /> 雪の向こうから騒がしい声が聞こえてきました。雪に誘われ遊びに出た姉たちが帰ってきたのでしょう。<br /><br /> 何か暖まる飲み物を、と考え雪華綺晶は窓から離れました。雪は、まだまだ降り続いていました。<br /><br /><br /><br /> 寒い保守</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「問題…ヤングジャンプ版のローゼンメイデン第一巻が発売されるのはいつでしょう…?」<br /> ジ「え?何時だっけ」<br /> 雪「忘れたの…?」<br /> ジ「冗談だよ。12月の19日だろ?」<br /> 雪「…桃の種子と幻想の冬とのすれ違い…巻き込まれた私たちは在るべき場所を失った…」<br /> ジ「半年間の休載に唐突な打ち切り、そして一年後のヤングジャンプへの電撃移籍…大変だったな」<br /> 雪「…でも私たちは新しい器を手に入れた…素敵なからだ…新しいからだ」<br /> ジ「よかったな」<br /> 雪「…もちろん…買ってくれますよね?貴方たちも</p> <hr /><p><br /><br /><br /><br /> 紅「今日の掃除当番は白薔薇だったわね」<br /> 翠「サボるんじゃねーですよ」<br /> 雪「わかりました…」<br /><br /> で。<br /><br /> 雪「かわいそうな乙女たち…掃除当番の特権に気付かないなんて」<br /> 雪「ふふっ…真紅の机の中にくんくんの小説…ませてるふりして…こんな子供みたいな本を読んでるなんて…」<br /> 雪「水銀燈のロッカーの中にもくんくんの漫画…本当の貴女は…とっても幼い…」<br /> 雪「この中には誰も来ない…私だけの空間…私だけのもの…」<br /> 雪「…そして…この机がジュンの…!」<br /> ガタっ!<br /> 雪「…!?」<br /><br /> で。<br /><br /> 翠「やーっぱりろくでもないこと企んでやがったですねー…」<br /> 雪「……」<br /> 銀「ねぇ?当たっていたでしょぉ」<br /> 翠「水銀燈の言った通りです!チビ人間の机を漁ろうとするなんて非常識にもほどがあるですぅ!」<br /> 雪「……ニヤリ」<br /> 銀「…な、なによ…その笑みは…」<br /> 雪「…くんくん」<br /> 銀「なっ…!」<br /> 翠「?くんくんがどうかしたですか?」<br /> 雪「教えてさしあげる…」<br /> 銀「ま、待ちなさいっ!」<br /><br /> 雪華綺晶が以後掃除当番を任されることは、なかった</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 今日は冬至です<br /><br /><br /> 「今日は冬至か…そういや冬至といえば…」<br /> 「冬至といえばゆず湯ですわ!さあ、ジュン様御一緒致します!」<br /> 「風呂は一人で心安らかに入りたいから遠慮する」<br /> 「なんとつれない御言葉…ゾクゾクとキますわ」<br /> 「そこで覚醒するお前がわからない。ところでその手に持ってるのはカボチャか?」<br /> 「勿論そうですわ。冬至といえばカボチャ。これは外せませんもの♪」<br /> 「そういえば夕飯にカボチャの煮物が出たなあ。雪華綺晶はその見事なカボチャどうするんだ?」<br /> 「これは調理済みですわよ?ヘタの部分がつまみになってまして…ほら♪」<br /> 「中くり抜いてあったのか。胸焼けしそうな量のカボチャ団子だな…」<br /> 「はいジュン様、あ~ん」<br /> 「ちょっと恥ずかしいな…あ、あ~ん」<br /> 「はい、フェイントでした~♪これは私が一人で食べる分ですから差し上げませ~ん♪」<br /> 「お前もう帰れ」<br /><br /><br /> でもカボチャ団子って知らない人の方が多いのかなあ保守 </p> <hr /><p><br /><br /><br /> ゆず湯の流れに便乗しました。<br /><br /> 薔「お姉ちゃん、お風呂…どうぞ。ゆず湯、凄くいい匂いがするよ…」<br /> 雪「湯上がりのばらしーちゃんからも良い香りがしますわ」<br /> 薔「エヘヘ…。お姉ちゃん、くんかくんかしすぎだよ…」<br /> 雪「ばらしーちゃん、美味しそう…」ジュルリ<br /> 薔「お、お姉ちゃん…?」<br /> 雪「ゆず風味のばらしーちゃん、美味しいです」ガジガジ<br /> 薔「…痛いよ、お姉ちゃん。私の腕…噛みすぎ……」</p>
<p align="left"><br /> とある日の買い物帰り、私は本屋へと立ち寄った。別に欲しい本があった訳でもない、そもそも私は食べることにしか興味を持てない、と言っては過言だがそれに人生の大半を掛けていると思う。<br /> 妹の薔薇水晶はとっくの昔に諦めているし、雛苺にしては私に食べられるのではないかと恐怖している。もちろん、そんな気はこれっぽっちしかないのだ、信じてほしい。<br /> ともあれ、さっそく私は適当な雑誌に手を伸ばした。本屋に来て本を読まないとはステーキ店でステーキを頼まないと同じくらい愚の骨頂であるくらいはわかっている。<br /> 手に取ったのはテレビ番組が載っている雑誌、表紙の檸檬に引かれたわけではない。そういえば檸檬という名の小説を高校で習ったような気がする。題名しか頭にないがどんな話だったろうか、後から少し探してみるのもいいかもしれない、と私は思った。<br /> パラパラとろくに熟読などせずに適当に流し読みする。ろくにテレビなど見ないのだ、話を合わせる程度の情報さえあればいいのだ、要は『くんくん』と名の付く番組だけでいい。<br /> しかし流し読みとはいえ、時折目につくのは料理だ。例えばあの有名な五人グループが料理を作る番組やゲストと共に巨匠が料理を作る番組などだ。<br /> あういう番組等にはついつい目が行ってしまう。そしてゲストを嫉ましく思う。もちろん、私がゲストだったら、という妄想も欠かさないのだが。<br /> そんな事を思っているとページが無くなっていた。既に読み終えていたことすら気が付かないとは。なんたる間抜けぶりだろうか。 私はほんのちょっと自分を恥じた。<br /> そのまま、私は隣の本へと無意識に手を伸ばした。<br /><br /> ……気が付けば小一時間が経過している。外も薄暗さが一層増しており、そろそろ帰宅しなければ妹に叱られてしまう。一度、夜中に帰ってきたら普段からは想像もつかない鬼の形相の彼女が待っていた。<br /> お説教の内容はあまり覚えちゃいないが確か「年頃の女の子が夜中ふらふらしてはいけない」とかなんとか。<br /> 妹は妹で私を心配してくれるのだろうが私は大丈夫だろう。そんな物好きに出会うのは砂漠で落とした指輪を捜し出すくらいの確率だろうと自負しているからだ。<br /> さて、と私は帰る前にとある文庫を探した。その本は意外に様々な会社で印刷されていて迷ったが表紙が一番おいしそうなものにした。<br /> それを手にレジへと向かう。会計を済ましながら私はこの本の概要を少し思い出していた。<br /> 誰かに知られたくないが知られたい<br /> 妄想の極限、当時の私はそう思ったのだ。それと同時に不思議な親近感を感じた。<br /> 今の私もそう感じるのであろうか、それとも感じないのだろうか。<br /> 私は『檸檬』を持ちながらいつもの帰り道を歩く。しかし気持ちはどことなく、いつもとはまた違う懐かしい気がした。<br /><br /> 続く……ような気もしない</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 「桃薔薇のお姉様、大変なことがわかりました」<br /><br /> 「うゆ?なぜヒナに報告するの?」<br /><br /> 「勿論関係があるからです、が順をおって説明しなければならないのです」<br /> 「私は1日に成人女性の15人分のカロリーを摂取してます」<br /><br /> 「改めて聞くとすごいの」<br /><br /> 「しかしなぜか全く太りませんし、油断すると痩せてしまうのです」<br /> 「有り得ない事ですので思い切って雪華大学病院に入院して徹底的に調べました。」<br /> 「そして大変なことがわかったのです」<br /><br /> 「wktkなの」<br /><br /> 「私が必要なカロリーは普通の成人女性15人分、消化吸収の為にほとんど使われていたのです」<br /><br /> 「つまり雪華綺晶は消化吸収に使うカロリーを補う為にカロリーが必要だったのね」<br /><br /> 「そうなのです、まるで小動物のように、常に食べなければ栄養失調になるのです」<br /> 「ですから、あの~、その~」<br /><br /> 「ヒナが手に持ってるうにゅーが食べたいのね」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「さぁ、お待ちかねのハロウィンですわ」<br /> ジ「いや、早いから」<br /> 雪「カボチャはどうやって食べましょう? やはり甘く煮付け、それとも天ぷら」<br /> ジ「雪華綺晶…そのカボチャは食べれないぞ」<br /> 雪「?!」<br /> ジ「観賞用の馬鹿でかいのは中身もスカスカで不味いってテレビで言ってた」<br /> 雪「……女は度胸。食べれない植物なんて存在するでしょうか、いやしない」<br /> ジ「そうか、頑張ってくれ」<br /> 雪「もしゃもしゃ」<br /> ジ「(結局生で食うのか?)」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「いきなりですが突撃隣の晩御飯のコーナーですわ♪<br /> まずはジュン様のお宅から失礼しまーす!」<br /><br /> 雪「もきゅもきゅ…流石はのり様、ハンバーグの焼き加減も目玉焼きの半熟加減もパーフェクトですわ♪でわ次に行くとしましょう。」<br /><br /><br /> の「きゃぁあーっ!ちょっとトイレに行った間に今晩の花丸ハンバーグがなくなってるぅ~!」<br /> ジ「何ィー!?」<br /><br /><br /> 雪「次は商店街でお馴染みの柴崎時計店にやってまいりました。<br /> ふむふむ…今夜はおでんのようですわね。前々から煮込んでおいたようでグッドな味の染み加減でございます。むしゃらむしゃら…」<br /><br /><br /> 翠「のぁーっ!みんなで水戸黄門を見てる間におでんの大鍋がからっぽになってやがるですぅー!!」<br /> 爺「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」 <br /><br /> 雪「うふふふっ、さてさて次はこのマンションにしましょうか♪でわでわ中を拝見…」<br /><br /> み「……」クチャクチャ<br /> 金「……」クチャクチャ<br /><br /> み「あ…味しなくなった…醤油醤油っと……よし。」クチャクチャ<br /><br /> 雪「……さっきからティッシュに醤油を染み込ませたものをひたすら………くぅっ!」ダッ<br /><br /><br /> 金「…あれ、み…みっちゃん!みっちゃ~ん!!何故かこんなとこに壱万円札が落ちてるかしらぁー!!」<br /> み「嘘ぉー!?やったぁ!これで今夜は久々に卵かけご飯が食べれるわぁー♪」<br /> 金「やったあぁぁー♪あぁ…涙が、涙が……うわぁああああん!!」<br /> み「泣かないでカナ!泣か…ない…で…びぇええええええん!!」<br /><br /><br /> 雪「ふふっ、神様…願わくばあの2人にささやかな幸せを……。」<br /><br /><br /> 例えばそんな心温まる秋の夜の出来事…。</p> <hr /><p><br /><br /> 薔「じゃあお姉ちゃんお休み…」<br /> 雪「はい、お休みなさい」<br /> パフ。<br /> (ふう…寒くなってくると布団が恋しくなりますね…あ、寒くと言えば今日からハロウィンじゃないですか。ハロウィン…いいですわね…特にかぼちゃ)<br /><br /> (かぼちゃ…名前からしてあのまったりとした食感が伺えそうではないですか。あれほど甘味が顕著に現れたお野菜も珍しい…普通甘くても酸味や苦味が付随するものですが。…ふむ、酸っぱいかぼちゃや苦いかぼちゃもそれはそれで…)<br /><br /> (料理と言えば先ずは煮物でしょうか。あのしっとり感と嫌みのない澄んだ甘さがたまらないですわ…タネに近い部分がでろでろに溶けて煮汁と絡まった部分などまるで野菜のフォアグラと表現するに値する食の奇跡…)<br /><br /> (ああ、寒い時期はグラタンも欠かせませんわね。煮た時とは異なりあのホクホクとした感じがまた…それにトロリとチーズを絡めてぇえええ!!…あう、涎が。ティッシュティッシュ)<br /><br /> (ホクホクと言えば天ぷらも負けてはいませんね。基本的に野菜の揚げ物は苦味も薄く自然の甘味を引き立てるものですが…前食べたアスパラやナスやピーマンの天ぷらは最高でしたね…アスパラのジューシーさはお肉かと見間違えるほど…<br /> おっと、かぼちゃの話でしたね。そう、かぼちゃの天ぷらはその味を引き立てるに最適な一品…そこにおろしポン酢などでさっぱりといただくのがまた…)<br /><br /> (そうそう、ポタージュを忘れてはいけません。あの卑怯なほどの濃厚かつ芳醇な甘味と旨味…スプーンですくい口に運べば、ほら何とも言い難い至福の旨味がとろとろと舌に絡まってぇえええ!!…あら、ティッシュが尽きてしまいました)<br /><br /> ガチャ<br /> 薔「うー…ふあ…」<br /> 雪「あら?どうしましたかばらしーちゃん。こんな夜中に」<br /> 薔「夜中…?もう朝だよ…」<br /> 雪「あはは、何をおっしゃい…わーお」<br /> 薔「?…どうしたの?」<br /> 雪「いえ、別に。…ハロウィン…恐ろしい日…」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「JUM様~」<br /> J「どうした雪華綺晶?」<br /> 雪「鯖の味噌煮を作ってみましたの」<br /> J「おお、僕の好物じゃないか」<br /> 雪「頑張って作りましたの」<br /> J「そっか、しかし大変じゃなかった?」<br /> 雪「それはもう、裁いてから湯引きして臭みを消し、<br />   …ウンタラカンタラ」<br /> J「で、肝心の鯖の味噌煮は?」<br /> 雪「それが…味見をしていたらいつの間にか全部…」テヘッ<br /> J「…」<br /> 雪「すみません」シュン<br /> J「いいよ、今度は食べさせてくれよな」<br /> 雪「…JUM様」<br /> 雪「はい!喜んで」ニコッ<br /><br /><br /> 味噌煮食いたい保守</p> <p> </p> <hr /><p align="left"><br /> 雪「うう…寒いですわ」<br /> ジ「確かに寒い、凍えそうだ」<br /> 雪「こんな日は体が温まる物を食べたいですね」<br /> ジ「らーめんがいいなぁ」<br /> 雪「うーん…らーめんもいいのですがやはりお鍋がいいですわね」<br /> ジ「鍋もいいね」<br /> 雪「水炊き、湯豆腐、寄せ鍋、チゲ…ああ、たまりませんわ」<br /> ジ「おいおい、涎たれそうだぞ」<br /> 雪「あら、私としたことが」<br /> ジ「まったく」<br /> 雪「そんなこと言うジュン様にはこうです。えいっ」<br /> ジ「うわ!そんなにくっつくな、歩きにくい」<br /> 雪「うふふ、とても温かいですわ」<br /> 雪「(らーめんもお鍋もいいですが、ジュン様が一番温かいですわ)」  </p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪が降っていました。雪華綺晶は窓から空を眺め、落ちる雪を目で追いました。<br /><br /> 雪に音が食べられているようで、音は聞こえません。雪華綺晶は窓に触れて、その冷たさに驚きつつ窓に『犬』と書きました。<br /><br /> 意味なんてありません。あえて言うなら雪が降っていたからでしょう。<br /><br /> 雪の向こうから騒がしい声が聞こえてきました。雪に誘われ遊びに出た姉たちが帰ってきたのでしょう。<br /><br /> 何か暖まる飲み物を、と考え雪華綺晶は窓から離れました。雪は、まだまだ降り続いていました。<br /><br /><br /><br /> 寒い保守</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 雪「問題…ヤングジャンプ版のローゼンメイデン第一巻が発売されるのはいつでしょう…?」<br /> ジ「え?何時だっけ」<br /> 雪「忘れたの…?」<br /> ジ「冗談だよ。12月の19日だろ?」<br /> 雪「…桃の種子と幻想の冬とのすれ違い…巻き込まれた私たちは在るべき場所を失った…」<br /> ジ「半年間の休載に唐突な打ち切り、そして一年後のヤングジャンプへの電撃移籍…大変だったな」<br /> 雪「…でも私たちは新しい器を手に入れた…素敵なからだ…新しいからだ」<br /> ジ「よかったな」<br /> 雪「…もちろん…買ってくれますよね?貴方たちも</p> <hr /><p><br /><br /><br /><br /> 紅「今日の掃除当番は白薔薇だったわね」<br /> 翠「サボるんじゃねーですよ」<br /> 雪「わかりました…」<br /><br /> で。<br /><br /> 雪「かわいそうな乙女たち…掃除当番の特権に気付かないなんて」<br /> 雪「ふふっ…真紅の机の中にくんくんの小説…ませてるふりして…こんな子供みたいな本を読んでるなんて…」<br /> 雪「水銀燈のロッカーの中にもくんくんの漫画…本当の貴女は…とっても幼い…」<br /> 雪「この中には誰も来ない…私だけの空間…私だけのもの…」<br /> 雪「…そして…この机がジュンの…!」<br /> ガタっ!<br /> 雪「…!?」<br /><br /> で。<br /><br /> 翠「やーっぱりろくでもないこと企んでやがったですねー…」<br /> 雪「……」<br /> 銀「ねぇ?当たっていたでしょぉ」<br /> 翠「水銀燈の言った通りです!チビ人間の机を漁ろうとするなんて非常識にもほどがあるですぅ!」<br /> 雪「……ニヤリ」<br /> 銀「…な、なによ…その笑みは…」<br /> 雪「…くんくん」<br /> 銀「なっ…!」<br /> 翠「?くんくんがどうかしたですか?」<br /> 雪「教えてさしあげる…」<br /> 銀「ま、待ちなさいっ!」<br /><br /> 雪華綺晶が以後掃除当番を任されることは、なかった</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 今日は冬至です<br /><br /><br /> 「今日は冬至か…そういや冬至といえば…」<br /> 「冬至といえばゆず湯ですわ!さあ、ジュン様御一緒致します!」<br /> 「風呂は一人で心安らかに入りたいから遠慮する」<br /> 「なんとつれない御言葉…ゾクゾクとキますわ」<br /> 「そこで覚醒するお前がわからない。ところでその手に持ってるのはカボチャか?」<br /> 「勿論そうですわ。冬至といえばカボチャ。これは外せませんもの♪」<br /> 「そういえば夕飯にカボチャの煮物が出たなあ。雪華綺晶はその見事なカボチャどうするんだ?」<br /> 「これは調理済みですわよ?ヘタの部分がつまみになってまして…ほら♪」<br /> 「中くり抜いてあったのか。胸焼けしそうな量のカボチャ団子だな…」<br /> 「はいジュン様、あ~ん」<br /> 「ちょっと恥ずかしいな…あ、あ~ん」<br /> 「はい、フェイントでした~♪これは私が一人で食べる分ですから差し上げませ~ん♪」<br /> 「お前もう帰れ」<br /><br /><br /> でもカボチャ団子って知らない人の方が多いのかなあ保守 </p> <hr /><p><br /><br /><br /> ゆず湯の流れに便乗しました。<br /><br /> 薔「お姉ちゃん、お風呂…どうぞ。ゆず湯、凄くいい匂いがするよ…」<br /> 雪「湯上がりのばらしーちゃんからも良い香りがしますわ」<br /> 薔「エヘヘ…。お姉ちゃん、くんかくんかしすぎだよ…」<br /> 雪「ばらしーちゃん、美味しそう…」ジュルリ<br /> 薔「お、お姉ちゃん…?」<br /> 雪「ゆず風味のばらしーちゃん、美味しいです」ガジガジ<br /> 薔「…痛いよ、お姉ちゃん。私の腕…噛みすぎ……」</p> <p> </p> <hr /><br /><br /> 貴方には雪が似合う。<br /> そう彼女に言われたのはこの街が初雪に彩られた日だった。<br /> そう? と私が笑うと彼女は幸せそうにうん、と頷く。<br /> 曇天の空から舞い落ちる雪はこの病室からもよく見え、彼女は細雪が舞う空の様子をじっと、見つめていた。<br /> 私がここを尋ねてきたとき、水銀燈は珍しくこの病室には居なく、ただ、彼女が一人、誰も来ることもない病室で沈黙を保っていた。<br /> それはまるで今にも消えてしまいそうな幻の様に。手を伸ばしたら消えてしまいそうに。<br /> 最近の彼女は前より比べ覇気に溢れている、と聞いたのは何時の事だったろうか。<br /> 確かに彼女は前と比べれば覇気に、生きる活力に満ち溢れているのかもしれない。<br /> しかしだ、<br /> いつ天に導かれるか分からない彼女に生きる活力を持てという事自体間違っている、と以前私は思っていた。<br /> それは私達の活力とはわけが違うのだから。<br /><br /> それを聞いた彼女は笑っていた。確かに私もそう思っていた、と。<br /> しかし彼女は言った。<br /> 今は違う、と断言は出来ないけど、それが間違いに近いことは理解し始めた、と。<br /> 言葉では上手く説明は出来ない、だけどその中で私が唯一いえることは……<br /> それは? と私が聞き返すと彼女は私に微笑んだ。<br /> 私を想ってくれる人がいる。その事に気がつけたから、と。<br /> あの時の笑顔は美しかった。まるで女神が微笑んだ様だった。<br /> 捻くれたあの時の彼女からはまるで想像も出来なかったろう。<br /><br /> この雪は積もるかな? と彼女は粉雪を見つめつつ尋ねる。<br /> さあ、と私は返し、看護婦が剥いたという林檎を口に入れる。<br /> やっぱり、<br /> 彼女は私を見つめながら言う。<br /> 貴方にはやっぱり雪が似合うわ、雪華綺晶。<br /><br /> 私は窓のほうを黙って振り返る。<br /><br /> 今夜いっぱい、この雪は降り続けるらしい。

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