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『パステル』 -1-」(2008/04/07 (月) 23:45:48) の最新版変更点

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<p align="left"> <br />  <br />  <br /> 運命の巡り合わせ――とは、大概において、誤った思い込み。<br /> その場その時の雰囲気によって、偶然の産物でしかないものに、変なロマンを感じたに過ぎない。<br />  <br /> しかし……ごく稀にではあるが、本当の必然を引かされることもある。<br /> 例えば、希有の品と、彼女の出会いのように――<br /> 気紛れな誰かさんの、退屈しのぎの悪戯に、付き合わされた場合だ。<br />  <br />  <br />  <br /> 雛苺が、かつての同級生とおよそ2年ぶりの再会を果たしたのは、3月のはじめ。<br /> 桃の節句と呼ばれる、麗らかな日のことだった。<br />  <br /> 美大生となって2度目に迎える、2ヶ月にもわたる長い春休み。<br /> 彼の家の前を通りがかったのは、自転車を漕ぎ漕ぎ、配達のアルバイトに勤しんでいたときだ。<br /> かつては毎日、通学のために歩いた道も、今となっては随分と久しぶりだった。<br /> 懐かしい風景が、女子高生だった頃の思い出を、ありありと甦らせる。<br />  <br /> いつも、彼の部屋の窓をチラと横目に窺いながら、通り過ぎるだけだった自分――<br /> そう……いつだって、それだけ。彼女を引き留めるだけの理由は、生まれたことがなかった。<br />  <br /> けれど、その日に限って、ソレは起こった。<br /> 彼の家の門構えから、地を這うように勢いよく飛び出してきた、小さな影。<br /> 咄嗟に、猫か犬だと思った。しかし、違った。<br /> 自転車の接近にビックリして、道のド真ん中で竦んだのは……真っ白なウサギ。<br />  <br /> このままでは轢いてしまう。雛苺は息を呑んで、左右のブレーキを握り締めた。<br /> ――が、あまりに強く握りすぎたから、ブツッ! 急なストレスに堪えきれず、ワイヤーが弾けた。<br />  <br />  「びゃあぁっ?!」<br />  <br /> 止まらない。狼狽えるあまり急ハンドルを切り、壁に激突。<br /> そのまま、雛苺は自転車と共に、バッタリと横倒しになってしまった。<br />  <br /> 時ならぬ甲高い悲鳴と、クラッシュ音を聞いたのだろう。<br /> 目を丸くした彼が、門から飛び出してきて……<br /> そこに倒れている雛苺と視線が合うや、ハァ? と眉で八の字を描いた。<br />  <br />  「なにやってんだ、おまえ」<br />  「もー! 見れば解るでしょっ! 早く助けてなのーっ」<br />  「……はいはいはい」<br />  <br /> さも『しょーがねぇなあ』と言った風情で、彼は自転車を脇にどけて、<br /> 雛苺に手を差し伸べた。「大丈夫か?」<br />  <br />  「そういうコトは、最初に訊いて欲しかったのよ」<br />  「いや……こんな真っ直ぐな道で、どうして壁に突っ込むかなぁって。気になるだろ、普通」<br />  「だって! ジュンの家から、ウサギが飛び出してきたんだものっ」<br />  「ウチじゃ飼ってないぞ、ウサギなんか。ノラ猫だろ、どうせ。まったく、人騒がせな」<br />  「ち、違うもん!」<br />  <br /> 両の拳を握り、ムキになって反論する雛苺のアタマを、彼――<br /> 桜田ジュンは、ぽふぽふと叩いて、愉しげに笑った。<br />  <br />  「解った解った。信じてやるよ」<br />  「ぶー。なにその上から目線。失礼しちゃうのよ」<br />  「ちびっこいだけじゃなく、子供っぽさも、相変わらずだな」<br />  「チビはお互い様なのっ!」<br />  <br /> べーっ! と舌を出す雛苺に、彼は悠然と、微笑で応えた。<br />  <br /> あれ? 思いがけない肩透かしに、雛苺は続ける言葉を失った。<br /> 高校の頃は、身長のことを口にするだけで、他愛ない罵りの応酬が始まったものだが。<br /> ――たった2年。されど、2年。人が変わるには、充分すぎる時間なのか。<br />  <br />  「それにしても、久しぶりだよな。元気そうで、なによりだよ」<br />  「う、うい。ジュンもね」<br />  <br /> 変わっていないのは……精神的に成長していないのは、自分だけかもしれない。<br /> そんな、どこか置いてきぼりにされたような寂しさが、雛苺の胸に広がった。<br /> 水面に落とした墨汁の一滴が、ゆっくりと溶け馴染んで、淡い色を着けるみたいに。<br />  <br /> それまでの騒がしさから一転、押し黙って俯いた雛苺に、ジュンの心配そうな眼が注がれた。<br />  <br />  「どこか痛むのか? ちょっとウチに寄って、姉ちゃんに診てもらえよ」<br />  「う、ううん……平気なのよ」<br />  「いいから、こっち来いって。意地を張ったって、損するだけだぞ」<br />  <br /> ――ホントに、平気だから。<br /> 言いかけた台詞は、彼女の唇から零れなかった。<br /> なぜなら、ジュンに手を握られた瞬間、息と共に呑み込んでしまったのだから。<br /> 自分がアルバイトの途中だったことさえ、綺麗サッパリ忘れていた。<br />  <br />  <br /> 庭先に入ると、雛苺たちは、大小さまざまな荷物の群に出迎えられた。<br /> なにごとだろう。引っ越しの準備では、なさそうだが……?<br /> 雛苺が訊ねると、ジュンは笑いながら、否定した。<br />  <br />  「ないない。物置みたいになってる部屋があってさ。そこの掃除だよ。<br />   姉ちゃんと2人がかりで、昨日からやってるんだけど、ちっとも捗らなくて」<br />  <br /> なるほど、運び出された品々は、色が変わるくらいに厚く埃を被っている。<br /> 開け放したドアの奥にも、まだまだ、あるみたいだ。<br /> それにしても、どれだけ長く寝かせておいたら、こんな風になるのだろう。<br /> 眺めているだけで鼻がムズムズして、雛苺は顔を背け、クシャミを堪えた。<br />  <br />  <br />  <br />  「まあまあまあぁ……。久しぶりねぇ、ヒナちゃん」<br />  <br /> ジュンの姉、のりは、雛苺と顔を合わせるなり、パッと表情を輝かせた。<br /> それでも、疲労困憊の様相は、隠し切れない。目元が暗く、窶れて見える。<br /> ジュンの言っていたように、片づけに四苦八苦しているようだ。<br />  <br />  「姉ちゃん、こいつ、チャリでコケたんだ。ちょっと診てやってよ」<br />  「あらあらぁ、大変。それじゃあ、奥のほうで手当しましょうねぇ~」<br />  「う……そ、そんな大袈裟なコトじゃないのよ」<br />  「駄目よぅ! 目立たないケガほど、実は怖いんだからぁ。<br />   お姉ちゃん、部活で応急手当の講習を受けたことあるから、任せといて」<br />  <br /> ここにきて、やっと、雛苺はアルバイトのことを思い出した。<br /> 早く仕事に戻らなければ、日暮れまでに間に合わない。<br /> ――が、のりは治療する気で、救急箱の中身をゴソゴソ探っていた。<br />  <br /> のりは基本的におおらかで、人当たりがよく、面倒見のいい人間だ。<br /> しかし積極的で、意外に頑固な一面も併せ持っていた。<br /> 教師のような、継続的な辛抱強さを求められる職に就くには、いい性格だろう。<br /> しかし、過ぎたるは及ばざるが如し。度が過ぎれば、お節介になってしまう。<br /> ちょうど、今みたいに。<br />  <br />  「それじゃあ、お願いしますなの」<br />  <br /> 雛苺は吐息して、素直に、擦り剥いた箇所を、のりに見せた。<br /> ささっと手当してもらって、引き上げるのが得策だろう。<br />  <br /> のりの手際の良さに感心しながら、雛苺は、片づけを手伝おうかと申し出てみた。<br /> 明日から週末で、アルバイトは休みだ。急ぎの用事もない。<br /> けれども、彼女は雛苺の気遣いに感謝しながらも、やんわりと断った。<br /> そして、憂いを含む笑みを浮かべた。<br />  <br />  「お姉ちゃんね……もうすぐ、この家を離れちゃうのよぅ。<br />   だから、ワガママだけど……後始末だけは、ね。この手で、しておきたくってぇ」<br />  「どうしてなの? ひょっとして、お嫁に行っちゃうの?」<br />  <br /> その問いに、彼女は、かぶりを振った。「マンションで、独り暮らし」<br />  <br />  「この家にはジュン君と、お嫁さんが暮らすのよぅ」<br />  <br /> ――え? <br /> 雛苺は胸裡で、のりの台詞を反芻した。3度目で、じわっと実感が戻ってきて……<br /> 4度目にして漸く、アタマが理解した。彼、結婚するんだ……と。<br /> 考えてみれば、ジュンも自分も、今年で二十歳になる。<br /> それに、服飾系の専門学校に進んだ彼は、この春に卒業して、社会人になるのだ。<br /> 所帯を持つのも、早すぎて損をすることはない。<br />  <br /> 対して、自分はどうか。大学に進んだけれど、休日にデートする恋人もなく。<br /> バイト三昧の日々は、それなりに充足感を与えてくれるが……だけど……。<br />  <br /> こういうの、負け犬って言うのかなぁ――なんて。<br /> またぞろ、置いてきぼりにされた気分が甦ってくる。<br /> 雛苺は、治療を続けるのりの手元を、ぼんやりと眺めていた。<br />  <br />  <br />  <br /> 手当を済ませ、仕事に戻ろうと玄関を出た彼女を、ジュンが待っていた。<br />  <br />  「よっ! なんともなかったか?」<br />  「う、うい。ごめんね、心配かけちゃって」<br />  <br /> なんとなく顔を合わせにくかったけれど、逃げ去るのも変な気がして、<br /> 雛苺は、深呼吸ひとつの後、にっこりとジュンに笑いかけた。<br />  <br />  「それより、聞いたのよ。結婚するんですってね。おめでとうなの!」<br />  「お、おう……ありがとな。なんか、本当に急なことでさ。<br />   僕自身、自分のことなのに、まだ実感わいてこないって言うか」<br />  「要するに、浮ついちゃうぐらい幸せってコトなのね」<br />  「まあ、な」<br />  <br /> 臆面もなく惚気たジュンのみぞおちに、雛苺は頭突きを入れた。<br /> もちろん、軽く。仔猫がじゃれるように。<br />  <br />  「ねえねえ。ジュンのお嫁さんって、どんな子? ヒナの知らない人なの?」<br />  「いや、知ってると思うよ。憶えてないかな、学年のプリンセス」<br />  「……あぁ。あの子なのね」<br />  <br /> 名前は失念してしまったが、面差しは、微かに憶えていた。<br /> チャーミングという表現と制服がよく似合う、可愛らしい女の子だった。<br /> どういった縁で結ばれたのかは、知る由もないが、いろいろ有ったのだろう。<br /> 雛苺が、ジュンと逢わなかった2年の間に。<br />  <br />  「それじゃあね、ジュン。また、いつか――」<br />  <br /> 言って、雛苺はブレーキの壊れた自転車へと歩き出した。<br />  <br /> その肩を引き留める、温かな感触。<br /> ジュンの手は、いつの間にか、大きく力強く、成長していた。<br /> 大切な誰かを、しっかりと守れるだろう男性的な手に。<br />  <br />  「ちょっと待った。お前に、渡そうと思ってた物があるんだ」<br />  <br /> 言って、彼は、手にしていた古めかしい木箱を、ずいっ……と突き出した。<br /> なぁに? 受け取って、開いた雛苺の満面が、喜色に満たされてゆく。<br /> それは、80色セットのパステルだった。<br />  <br />  「わぁあ……すっごぉい! どうしたの、これっ!」<br />  「物置の整理してて、見つけたんだ。ウチの両親、世界中を飛び回っててさ。<br />   いろんな場所で、アヤシイ物を買い漁っては、ここへ送ってくるんだよ。<br />   蓋の裏に、注意書きっぽいのが貼ってあるんだけど、僕には読めなくってな」<br />  <br /> ジュンが読めないということは、ラテン語とか、ロシア語だろうか。<br /> それとも、もっと古い――くさび形文字や、甲骨文字?<br /> ……まさかね。雛苺は、蓋をひっくり返してみた。<br />  <br />  「なぁんだ。これ、ドイツ語なのよ」<br />  「解るのか? なんて書いてあるんだ」<br />  「うーっと……このパステルで絵を描くと、その絵のとおりになる、って。<br />   まだ続きがあるけど――紙が虫食いになっちゃってて、判読できないのよ」<br />  「……ふん。なんともまあ、胡散臭いもんだな。いかにも、あいつら好みだ」<br />  <br /> ――辟易。肩を竦めたジュンの口振りは、まさしく、その二文字に尽きた。<br /> 彼の小さな悪意に毒されて、柳の葉を想わせる雛苺の眉も、やにわに曇る。<br /> 歳の割にナイーブな彼女は、日頃から、些細な機微にも過敏に反応しがちだった。<br /> それがプラスに作用するなら、素晴らしいインスピレーションも湧くのだろうけれど……。<br />  <br />  「ご両親を『あいつら』呼ばわりするなんて、いけないのよ」<br />  「いいんだよ。あんな、ろくでなし連中なんか、どう呼んだってさ。<br />   ここ数年、ずっと会ってないし……もう、親って実感ないね。遠い親戚――みたいな?<br />   そのパステルにしても、どうせ買ったことさえ忘れてんだろうさ、きっと」<br />  「……でもぉ。それなら、ヒナが貰っちゃダメなんじゃないの?」<br />  「構わないさ。ウチにあったって、誰も使わないし。また、ホコリ被ったままになるだけだ。<br />   どんな上等な道具でも、使ってくれる人が居なきゃ、ただのガラクタだろ」<br />  <br /> それに……と、少しの間を空けて、ジュンは照れくさそうに続けた。<br /> 「高校の時にさ……チョコレート貰ってたのに、いっつも、そのまんまだったから」<br />  <br /> 数年遅れの、少し早いホワイトデーのお返し――と?<br /> 変なところで律儀なんだから。雛苺は呆れた。彼らしいと言えば、まあ、らしいのだけれど。<br />  <br /> そういう渡され方をされては、女の子の心情として、固辞できなくなってしまう。<br /> このパステルが使い手のないまま、ガラクタにされてしまうのも不憫で……<br /> 結局、雛苺は受け取ってしまった。半ば、押しつけられるカタチで。<br />  <br />  <br />  <br /> と、まあ。こう言うと、いかにも仕方なしの渋々といった趣があるが――<br /> 実のところ、雛苺の喜びようは大層なものだった。<br /> ついさっきまで感じていた、置いてきぼりの気分が、すっかり消えてしまうほどに。<br /> 些か現金ではあるが、気持ちの切り替えが早いのも、彼女の長所だった。<br />  <br /> 小さな頃から絵を描くことが好きだった彼女にとっては、画材すべてが宝物。<br /> ましてや、不思議な効力を秘めたパステルとくれば……。<br />  <br />  「ステキ! ステキ! あぁ~ん、なにを描くか迷っちゃうのよー」<br />  <br /> 彼と別れて、残りの配達を片づけているときも、木箱はずっと胸に抱きしめたまま。<br /> いつもなら疲れて重たくなっている両脚も、ステップを踏みたくてウズウズしていた。<br /> すぐにでも試してみたい。貼ってあった説明書が真実なら、凄いことだ。<br /> 沸きあがる衝動は、雛苺の心身を、かつて無いほど浮つかせていた。<br />  <br />  <br />  <br /> アルバイトを終えて、寄り道もせずに帰宅。<br /> 夕食の時も。風呂で1日の疲れを流し、自室で洗い髪を乾かしている間も。<br /> 雛苺のアタマには、あのパステルで絵を描きたい欲求しかなかった。<br />  <br /> とりあえず、どんなモチーフなら、実験に最適かしら?<br /> 物理的な変化――破損とか、誰でも簡単に再現できそうなテーマなら、意味はない。<br /> およそ有り得ない絵を描いて、そのとおりに変化するかを、検証すべきだろう。<br /><br /> でも、奇抜なテーマ――たとえば、隕石が自宅の庭に落ちる、とか――を描いて、<br /> 現実になったら厄介だし、その隕石にナゾの物体Xなんかが付いていたら怖すぎる。<br /><br /> じゃあ、自画像は? 雛苺の閃きは、幾ばくもなく、落胆に変わった。<br /> それなら、他者に迷惑はかからない。<br /> でも、本当に効力があったとしたら、少しの失敗でも、取り返しのつかない事態になってしまう。<br /><br /> ドラクロワやゴヤのような写実的な絵を、狂いなく仕上げられるのであればいい。<br /> だが、キュビズムみたいな自画像を描いて、そのとおりに顔が変わるとしたら――<br /> 交通事故で顔面がグチャグチャに潰れる様を想像して、雛苺は、ブルッと身震いした。<br /><br />  「うぅっ。や、やっぱり……初めは無難に、静物画でいくのよー」<br /><br /> モデルは、何にしたらいいだろう。雛苺は、ぐるり部屋を見回した。<br /> どうせなら変形しにくかったり、壊れにくい物を選ぶ方が、いいかもしれない。<br /> それでも絵と同じ変化を遂げたなら、パステルの効果を、少しは信じる気にもなろう。<br />  <br />  <br /> 彼女の視線が、本棚に飾ってある、高さ20センチほどの石像を捉えた。<br /> 何年か前、キャンプで訪れた山中に投棄されていた、ベヘモス神像だ。<br /> 横たわった状態で、腐葉土に半ば埋もれていた姿に、なんとなく愁情を誘われ……<br /> そのままにしておけなくて、わざわざ持ち帰ったものだった。<br />  <br />  「うんっ。これなら、簡単に形が変わったりしないから、もってこいなのっ!」<br />  <br /> 雛苺は愛用のスケッチブックを手に、ベッドに座り込んだ。<br /> 明日から週末で、アルバイトは休み。絵を描く時間なら、たっぷりある。<br /> パジャマの袖をたくし上げて、気合いも充分。<br />  <br />  <br /> きりりと表情を引き結んで、雛苺は、茶色のパステルを手にした。<br />  <br />  <br />  <br />   -<a href="http://www9.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/3697.html">to be continued</a>-<br />  <br />  </p>
<p align="left"> <br />  <br /> 運命の巡り合わせ――とは、大概において、妄想。誤った思い込みである。<br /> その場その時の雰囲気によって、偶然の産物でしかないものに、変なロマンを感じたに過ぎない。<br />  <br /> しかし……ごく稀にではあるが、本当の必然にぶつかることもある。<br /> たとえば、希有の品と、彼女の出会いのように――<br /> 気紛れな誰かさんの、退屈しのぎの悪戯に、付き合わされた場合だ。<br />  <br />  <br />  <br /> 雛苺が、かつての同級生と約2年ぶりの再会を果たしたのは、3月のはじめ。<br /> 桃の節句と呼ばれる、麗らかな日のことだった。<br />  <br /> 美大生となって2度目に迎える、2ヶ月にもわたる長い春休み。<br /> 自転車での配達アルバイトに勤しんでいたとき、彼の家の前を通りがかったのだ。<br /> 懐かしい風景が、女子高生だった頃の記憶を、ありありと甦らせる。<br /> かつては毎日、通学のために歩いた道も、今となっては随分と久しぶりだった。<br />  <br /> いつも、彼の部屋の窓をチラチラと横目に窺いながら、通り過ぎるだけ――<br /> そう……いつだって、それだけ。<br /> 劇的な変化をもたらしてくれるナニかを、ココロのどこかで期待しつつも、<br /> 彼女を引き留めるだけの理由は、遂に生まれることがなかった。<br />  <br />  <br /> 今日もまた、あの頃と同じように、何事もなく通り過ぎるだけなのか。<br /> ちょっとだけ寂しい気持ちが、雛苺の胸を苦しくする。<br /> 今更だとは解っていても、静電気で貼りついてくる糸くずみたいな未練を、振り払えない。<br /> 払おうとすればするほど、却って意識してしまうのだ。</p> <p align="left">こんなコトでは、ダメ。ブンブンと頭を振って、雑念を粉々に砕く。<br /> しかし、雛苺が足早に行き過ぎようとした矢先、ソレは起こった。</p> <p align="left">彼の家の門構えから、地を這うように勢いよく飛び出してきた、小さな影。<br /> 咄嗟に、猫か犬だと思った。だが、違った。<br /> 自転車の接近にビックリして、道のド真ん中で竦んだのは……真っ白なウサギ。<br />  <br /> このままでは轢いてしまう。雛苺は息を呑んで、左右のブレーキを握り締めた。<br /> ――が、あまりに強く握りすぎたから、ブツッ! <br /> 急なストレスに堪えきれず、ワイヤーが弾けた。<br />  <br /> 「びゃあぁっ?!」<br />  <br /> 止まらない。狼狽えるあまり急ハンドルを切り、民家の外壁に激突。<br /> そのまま、雛苺は自転車と共に、バッタリと横倒しになってしまった。<br /> 配達途中の品は、幸いにもバッグに収められていたので、ブチ撒けずに済んだ。<br />  <br /> 時ならぬ甲高い悲鳴と、クラッシュ音を聞いたのだろう。<br /> 目を丸くした彼が、門から飛び出してきて……<br /> そこに倒れている雛苺と視線が合うや、ハァ? と眉で八の字を描いた。<br />  <br /> 「なにやってんだ、おまえ」<br /> 「もー! 見れば解るでしょっ! 早く助けてなのーっ」<br /> 「……はいはいはい」<br />  <br /> さも『しょーがねぇなあ』と言った風情で、彼は自転車を脇にどけて、<br /> 雛苺に手を差し伸べた。「大丈夫か?」<br />  <br /> 「そういうコトは、最初に訊いて欲しかったのよ」<br /> 「いや……こんな直線道路で、どうして壁に突っ込むかなぁって。気になるだろ、普通」<br /> 「だって! ジュンの家から、ウサギが飛び出してきたんだものっ」<br /> 「ウチじゃ飼ってないぞ、ウサギなんか。どうせノラ猫だろ。まったく、人騒がせな」<br /> 「ち、違うもん!」<br />  <br /> 両の拳を握り、ムキになって反論する雛苺のアタマを、彼――<br /> 桜田ジュンは、ぽふぽふと叩いて、愉しげに笑った。<br />  <br /> 「解った解った。信じてやるよ」<br /> 「ぶー。なにその上から目線。失礼しちゃうのよ」<br /> 「ちびっこいだけじゃなく、子供っぽさも、相変わらずだな」<br /> 「チビはお互い様なのっ!」<br />  <br /> べーっ! と舌を出す雛苺に、彼は悠然と、微笑で応える。<br /> あれ? 思いがけない肩透かしに、雛苺は続ける言葉を失った。<br /> 高校の頃は、身長のことを口にするだけで、他愛ない罵りの応酬が始まったものだが。<br /> ――たった2年。されど、2年。人が変わるには、充分すぎる時間なのか。<br />  <br /> 「それにしても、久しぶりだよな。元気そうで、なによりだよ」<br /> 「う、うい。ジュンもね」<br />  <br /> 変わっていないのは……精神的に成長していないのは、自分だけなのかも。<br /> そんな、どこか置いてきぼりにされたような寂しさが、雛苺の胸に広がった。<br /> 水面に落とした墨汁の一滴が、ゆっくりと溶け馴染んで、淡い色を着けるみたいに。<br />  <br /> それまでの騒がしさから一転、押し黙って俯いた雛苺に、ジュンの心配そうな眼が注がれた。<br />  <br /> 「どこか痛むのか? ちょっとウチに寄って、姉ちゃんに診てもらえよ」<br /> 「う、ううん……平気なのよ」<br /> 「いいから、こっち来いって。意地を張ったって、損するだけだぞ」<br />  <br /> ――ホントに、平気だから。<br /> 言いかけた台詞は、彼女の唇から零れなかった。<br /> なぜなら、ジュンに手を握られた瞬間、息と共に呑み込んでしまったのだから。<br /> 自分がアルバイトの途中だったことさえ、綺麗サッパリ忘れていた。<br />  <br />  <br /> 庭先に入ると、雛苺たちは、大小さまざまな荷物の群に出迎えられた。<br /> なにごとだろう。引っ越しの準備だろうか……?<br /> 雛苺が訊ねると、ジュンは笑いながら、否定した。<br />  <br /> 「ないない。物置みたいになってる部屋があってさ。そこの掃除だよ。<br />  姉ちゃんと2人がかりで昨日からやってるんだけど、ちっとも捗らなくて」<br />  <br /> なるほど、運び出された品々は、色が変わるくらいに厚く埃を被っている。<br /> 開け放したドアの奥にも、まだまだ、あるみたいだ。<br /> それにしても、どれだけ長く寝かせておいたら、こんな風になるのだろう。<br /> 眺めているだけで鼻がムズムズして、雛苺は顔を背け、クシャミを堪えた。<br />  <br />  <br />  <br /> 「まあまあまあぁ……。久しぶりねぇ、ヒナちゃん」<br />  <br /> ジュンの姉、のりは、雛苺と顔を合わせるなり、パッと表情を輝かせた。<br /> それでも、疲労困憊の様相は、隠し切れない。目元が暗く、窶れて見える。<br /> ジュンの言っていたように、片づけに四苦八苦しているようだ。<br />  <br /> 「姉ちゃん、こいつ、チャリでコケたんだ。ちょっと診てやってよ」<br /> 「あらあらぁ、大変。それじゃあ、奥のほうで手当しましょうねぇ~」<br /> 「う……そ、そんな大袈裟な。ほっとけば治っちゃうのよ」<br /> 「そんなのダメよぅ! 目立たないケガほど、実は怖いんだからぁ。<br />  お姉ちゃん、部活で応急手当の講習を受けたことあるから、任せといて」<br />  <br /> ここにきて、やっと、雛苺はアルバイトのことを思い出した。<br /> 早く仕事に戻らなければ、日暮れまでに間に合わない。<br /> ――が、のりは治療する気で、救急箱の中身をゴソゴソ探っている。<br />  <br /> のりは基本的におおらかで、人当たりがよく、面倒見のいい人間だ。<br /> しかも積極的で、意外に頑固な一面も併せ持っていた。<br /> 教師のような、継続的な辛抱強さを求められる職に就くには、いい性格だろう。<br /> しかし、過ぎたるは及ばざるが如し。度が過ぎれば、お節介になってしまう。<br /> ちょうど、今みたいに。<br />  <br /> 「それじゃあ、お願いしますなの」<br />  <br /> 雛苺は吐息して、素直に、擦り剥いた箇所を、のりに見せた。<br /> ささっと手当してもらって、引き上げるのが得策。そんな判断からだ。<br />  <br /> のりの手際の良さに感心しながら、雛苺は、片づけを手伝おうかと申し出てみた。<br /> 明日から週末で、アルバイトは休みだ。急ぎの用事もない。<br /> けれども、彼女は雛苺の気遣いに感謝しながらも、やんわりと断った。<br /> そして、憂いを含む笑みを浮かべた。<br />  <br /> 「お姉ちゃんね……もうすぐ、この家を離れちゃうのよぅ。<br />  だから、ワガママだけど……後始末だけは、ね。この手で、しておきたくってぇ」<br /> 「どうしてなの? ひょっとして、お嫁に行っちゃうの?」<br />  <br /> その問いに、彼女は、かぶりを振った。「マンションで、独り暮らし」<br />  <br /> 「この家にはジュン君と、お嫁さんが暮らすのよぅ」<br />  <br /> ――え? <br /> 雛苺は胸裡で、のりの台詞を反芻した。3度目で、じわっと実感が戻ってきて……<br /> 4度目にして漸く、アタマが理解した。ジュンは結婚するんだ……と。<br /> 考えてみれば、ジュンも自分も、今年で二十歳になる。<br /> それに、服飾系の専門学校に進んだ彼は、この春に卒業して、社会人になるのだ。<br /> 所帯を持つのも、早すぎて損をすることはない。<br />  <br /> 対して、自分はどうか。大学に進んだけれど、休日にデートする恋人もなく。<br /> バイト三昧の日々は、それなりに充足感を与えてくれるが……だけど……。<br />  <br /> こういうの、負け犬って言うのかなぁ――なんて。<br /> またぞろ、置いてきぼりにされた気分が甦ってくる。<br /> 雛苺は、治療を続けるのりの手元を、ぼんやりと眺めていた。<br />  <br />  <br />  <br /> 手当を済ませ、仕事に戻ろうと玄関を出た彼女を、ジュンが待っていた。<br />  <br /> 「よっ! なんともなかったか?」<br /> 「う、うい。ごめんね、心配かけちゃって」<br />  <br /> なんとなく顔を合わせにくかったけれど、逃げ去るのも変な気がして、<br /> 雛苺は、深呼吸ひとつの後、にっこりとジュンに笑いかけた。<br />  <br /> 「それより、聞いたのよ。結婚するんですってね。おめでとうなの!」<br /> 「お、おう……ありがとな。なんか、本当に急なことでさ。<br />  僕自身、自分のことなのに、まだ実感わいてこないって言うか」<br /> 「要するに、浮ついちゃうぐらい幸せってコトなのね」<br /> 「まあ、な」<br />  <br /> 臆面もなく惚気たジュンのみぞおちに、雛苺は頭突きを入れた。<br /> もちろん、軽く。仔猫がじゃれるように。<br />  <br /> 「ねえねえ。ジュンのお嫁さんって、どんな子? ヒナの知らない人なの?」<br /> 「いや、知ってると思うよ。憶えてないかな。高校の頃の、学年のプリンセス」<br /> 「……あぁ。あの子なのね」<br />  <br /> 名前は失念してしまったが、面差しは、微かに憶えていた。<br /> チャーミングという表現と制服がよく似合う、可愛らしい女の子だった。<br /> どういった縁で結ばれたのかは、知る由もないが、いろいろ有ったのだろう。<br /> 雛苺が、ジュンと逢わなかった2年の間に。<br />  <br /> 「それじゃあね、ジュン。また、いつか――」<br />  <br /> 言って、雛苺はブレーキの壊れた自転車へと歩き出した。<br /> その肩を掴んで引き留める、温かな感触。<br /> ジュンの手は、いつの間にか、大きく力強く成長していた。<br /> 大切な誰かを、しっかりと守れるだろう男性的な手に。<br />  <br /> 「ちょっと待った。おまえに渡そうと思ってた物があるんだ」<br />  <br /> 言って、彼は、手にしていた古めかしい木箱を、ずいっ……と突き出した。<br /> なぁに? 受け取って、蓋を開いた雛苺の満面が、喜色に満たされてゆく。<br /> それは、80色セットのパステルだった。<br />  <br /> 「わぁあ……すっごぉい! どうしたの、これっ!」<br /> 「物置の整理してて、見つけたんだ。ウチの両親、世界中を飛び回っててさ。<br />  いろんな場所で、アヤシイ物を買い漁っては、ここへ送ってくるんだよ。<br />  蓋の裏に、注意書きっぽいのが貼ってあるんだけど、僕には読めなくってな」<br />  <br /> ジュンが読めないということは、ラテン語とか、ロシア語だろうか。<br /> それとも、もっと古い――くさび形文字や、甲骨文字?<br /> ……まさかね。雛苺は、蓋をひっくり返してみた。<br />  <br /> 「なぁんだ。これ、ドイツ語なのよ」<br /> 「解るのか? なんて書いてあるんだ」<br /> 「うーっと……このパステルで絵を描くと、その絵のとおりになる、って。<br />  まだ続きがあるけど――紙が虫食いになっちゃってて、判読できないのよ」<br /> 「……ふん。なんともまあ、胡散臭いもんだな。いかにも、あいつら好みだ」<br />  <br /> ――辟易。肩を竦めたジュンの口ぶりは、まさしく、その二文字に尽きた。<br /> 彼の小さな悪意に毒されて、柳の葉を想わせる雛苺の眉も、やにわに曇る。<br /> 歳の割にナイーブな彼女は日頃から、周囲の些細な機微にも、過敏に反応しがちだった。<br /> それがプラスに作用するなら、素晴らしいインスピレーションも湧くのだろうけれど……。<br />  <br /> 「ご両親を『あいつら』呼ばわりするなんて、いけないのよ」<br /> 「いいんだよ。あんな、ろくでなし連中なんか、どう呼んだってさ。<br />  ここ数年、ずっと会ってないし……もう、親って実感ないね。遠い親戚――みたいな?<br />  そのパステルにしても、どうせ買ったことさえ忘れてんだろうからな、きっと」<br /> 「……でもぉ。それなら、ヒナが貰っちゃダメなんじゃないの?」<br /> 「構わないさ。ウチにあったって、誰も使わないし。また、ホコリ被ったままになるだけだ。<br />  どんな上等な道具でも、使ってくれる人が居なきゃ、ただのガラクタだろ」<br />  <br /> それに……と、少しの間を空けて、ジュンは照れくさそうに続けた。<br /> 「高校の時にさ……チョコレート貰ってたのに、いっつも、そのまんまだったから」<br />  <br /> 数年遅れの、少し早いホワイトデーのお返し――と?<br /> 変なところで律儀なんだから。雛苺は呆れて、失笑を禁じ得なかった。<br /> 彼らしいと言えば、まあ、らしいのだけれど。<br />  <br /> そういう渡され方をされては、女の子の心情として、固辞できなくなってしまう。<br /> このパステルが使い手のないまま、ガラクタにされてしまうのも不憫で……<br /> 結局、雛苺は受け取ってしまった。半ば、押しつけられるカタチで。<br />  <br />  <br />  <br /> と、まあ。こう言うと、いかにも仕方なしの渋々といった趣があるが――<br /> 実のところ、雛苺の喜びようは大層なものだった。<br /> ついさっきまで感じていた、鬱々とした気分が、すっかり消えてしまうほどに。<br /> 些か現金だが、気持ちの切り替えが早いのは、彼女の長所なのだ。<br />  <br /> 小さな頃から絵を描くことが好きだった彼女にとっては、画材すべてが宝物。<br /> ましてや、不思議な効力を秘めたパステルとくれば……。<br />  <br /> 「ステキ! ステキ! あぁ~ん、なにを描くか迷っちゃうのよー」<br />  <br /> 残りの配達を片づけているときも、木箱はずっと胸に抱きしめたまま。<br /> いつもなら疲れて重たくなっている両脚も、ステップを踏みたくてウズウズしていた。<br /> すぐにでも試してみたい。貼ってあった説明書が真実なら、凄いことだ。<br /> 沸きあがる衝動は、雛苺の心身を、かつて無いほど浮つかせていた。<br />  <br />    <br />  <br /> アルバイトを終えて、寄り道もせずに帰宅。<br /> 夕食の時も。風呂で1日の疲れを流し、自室で洗い髪を乾かしている間も。<br /> 雛苺のアタマには、あのパステルで絵を描きたい欲求しかなかった。<br />  <br /> とりあえず、どんなモチーフなら、実験に最適かしら?<br /> 物理的な変化――破損とか、誰にでも簡単に再現できるテーマなら、意味はない。<br /> およそ有り得ない絵を描いて、そのとおりに変化するかを、検証すべきだ。<br />  <br /> でも、奇抜なテーマ――たとえば、隕石が自宅の庭に落ちたり――を描いて、<br /> 現実になったら厄介だし、その隕石にナゾの物体Xなんかが付いていたら怖すぎる。<br />  <br /> じゃあ、自画像は? 雛苺の閃きは、幾ばくもなく、落胆に変わった。<br /> それなら、他者に迷惑はかからない。<br /> でも、効力が本物ならば、少しの失敗でも、取り返しのつかない事態になろう。<br />  <br /> ドラクロワやゴヤのような写実的な絵を、狂いなく仕上げられるのであればいい。<br /> だが、キュビズムみたいな自画像を描いて、そのとおりに顔が変わるとしたら――<br /> 交通事故で顔面がグチャグチャに潰れる様を想像して、雛苺は、ブルッと身震いした。<br />  <br /> 「うぅっ。やっぱり……初めは無難に、静物画でいくのよー」<br />  <br /> モデルは、何にしたらいいだろう。雛苺は、ぐるり部屋を見回した。<br /> どうせなら変形しにくかったり、壊れにくい物を選ぶべきだろう。<br /> それでも絵と同じ変化を遂げたなら、パステルの効果を、少しは信じられる。<br />  <br /> 彼女の視線が、本棚に飾ってある、高さ20センチほどの石像を捉えた。<br /> 何年か前、キャンプで訪れた山中に投棄されていた、ベヘモス神像だ。<br /> 横たわった状態で、腐葉土に半ば埋もれた姿に、なんとなく愁情を誘われ……<br /> そのままにしておけなくて、わざわざ持ち帰ったものだった。<br />  <br /> 「うんっ。これなら、簡単に形が変わったりしないから、もってこいなのっ!」<br />  <br /> 雛苺は愛用のスケッチブックを手に、ベッドに座り込んだ。<br /> 明日から週末で、アルバイトは休み。絵を描く時間なら、たっぷりある。<br /> パジャマの袖をたくし上げて、気合いも充分。<br />  <br />  <br /> きりりと表情を引き結んで、雛苺は、茶色のパステルを手にした。<br />  <br />   <br />  <br />   -<a href="http://www9.atwiki.jp/rozenmaidenhumanss/pages/3697.html">to be continued</a>-<br />  <br />  </p>

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