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「蒼を受け継ぐ者」(2008/03/29 (土) 08:58:41) の最新版変更点
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<p>コックピットを覆っていた装甲がゆっくり持ち上がり…<br />
蒼いカラーリングの機体…RX79-BD1・ブルーディステニーから翠星石が降りてきた。<br /><br />
振り返り、ゆっくり足元から、たった今まで搭乗していた機体を見る。<br /><br />
所々焼け焦げ、煙を上げている…。<br />
だが、それでも特に致命的な損傷は見つからない。<br /><br />
ただ一箇所…首から上が存在しない事を除いては…。<br /><br />
「……」<br />
言葉が見つからない。<br />
何を言うべきか、何を考えるべきか。<br />
何一つとして分からない事が多すぎた。<br /><br />
「翠星石~!大丈夫かしら!?怪我は無いかしら!?」<br />
大きな声を上げながら、金糸雀が駆け寄ってくるのが聞こえる。<br />
「はぁ…はぁ… す…翠星石…無事でよかったかしら…」<br />
肩で息をしながら、安心したように微笑みを向けてきた。<br /><br />
「…心配かけちまったですね」<br />
いつもなら『だ~れの心配してやがるですか!私がやられる訳が無いですぅ!』とクネクネ踊りそうな所を…<br />
あまりにも、いつもと違う雰囲気に、金糸雀はりアクションに困ってしまった。<br />
「だ…誰もあなたの心配なんてしてないかしら~!」<br />
かろうじて、柄にも無い言葉で返すものの…それ以上は続かない。少し涙目になる。<br />
(ぅう…慣れない事はするもんじゃないかしら…)<br /><br />
翠星石は固い表情のまま、金糸雀をほったらかして、格納庫の出口に向かう…。<br />
そして振り返り、いつになく真面目な表情で金糸雀に告げた。<br />
「チビカナ…今回の戦闘ログ…コピーして私の部屋に持ってきやがれです」 <br /><br />
※---連邦軍駐屯地・翠星石私室---※<br /><br />
翠星石はソファーに座り、クッキーをかじりながら疲れた体を休める…<br />
程なくして、ノックもなしに金糸雀が部屋に駆け込んできた。<br /><br />
「勝手に戦闘ログの閲覧は、軍規違反かしら…」<br />
「…知ってるですよ…」<br />
金糸雀は頬をプクーっと膨らませ…<br />
「だったら、これっきりにするかしら~」<br />
と相変わらずのテンションで答える。<br /><br />
金糸雀は翠星石の隣に腰掛け、二人の正面に光ディスプレイを広げる。<br />
「けっこう無茶なサルベージしたから、映像は荒いかしら…」<br />
そう断りを入れ、戦闘ログの再生を始める。<br /><br /><br /><br />
ザー ザザー<br /><br /><br />
至る所から黒煙が上がる戦場の光景。<br /><br />
カメラの中央に捉えられた1機の敵影。<br />
MS-08TX・イフリート。<br /><br />
一箇所を除き漆黒のカラーリングの施されたそれは、エースパイロットのパーソナルカラーに他ならない。<br />
ただ一箇所…肩だけが赤く塗られ…そこに黒い翼のエンブレムが描かれていた…。<br /><br />
イフリートのパイロットから、音声のみの通信が入る。<br />
『ふふふ…あなたも…EXAMに選ばれたのぉ…?』<br />
『EXAM…?何ですそれは?そんなの知らねぇです!』<br />
『…なぁんにも知らないのねぇ…つまんなぁい。だったら…早く逝っちゃいなさぁい!』<br /><br />
黒いイフリートが尋常ではない速さで間合いを詰めてくる――!<br /><br />
『その羽むしって、フライドチキンにしてやるですよ!』<br />
頭部バルカンと120mmマシンガンで牽制を放つも――その弾丸が黒いイフリートを捉える事は無い――<br />
『なぁ!? ちょこまかと逃げるなです!』<br />
ビームサーベルを抜き放ち、一気にバーニアを吹かす――<br />
ヒートサーベルとビームサーベル、二本の光の刃が衝突し空間に稲妻が弾ける――!<br /><br />
『くっ!? やるやるぅ…面白くなってきたわぁ…!』<br />
イフリートのパイロットが馬鹿にしたような猫なで声を上げ――<br />
片手に握ったMS用ショットガンの引き金を引く――<br /><br />
だが翠星石は、通常では考えられない速度と反応で跳び――至近距離から放たれた散弾を全て回避した!<br /><br />
---<br /><br />
「す…すごいかしら…まるで噂に聞くニュータイプ同士の戦いみたいかしら…!」<br />
モニターを眺める金糸雀が、驚きの声を上げる。<br />
「…私には…こんな操縦できないですよ…」<br />
「?? でも、動かしてるのは翠星石かしら?」<br />
食い入るようにモニターを睨む翠星石の横顔に…金糸雀はそれ以上言葉を紡ぐ事はできなかった…。<br /><br />
---<br />
<br />
『ふふふ…ごめんなさいねぇ…訂正するわぁ…流石はEXAMに…蒼星石に選ばれただけの事はあるわねぇ…』<br />
『さっきから…何を訳の分からない事を言ってやがるですか!』<br />
弾きあう二本の光の刃を再び交差させながら、何度も切り結ぶ――<br /><br />
『こっちは片付いたのー!翠星石!今から応援にいくの!』<br />
突然、雛苺から通信が入ってきた。<br />
『な!このおバカ苺!危ないから来るなです!』<br />
『でも、翠星石一人に無茶はさせられないのよ!』<br /><br />
(マズイですぅ…チビ苺が来ても…こいつの前では良い的になるだけです…)<br />
漆黒のイフリートを睨みながら、操縦桿を握る手に力を込める。<br />
『だったら…チビチビが来る前に決着をつけるです!』<br /><br />
『ふふふ…そぉねぇ。あなたが死んで…それで決着ねぇ!!』<br />
イフリートが両手にヒートサーベルを構え、距離を詰めてくる――<br /><br />
ビームサーベルを抜き放ち、再び刃が空中でぶつかる――<br />
『派手に…ぶっ飛びやがれですぅ!!』<br />
叫びながら操縦桿を握り――至近距離から胸部ミサイルをイフリートに向ける――<br />
『ちぃッ!?』<br />
イフリートはもう片手に握ったヒートサーベルを振り下ろしながらバーニアで飛び――<br /><br />
光の刃がブルーディステニーの頭部を刎ね――<br />
ミサイルがイフリートのバーニアに当り、大きな爆発が起こった――<br /><br /><br />
ザザー ザー ザザ<br /><br />
<br />
「これで全部かしら」<br />
金糸雀はそう言うと、そそくさとディスプレイを閉じた。<br />
「ぅう~軍規違反はしたくなかったのに…お給料が…みっちゃんへの仕送りが…」<br />
ちょっと涙目になりながら、ゴソゴソと荷物をしまう。<br /><br />
「…無茶言って、すまんかったですね…」<br />
翠星石が小さな声で呟く。<br />
「…翠星石が素直に謝るなんて…明日は大雪かしら~!」<br />
「! な…何言ってやがるですか!人がちょっと気を利かせたからって、調子に乗るなです!」<br />
「い…痛いかしらァァア!」<br />
翠星石は思いっきり金糸雀の頭をグリグリとして…<br />
金糸雀は涙目になりながらも、いつもの調子に戻った翠星石にちょっとだけ安心した。<br /><br />
ひとしきり金糸雀で遊び…翠星石は自室のドアから外に出て行った。<br />
「? どこに行くのかしら?」<br />
翠星石は振り返り、微笑を返す。<br />
「な~に、ちょっとしたヤボ用、ってやつですよ。チビカナは適当に帰りやがれですぅ」<br />
ドアが閉まる音で、一人部屋に残された金糸雀は思う。<br /><br />
失礼な事ではあるが…翠星石の優しい微笑み…あまりにも珍しすぎる…<br /><br />
頭を振り、必死に嫌な予感を払いのけた。<br /><br /><br />
<br />
※---連邦軍駐屯地・研究棟地区---※<br /><br />
槐が机に向かって報告書に目を通す。<br />
すると、小さな音を立てて背後の扉が開いた。<br /><br />
槐はその相手の姿を確認すると…再び机の報告書に向き直る。<br />
「ブルーが大破したそうだが…まあ、相手がアレでは仕方あるまい…。…で…何をしに―――」<br />
「うりゃぁぁぁぁ!!」<br />
翠星石は、思いっきり!槐の背中に飛び蹴りをかました!<br />
「ぐぅ!?」<br />
槐が椅子から転げ落ち…翠星石はその胸倉をグイと掴んで上体を起こし上げる。<br /><br />
「…教えるです…EXAMとは…蒼星石とは何の事ですか!?」<br />
「……」<br />
「…だんまりですか…こちとら、軍法会議も覚悟の上なんですよ…」<br />
翠星石は槐を突き飛ばし、その胸板に銃口を当てる。<br /><br />
「ふ…流石、問題児を集めた『モルモット部隊』だけの事はあるな」<br />
槐は口の端に笑みを浮かべる。<br />
「…『モルモット部隊』だからです。<br />
…そんな部隊だったからこそ、命を賭けるMSに変なもの仕掛けられるのは我慢できないですよ…」<br /><br />
槐は暫く黙り込む。<br />
そして…<br />
「いいだろう…君は『彼女』に選ばれたんだ。知る権利位は有るのかもしれないな…」<br />
立ち上がり、服の埃を払う。<br />
「ついてきなさい。君にEXAMを見せよう」<br /><br />
<br />
※---研究棟地区・廊下---※<br /><br />
翠星石は槐と一定の距離を保ったままその後に続く。<br /><br />
廊下を歩きながら…振り向きもせずに槐が喋りだした。<br /><br />
「昔、ある所に一人の天才がいてね。彼は究極のMSを創ろうとしたんだ。<br />
でも…どんなMSでも、乗り手が人間である以上、機械との誤差…微妙なタイムラグが発生する。<br />
それを覆せるのは…ニュータイプと呼ばれる人類だけ…」<br /><br />
コツコツと鳴る靴の音が重なる。<br /><br />
「そのニュータイプも、ほとんど確認されてないし、理論だって未完成だ。<br />
結局、人間の限界という理由で究極のMSを創る計画は頓挫した。…かに見えた。<br />
だけど、その天才はこう考えたんだ。『だったら、MSにニュータイプの能力を付加させれば良い』ってね」<br /><br />
槐はとある一室の前で立ち止まった。<br /><br />
「その天才の娘には、ニュータイプの素質が有った。<br />
愛する父の為、その娘は自ら実験台となり…そしてEXAMが完成した…」<br /><br />
ドアが開き、槐が室内に視線を向ける。<br /><br />
「紹介しよう。彼女が蒼星石。そして…EXAMだ」<br /><br />
翠星石は握っていた銃を落とし、目の前の光景に言葉を失う…。<br /><br />
そこには…<br /><br />
体の至る所をコードと機械に繋がれ…ベッドの上で眠る一人の少女の姿<br /><br />
※---研究棟・一室---※<br /><br />
「こ…これは…」<br />
ベッドの上に横たわる蒼星石を見つめる。<br /><br />
僅かではあるが、その胸は呼吸に上下している…<br />
「! 生きてるです!」<br />
振り返り、槐の胸倉を掴む。<br />
「こんな酷いことしてねぇで、蒼星石を自由にするです!」<br /><br />
壁に押し当てられた槐は…視線をそらしながら答える。<br />
「勘違いしないでほしい…。これらの機械は…ただの生命維持装置だ…」<br />
「そんなわけあるかです!だったら何で、蒼星石は起きないんですか!」<br /><br />
「彼女の心は迷子になってしまったんだ…」<br />
「どういう事ですか!分かるように説明しやがれです!」<br />
「彼女の精神は…EXAMに囚われ…そして…EXAMが在る限り…目覚める事は、無い…」<br /><br />
「ブルーディステニーは…EXAMは壊れたんですよ!?」<br />
「…いいや…まだだ…あと…2つ残っている…」<br />
「!!」<br /><br />
翠星石は掴んだ襟首を離し…床に落ちていた拳銃を拾い、銃口を槐に向ける。<br />
「…案内するです。そんな…人の心を利用した兵器なんか…全部叩き壊してやるです!」<br />
<br /><br />
槐は翠星石と蒼星石の姿に等しく視線を送り…<br />
「…いいだろう。EXAMに選ばれた君がそれを選ぶという事は…<br />
きっと彼女もそう願っているという事なんだろうからな…」<br />
そう言うと再び、廊下を先へ進んで行った。<br /><br />
「蒼星石…今…起こしてやるですよ…」<br />
ベッドに横たわる少女に声をかける。<br /><br />
暫く眠る少女の髪を撫でていたが…やがて槐を追いかけ、廊下に消えていった…<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
※---連邦軍施設内---※<br /><br />
槐に続いて廊下を進んでいると…<br /><br />
突然!轟音と共に建物全体が揺れた――!<br />
蜂の巣をつついたように鳴り響く警報――!<br /><br />
『施設内ニ侵入者アリ 総員第一種戦闘配置 侵入者ハ第四格納庫方面ヘ逃走中 繰リ返ス…』<br />
<br /><br />
「…第四格納庫ですか?…けっこう近いですねぇ…まぁ多分、大丈夫ですぅ」<br />
他人事のように暢気な口調でそう答え、立ち止まっている槐の背中を銃の先でつつく。<br />
「そんな事より、さっさと進むですぅ。…って、どうしたですか?青い顔して…。<br />
大丈夫ですよ、いざとなったら翠星石が格安で助けてやるですぅ!」<br /><br />
「ち…違うんだ…第四格納庫には……」<br /><br />
槐の言葉を最後まで聞く前に、翠星石は走り出していた――<br /><br /><br />
決して翠星石の足は遅い方ではなかったが…<br />
それでも、まだ格納庫に届かない足がやけにもどかしい…<br /><br />
そして…<br /><br />
格納庫に辿り着いたとき見えたのは…<br /><br />
ロールアウト直後の、機体へのペインティングが施されてない機体…<br />
それがゆっくりと起動していく様だった…<br /><br />
「なぁ!?何してやがるですか!!返しやがれですぅ!!」<br />
叫びながら、その前に立ちふさがる。<br /><br />
(…あ。見つかっちまったですぅ…!)<br />
とりあえず、反省は心の中にしまっといて、拳銃を向けるも…MS相手では威しにすらならない…。<br />
(勢いで飛び出して…とんでもないピンチですぅ…)<br />
泣きたい気分になってきた。<br />
<br /><br />
すると、それは何の奇跡か…<br />
MSのハッチがゆっくり持ち上がっていった!<br /><br />
「(お?おお??)大人しく投降するです!」<br />
よく分からない状況だったが…投降を勧告してみる。<br /><br />
だが…返ってきた答えは…<br /><br />
「ふふふ…その声…聞き覚えがあるわぁ…」<br /><br />
「その声は!黒いイフリート野郎ですね!!」<br />
「ビンゴぉ…水銀燈よぉ…覚えておいてねぇ…」<br />
「お断りです!蒼星石を返しやがれです!」<br /><br />
「嫌よぉ…だってコレ…こぉんなに素敵なんですもの…」<br />
そう言い水銀燈はハッチを再び閉じる――<br />
「!! 待ちやがれです!」<br />
そい叫びながら引き金を引くも…MSに唯の拳銃では何の効果も与えられない…<br /><br />
ジタバタと暴れる翠星石を他所に、水銀燈はバーニアを吹かし――<br />
外部スピーカーのスイッチをひねる。<br />
『ふふふ…貰っちゃった~貰っちゃった~』<br />
嫌みったらしく、歌うようにそう言い…<br />
『じゃぁねぇ…お・ば・か・さん』<br /><br />
その言葉を最後に、格納庫の壁を破り宙へと消えていった…――<br /><br /><br /><br />
<br /><br />
※---翠星石私室---※<br /><br />
翠星石は一人、照明もつけずにベッドの上でうつ伏せになっていた。<br /><br />
…あれから二週間。<br />
上官を殴り、銃を向け、さらには機密であるMSの破壊を企てた。<br />
それらの件で軍法会議にかけられ…処遇が決まるまで、自室に軟禁されている、という訳だった。<br /><br />
内容が内容だけに、銃殺刑は免れないだろう。<br />
(でも…そんな事より…)<br />
思い出すのは、ベッドの上で機械に囲まれ目覚めの無い眠りに付く蒼星石の姿。<br />
(結局…私は…何も蒼星石にしてやれなかったです…)<br /><br />
ごろんと寝返りを打ち、天井を眺める。<br />
…<br />
…<br />
…<br /><br />
ノックも無くドアが小さな音と共に開き――<br />
二週間ぶりに見る他人の顔…金糸雀が入ってきた。<br />
「…格納庫に来るかしら…」<br />
だが、それだけ告げると、そそくさとその場から立ち去ってしまった。<br />
(チビカナも…辛い立場なんです…)<br />
自分に言い聞かせる。<br />
廊下に立っていた番兵に左右を固められながら、格納庫に向かう。<br /><br />
「MS乗りならせめてMSの前で死ね、ですか…?粋な計らいですぅ…」<br />
皮肉を言ってみるも…番兵達は何のリアクションも返してこない。<br />
(…つまんねぇ連中ですぅ…)<br />
地面に敷かれたタイルを眺めながら、格納庫に向かった…<br /><br />
※---格納庫---※<br /><br />
格納庫の一角。<br /><br />
そこには銃を構えた処刑人などはおらず…<br />
雛苺と金糸雀。そして、槐が立っていた。<br />
槐の顔は…前に会った時が嘘のように、頬がこけている。<br /><br />
「…全く…君の弁護は二度としないと心に誓ったよ…」<br />
そう言い、ニヤリと笑みを向けてきた。<br />
「EXAMを倒せるのはニュータイプかEXAMだけ。だが、我々にEXAMを使いこなす事はできない。<br />
素質の有るパイロットは一人でも多い方が良い。散々そう言って、何とか説得できたよ」<br /><br />
そして…そこから急に真面目な表情、上官の顔になり、伝えてくる。<br /><br />
「ジオンは地球から撤退し、その活動を宇宙に絞ってきた。よって我々も宇宙を目指す」<br />
そして真っ直ぐ、翠星石の目を見る。<br />
「翠星石少尉。君には二つの選択肢がある。<br />
階級を剥奪され、軍を離れるか…再びEXAMのテストパイロットとして残るか…」<br /><br />
そう言う槐の後ろには…<br />
今や連邦軍の力の象徴、ガンダムを模した機体。RX-79BD3・ブルーディステニー3号機…<br />
<br />
翠星石はその機体を眺めながら考える。<br />
(…水銀燈に奪われたEXAMを破壊しないと、蒼星石が目覚める事は無いです…<br />
そして…それが出来るのはこの機体だけです…だったら…)<br />
「…考えるまでもないです」<br /><br />
そう言い、BD3号機に近づく。<br /><br />
機体にそっと触れる。<br />
(待ってるですよ…蒼星石…)<br /><br />
振り向くと、金糸雀と雛苺が満面の笑みで迎えてくれる。<br />
「…とりあえず、この子を目も醒めるような蒼に塗りなおすですぅ!」<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
~薔薇乙女で一年戦争~<br />
―― 蒼を受け継ぐ者 ――</p>