「１６．Ｆｏｒ Ｗｈｏｍ ｔｈｅ Ｂｅｌｌ Ｔｏｌｌｓ」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら
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<p>「全く…ロクな仕事がないじゃなぁい…つまんないのぉ…」<br />
ボヤきながら、水銀燈は酒場を後にし、アジトへと足を向けた。<br /><br />
せっかく新戦力も加わり暴れまわるチャンスだというのに、大きな仕事は一つも無かった。<br /><br />
「たまには…こんな事もあるわぁ…」<br />
自分をそう励ましながら、アジトの扉を開く。<br /><br />
すると、翠星石と蒼星石、薔薇水晶に雪華綺晶、金糸雀と雛苺が視線を向けてきた。<br />
「どうだったかしら～？」<br />
「何か良い依頼は有った？」<br /><br />
二人の声に水銀燈は首を振りながらのため息で答え…<br />
そして、部屋の中心に置いてあるテーブルの上に、パサッと数枚の紙切れを置いた。<br /><br />
その紙切れの一番上に書かれている文章―――<br /><br />
―――『野犬退治』…<br /><br />
「…どう見ても、駆け出しのぺーぺーがするような仕事ですぅ…」<br />
何だかとっても残念な空気が流れ出し―――<br /><br /><br /><br /><br />
１６．Ｆｏｒ Ｗｈｏｍ ｔｈｅ Ｂｅｌｌ Ｔｏｌｌｓ<br /><br /><br /><br />
<br />
「…こんな仕事、断っちまえばいいですぅ」<br />
「そうもいかないよ…現に、困ってる人が居るから依頼が来たんだし…」<br />
「……でもコストに見合ってない……」<br />
「難しい所かしら」<br /><br />
相談するも、結論は出ず…結局、リーダーである水銀燈に全員が視線を集めた。<br /><br />
「…ん…コホン…」<br />
水銀燈は軽く咳払いをして、全員を見渡し…<br />
どうやら今の咳払いのせいで、自分が結論を出さねばならない状況になった事に気が付いた。<br /><br />
「そぉねぇ…」<br />
確かに、薔薇水晶の言うとおり、コストに見合ってない依頼だ。<br />
だが、断れば…この連中からの依頼は二度と来ないかもしれない。<br /><br />
少し考え…そして、名案が浮かんだ。<br /><br />
「だったらこの仕事、元手のかからない蒼星石にお願いしようかしらぁ？」<br />
「蒼星石が行くなら、私も行くですよ」<br />
間髪居れずにそう言ってきた翠星石を制して続ける。<br />
「それに…新戦力の様子見もかねて…それなら、うってつけじゃなぁい」<br /><br />
そう言い、視線を向ける先には雪華綺晶の姿が…<br /><br />
<br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br /><br />
作戦会議が終わり…<br />
金糸雀は雛苺を連れて、自分の部屋に帰っていった。<br /><br />
相変わらず、そこら中にジャンクパーツや金属片が山積みにされてはいたが…<br />
部屋の中心に大量の本が積まれたスペースと、一箇所だけ綺麗に片付いた場所があった。<br /><br />
金糸雀はそこにチョコンと座り、目の前の低い台を見る。<br />
それは、白と黒が交互に塗られた、金糸雀お手製のチェスボード。<br /><br />
「さあ、続きといくかしら！」<br />
そう言い、雛苺を対面に座らせる。<br />
「うぅ～…全然カナリアに勝てないのよ～…」<br />
頬を少し膨らませながら、それでも雛苺は言われた通りにそこに座る。<br /><br />
駒が盤面を打つ音が聞こえ…<br /><br />
「…雛苺は、もっと策を考えれるようになれば ―― ｺﾂﾝ―― もっと活躍できるかしら…」<br />
「…でも真紅や巴は ――ｶﾂﾝ―― 正々堂々と戦ってるのよー」<br />
「…それは適材適所ってやつかしら……そして ――ｺﾂﾝ―― チェックメイトかしら～！」<br />
「！！？……うぅ～…ヒナには、カナリアの言う事は難しすぎなのー！」<br /><br />
雛苺はそう言うと立ち上がり、一目散に部屋から飛び出していってしまった――。<br /><br />
「ふぅ～…手間のかかる子かしら。お姉さんは大変かしら」<br />
金糸雀はちょっと大げさにため息をつきながら…<br />
それでもその顔には、何ともいえない、どことなく楽しそうな笑みを浮かべていた。<br />
<br />
―※―※―※―※―<br /><br />
「うゆ～…カナリア難しい事ばっかり言って…キライ！ こうなったら…『すとらいき』なのよ！」<br />
雛苺はプンスカ怒りながら廊下を歩き――そして、一つの部屋の中に隠れる事にした。<br /><br />
そこは先程まで作戦会議をしていた部屋で…<br />
雛苺は、足の低いテーブルの下に身を滑り込ませた。<br /><br />
暫くして…――<br />
「雛苺～どこかしら～！？！？！？」<br />
ドタバタと足音が聞こえ、部屋のドアの開く音がし…――<br />
「うう…雛苺…ここにも居ないかしら…」<br />
少し悲しそうな声と共に、ドアの閉まる音がした。<br /><br />
（『すとらいき』は…少しやりすぎだったかもなのよ…）<br />
雛苺も何だか少し寂しくなってきた。<br />
（…ちゃんとごめんなさいして、カナリアと仲直りするのよ…！）<br />
そう思い、立ち上がる。<br />
机の下で。<br />
当然、思いっきりテーブルに頭をぶつけ…――<br /><br />
「！！！？！？！？？！！」<br />
目を白黒させながら悶絶していると…衝撃でテーブルから、一枚の紙切れが落ちてきた。<br />
だが、雛苺はそれどころではなかった。ひたすら頭を押さえ…<br />
<br />
…<br /><br />
やっと痛みが引いてきて、涙目になりながらも雛苺は立ち上がった。<br />
今度は、テーブルの下から出て。<br /><br />
そして、地面に紙切れが落ちている事に気が付き…<br />
「散らかしっぱなしはダメなのよー」<br />
その紙――水銀燈が持ってきた依頼書の一枚を拾い上げた。<br /><br />
ちょっと読んでみるも…如何せん、難しい字が多くてよく分からない。<br />
それでも、先程の会議の流れからして、簡単な依頼だと思われる。<br />
場所も…地図で書かれている限りでは、そう遠くない。<br /><br />
暫くその紙切れを眺める内に…<br />
『すとらいき』なんかより、もっと金糸雀を驚かせる方法を思いつく。<br /><br />
「…ヒナだって…もう子供じゃないのよ…！一人でやっつけて、カナリアをびっくりさせてやるの！」<br /><br />
先程までの『仲直り』の事もすっかり忘れて、意気揚々と部屋を飛び出した。<br /><br /><br />
廊下を行き、間借りしている金糸雀の部屋をそっと覗き込む…<br />
そして、誰もいないのを確認すると…<br />
机の上に無造作に置かれた、お手製の発破『ベリーベル』を数個掴み、ポシェットに詰め込んだ。<br /><br /><br /><br />
<br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br />
「うう…年長者として、厳しく指導しすぎたかしら…」<br />
涙目になりながら、金糸雀は廊下を行ったり来たり。<br />
「…何とか、仲直りの方法はないかしら…」<br />
少し涙目になりながら、首を傾げる。<br /><br />
そして…<br /><br />
「…こんな時には…プレゼントで気を引けば良いって、ご本に書いてあったかしら！」<br /><br />
名案を実行すべく、頭をフル回転させる。<br />
（雛苺は、何を喜ぶかしら…う～ん…例えば…カナが貰って嬉しいもの…）<br />
卵焼き。ダメ。そもそも、買いに行かないと卵が無い。<br />
色んな機械。…とても雛苺が喜ぶとは思えない。<br />
服。過保護なみっちゃんから解放された反動か、すっかり無頓着になっていた事を思い出す。<br /><br />
「だったら…」<br />
ふと、雛苺が愛用していた発破『ベリーベル』を思い出す。<br /><br />
「！ カナが大量生産してプレゼントしてあげるかしら！<br />
作って楽しい、貰って嬉しい、これこそ完璧な作戦かしら～」<br /><br />
早速、材料になりそうな物を探しに、町へと繰り出す事にした。<br /><br /><br />
―※―※―※―※― <br /><br /><br />
「これくださいかしら～！」<br />
いつもの店で、大量の火薬と信管をドサリとカウンターの上に置く。<br /><br />
「おう、譲ちゃん、また来たのか…って、今回はえらい大量だな」<br />
店主がそう言い、値段を告げてくる。<br /><br />
（お小遣いが…吹き飛んだかしら…なんて可哀想なカナかしら…）<br />
少し遠い目をする。と―――<br /><br />
ちょっとした地面の揺れを感じた。<br />
五感を集中させると…僅かながら、遠くで何かが爆発する音も聞こえる――<br /><br />
「…ああ、町外れの教会にゴロツキが溜まっててな。これ以上何かされる前に追い払ってもらってるんだよ」<br />
「カナ達の所に来た、しょぼくれ…コホン、幾つかの依頼の一つと同じかしら」<br />
店主の声を聞き、依頼書の内容を思い出す。<br />
まあ、先を越されても惜しくない内容だったから、それ以上は気にしない。<br /><br />
「ははは！実際にしょぼくれてるさ！」<br />
店主は金糸雀の意図を勝手に読み、そう笑い飛ばす。<br />
「なんてったって、銃も持ってないような、徒党を組んだだけの連中だぜ！？」<br />
「それはダメかしら～カナ達『技術屋』の作った銃の前では時代遅れもいいとこかしら～」<br />
「だろ！やっぱりそうだろ！？」<br />
「ほ～っほっほっほ！」<br />
「がははは！！」<br />
店先で、手の甲を口に当てて高笑いする金糸雀と、豪快に笑う店主。<br /><br />
暫くして店主は笑いを止め、そして爆音が遠く響く教会に視線を送った。<br />
「しかもよ…仕事に向かったのは、譲ちゃんより小さいようなガキなんだぜ？」<br />
「カナ以外に、そんな勇敢な少女がいるなんて…驚きかしら！」<br />
「おうよ。ほんのこん位のちびっ子でな。髪をこうクルクルーっと巻いててだな…」<br /><br />
店主は手振りを交えて依頼に向かった少女の特徴を伝え…<br />
「……」<br />
「？？おう？どうした譲ちゃん？」<br />
「たたたた大変かしら～！！？！？！！」<br /><br />
金糸雀は奇声を上げながら店を飛び出し―――<br />
「おい！譲ちゃん！買い物忘れてるって！」<br />
その声でバタバタと店内に戻り―――<br />
「ありがとうかしらっ！」<br />
そう言い荷物を引っつかむと、そのまま砂煙を上げながら凄まじいスピードで駆け出していった。<br /><br />
「…相変わらず騒がしい譲ちゃんだな……」<br />
店にポツーンと残された店主が呟き…<br />
遠くに聞こえる爆音と共に、コップに小さな波紋が広がった。<br /><br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br /><br />
教会に辿り着き…壁にもたれかかり、深呼吸で乱れた息を整える。<br />
大きく開かれた扉から、こっそり中の様子を窺う…。<br /><br />
「――上に逃げたぞ！！」「――あのガキ！」「――爆弾が来るぞ！」<br />
途切れ途切れではあるが、怒号が聞こえてくる。<br />
そして――<br /><br />
白い、大福のような何かが上から降ってきて――派手な爆発を起こした！<br />
「！？！！？うおお！？あのガキ！ぶっ殺してやる！！」<br />
相当頭にきてるのであろう。教会を根城にしていた荒くれたちは余計にいきり立ち――<br />
<br />
「…あれは雛苺の『ベリーベル』かしら……やっぱり…」<br />
疑惑が確信に変わった金糸雀は、諦めに似た表情で呟き…<br /><br />
「雛苺……カナが助けに行くまで…何とか逃げのびるかしら…っ！」<br />
そう言うと、近くに落ちていたダンボール箱を頭からスッポリ被り、教会の中に潜入した…<br /><br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br /><br />
「うぅ～さっさとここから出て行くのよー！」<br />
そう叫びながら、雛苺は階下に手製の爆弾を投げまくる。<br />
そうして、相手が怯んだ隙に、更に上へと逃げる。<br /><br />
（…よく考えれば…真紅も雪華綺晶も居ないのは…初めてなの…）<br /><br />
今まで対集団戦の中で、自分がどれだけ仲間に助けられてきたのかを、改めて痛感していた。<br /><br />
そもそも…<br />
（…そもそも、ヒナの得意は『施設の破壊』なのよ…戦うのは……）<br />
だが、後悔しても遅い。<br />
散々爆風で燻られた相手では最早、何の会話も成立しそうに無い。<br /><br />
「…巴…お家に帰りたいの……カナリア……」<br />
目に涙を溜めながら、それでも敵を牽制しながら逃げ続ける。<br /><br /><br />
―※―※―※―※―<br /><br />
<br />
「……雛苺…？」<br />
謎のダンボール箱がゴソゴソと動き…その下から、周囲を警戒しながら金糸雀がちょっとだけ顔を出す。<br /><br />
完璧な迷彩。究極のカモフラージュ術のお陰で、並み居る荒くれ達からは見つからずに進めてはいるが…<br />
如何せん、肝心の雛苺の姿も見えないのが辛い所だ。<br /><br />
（もっと上に行ったのかしら…）<br />
そう考え、さらに階段を登り…<br />
なんと、いつの間にか教会の頂上まで登っていた！<br /><br />
目の前にそびえる、教会の鐘を前に、金糸雀は当然の事に気が付いた。<br />
「…まさか…追い越してしまったのかしら～！？」<br />
今になって、ダンボールで視界が塞がれていた事に気が付き慌てるも…<br />
「今度は引き返して捜索かしら！！」<br />
気を取り直して、再びダンボールを被り…<br /><br />
「―――捕まえたぞこのガキャ！！」<br /><br />
下から聞こえてきた声で、その手が止まった。<br /><br />
（た…大変かしら！！何とかしないと雛苺が殺されちゃうかしら！！）<br />
必死に、パニック寸前の頭で考える。<br />
（武力行使？ダメかしら！銃はあるけど、カナの腕じゃ無理かしら！）<br />
（助けを呼ぶ？そんなの間に合わないかしら！）<br />
ガタガタと震える手で、必死に考える。<br />
（カナが雛苺で助けるを策は考えるかしら！）<br />
パニックの前兆を感じる。<br />
考えがまとまらないが…だが、時間が本当に無い。<br />
<br />
「と…とにかく！！」<br />
そう叫び、目の前の鐘に飛びつく。<br />
迷っている時間は無い。一か八か…やってみるしかない。<br /><br />
そして、ゴソゴソと何かを鐘に結びつけ…<br /><br />
金糸雀は鐘に結びつけたロープを伝って、スルスルと落ちるように一階まで…落ちた。<br /><br />
『ドベチ』みたいな音で、金糸雀が一階に辿り着き…<br />
むくっと立ち上がると、自分の落ちてきた場所を確認する。<br />
そして、腰に下げたデリンジャーを抜き、そのまま適当な方向に引き金を引いた。<br /><br />
教会中に一発の銃声が響き―――<br /><br />
その音で喧騒が一瞬止んだのを確認すると、金糸雀はあらんかぎりの大声で叫ぶ。<br />
「雛苺を！その子を解放するかしら！！」<br />
返事は無い。<br />
「その子を解放すれば、こっちも銃を捨てるかしら！」<br />
沈黙は続く…。<br /><br />
だが…<br />
やがて、正面の階段から、雛苺にナイフを突きつけた男が、数名の仲間を連れて姿を現す…。<br /><br />
「仲間がいやがったとはな…だが、そっちが先に銃を捨てろ」<br />
リーダー格の男はそう言い、雛苺に向けたナイフをちらつかせる。<br />
「…雛苺が先かしら！」<br />
金糸雀は精一杯の虚勢を張って、そう答える。<br />
視線の端では…残りの荒くれ者達が、グルリと金糸雀を囲みだした…。<br />
<br />
「…こう完全に囲まれてたんじゃ、カナに勝ち目は無いかしら…。<br />
雛苺を解放したら、銃は捨てると約束するかしら！」<br /><br />
実際、銃を捨てた所で何も変わらない。<br />
デリンジャーに装填された弾は二発。それでは戦局は変えられない。<br />
その上…仮にもっと強い銃があったとしても…<br />
そもそも自分には銃なんて満足に扱える代物ではなかった。<br /><br />
だが…相手は銃も持ってないような連中。<br />
そこに気が付かれさえしなければ…交渉の価値は有る。<br /><br />
金糸雀の言葉に、リーダー格の男はフンと鼻を鳴らし…<br />
「…最後のお別れでもするんだな！」<br />
そう言い、雛苺を突き飛ばした。<br /><br />
「…カナリア…」<br />
「雛苺、怪我は無いかしら！？」<br />
駆け寄ってきた雛苺を、そっと抱きしめる。<br />
「…うん…大丈夫なの…でも…」<br />
「…もういいかしら…雛苺が無事なら、それでいいかしら…」<br /><br />
そこまで言うと金糸雀は手にしたデリンジャーを投げ、背に背負ったリュックも放り投げる。<br />
「…約束は…守ったかしら…」<br /><br />
リーダー格の男が地面に落ちたデリンジャーを拾い、その銃口を金糸雀達に向ける。<br />
周囲を取り囲む荒くれ者達の輪が、徐々に近づいてくる…<br />
<br />
金糸雀は雛苺をギュッと抱きしめる。<br />
「…絶対に…目を開けたらダメかしら…」<br />
そして、固く目を瞑り、その端に涙を溜めた雛苺に視線を合わせた。<br />
「…カナみたいな無力な策士が、敵の前に姿を現す…それは、敗北する時…」<br />
金糸雀は指先で、雛苺の涙をそっと拭く。<br /><br />
「もしくは……」<br />
金糸雀の額が、キラン！と不適に輝いた！<br /><br /><br />
「勝利を確信した時かしらぁぁあぁぁ！！！」<br />
叫ぶ。<br />
同時に小さな爆発音が聞こえ―――<br /><br />
留め金を火薬で焼ききられた巨大な釣鐘が、天井から降ってきた！<br /><br />
『ドォォォォォォン！』<br />
派手な音と共に鐘は、金糸雀と雛苺の真上に『フタ』のように被さり――<br /><br />
「そして…カナのとっておきで…フィニッシュァァァアアアー！！」<br />
釣鐘の中で、真っ暗な狭い空間で、異常なテンションの金糸雀が叫び――<br />
即興でこさえた、不恰好な起爆装置を押した。<br /><br />
―――！！！！<br />
鼓膜が破れそうな程の轟音を響かせ、リュックの中に入れた全ての火薬が弾ける音が轟く――！！<br /><br /><br />
<br />
―※―※―※―※―<br /><br />
…<br /><br />
爆音が収まり、耳鳴りも消え…周囲から聞こえてくる音も、何も無くなった。<br />
…想像したくはないが…鐘の外側は、さぞかし立派な地獄絵図と化した事だろう…。<br /><br /><br />
「…もう…ダメかと思ったのよ…」<br />
雛苺がボーゼンとした声を上げる。<br />
「カナも…今回はとても怖かったかしら…。でも…何とか作戦が上手くいって良かったかしら！」<br />
真っ暗闇で全く見えないが…それでも、金糸雀が額の汗を拭う姿が目に浮かぶ。<br />
「成功して、ばんばんざいかしら！」<br /><br />
「うい！これからは、ちゃんとカナリアの話も聞くようにするのよー！」<br />
「お姉さんになったつもりで、ド～ンと胸を貸してあげるかしら～！ほーっほっほ！」<br /><br />
狭い釣鐘の内部。やけに響く金糸雀の高笑いを聞きながら、雛苺がボソッと呟いた。<br />
「…ところでカナリア…？」<br />
「何かしら？何でも答えてあげるかしら～」<br />
「どうやって…ここから出るの？」<br />
「……」<br />
「…うゆ？」<br />
「……」<br /><br />
あれだけの爆発にも耐えた、金属製の巨大な釣鐘。<br />
…当然、たった二人で持ち上げられる訳が無い。<br />
<br />
「……た…」<br />
「…た？」<br />
「叩くかしら！鐘を叩いて、助けを呼ぶかしら～！！」<br />
「……」<br />
「ほら！雛苺も一緒に叩くかしら！」<br />
「……」<br />
「誰かー！助けてかしらー！！」<br /><br /><br /><br />
その後…救出が来るまで、二時間近く鳴り続けた教会の鐘の音に…町の人々は心から迷惑したという…。<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
⇒ to be next Wilds !</p>
