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「「旅の仕度」」(2008/03/17 (月) 11:20:10) の最新版変更点
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<p><br />
何も無かった。白?違う。無色?それも違う。何も無い。それが一番しっくりくる。<br /><br />
だからどうした?<br />
だからどうなんだ?<br />
だからなんなんだ?<br /><br />
わからない。全部わからない。それは、困るのかな?…わからない。<br /><br />
-おや?こんな場所にお客様なんて珍しい。<br /><br />
誰かの声がする。…ああ、話しかけられているのか。ええと…そういう時何て言うんだっけ…<br /><br />
-どうしてここに?と聞いても無駄なようだね<br /><br />
ここ?…ああ、場所の定義か。これはわかるぞ。僕がいる場所のことを“ここ”と言う。…あれ?“僕”って何だ?<br /><br />
-名前はわかるかな?君の名前だ。<br /><br />
あ、わかる。ジュン、だ。…でも、名前って何だ?<br /><br />
-ジュン。少しばかり君を覗かせてもらうよ。<br /><br />
うわわっ…<br /><br />
-ふむ、成る程。どうやら君は“迷子”のようだ。 <br /><br />
迷子?<br /><br />
-そう、君は迷ってしまったんだ。そして不幸にも、落とし物までしてしまった。<br /><br />
はぁ、そうなんだ。<br /><br />
-さて、どうしたものか…君をここの住人に迎えるのも一つだが、今の君ではな。それは後で聞くとしよう。<br />
そうだな…うむ、ジュン。少し、私の話しを聞いておくれ。私がしてきた、旅の話しだ。<br /><br />
うん、わかった。いいよ。<br /><br />
-まず、私の名前を教えておくよ。私の名前は、ローゼンという。 <br /><br /><br /><br />
プロローグ「旅の仕度」 <br /><br /><br /><br />
「…ふう」<br />
少年が一人、リュックに荷物を詰めている。緑の綺麗な丘の上で。<br />
その丘は山々に囲まれた土地にぽっこりとできており、緑の草に被われている。あちらこちらには花も咲いていた。<br />
「そうねー…あと、私を拭いたり洗ったりするやつが必要よ!これ絶対!」<br />
少女の声がした。だが、その丘には少年しか見当たらない。あとはリュックと、何故か乱雑に散らばって置いてある様々な食べ物、道具、服などがあるだけだ。<br />
「洗う?…“洗う”って?」<br />
少年は聞いた。<br />
「汚れを取る事。汚いのはイヤでしょ?だから汚れたら水で濯いだり布で拭いたりして洗うの」<br />
「ふーん」<br />
少年は適当に返事をして、指示されたタオルをかばんに詰めた。それだけだった。<br />
「そろそろリュックがいっぱいになる」<br />
「あらまー。でももう入れるモノは入れたし…ジュン、君が持っていきたいモノとかあるかい?」<br />
ジュンは辺りに散らばるモノを見渡し、止めた。それだけだった。<br />
「で?何かあった?」<br />
「何かって?」<br />
「だーかーらー、ジュンが持っていきたいモノ!何かあったの?」<br />
「・・・」<br />
ジュンは黙ってしばらく考えた。でも、彼女が言ってる意味がよくわからなかった。<br />
そのままジュンが喋る様子もなく黙っているので、彼女の方から口を出す。<br />
「はぁ…まあ、無いなら無いでいいわ。別に満杯になるまで入れる事もないし、リュックも軽くなっていいかもね。じゃあはい!リュックを閉めて担いで立つ!」<br />
ジュンは、言われた事をやった。すぐに終わった。<br />
「あ、そーだ!大事な事忘れてた!」<br />
「大事な事?」<br />
ジュンが視線を上にやる。<br />
「名前よ!私の名前!何にする?ジュンが決めてね?いいのお願いよ~」<br />
「名前?」<br />
名前。それは呼び名。自分はジュン。あの人はローゼン。彼女は…<br />
「…アリス」<br />
何となく、口から出た。<br />
「へぇ!アリスかー!全然期待してなかったわりには悪くないのが出てきたわね!アリス、アリス、アリス…うん!気に入った!アリスでいいよ。改めてよろしくね、ジュン!」<br />
「うん、アリス」<br />
そう答えると、アリスは『えへへ』と笑った。<br /><br />
-まずは、丘を下りて、分かれ道に行きなさい。その後は、二人で決めるんだ。<br /><br />
ローゼンはそう言っていた。だから、丘を下りよう。<br />
「あら?ジュン、君靴は?」<br />
「靴?」<br />
靴。足に履くモノ。自分の足を見た。何も履いてなかった。<br />
「もー!裸足で旅するつもりだったの?はい!とっとと戻って靴捜す!」<br />
「うん」<br />
ジュンは適当な返事をして、下りてきた丘を再び登る。<br />
アリスが靴を捜せと言った。だから、靴を捜した。</p>