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「第七章『正義と正義』」(2006/03/28 (火) 09:59:39) の最新版変更点
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<p><a title="bokudakenoseigi7" name="bokudakenoseigi7"></a>コンコン<br>
「はぁ~い、今行きます」<br>
カチャ<br>
「あっ」<br>
く「のりさんでしたね、ちょっとジュンくんにお話があるんですが…」<br>
「ジュンくんですか?今出かけてますが」<br>
警部「お邪魔してまっていてもいいでしょうか?」<br>
「え、ええっと。」<br>
く「じゃあ、お邪魔します」<br>
「ちょ、ちょっと!」<br>
<br>
もう四月も終わるというのに、風がすごく冷たい。<br>
「ジューン!見るです、ヒトデですぅ!気持ちわりーです」<br>
「ほら、翠星石。あんまりはしゃぐと危ないよ」<br>
「二人ともとても仲が良いのね」<br>
「性格が違うといっても、双子だしね」<br>
僕らは近くの海にきている、ちょっと季節が早いが砂浜を散歩するのはとても気持ちがいい<br>
「風が冷たいわ」<br>
「もうすぐ雨が降るかもね」<br>
「…ジュン、いつまでもこうしていられるといいわね」<br>
「…」<br>
「今の生活にとても満足しているわ。友達も出来て、ジュンとこうしていられる、これほど幸せなことは無いわ」<br>
「僕は…」<br>
言ってしまいたかった。<br>
僕が何をしたのか、僕がどれだけ弱い人間か、…全部言ってしまいたかった。<br>
</p>
<p>「た、ただいま。誰か来てるの?」<br>
玄関には見慣れない靴が二足あった<br>
「あー、ジュン君お帰り。あのね、刑事さんと探偵サンが…」<br>
姉の後ろに見覚えのある人影が二つ。<br>
くんくん探偵と太った警部。<br>
まずい、何かが告げる。<br>
全身から血の気が引くのが分かる。<br>
「な、何かようですか?」<br>
く「叔父さんは何者かによって殺されました」<br>
ねぇちゃんの顔を覗く、不安そうな顔だ<br>
く「犯人の目星はついているんですが、彼にはアリバイがあるんですよ」<br>
「へ、へぇー。病死じゃなかったんですか。犯人は誰なんですか?」<br>
く「あくまで白を切るか、それもいいだろう。ずばり言うよ、犯人は君だ!」<br>
探偵の指が僕の顔を指す。<br>
今にも口から飛び出そうな心臓を必死に抑え、反論する<br>
「でも、僕が帰ってきたときには叔父さんは<br>
く「学校なんていつでも抜け出せる!大方保健室にいくとでも言って抜け出したんだろう。」<br>
「で、でもっ!叔父さんは病死だったんでしょう!!」<br>
警部「それは私が説明するよ。」<br>
そう言って警部は書類を手にとる。<br>
どうでもよかった、どうせ全て分かってるんだろ。<br>
警部「警察側としてはとても恥ずかしいことなんだが、くんくん探偵が有ることに気付きましてね―…」<br>
再調査の結果、叔父は窒息だということが判明した、という内容をだらだらと説明する。<br>
仕方ない、僕には無理だったんだ。<br>
覚悟はしていたが、とても痛いな。<br>
姉を守るどころか、犯罪者の姉にしてしまった。<br></p>
<p>く「君が犯人だと思った決め手は…」<br>
「もうやめてください!ジュン君がそんなことするわけないわ!」<br>
姉は今にも泣きそうな顔つきで二人に詰め寄る<br>
「…ねぇちゃん、いいんだ。もういいんだ…。」<br>
く「?」<br>
「僕がやりました。」<br>
姉が視界の片隅で泣き崩れる。<br>
警部は意外だという目を向ける。<br>
楽になりたかった。<br>
何が正義だ、僕は無力じゃないか…。<br>
く「ありがとう、僕も君を追い詰めたくは無かったんだ。」<br>
「やっぱり、法が正義ですよね…。ははっ、僕なんて無力だ」<br>
く「…それは違う、探偵の僕からはこれ以上はいえないが。確かに法律は正義だ。でもそれは万人のための正義、君の正義も立派な正義だよ」<br>
「…」<br>
警部「時として正義と正義はぶつかる。そういう時は私たちは法律という正義を貫く。それだけだ」<br>
「…」<br>
長い沈黙。<br>
「あの、明日、明日僕に時間をくれませんか?」<br>
く「いいだろう、君を信じる」<br>
警部「決して逃げ出したりせぬようにな」<br>
「はい…」<br></p>
<p>その夜は姉といろいろな話をした。<br>
姉は気付いてたそうだ、叔父を殺したのは僕だと。<br>
そして叔父は肝臓に病気を抱えていてもう長くなかったのだと。<br>
ジュン君は悪くない、寝るまでそう言ってくれた。<br>
<br>
まぶしい。<br>
夜の間ずっと降り続けていた雨はすでにやみ、まぶしい日光が降り注いでいた。<br>
この教室ともお別れか、一ヶ月も経たないうちに…<br>
翠星石に蒼星石、一年と一ヶ月かもっと長く一緒にいた気がする。<br>
僕がいなくても、平気だよね。<br></p>
<p>ガラッ<br>
「どうしたの?こんな朝早くにこいだなんて」<br>
「あっ、真紅。おはよう」<br>
「まったく、今何時だと…ぁっ」<br>
抱きしめる、強く。<br>
「い、いきなりは卑怯だわ!」<br>
そっと真紅を離し、正面に立つ<br>
「真紅、今日はお別れを言いに来た」<br>
「そう…。そんな気がしたわ」<br>
「当分戻ってこれない」<br>
「えぇ…」<br>
「人を殺した」<br>
「そう…」<br>
「仕方なかったんだ。僕は、僕は…」<br>
「ほら、泣かないで、私まで悲しくなるわ」<br>
いつのまにか泣いていた。<br>
何で泣いているのか分からない。感情が押さえきれない<br>
「…ジュン、今度は私の番だわ」<br>
真紅が抱きしめてくれる。<br>
とても優しく、小さな体で僕を包み込む。<br>
「もう会えないわけではないのでしょう?私は待つわ、あなたが戻ってくるまで…」<br>
</p>
<p>
どれぐらいそうしていただろう。外が賑やかになってくる。<br>
「そろそろ皆が来るわ」<br>
「もう、行くね」<br>
「…気をつけて」<br>
「絶対に迎えに来るよ、真紅」<br>
「まってるわ」<br>
さよならを交わし、校門から入ってくる生徒の波に逆らい進む。<br>
「あっ、チビ人間。おはようですぅ♪」<br>
「おはようジュン君。忘れ物でもしたの?」<br>
ああ、二人にも会えなくなるんだな…<br>
「おはよう、二人とも。」<br>
挨拶をして、彼女たちとは反対方向に駆け出す。<br>
「?どうしたんですかね、ジュンは」<br>
「…翠星石、ジュン君泣いてたよ…」<br></p>
<p>叔父を殺してしまったことは後悔していない。<br>
後悔しているのは、この生活を自分の手で壊してしまったこと…<br>
一つだけ願いがある。それは犯罪者の僕には許されない願いかもしれないけれども…<br>
<br>
―また幸せな生活を持てるだろうか?―<br>
<br>
…きっとそれは難しいことではないよね<br>
僕には待ってくれる人がいるんだから………<br>
<br>
『僕だけの正義』 Fin<br></p>