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「LOVER DAYS①」(2008/02/19 (火) 23:29:43) の最新版変更点
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<div class="mes">「何がなんだかわからねーです…」 <br /><br />
さすがの翠星石にも予想外の事態だったらしい。 <br />
まぁ当然といえば当然のことだろう。 <br />
私も昨夜はなかなか寝付けなかった。 <br />
それは本当にこれでいいのだろうかと、一生懸命に考えていたからで… <br /><br /><br />
売り言葉に買い言葉で、彼氏を作る宣言をした私は <br />
クラス1の美男子を彼氏候補に据え、バレンタインで告白を計画。 <br />
だけど手紙で呼び出したはずの佐田くんは姿を見せず… <br />
代わりに現れたのは冴えないクラスメートの桜田ジュン <br /><br />
間違いを訂正する間もなく逆に告白されてしまった私は、 <br />
混乱した状況に流されるように『よろしく』と返事をしてしまって… <br /><br /><br />
「何考えてやがるです!」 <br />
「その場で間違いを訂正すれば済んだ話ですよ!」 <br />
「なんで付き合うなんてなるですか!あんな!…あんな…メガネチビと!」 <br /><br />
百面相の末、怒り顔になって私を睨む翠星石。 <br />
その表情はいつものそれとは違う鬼気迫るもので <br />
私は詰め寄られては後ずさりして必死に弁明する。 <br /><br />
「だ、だってぇ。彼真剣な顔して告白するんだもん」 <br />
「訂正したり断ったりできる雰囲気じゃなかったわぁ」 <br /><br />
「そんないい加減な態度が許されると思ってるですか!」 <br /><br />
「それを言うなら翠星石」 <br />
「もともといい加減な気持ちでの告白を促していたのは誰だったのかな?」 <br /><br />
横から助け舟が入る。 <br />
妹に窘められて翠星石の表情は限りなく曇っていく。 <br /><br />
「水銀燈。君はこれでいいのかい?」 <br />
「なんなら僕から彼に話をしても構わないけど…」 <br /><br />
続いて蒼星石は真剣な目で私にそう問い掛ける。 <br /><br />
その眼差しに昨日の彼の姿がダブる。 <br /><br />
「い、いらないわぁ」 <br /><br />
心に浮かびくる、昨日の情景。 <br />
屋上の冷たい風を吹き飛ばすくらいの衝撃。 <br /><br />
『よろしく』という私の返事を聞いた彼の、 <br />
とてもあたたかいあの笑顔。 <br /><br />
「彼のこと…知ってみたいと思ったから」 <br />
「だから、付き合うことにするわぁ」 <br /><br />
蒼星石は「そっか」と微笑んで、「それもいいかもしれないね」と続けた。 <br /><br /><br /><br />
―――LOVERDAYS①――― <br /><br /><br />
1日目はどこかよそよそしかった。 <br />
2日目に名前で呼び合うことが取り決められると少し解消した。 <br /><br />
5日目に初めて手を握った。 <br />
まだこの距離は早すぎたのかもしれない、 <br />
恥ずかしくてすぐに放して無かったことにした。 <br /><br /><br />
7日目。 <br /><br />
「へぇ~お裁縫が得意なんてすごいわぁ」 <br /><br />
私が素直に感嘆していると彼はとても驚いた顔を見せる。 <br /><br />
「これを言って笑われなかったのは久しぶりだなぁ」 <br />
そう言って笑う彼にまたドキリとする私。 <br />
彼の笑顔は本当に可愛い。 <br /><br />
「水銀燈は趣味とか特技とか無いの?」 <br /><br />
「私?そうね、料理は結構得意かもねぇ…」 <br /><br />
「へぇ、ちょっと意外かも」 <br />
と再び笑う彼に「失礼ね」と怒ろうとするも先に笑みがこぼれる。 <br /><br />
あぁ、すごく楽しい。 <br />
これが男の子と話しているからなのか、 <br />
ジュンとだからなのかというのはまだわからないけれど… <br />
とても楽しい時間が過ぎていく。 <br /><br />
「そういえばチョコの感想聞いてなかったわぁ」 <br />
「あれ手づくりなのよ?」 <br /><br />
「えっ!手作りっ!?」 <br /><br />
気付かなかったとでも言うなら、行き過ぎたお世辞だ。 <br />
かなり見映えよくはできたのだけれど、 <br />
いわゆる手作り感というのは消せるようなものではないから。 <br /><br />
「気付かなかったよ、ほんとに」 <br /><br />
思わず笑ってしまう。 <br />
彼ならもしかしたら本当に気付かなかったかもしれないと思えたから。 <br />
とてもニブそうな彼だったなら本当に。 <br /><br />
「じゃあやっぱり買ったものってことにするわぁ」 <br />
「高かったわよぉ~お返しにかなり期待しちゃうくらい」 <br /><br />
私の唇がちょっと意地悪で、とても優しい嘘を奏でる。 <br />
彼は「そんなぁ」と笑って財布を確認する仕草をとる。 <br />
それがあまりにもおかしくて、私はお腹を押さえながら笑ってしまった。 <br />
こんなに笑ったのは生まれて初めてに違いない。 <br /><br />
あぁ私は恋をしていくのだろう。 <br /><br />
そう自覚させるほどの、とても幸せな時間がゆるやかに過ぎていく… <br /><br />
恋人たちの甘い時間が…大きな波を前に… <br /><br /><br /><br />
つづく</div>