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「FIRST DAY」(2008/02/19 (火) 23:26:41) の最新版変更点
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<p>チョコレートを包んだ綺麗な青い包装紙が視界から消えた。 <br /><br />
下駄箱を閉じた私は深く冷たいため息を一つ吐き出し… <br />
…ゆっくりと屋上を目指す。 <br /><br /><br /><br />
―――FIRST DAY――― <br /><br /><br /><br />
「水銀燈も恋の一つでもしてみやがればわかるです!」 <br /><br />
バレンタインを一週間後に控えた乙女達の放課後。 <br />
もちろん話題となるのは甘いチョコレート一色だ。 <br /><br />
「そんなもの、興味無いわよぉ」 <br /><br />
そう、私には関係ない。 <br />
恋などしたことがないのだから興味の持ちようがないのだ。 <br /><br />
「もったいないですよ!水銀燈!」 <br /><br />
何がもったいないのだろう。 <br />
何ももったいなくはないはずなのだが。<br /><br />
「水銀燈ならどんな男でもより取り見取り!」 <br />
「男を狂わす星のもとに生まれたですのに…」 <br />
「なのに、男に免疫がないなんて、もったいねーですよ!」 <br /><br />
散々な言いように聞こえるのだが気のせいだろうか? <br />
この翠星石という名の少女の目に私は一体どんな風に映っているのやら。 <br /><br /><br />
「かと言って、好きな人がいないなら仕方がないんじゃないかい?」 <br /><br />
翠星石の勢いに圧倒され何も言えずにいると左隣から別の少女の声。 <br />
見るとショートカットの少女がエキサイトする双子の姉に苦笑をしていた。 <br /><br />
「蒼星石は黙ってるです!」 <br />
「私は水銀燈のためを思って言ってるです。」 <br /><br />
と身を乗り出して私を睨み付ける翠星石。 <br /><br />
「そういう貴女はどうなのぉ?」 <br />
「あなたは男と付き合ったことがあるわけぇ?」 <br /><br />
私も攻められてばかりはいない。 <br />
男っけがないのはお互い様なのだから。 <br /><br />
「わた、私には好きな人がいるです!」 <br />
「好きな男もいないお寒い水銀燈とは違うです!」 <br /><br />
その言葉にピクリと自分の眉尻が上がるのがわかる。<br /><br />
「そこまで言うなら、彼氏の一人でも作ってやろうじゃない!」 <br /><br />
私は立ち上がり翠星石を睨み返す。 <br />
言った瞬間しまったと思った。 <br />
その場にいた友達が皆、ニヤリと笑ったように見えたから… <br /><br />
もちろんそれは見間違いではなく、 <br />
その後私の意見は全く無視されての、私の彼氏候補が議論されることとなり、 <br />
日が暮れ始めた頃、それはめでたくも決定されたのだった。 <br /><br /><br />
クラスで1番のハンサムな彼。 <br />
勉強もそこそこ、 <br />
スポーツもなかなか、 <br />
家は結構な資産家で性格も評判はいい。 <br /><br />
「佐田くんか…」 <br /><br />
言われてもパッと顔が浮かばなかったのだけど <br />
翌日確認すると、なるほど男子では1番目立つ。 <br /><br />
「佐田くんか…」 <br /><br />
もう一度、確かめるように口にした。 <br /><br />
もう、間もなく。 <br />
チョコレートに付属した手紙を見て彼はここにやってくる。 <br />
断られない限りは彼氏になるだろう。 <br /><br />
正直、まだ迷っていた。 <br />
やはり好きでもない人と付き合うだなんて間違っているのじゃないか… <br /><br />
誰かと付き合うのは本当に好きになってからでも遅くないのでは―― <br /><br />
ガチャリと屋上のドアノブが回る音。 <br />
考えがまとまらないうちに佐田くんがやってきてしまった。 <br /><br />
心臓が高鳴る。 <br />
私は振り向けない。 <br /><br />
「手紙…読んだよ…」 <br /><br />
「そ、そぉ」 <br /><br />
まだ振り返れない。 <br />
呼吸が乱れる。 <br /><br />
「あのさ…僕…前からさ」 <br />
「君のことが…好きでした!」 <br /><br />
私は振り向いた。 <br />
先に言われた驚きが身体を動かしたのだ。 <br /><br />
「だから僕から、お願いします…」 <br />
「僕と付き合ってください!」 <br /><br />
私を彼の視線が射抜く。 <br />
とてもまっすぐな力強い視線。 <br /><br />
「さ、さ…くらだくん?」 <br /><br />
ようやく私の思考が少し正常に戻り、 <br />
眼前の異常を認識することができた。 <br /><br />
目の前にいるのは桜田ジュン。 <br />
ただのクラスメートの、桜田ジュンだった。</p>
<p> </p>
<p> つづく</p>
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