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翠星石の『ホントは作った怖い話』」(2006/03/28 (火) 22:45:45) の最新版変更点

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<p>  翠星石の『ホントは作った怖い話』<br> <br> <br> ――例えば、こんな状況を思い浮かべてみるです。<br> <br> 仲の良い友達と出かけた、愉しいドライブ。<br> その帰り道で、ほんの一本、道を間違えて、山道に迷い込んでしまったです。<br> 日が暮れて、うら寂しい山道は、どんどん狭くなっていくです。<br> でも、方向転換しようにも、一本道なので出来ないです。<br> <br> 直進しか出来ない一本道。<br> やがて、ぽっかりと口を開いたトンネルに差し掛かるです。<br> <br> そのトンネルが……曰く付きのトンネルだったとしたら――<br> <br> <br> これは、そんな不思議な体験をした姉妹の物語ですぅ。<br> ちなみに、語り口調が稲〇〇二に似てるのは、気のせいです。<br> <br> <br> <br> その日、翠星石は妹の運転する車で、ドライブを愉しんでいた。<br> 免許を取ったばかりだが、危なっかしいところは全くない。<br> ちょっと観光地で遊んだ後、明るい内に、帰途に就いたのだった。<br> <br> 朝、早起きしてお昼のサンドウィッチを作った事もあってか、<br> アシストシートの翠星石は、ついウトウトと居眠りを始めてしまった。<br> そんな姉を気遣って、蒼星石もカーステレオの音量を下げる。<br> <br> このまま、何事もなく、帰り着ける筈だった。<br> <br> がくん!<br> <br> 不意に車が揺れて、翠星石は眠りの世界から呼び戻された。<br> 車窓の外は、暗い。もう日が暮れてしまったらしい。<br> <br>  翠「蒼星石、ここは何処です?」<br> <br> 問い掛ける翠星石に、蒼星石は申し訳なさそうに呟いた。<br> <br>  蒼「ごめん、姉さん。道を一本、間違えちゃったらしい」<br> <br> 間違えた……で済まされても困る。<br> 翠星石は、ヘッドライトに照らし出される周囲の景色を真っ直ぐに見詰めて、<br> 妹をせっついた。<br> <br>  翠「気味が悪いです。早く、引き返すです」<br>  蒼「そうしたいのは山々なんだけどね。ここ、一本道なんだよ」<br> <br> 確かに、右側は山の斜面。左は、谷間。<br> 木々の枝に遮られて下は見えないが、かなり落差がありそうだった。<br> <br>  蒼「その内、方向転回できる場所があるだろうから、心配しないで」<br>  翠「うぅ……解ったです」<br> <br> 普通、こういった山道には、故障車を停める待避所が設けられているものだ。<br> けれど、更に進んだが、待避所は無かった。<br> <br> 街灯の一つもない、真っ暗な山道。<br> やがて、ヘッドライトの光芒に、古びたトンネルが浮かび上がってきた。<br> トンネル内は、やはりライトが設置されていないのか、真っ暗だ。<br> <br>  翠「蒼星石ぃ、あそこを通るですか?」<br>  蒼「仕方ないよ、さっさと通り抜けちゃおう」<br> <br> 二人を乗せた車は、トンネル内に滑り込んだ。<br> その途端、それまで全く以上の無かったエンジンが、ぷすん……と、停止してしまった。<br> <br>  翠「なっ、なななな……なに悪ふざけしてるですかっ!」<br>  蒼「ボクのせいじゃないよ……変だなぁ」<br>  翠「何してるですっ! 早く、出発するですっ!」<br> <br> ガソリンは、まだ半分以上も入っている。ガス欠ではない。<br> 蒼星石は、何度もキーを回してみたが、セルは始動しなかった。<br> ヘッドライトは点いているので、バッテリーが上がった訳でもない。<br> ふと、ギアを見ると『D』のままだった。<br> <br>  蒼「あ、ごめん。これじゃセルが回る筈ないや」<br>  翠「もう! なにやってるです。脅かすなですっ!」<br> <br> 言って、蒼星石はギアを『P』にして、キーを回す。<br> セルは一発で始動した。<br> 翠星石が、ホッと息を吐くのが聞こえて、蒼星石は思わず吹き出した。<br> 本当に、怖がりなんだからなぁ。<br> <br> さて、早く抜けてしまおう。<br> そう思った矢先、今度は屋根が、どぉんと鳴った。<br> これには、流石に蒼星石もビクリと肩を震わせた。<br> <br>  翠「なな、なんです、今の音は」<br>  蒼「落石かなぁ? 古いトンネルだからね。そういう事も、あるかも」<br> <br> 外に出て確かめようとする蒼星石を、翠星石は必死の形相で引き留めた。<br> <br>  翠「行くなですっ! どうしても確かめたいなら、トンネルを出てからにするですっ」<br>  蒼「解ったよ。早く抜けてしまおう」<br> <br> 蒼星石は静かにアクセルを踏み、ゆっくりと車を走らせ始めた。<br> <br> ごとん! ごん! ごん!<br> <br> 途中で、また屋根が鳴った。今度は、誰かが叩いているように、何度も、何度も。<br> <br>  翠「うっひぇえぇ! な、なんです! なんなんですぅ!」<br>  蒼「わ、解らないって。ボクに聞かないでよっ!」<br> <br> 蒼星石が、ぐいとアクセルを踏む。エンジンが、トンネルの中で唸りを上げた。<br> ぐんぐんとスピードが増し、トンネルの出口が見えてきた。<br> <br>  蒼「あっ! 出口だよ、姉さん!」<br>  翠「早くっ! 早く出るですっ。早く早く早くっ!」<br> <br> すっかりパニック状態の翠星石に急かされ、蒼星石は床に着くまでアクセルペダルを踏んだ。<br> <br> びゅんっ!<br> <br> 車は、やっとトンネルを抜けた。<br> だが、今度は前方に、ライトに浮かび上がるコンクリートの壁が見えた。<br> 右曲がりの急カーブ。壁の先は奈落の闇が広がっている。<br> このスピードでは、とても曲がりきれない。<br> <br>  翠「バカバカバカバカ! 停まるですぅっ!」<br> <br> 慌てる翠星石に対して、蒼星石は異様なほど穏やかに、こう告げた。<br> <br>  蒼「ごめん――ダメなんだ」<br>  翠「なぜですっ!」<br>  蒼「だって…………ボクの両脚を、誰かが掴んでて、動かせないんだから」<br> <br> ウソっ!<br> 運転席を見た翠星石は、妹の足元にまとわりつく白い腕を眼にして、絶叫した。<br> <br>  翠「ひいぃいぃいぃっ! イヤですうぅっ!」<br> <br> 翠星石は咄嗟に、サイドブレーキを握り締め、思いっ切り引き上げた。<br> <br> <br> <br> 突然、肩を叩かれ、翠星石はビクン! と飛び上がった。<br> <br>  蒼「どうしたの、姉さん。そんなにビクビクしちゃって」<br>  翠「えっと……いま、名前変換ホラー小説を読んでたですぅ」<br> <br> 蒼星石がパソコンのディスプレイを見ると、グロいイラストが貼り付けられた黒い画面に、<br> 白いテキストが躍っていた。<br> <br>  翠「これ、凄く怖ぇですぅ」<br>  蒼「しょうがないなぁ、姉さんは。こう言うの苦手なクセに、見たがるんだから」<br>  翠「うぅ…………今夜は眠れねぇです」<br> <br> 蒼星石はポリポリと頭を掻き、苦笑した。<br> <br>  蒼「ホンっトに、しょうがないな。でも、自業自得だからね。一緒には寝てあげないよ」<br>  翠「そ、そんなっ! 待つですぅ!」<br> <br> そんな蒼星石の後を負って、翠星石は部屋を飛び出した。<br> <br> <br>   ~終わるです~</p>
<p>  翠星石の『ホントは作った怖い話』<br> <br> <br> ――例えば、こんな状況を思い浮かべてみるです。<br> <br> 仲の良い友達と出かけた、愉しいドライブ。<br> その帰り道で、ほんの一本、道を間違えて、山道に迷い込んでしまったです。<br> 日が暮れて、うら寂しい山道は、どんどん狭くなっていくです。<br> でも、方向転換しようにも、一本道なので出来ないです。<br> <br> 直進しか出来ない一本道。<br> やがて、ぽっかりと口を開いたトンネルに差し掛かるです。<br> <br> そのトンネルが……曰く付きのトンネルだったとしたら――<br> <br> <br> これは、そんな不思議な体験をした姉妹の物語ですぅ。<br> ちなみに、語り口調が稲〇〇二に似てるのは、気のせいです。<br> <br> <br> <br> その日、翠星石は妹の運転する車で、ドライブを愉しんでいた。<br> 免許を取ったばかりだが、危なっかしいところは全くない。<br> ちょっと観光地で遊んだ後、明るい内に、帰途に就いたのだった。<br> <br> 朝、早起きしてお昼のサンドウィッチを作った事もあってか、<br> アシストシートの翠星石は、ついウトウトと居眠りを始めてしまった。<br> そんな姉を気遣って、蒼星石もカーステレオの音量を下げる。<br> <br> このまま、何事もなく、帰り着ける筈だった。<br> <br> がくん!<br> <br> 不意に車が揺れて、翠星石は眠りの世界から呼び戻された。<br> 車窓の外は、暗い。もう日が暮れてしまったらしい。<br> <br>  翠「蒼星石、ここは何処です?」<br> <br> 問い掛ける翠星石に、蒼星石は申し訳なさそうに呟いた。<br> <br>  蒼「ごめん、姉さん。道を一本、間違えちゃったらしい」<br> <br> 間違えた……で済まされても困る。<br> 翠星石は、ヘッドライトに照らし出される周囲の景色を真っ直ぐに見詰めて、<br> 妹をせっついた。<br> <br>  翠「気味が悪いです。早く、引き返すです」<br>  蒼「そうしたいのは山々なんだけどね。ここ、一本道なんだよ」<br> <br> 確かに、右側は山の斜面。左は、谷間。<br> 木々の枝に遮られて下は見えないが、かなり落差がありそうだった。<br> <br>  蒼「その内、方向転回できる場所があるだろうから、心配しないで」<br>  翠「うぅ……解ったです」<br> <br> 普通、こういった山道には、故障車を停める待避所が設けられているものだ。<br> けれど、更に進んだが、待避所は無かった。<br> <br> 街灯の一つもない、真っ暗な山道。<br> やがて、ヘッドライトの光芒に、古びたトンネルが浮かび上がってきた。<br> トンネル内は、やはりライトが設置されていないのか、真っ暗だ。<br> <br>  翠「蒼星石ぃ、あそこを通るですか?」<br>  蒼「仕方ないよ、さっさと通り抜けちゃおう」<br> <br> 二人を乗せた車は、トンネル内に滑り込んだ。<br> その途端、それまで全く以上の無かったエンジンが、ぷすん……と、停止してしまった。<br> <br>  翠「なっ、なななな……なに悪ふざけしてるですかっ!」<br>  蒼「ボクのせいじゃないよ……変だなぁ」<br>  翠「何してるですっ! 早く、出発するですっ!」<br> <br> ガソリンは、まだ半分以上も入っている。ガス欠ではない。<br> 蒼星石は、何度もキーを回してみたが、セルは始動しなかった。<br> ヘッドライトは点いているので、バッテリーが上がった訳でもない。<br> ふと、ギアを見ると『D』のままだった。<br> <br>  蒼「あ、ごめん。これじゃセルが回る筈ないや」<br>  翠「もう! なにやってるです。脅かすなですっ!」<br> <br> 言って、蒼星石はギアを『P』にして、キーを回す。<br> セルは一発で始動した。<br> 翠星石が、ホッと息を吐くのが聞こえて、蒼星石は思わず吹き出した。<br> 本当に、怖がりなんだからなぁ。<br> <br> さて、早く抜けてしまおう。<br> そう思った矢先、今度は屋根が、どぉんと鳴った。<br> これには、流石に蒼星石もビクリと肩を震わせた。<br> <br>  翠「なな、なんです、今の音は」<br>  蒼「落石かなぁ? 古いトンネルだからね。そういう事も、あるかも」<br> <br> 外に出て確かめようとする蒼星石を、翠星石は必死の形相で引き留めた。<br> <br>  翠「行くなですっ! どうしても確かめたいなら、トンネルを出てからにするですっ」<br>  蒼「解ったよ。早く抜けてしまおう」<br> <br> 蒼星石は静かにアクセルを踏み、ゆっくりと車を走らせ始めた。<br> <br> ごとん! ごん! ごん!<br> <br> 途中で、また屋根が鳴った。今度は、誰かが叩いているように、何度も、何度も。<br> <br>  翠「うっひぇえぇ! な、なんです! なんなんですぅ!」<br>  蒼「わ、解らないって。ボクに聞かないでよっ!」<br> <br> 蒼星石が、ぐいとアクセルを踏む。エンジンが、トンネルの中で唸りを上げた。<br> ぐんぐんとスピードが増し、トンネルの出口が見えてきた。<br> <br>  蒼「あっ! 出口だよ、姉さん!」<br>  翠「早くっ! 早く出るですっ。早く早く早くっ!」<br> <br> すっかりパニック状態の翠星石に急かされ、蒼星石は床に着くまでアクセルペダルを踏んだ。<br> <br> びゅんっ!<br> <br> 車は、やっとトンネルを抜けた。<br> だが、今度は前方に、ライトに浮かび上がるコンクリートの壁が見えた。<br> 右曲がりの急カーブ。壁の先は奈落の闇が広がっている。<br> このスピードでは、とても曲がりきれない。<br> <br>  翠「バカバカバカバカ! 停まるですぅっ!」<br> <br> 慌てる翠星石に対して、蒼星石は異様なほど穏やかに、こう告げた。<br> <br>  蒼「ごめん――ダメなんだ」<br>  翠「なぜですっ!」<br>  蒼「だって…………ボクの両脚を、誰かが掴んでて、動かせないんだから」<br> <br> ウソっ!<br> 運転席を見た翠星石は、妹の足元にまとわりつく白い腕を眼にして、絶叫した。<br> <br>  翠「ひいぃいぃいぃっ! イヤですうぅっ!」<br> <br> 翠星石は咄嗟に、サイドブレーキを握り締め、思いっ切り引き上げた。<br> <br> ききききぃ――――っ!<br> <br> 山間部に、四つのタイヤが立てる悲鳴が木霊した。<br> 懸命に、姿勢を立て直そうとハンドルを操作する蒼星石。<br> 車体が横滑りして、助手席側がコンクリートの壁に急接近していく。<br> <br>  翠「い、イヤあぁぁぁぁ――――!!」<br> <br> <br> 突然、肩を叩かれ、翠星石はビクン! と飛び上がった。<br> <br>  蒼「どうしたの、姉さん。そんなにビクビクしちゃって」<br>  翠「えっと……いま、名前変換ホラー小説を読んでたですぅ」<br> <br> 蒼星石がパソコンのディスプレイを見ると、グロいイラストが貼り付けられた黒い画面に、<br> 白いテキストが躍っていた。<br> <br>  翠「これ、凄く怖ぇですぅ」<br>  蒼「しょうがないなぁ、姉さんは。こう言うの苦手なクセに、見たがるんだから」<br>  翠「うぅ…………今夜は眠れねぇです」<br> <br> 蒼星石はポリポリと頭を掻き、苦笑した。<br> <br>  蒼「ホンっトに、しょうがないな。でも、自業自得だからね。一緒には寝てあげないよ」<br>  翠「そ、そんなっ! 待つですぅ!」<br> <br> そんな蒼星石の後を負って、翠星石は部屋を飛び出した。<br> <br> <br>   ~終わるです~</p>

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