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第五章『くんくん』」(2006/03/27 (月) 14:55:12) の最新版変更点

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<p><a title="bokudakenoseigi5" name= "bokudakenoseigi5"></a>第五章『くんくん』<br> <br> この日のために借りておいた私設私書箱を開ける。<br> 薬が届いていた。<br> 少し興奮したが、慎重にふたを開けてみる。<br> 中までは確認できないが、間違いないようだ<br> よし…決めた。明後日の金曜日に執行だ。<br> やれるのか?<br> 愚問だ。<br> 物理的にも、精神的にも問題いない。<br> 覚悟はとっくに出来ている。<br> それに、やらなければいけないのだ。<br> 心を鎮め、手順を何度も確認する。<br> 廊下からは不快な鼾がもれてくる<br> 明後日には、明後日にはこの家にも平和が戻ってくるのだ。<br> </p> <p>木曜日<br> 授業なんて耳に入らない。<br> 頭の中でシミュレーションし、不測の事態を一つづつ消していく。<br> 大丈夫。やれる。<br> 自ら手を下すというのは避けたかったが、ここまで来たのなら仕方がない。<br> いつものように真紅と帰る。<br> 「ジュン、ニュースよ!くんくんが来たのよ、この町に!」<br> 「ふぅ~ん」<br> 考え事をしながら上の空で返事する<br> 「大手の探偵事務所から独立して、この町に事務所を開いたのだわ!」<br> 真紅が横で何か楽しそうに話している<br> とりあえず笑って応える<br> 彼女はずっとくんくんについて語り、今度見学に行くとか何とか行っていた<br> 何故か僕も一緒に行くことが決定していたが、気にしてもしょうがない<br> さよならを言って僕らは別々の帰途に着いた。<br> <br> 「ただいま」<br> 好都合なことに姉はまだ部活のようだ。<br> 無論この時間を狙って帰ってきたのだが…<br> 叔父が酔いつぶれているのを確認し、キッチンの棚をあさる。<br> パックに入った酒を二つ見つけた。<br> 一つを処分し、一つを部屋に持ち帰る。<br> 以前標本を作る時に使った注射器を取り出し、薬を取ってパックに注入する。<br> 準備は終わった。<br> あいつはまた明日これを見つけて、何も知らずに飲むだろう。<br> これはあいつにとって最後の晩餐だ。<br></p> <p>金曜日、当日…<br> 全てが不自然だ。<br> 吐き気がする。<br> 朝から何度となく交わした「おはよう」の言葉、それすらも理解できない。<br> ほんとに出来るのか?<br> やるんだ!やるんだ!<br> 学校に着き心を落ち着かせる。<br> 「八時か…。」<br> 三時間を切った。<br> 予定では三時間目だ…。出来れば来て欲しくない…<br> <br> そんな僕の心とは裏腹に時間は休むことなく進んでいく<br> 心拍が異常だ<br> 心音が直接耳に入っていく<br> 目の前が白黒と反転している…<br> ははっ、弱いなやっぱり…。覚悟はしたじゃないか・・・<br> 「ジュン!あなた大丈夫なの?」<br> 真紅だ。<br> 人から見たら僕は立派な病人に見えるのだろうか。<br> 「ちょっと無理かも…。三時間目は保健室に行くから、伝えといて…。」<br> 「…わかったのだわ、無理しないでね?」<br></p> <p>予定通りに三時間目の体育をサボることに。<br> 保健室には向かわず、人気のない裏庭に出た。<br> 茂みで私服に着替え、あたりを見渡し塀を越える。<br> 大丈夫、誰にも見られていない。<br> 家まで走って10分。人目につかないように路地裏を走っていく。<br> 周りの風景がおかしいのか、自分の目がどうかしたのか、グニャグニャとした景色が僕の行く手をさえぎる。<br> だめだ!遅れてしまう!しっかりしろ!<br> <br> 「ハァハァハァ…」<br> 予想以上に息がつらい。<br> 時計を見ると予定時間より1分早かった。<br> キィーッ<br> 音を立てずに玄関をあけ、二階に向かう。<br> 叔父は酔いつぶれていた。<br> 足で腹をけってみる。<br> 反応は無い。<br> 「薬が効いてるな」<br> シアナマイド液はアルコール依存症患者に用いる薬で、アルコールを分解するのを妨げる。<br> 薬が効くと二日酔いに似た症状に襲われるそうだが、その通りだった。<br> 今は不快感に耐え切れず熟睡しているのだろう。<br> ちょっとやそっとじゃ起きないはずだ。<br> 近くにあったクッションを手にとり、叔父の胸部に跨る。<br> 口に濡れたタオルを突っ込み、鼻を手でふさぎ、少しづつ胸部に体重をかけ圧迫する<br> もう後戻りは出来ない……<br></p> <p>四時間目の開始にあわせて授業に戻る<br> あいつの最後の顔がよみがえる。<br> 死の寸前で目を開き、必死に暴れようとする。<br> だが、極度の酸欠で体がいうことを聞かないのだろう…<br> そのまま眠りに落ちた、永遠の…<br> 震えは無い。<br> 気分は冴えないが、落ち着いている。<br> 真紅が不思議な顔つきで僕の顔を覗いているのには気付かなかった…<br> <br> <br> ?「やぁ、警部。」<br> 新しいはずなのに、部屋が汚い<br> 警部「お邪魔するよ、くんくん探偵」<br> く「きいてるよね?僕は独立したんだ」<br> 山積みにされた書類の隙間を縫って歩き、彼の前まで行く<br> 警部「そう聞いたから来たんだ。でもどうしてなんだい?」<br> く「前の事務所は僕を売り出したかったんだろう。大きな事件、例えば連続殺人だの怪奇殺人だのそういった世間の目を集めるような事件だけしか扱わしてくれなかったんだ」<br> 警部「君は凄腕だしね、カリスマ性もある。人選ミスとは思わないが?」<br> く「それは僕の主義に反するんだ。僕はこの世から犯罪を無くしたいんだ、無理だとしてもね。だから注目を集める事件はみんなで解決すればいい。僕は誰も気付かないような、事件とも気付かない様な事件を解決するから」<br> 警部「そんなもんかねぇ~」<br> く「そんなもんだよ」<br> 納得した不利をするが、釈然としない。<br> 彼はこう言ってるが、彼が今まで解決した事件はどれもこれもTVに取り上げられていた。<br> これもカリスマのなせる業かね…。<br> でも、これでこの地域の犯罪は無くなるかもな…<br></p>

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