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「甘い保守シリーズ9」(2008/05/15 (木) 19:59:26) の最新版変更点
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<p>クリスマスな保守を致すわよぅ2<br>
<br>
「ったく、さんざ騒ぎまくって帰りやがって………」<br>
「まぁまぁ、皆、賑やかで楽しそうだったからいいじゃない」<br>
「それは………そうかもだけど。だけど、片づけ位………」<br>
「あら、真紅ちゃん達は手伝ってくれたわよぅ?」<br>
「………大人連の半分が沈んでたってのが問題だよな」<br>
「ふふ、歩けなかったものね。柴崎先生が槐先生の車で送ってくれて助かったわ」<br>
「また暫く頭が上がらないんだろうなぁ。――それはともかく。なぁ――」<br>
「んぅ、なぁに?」<br>
「いや、そんな大した事でもないんだけど、なんとなく気になったと言うか………」<br>
「うん、お姉ちゃん、わかる事ならなんでも言うわよ?」<br>
「んー………その、姉ちゃんくらいの年なら、クリスマスは『皆で…』って言うより――」<br>
「うぅ、それはお姉ちゃんが異性に縁がないって言ってるのぅ?」<br>
「いや、器量は悪くないんだからそんな事は――じゃなくて!」<br>
「――うふふ、ありがとぅ。――『じゃなくて』?」<br>
「………やっぱり、その、誰か………『特定の人と』楽しみたいんじゃないのかなって」<br>
「んー………まず一つ。貴方が言う『特定の人』――恋人は、お姉ちゃんにいません。えへん」<br>
「んな事で威張るな。――『まず』って事は他に?」<br>
「ええ。――勿論、お姉ちゃんも『愛しい人』と過ごすのも楽しいと思うわ。<br>
だけど――」<br>
「………うん」<br>
「今は、『大好きな人たち』と過ごす方が、お姉ちゃんは楽しいと思ってるの。<br>
………えへへ、子供っぽいかしら?」<br>
「………いや。――なんで僕達は姉弟なのかなって」<br>
「え?………んーと。――だ、駄目よぅ!?お姉ちゃん達は血が繋がってるのよ!?あぁでも」<br>
「考えてそーいう結論か!?――そうじゃなくて、考え方が僕と全然違うんだなって思ってさ」<br>
「そんなに難しい事じゃないと思うわ。そうね――今日、もう昨日かな。楽しくなかった?」<br>
「………いや。その、なんだかんだ言って、楽しかった………と思う」<br>
「ふふ、でしょ?そう思うのなら、やっぱり、私達は姉弟よぅ――さ、お片付け、頑張りましょぅ」</p>
<p><br></p>
<hr>
<br>
滑稽な保守を致す…2<br>
<br>
「――二度目の…『束縛』の契約を交わしても、貴女様はその程度ですの、赤薔薇様?」<br>
丁寧な、しかし、嘲りを隠そうともしない声に、真紅は動かない身体に鞭を打って、立ち上がる。<br>
自らに対する嘲りならば、受け入れよう―だが。<br>
だが、契約――そして、契約を交わした相手までも貶めるその言葉は、許せない。<br>
「私が貴女より弱い事は認めるわ、白薔薇。<br>
だけど………『絆』の契約を嘲ったのは、改めなさい」<br>
傷だらけの身体で、言葉だけは毅然と言い放つ。<br>
それが、自分の為に危険を顧みず手を差し伸べてくれた『従者』への礼儀。<br>
白薔薇――雪華綺晶は、口に弧を描き、続ける。<br>
「ふふ………ですが、その無意味なモノの所為で、他の薔薇様達は抜け殻になってしまわれましたわ。<br>
モノ言わぬ、ただの人形に――ふふふ、あははは、喜劇ですわ、滑稽ですわ、薔薇様方!<br>
――さぁ、貴女様も『ただの』人形になってしまいなさい!」<br>
哄笑と共に突き出された腕から放たれる、無数の氷の刃。<br>
咄嗟に反応しようとする真紅――だが、身体は動かず。<br>
傷だらけの体躯は更に傷つき、衣裳の端々も切り刻まれていく。<br>
漏れ出そうになる苦痛の声を押し戻し、見上げた瞳に映ったモノは――殊更に大きな、氷塊。<br>
(避けられないっ)「あはははははははははははははっっっ」<br>
真紅が見上げた、その時。<br>
雪華綺晶が勝利を確信した、その瞬間。<br>
氷塊は、粉々に砕け散った――突如として現れた、真紅を取り巻く苺轍によって。<br>
そして――真紅を包む、六つの淡い光と輝きを放つ糸。<br>
「是が………是が『絆』の力よ。白薔薇、さぁ――!」<br>
「ふ、ん…その様な脆く醜いモノ、打ち砕いて差し上げますわ、赤薔薇様――終幕を迎えましょう!」<br>
―――――――――――――――――<br>
「………………という夢を見た。………………哀しかった」<br>
「なっがい前振りだなぁ………。――まぁ気にするなよ。お前ら、仲いいんだし、な?」<br>
「私………ばらしーの出番が、微塵もなかった………!」<br>
「そこかよ」
<p><br></p>
<hr>
<br>
甘ぁい保守を致すなの<br>
<br>
「ゆぅきやこんこん、あぁられやー、こんこん――♪」<br>
「おぉぉぉぉ、なんで偶々外出した時に限って雪が………さむい………」<br>
「ふぅっては、ふぅってはっ、ずーんずん、つぅもるぅー――♪」<br>
「ダッフル引っ張り出してきて良かった………なかったらもっと寒かっただろうし………」<br>
「やぁまもぉ、のーはらもぉ、わぁたぼうし、かぁぁぶりぃぃ――♪」<br>
「………えーと。そこの全力で動揺歌ってるの」<br>
「かぁれき、のこらぁずぅぅ、はぁながさぁぁぁくぅぅ!――♪」<br>
「一昔前のロボットアニメの歌い方だよなぁ………。なぁ、雛苺」<br>
「ゆぅぅきやぁ、こんこ――♪」<br>
「二番にいくなぁ!?――ったく、もう少し静かに歩けよ」<br>
「うゅ、貴方が『寒い』って言わないなら、静かにするの」<br>
「………………さむ」<br>
「あぁぁぁられやぁぁぁぁ、こんっこんっっ♪」<br>
「わかった悪かったから、拳いれて歌うな………」<br>
「寒い寒いって言ってると、余計に寒くなっちゃうのよ。勿論、聞いている方も」<br>
「その割には、お前は薄着だよな」<br>
「………えへへ。ちょっと、お洋服の選択を失敗しちゃったの」<br>
「しょうがないなぁ………ほら、コート。僕は下にセーターも着てるし………」<br>
「うぃ?でも、ずぅっと寒い寒いって言ってたの。寒いの、ヤじゃないの?」<br>
「お前が風邪引く方がもっと嫌だ。――や、その、柏葉や雪華綺晶に何されるかわかったもんじゃないし」<br>
「ん。――でも、コートは借りなくていいのよ」<br>
「寒いんだろ?だったら、遠慮せず――」<br>
「――『遠慮せず』、潜らせてもらうの。んしょ………二人羽織で暖かいのよ」<br>
「わ、おぃ!?――あーもぅ、確かに暖かいけどさ………」<br>
「くっついてると、もっと暖かく出来るのよ――こうやって、なの――(ちゅ」<br>
「ん――まだ、寒いぞ。もう少し暖かくしようか?」<br>
「ヒナも、そう思ってたのよ。――もっと、もっと、暖かくして欲しいなの」
<p><br></p>
<hr>
<br>
大掃除な保守を致―すですぅ ―すんだよ<br>
<br>
「さぁ!年末年始を奇麗に迎える為にも、張り切ってやるですよ!」<br>
「………って言っても、自室だけなんだけどね」<br>
「うぐ。………でもですね、他の所はおばばがやっちまったのですよ」<br>
「『やっちまった』って言うか、普段からきちんとしているから――」<br>
「ほとんどする事がなかったのですよねぇ………。恐ろしいおばばですぅ」<br>
「いや、見習おうよ。それが理想なんだし」<br>
「ま、まぁまぁ、それは置いといて。――さっさと始めるですよっ」<br>
<br>
「んー、まずは………BGMを決めましょう。何がいいですかねぇ、やっぱり、アップテンポな」<br>
「いや、何でもいいから、始めようよ」<br>
「なんと!?BGMは大事ですよ!?やる気が変わってくるですぅ」<br>
「そうかもしれないけど、さっきから大分選曲で迷ってるじゃないか」<br>
「ぅ………では適当に、早めの曲をかけて、と。準備完了ですぅ」<br>
<br>
「ひやぁ!?わ、わ、あぅぅ………」<br>
「………(てきぱきてきぱき)」<br>
「ぇぅ………ぅあー………きゃー!?」<br>
「(てきぱき)………煩い。何をそんなに紙っぺら読んで騒いでるの?(ひょぃ」<br>
「へ?――わ、こら、読むな、読む――!?」<br>
「『傍にいて欲しいです。――大好k』」<br>
「きゃーきゃー!お、音読はもっと止めるですぅ!?」<br>
「渡せなかった手紙、だね。こういうのだと素直なのにね。くすくす」<br>
「て、てめぇ………!血を分けた妹とは言え、数々の仕打ち、もう許さんですよ!」<br>
「じゃ、どうするのかな?ボクはそういうの書いた覚えは――」<br>
「『えたーなるふぉーすぶりざーど。相手はs』」<br>
「わ、わーわー!?か、返せぇ、ボクの黒歴史ノートっ!?」<br>
<br>
「結局、あんまり進まなかったですぅ」「誰の所為だと思ってるのさ!?」
<p><br></p>
<hr>
<br>
大掃除な保守を致 ―す… ―すかしら<br>
<br>
「………お休みの日に、ごめんなさい」<br>
「うぅん、気にしないで薔薇水晶。カナ達も一息ついた所かしら」<br>
「そーそー、それに、ばらしーちゃんのお招きなんだから、喜んでお引き受けするわよ」<br>
「みっちゃんは変な所でフットワークが軽すぎるのかしら」<br>
「あっはっは。そういうカナだって御誘いがあってから片付けのスピード、上がってたわよ?」<br>
「ぅ。だって、槐先生は用事があっていないって………。薔薇水晶だけじゃ大変だろうし………」<br>
「んと………二人とも、………ありがと」<br>
「ふふ、その笑顔に応える為にも、頑張らないとね。――さぁ、始めるわよっ!」<br>
<br>
「まずは槐先生のお部屋から、かしら?」<br>
「ん。私の部屋はボスだから………お父様の部屋を、前哨戦に………」<br>
「何がどうボスなのか気になるけど………あらま、意外と片付いてるわねー」<br>
「うん、お父様の部屋は、まだ綺麗。――ぁ………机の引出しは開けちゃ駄目だ………って」<br>
「ソーナンダー(がら)」<br>
「速攻かしら!?」<br>
「………わはー、ばらしーちゃんの写真が小奇麗に並べられてるわー」<br>
「………おとーさま………恥ずかしい」<br>
「(――奥にあるのは………黙っていた方がよさそう………ね)」<br>
<br>
「で、次はばらしーちゃんの部屋………って、これはなかなか………」<br>
「床がほとんど見えない………薔薇水晶、今度、普段のお片付けも一緒にやるのかしら」<br>
「ぁぅー………。い、いつもはもうちょっとマシ………っ、探しものしてたから………!」<br>
「わかるわぁ。――何探してたのかな?」<br>
「………んと、ゲーム。沢山シリーズがあるから、まとめておこう………て。………コレ」<br>
「わ、懐かしい!私が学生の時にも出てたわよ、コレ」<br>
「えと、えと、こっちのが一昨年出たので、あれが去年………手に持ってるのが、今年。………する?」<br>
「ばらしーちゃんのお招き以下略。私の頃は『運命のRPG』とか言う、訳わかんないジャンルだったわ」<br>
「――って、さり気にド壺に嵌らないで!薔薇水晶も嬉しそうに起動しないのかしら!?」
<p><br></p>
<hr>
<br>
大掃除な保守を致 ―すなの ―しますわ<br>
<br>
「年の瀬で忙しい時なのに………お手伝いに来てもらってよかったの、雪華綺晶?」<br>
「はい、巴様。我が家は………その、いつも人に任せているので………」<br>
「雪華綺晶の家は大き過ぎるのよ。あんなに大きいと、何日も掛っちゃうの」<br>
「そう言えば、そうだったね。………あれ。ちょっと待って。………いつも?」<br>
「はい………。ですので、余りお掃除の仕方とかわからなくて………お役にたてるかどうか」<br>
「――ん、わかった。大丈夫、指示は出させてもらうから」<br>
「それじゃ、お片付けを始めるのよ♪」<br>
<br>
「おっかたづけ~、おっかたづけぇぇぇ、今日はぁ、みんなでおかたづけぇぇ――♪」<br>
「ふふ、姉様、お楽しそうですわね」<br>
「ええ。何でも、楽しそうにこなそうとするのが雛苺の良い所だと思う。………ただ」<br>
「うゅ、………昔読んでた絵本が出てきたの。うーー………」<br>
「あら、あらあら………もくもくと読書を………」<br>
「………集中力が散漫になりがちなのが、悪い所。もぅ………」<br>
「………いかがいたしましょう?」<br>
「うん、こっちに注意を促すわ。――ね、雛苺?」<br>
「うぃ………ちょっと待ってなの、あ、こっちにも懐かしい本があるのっ」<br>
「雛苺。――ゲームをしましょうか?」<br>
「………ゲーム………なの??」<br>
「ええ。三人で、一番頑張った人が一等賞のゲームよ」<br>
「一等賞………うぃ、ヒナ、頑張るの!」<br>
「因みに。一等賞の人には、おやつのうにゅーが二つ」<br>
「頑張るの!ヒナ、とってもとっても頑張るなのっ!」<br>
「………巴様、人使いの才がおありな様で」<br>
<br>
「えへへ~、一杯頑張った後のうにゅーはとっても美味しいの♪」<br>
「皆頑張ったから、うにゅーは皆二つずつ。――美味しいね、二人とも」<br>
「なるほど………初めからそのおつもりでしたのね。お掃除も完璧――感服致しましたわ」
<p><br></p>
<hr>
<br>
大掃除な保守を致しましょう<br>
<br>
「はぁい、こんにちは~。冬休みで冬眠してる貴方の部屋にぃ十代女子二人と二十代じょ―あいたっ」<br>
「そういう風に挨拶する意味と必要性を教えてほしいわね、銀の字」<br>
「………頭抑えてるから、無理だと思うのだわ。お邪魔するわね」<br>
「――問答無用だな、めぐ先生もお前らも。いいけど、掃除してるから遊べないぞ?」<br>
<br>
「あら、だったら………丁度よかったじゃない、二人とも」<br>
「「どういう意味?」」<br>
「ポイントアップのチャンスって意味」<br>
「………ま、まぁ。一人暮らししてる私がちょっと本気出せばぁ………!」<br>
「………別に、そういうのが目的ではないけれど。学級委員として、整理整頓は義務。<br>
――見せつけてあげるのだわ………!」<br>
<br>
「………おーい、三人とも、入らないのか?」<br>
<br>
「――すぐに使わないモノはぁ、段ボールやクリアケースに纏めるのよぉ」<br>
「へぇ、確かにこうすると、場所を取らないな」<br>
「――似たような大きさ、同じ系統のモノは棚に一つにしておきなさいな」<br>
「お、ぐちゃぐちゃだった書棚が綺麗に。見やすくていいな」<br>
<br>
「結構片付いてきたわね。――後は」<br>
「この微妙に必要か否か分り難いものねぇ。――ちょっと、めぐ、案の一つでも出しなさいよぉ」<br>
「………クは――なさい」<br>
「一応年長者なんだからぁ、少しは役にぃ………へ?」<br>
「ジャンクは捨てなさい」<br>
「じゃ、ジャンクゥゥ!?で、でも、いつか使うかもしれないしぃ………っ」<br>
「使わなさそうなモノは、結局使わないの。必要ないの。在る意味がないの――おわかり?」<br>
「………めぐ先生、さり気に怒っているのだわ」<br>
「若干、微笑みが浮かんでるのが空寒いな。――って、水銀燈、黒ポリ袋に埋まっていくなぁ!?」
<p><br></p>
<hr>
<br>
大掃除な保守を致そう<br>
<br>
「………メールで『すぐ来い』………と急かされてみれば………」<br>
「お、槐先生、良く来てくれた。装備はそこだ」<br>
「そこだ、ではありません。用件はなんですか、結菱先生」<br>
「ふむ。………私の格好を見てわからないかね?」<br>
「その現実から目をそ向けたいのですが。………何故、おさんどんさんの様な」<br>
「はっはっは、家を任せている家政婦さんが帰郷してしまってな」<br>
「………帰らせて頂きます」<br>
「おぉ、哀れな老人をこの広大な空間に一人で残すと言うのかね」<br>
「微塵も哀れと思いませんが。………致し方ない、少しだけ手を貸しましょう」<br>
<br>
「………結菱先生。書棚から、古い写真が見つかったのですが」<br>
「ん、どれ。――ふむ………懐かしいモノを見つけたな」<br>
「この方が、先生の弟殿、ですか。そして、一緒に映っている女性が」<br>
「――うむ、弟………二葉の婚約者だ。いや、だった、だな」<br>
「………お会いになられないのですか?此方の女性は、今も………」<br>
「もう、そういう歳ではないさ。私も。恐らく、彼女も」<br>
――君はどうなのかね。枯れるには早かろう?」<br>
「私は………どうなのでしょうね。自分では、判断が付けられない状態です」<br>
「いい訳だな、その言葉は。それとも、まだ迷走を続ける子供かね、槐君」<br>
「………くく、言葉が辛辣なのは、己と重ねているからですか」<br>
「過去の、な。――まぁいい。さっさと終わらせて、………ふむ、成人指定ビデオでも借りてみるかね」<br>
「枯れていたのではないのですかっ!?――と言うか、中学生や高校生じゃあるまいし」<br>
「はっはっは、最近のは様々な趣向があるそうだぞ。ほれ、君の好きな――」<br>
「若 奥 様 ☆――はっ!?」<br>
「よぅし、先生頑張っちゃうゾー」<br>
<br>
「く、所詮男二人では終われなんだか。すまない、槐先生。遺憾だが、鑑賞会は中止だ」<br>
「そも本気だったのですか!?」
<p><br></p>
<hr>
<br>
年始の保守を致 ―すのだわ ―すわぁ <br>
<br>
「明けまして――」<br>
「おめでとぉ。………毎年思うんだけど、年が明けるのって目出度いの?」<br>
「慣用句に難癖つけるんじゃないのだわ」<br>
「だってぇ、別に私は目出度くも何ともないし。――まぁ、振袖はちょこっと嬉しいけど(くるん」<br>
「そうね。ふふ、紫地の着物が、銀色の髪によく映えて――」<br>
「――ぁん、胸………襟元が崩れてくるぅ??」<br>
「………ふーん」<br>
「その点、貴女はきちっと着こなしてるわねぇ。流石と言うか」<br>
「ほー。………何がどう流石なのか、私の目を見て説明してくれるかしら、水銀燈さん?」<br>
「え、え?こういう儀礼的?と言うか、作法?みたいなのは、よくできてるなぁ、ってぇ………」<br>
「………そう。私の短慮だったのね。気にしないで」<br>
「………??――そう言えば、めぐや巴も上手よねぇ。私も奇麗にきこなしたいわぁ………」<br>
「………(ぴきぴき。――さっき言っていた事だけれど」<br>
「胸?」<br>
「違う。――『年が明けるのって目出度いの』って。<br>
あぁいう風に言いだしたのは、西暦1001年頃が起源らしいのだわ」<br>
「へぇ、どうして?」<br>
「当時、疫病や天災が毎月の様に起こっていたの。だから、人々は、<br>
『次の年もなんとか迎えられた』っていう事で、『明けましておめでとう』と言いあったのだわ」<br>
「うぅん、なるほどぉ、納得できたわぁ」<br>
「そ。でも、みんなには言わない方がいいわよ?」<br>
「どうして?こう言う話って、ふとした時に――」<br>
「今適当に作った、でっちあげだもの」<br>
「………………し、真紅ぅぅぅ!(がぅがぅ」<br>
<br>
「さーて、今年の甘い保守シリーズは、<br>
『真紅、三国の覇者になる』『みっちゃんの恋物語』『巴、大人になる』の三本でお送りするのだわ」<br>
「も、もう騙されないわよぉ!(がるるぅぅ」
<p><br></p>
<hr>
<br>
年始の保守を致 ―すなの ―すかしら<br>
<br>
「初詣とか言って、姉ちゃんに連れ出されたけど………さむい………帰りた――?」<br>
「――い、いい所にいるのかしらぁ!?」<br>
「――か、匿って欲しいのー!?」<br>
「………なんか、既視感を感じるなぁ。あれ、金糸雀はともかく、雛苺は誰から………?」<br>
「けふけふ………ともかくって酷いのかしら。………まぁ、追われてる相手は間違っていないけど」<br>
「はぁーすぅー………ひ、ヒナは巴から逃げてるのよ………」<br>
「柏葉から?それは………珍しいな。でも、どうして?」<br>
「うゅ………なんか、よくわからない単語を呟きながらにじり寄ってくるの………怖いの………」<br>
「………………想像すると、なかなかにホラーだな………。金糸雀もそんな感じなのか?」<br>
「ちょっと違うのかしら。いつもは服を着せようとしてくるんだけど――」<br>
「あぁ、さんざん、コスプレさせられてるもんなぁ」<br>
「時々喜んで見てる人がしみじみ言わないで欲しいのかしら。――んぅ、今日は、脱がせようとしてくるの」<br>
「………………遂にそっちの道に?」<br>
「みっちゃんにそっちの趣味はないわ………ない筈………?」<br>
「微妙に疑問を投げかけてくるな。――と。お出ましの様だぞ………っ」<br>
「――ひっ!?」「――かしらぁ!?」<br>
「………邪魔しないで。邪魔するなら、例え貴方でも、容赦しない」<br>
「………うふふ。仕方ないよねぇ、そーいう行事なんだもんっ」<br>
「――確かに、ホラーだな。で、二人とも、どういう理由で………」<br>
「………………始め」「………………開き」<br>
「………………はぁ?」<br>
「雛始め!」「カナ開き!」<br>
「いや、違うだろ!?――ぅわ、逃げろ、雛苺、金糸雀!」<br>
「ご、ごめんなさいなの!………ふぇ、雪華綺晶?」<br>
「後は任せたかしらー!?………って、薔薇水晶!?」<br>
「うふふ、巴様、前方は任せましたわ。――ご助力、致します。うふふふふ………」<br>
「………みっちゃん先生、GJ。逃がさないよ、金糸雀………えへへ」<br>
「うわぁ………。雛苺、金糸雀。………ご愁傷様」<br>
「諦めないで――」「欲しいのかしらーっ!?」
<p>81:クリスマスな保守を致しましょう<br /><br />
「――あら、カラオケなんてものまであるのね」<br />
「歌っちゃいなさいよぉ、めぐぅ。貴女、歌好きでしょぉ?」<br />
「私も、水銀燈からそう聞いているのだわ。めぐ先生、一曲聞かせて頂けない?」<br />
「マイクは此方に。――そう言えば、雛姉様もお歌好きでしたわよね」<br />
「ほとんどが即興の鼻歌だけど、ね。――雛苺、何か歌ってみる?」<br />
「うゅ?うんっ、ヒナ、沢山歌うのよ!」<br />
「――ふふ、じゃあ、皆で順番に歌いましょうか。じゃ、まずは水から」<br />
「誰が『水』よぉっ。と言うか、言いだしっぺは貴女なんだから――」<br />
「はい、銀の持ち歌。ほらほら、早くマイク持って」<br />
「だぁから! ――~~♪―― って、『薔薇獄乙女』!?あぁもぉ、やってやるわよぉ!」<br />
「………なぜか、微妙に水銀燈に苛つきがきたのだわ………何故………?」<br /><br />
「次は私?えーと……… ――~~♪―― 『聖少女領域』、ね。わかったのだわ」<br />
「そぉ言えば、真紅ぅ。貴女、この前抜けがけして二人っきりでお茶会してたで――あ、逃げるなぁ!」<br /><br />
「あら、『コッペリアの棺』。ワタクシ、宜しいでしょうか?――頂きますわね」<br />
「うに?羊さんの歌なの?」<br />
「コッペリアのひっつっじ♪………雰囲気台無しだから、歌っちゃだめよ、雛苺?」<br /><br />
「次はヒナなの!ほら、巴も一緒に、ね?」<br />
「え、あ、私は………うん、じゃあ、雛苺の声に合わせて歌うね」<br />
「巴様も奇麗なお声ですのに………。――『ピアニィ・ピンク』ですね、癒されますわ、姉様」<br /><br />
「さあぁ、次は貴女よぉ、めぐぅ。もう言い逃れは――って、また私の持ち歌ぁ!?」<br />
「はい、灯、マイク。――私は聞いているだけでいいの」<br />
「水銀燈、さっさと歌うのだわ。――………でも、どうしてです、めぐ先生?」<br />
「――私はね、沢山一人だけで歌い過ぎたの。だから、今は他の誰かの歌を、沢山聞いていたいのよ」<br />
「――解りました、先生。――水銀燈、私にもマイクを回すのだわ!」</p>
<hr /><p> <br /><br />
82:クリスマスな保守を致すわよぅ2<br /><br />
「ったく、さんざ騒ぎまくって帰りやがって………」<br />
「まぁまぁ、皆、賑やかで楽しそうだったからいいじゃない」<br />
「それは………そうかもだけど。だけど、片づけ位………」<br />
「あら、真紅ちゃん達は手伝ってくれたわよぅ?」<br />
「………大人連の半分が沈んでたってのが問題だよな」<br />
「ふふ、歩けなかったものね。柴崎先生が槐先生の車で送ってくれて助かったわ」<br />
「また暫く頭が上がらないんだろうなぁ。――それはともかく。なぁ――」<br />
「んぅ、なぁに?」<br />
「いや、そんな大した事でもないんだけど、なんとなく気になったと言うか………」<br />
「うん、お姉ちゃん、わかる事ならなんでも言うわよ?」<br />
「んー………その、姉ちゃんくらいの年なら、クリスマスは『皆で…』って言うより――」<br />
「うぅ、それはお姉ちゃんが異性に縁がないって言ってるのぅ?」<br />
「いや、器量は悪くないんだからそんな事は――じゃなくて!」<br />
「――うふふ、ありがとぅ。――『じゃなくて』?」<br />
「………やっぱり、その、誰か………『特定の人と』楽しみたいんじゃないのかなって」<br />
「んー………まず一つ。貴方が言う『特定の人』――恋人は、お姉ちゃんにいません。えへん」<br />
「んな事で威張るな。――『まず』って事は他に?」<br />
「ええ。――勿論、お姉ちゃんも『愛しい人』と過ごすのも楽しいと思うわ。<br />
だけど――」<br />
「………うん」<br />
「今は、『大好きな人たち』と過ごす方が、お姉ちゃんは楽しいと思ってるの。<br />
………えへへ、子供っぽいかしら?」<br />
「………いや。――なんで僕達は姉弟なのかなって」<br />
「え?………んーと。――だ、駄目よぅ!?お姉ちゃん達は血が繋がってるのよ!?あぁでも」<br />
「考えてそーいう結論か!?――そうじゃなくて、考え方が僕と全然違うんだなって思ってさ」<br />
「そんなに難しい事じゃないと思うわ。そうね――今日、もう昨日かな。楽しくなかった?」<br />
「………いや。その、なんだかんだ言って、楽しかった………と思う」<br />
「ふふ、でしょ?そう思うのなら、やっぱり、私達は姉弟よぅ――さ、お片付け、頑張りましょぅ」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
83:滑稽な保守を致す…2<br /><br />
「――二度目の…『束縛』の契約を交わしても、貴女様はその程度ですの、赤薔薇様?」<br />
丁寧な、しかし、嘲りを隠そうともしない声に、真紅は動かない身体に鞭を打って、立ち上がる。<br />
自らに対する嘲りならば、受け入れよう―だが。<br />
だが、契約――そして、契約を交わした相手までも貶めるその言葉は、許せない。<br />
「私が貴女より弱い事は認めるわ、白薔薇。<br />
だけど………『絆』の契約を嘲ったのは、改めなさい」<br />
傷だらけの身体で、言葉だけは毅然と言い放つ。<br />
それが、自分の為に危険を顧みず手を差し伸べてくれた『従者』への礼儀。<br />
白薔薇――雪華綺晶は、口に弧を描き、続ける。<br />
「ふふ………ですが、その無意味なモノの所為で、他の薔薇様達は抜け殻になってしまわれましたわ。<br />
モノ言わぬ、ただの人形に――ふふふ、あははは、喜劇ですわ、滑稽ですわ、薔薇様方!<br />
――さぁ、貴女様も『ただの』人形になってしまいなさい!」<br />
哄笑と共に突き出された腕から放たれる、無数の氷の刃。<br />
咄嗟に反応しようとする真紅――だが、身体は動かず。<br />
傷だらけの体躯は更に傷つき、衣裳の端々も切り刻まれていく。<br />
漏れ出そうになる苦痛の声を押し戻し、見上げた瞳に映ったモノは――殊更に大きな、氷塊。<br />
(避けられないっ)「あはははははははははははははっっっ」<br />
真紅が見上げた、その時。<br />
雪華綺晶が勝利を確信した、その瞬間。<br />
氷塊は、粉々に砕け散った――突如として現れた、真紅を取り巻く苺轍によって。<br />
そして――真紅を包む、六つの淡い光と輝きを放つ糸。<br />
「是が………是が『絆』の力よ。白薔薇、さぁ――!」<br />
「ふ、ん…その様な脆く醜いモノ、打ち砕いて差し上げますわ、赤薔薇様――終幕を迎えましょう!」<br />
―――――――――――――――――<br />
「………………という夢を見た。………………哀しかった」<br />
「なっがい前振りだなぁ………。――まぁ気にするなよ。お前ら、仲いいんだし、な?」<br />
「私………ばらしーの出番が、微塵もなかった………!」<br />
「そこかよ」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
84:甘ぁい保守を致すなの<br /><br />
「ゆぅきやこんこん、あぁられやー、こんこん――♪」<br />
「おぉぉぉぉ、なんで偶々外出した時に限って雪が………さむい………」<br />
「ふぅっては、ふぅってはっ、ずーんずん、つぅもるぅー――♪」<br />
「ダッフル引っ張り出してきて良かった………なかったらもっと寒かっただろうし………」<br />
「やぁまもぉ、のーはらもぉ、わぁたぼうし、かぁぁぶりぃぃ――♪」<br />
「………えーと。そこの全力で動揺歌ってるの」<br />
「かぁれき、のこらぁずぅぅ、はぁながさぁぁぁくぅぅ!――♪」<br />
「一昔前のロボットアニメの歌い方だよなぁ………。なぁ、雛苺」<br />
「ゆぅぅきやぁ、こんこ――♪」<br />
「二番にいくなぁ!?――ったく、もう少し静かに歩けよ」<br />
「うゅ、貴方が『寒い』って言わないなら、静かにするの」<br />
「………………さむ」<br />
「あぁぁぁられやぁぁぁぁ、こんっこんっっ♪」<br />
「わかった悪かったから、拳いれて歌うな………」<br />
「寒い寒いって言ってると、余計に寒くなっちゃうのよ。勿論、聞いている方も」<br />
「その割には、お前は薄着だよな」<br />
「………えへへ。ちょっと、お洋服の選択を失敗しちゃったの」<br />
「しょうがないなぁ………ほら、コート。僕は下にセーターも着てるし………」<br />
「うぃ?でも、ずぅっと寒い寒いって言ってたの。寒いの、ヤじゃないの?」<br />
「お前が風邪引く方がもっと嫌だ。――や、その、柏葉や雪華綺晶に何されるかわかったもんじゃないし」<br />
「ん。――でも、コートは借りなくていいのよ」<br />
「寒いんだろ?だったら、遠慮せず――」<br />
「――『遠慮せず』、潜らせてもらうの。んしょ………二人羽織で暖かいのよ」<br />
「わ、おぃ!?――あーもぅ、確かに暖かいけどさ………」<br />
「くっついてると、もっと暖かく出来るのよ――こうやって、なの――(ちゅ」<br />
「ん――まだ、寒いぞ。もう少し暖かくしようか?」<br />
「ヒナも、そう思ってたのよ。――もっと、もっと、暖かくして欲しいなの」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
85:大掃除な保守を致―すですぅ ―すんだよ<br /><br />
「さぁ!年末年始を奇麗に迎える為にも、張り切ってやるですよ!」<br />
「………って言っても、自室だけなんだけどね」<br />
「うぐ。………でもですね、他の所はおばばがやっちまったのですよ」<br />
「『やっちまった』って言うか、普段からきちんとしているから――」<br />
「ほとんどする事がなかったのですよねぇ………。恐ろしいおばばですぅ」<br />
「いや、見習おうよ。それが理想なんだし」<br />
「ま、まぁまぁ、それは置いといて。――さっさと始めるですよっ」<br /><br />
「んー、まずは………BGMを決めましょう。何がいいですかねぇ、やっぱり、アップテンポな」<br />
「いや、何でもいいから、始めようよ」<br />
「なんと!?BGMは大事ですよ!?やる気が変わってくるですぅ」<br />
「そうかもしれないけど、さっきから大分選曲で迷ってるじゃないか」<br />
「ぅ………では適当に、早めの曲をかけて、と。準備完了ですぅ」<br /><br />
「ひやぁ!?わ、わ、あぅぅ………」<br />
「………(てきぱきてきぱき)」<br />
「ぇぅ………ぅあー………きゃー!?」<br />
「(てきぱき)………煩い。何をそんなに紙っぺら読んで騒いでるの?(ひょぃ」<br />
「へ?――わ、こら、読むな、読む――!?」<br />
「『傍にいて欲しいです。――大好k』」<br />
「きゃーきゃー!お、音読はもっと止めるですぅ!?」<br />
「渡せなかった手紙、だね。こういうのだと素直なのにね。くすくす」<br />
「て、てめぇ………!血を分けた妹とは言え、数々の仕打ち、もう許さんですよ!」<br />
「じゃ、どうするのかな?ボクはそういうの書いた覚えは――」<br />
「『えたーなるふぉーすぶりざーど。相手はs』」<br />
「わ、わーわー!?か、返せぇ、ボクの黒歴史ノートっ!?」<br /><br />
「結局、あんまり進まなかったですぅ」「誰の所為だと思ってるのさ!?」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
86:大掃除な保守を致 ―す… ―すかしら<br /><br />
「………お休みの日に、ごめんなさい」<br />
「うぅん、気にしないで薔薇水晶。カナ達も一息ついた所かしら」<br />
「そーそー、それに、ばらしーちゃんのお招きなんだから、喜んでお引き受けするわよ」<br />
「みっちゃんは変な所でフットワークが軽すぎるのかしら」<br />
「あっはっは。そういうカナだって御誘いがあってから片付けのスピード、上がってたわよ?」<br />
「ぅ。だって、槐先生は用事があっていないって………。薔薇水晶だけじゃ大変だろうし………」<br />
「んと………二人とも、………ありがと」<br />
「ふふ、その笑顔に応える為にも、頑張らないとね。――さぁ、始めるわよっ!」<br /><br />
「まずは槐先生のお部屋から、かしら?」<br />
「ん。私の部屋はボスだから………お父様の部屋を、前哨戦に………」<br />
「何がどうボスなのか気になるけど………あらま、意外と片付いてるわねー」<br />
「うん、お父様の部屋は、まだ綺麗。――ぁ………机の引出しは開けちゃ駄目だ………って」<br />
「ソーナンダー(がら)」<br />
「速攻かしら!?」<br />
「………わはー、ばらしーちゃんの写真が小奇麗に並べられてるわー」<br />
「………おとーさま………恥ずかしい」<br />
「(――奥にあるのは………黙っていた方がよさそう………ね)」<br /><br />
「で、次はばらしーちゃんの部屋………って、これはなかなか………」<br />
「床がほとんど見えない………薔薇水晶、今度、普段のお片付けも一緒にやるのかしら」<br />
「ぁぅー………。い、いつもはもうちょっとマシ………っ、探しものしてたから………!」<br />
「わかるわぁ。――何探してたのかな?」<br />
「………んと、ゲーム。沢山シリーズがあるから、まとめておこう………て。………コレ」<br />
「わ、懐かしい!私が学生の時にも出てたわよ、コレ」<br />
「えと、えと、こっちのが一昨年出たので、あれが去年………手に持ってるのが、今年。………する?」<br />
「ばらしーちゃんのお招き以下略。私の頃は『運命のRPG』とか言う、訳わかんないジャンルだったわ」<br />
「――って、さり気にド壺に嵌らないで!薔薇水晶も嬉しそうに起動しないのかしら!?」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
87:大掃除な保守を致 ―すなの ―しますわ<br /><br />
「年の瀬で忙しい時なのに………お手伝いに来てもらってよかったの、雪華綺晶?」<br />
「はい、巴様。我が家は………その、いつも人に任せているので………」<br />
「雪華綺晶の家は大き過ぎるのよ。あんなに大きいと、何日も掛っちゃうの」<br />
「そう言えば、そうだったね。………あれ。ちょっと待って。………いつも?」<br />
「はい………。ですので、余りお掃除の仕方とかわからなくて………お役にたてるかどうか」<br />
「――ん、わかった。大丈夫、指示は出させてもらうから」<br />
「それじゃ、お片付けを始めるのよ♪」<br /><br />
「おっかたづけ~、おっかたづけぇぇぇ、今日はぁ、みんなでおかたづけぇぇ――♪」<br />
「ふふ、姉様、お楽しそうですわね」<br />
「ええ。何でも、楽しそうにこなそうとするのが雛苺の良い所だと思う。………ただ」<br />
「うゅ、………昔読んでた絵本が出てきたの。うーー………」<br />
「あら、あらあら………もくもくと読書を………」<br />
「………集中力が散漫になりがちなのが、悪い所。もぅ………」<br />
「………いかがいたしましょう?」<br />
「うん、こっちに注意を促すわ。――ね、雛苺?」<br />
「うぃ………ちょっと待ってなの、あ、こっちにも懐かしい本があるのっ」<br />
「雛苺。――ゲームをしましょうか?」<br />
「………ゲーム………なの??」<br />
「ええ。三人で、一番頑張った人が一等賞のゲームよ」<br />
「一等賞………うぃ、ヒナ、頑張るの!」<br />
「因みに。一等賞の人には、おやつのうにゅーが二つ」<br />
「頑張るの!ヒナ、とってもとっても頑張るなのっ!」<br />
「………巴様、人使いの才がおありな様で」<br /><br />
「えへへ~、一杯頑張った後のうにゅーはとっても美味しいの♪」<br />
「皆頑張ったから、うにゅーは皆二つずつ。――美味しいね、二人とも」<br />
「なるほど………初めからそのおつもりでしたのね。お掃除も完璧――感服致しましたわ」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
88:大掃除な保守を致しましょう<br /><br />
「はぁい、こんにちは~。冬休みで冬眠してる貴方の部屋にぃ十代女子二人と二十代じょ―あいたっ」<br />
「そういう風に挨拶する意味と必要性を教えてほしいわね、銀の字」<br />
「………頭抑えてるから、無理だと思うのだわ。お邪魔するわね」<br />
「――問答無用だな、めぐ先生もお前らも。いいけど、掃除してるから遊べないぞ?」<br /><br />
「あら、だったら………丁度よかったじゃない、二人とも」<br />
「「どういう意味?」」<br />
「ポイントアップのチャンスって意味」<br />
「………ま、まぁ。一人暮らししてる私がちょっと本気出せばぁ………!」<br />
「………別に、そういうのが目的ではないけれど。学級委員として、整理整頓は義務。<br />
――見せつけてあげるのだわ………!」<br /><br />
「………おーい、三人とも、入らないのか?」<br /><br />
「――すぐに使わないモノはぁ、段ボールやクリアケースに纏めるのよぉ」<br />
「へぇ、確かにこうすると、場所を取らないな」<br />
「――似たような大きさ、同じ系統のモノは棚に一つにしておきなさいな」<br />
「お、ぐちゃぐちゃだった書棚が綺麗に。見やすくていいな」<br /><br />
「結構片付いてきたわね。――後は」<br />
「この微妙に必要か否か分り難いものねぇ。――ちょっと、めぐ、案の一つでも出しなさいよぉ」<br />
「………クは――なさい」<br />
「一応年長者なんだからぁ、少しは役にぃ………へ?」<br />
「ジャンクは捨てなさい」<br />
「じゃ、ジャンクゥゥ!?で、でも、いつか使うかもしれないしぃ………っ」<br />
「使わなさそうなモノは、結局使わないの。必要ないの。在る意味がないの――おわかり?」<br />
「………めぐ先生、さり気に怒っているのだわ」<br />
「若干、微笑みが浮かんでるのが空寒いな。――って、水銀燈、黒ポリ袋に埋まっていくなぁ!?」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
89:大掃除な保守を致そう<br /><br />
「………メールで『すぐ来い』………と急かされてみれば………」<br />
「お、槐先生、良く来てくれた。装備はそこだ」<br />
「そこだ、ではありません。用件はなんですか、結菱先生」<br />
「ふむ。………私の格好を見てわからないかね?」<br />
「その現実から目をそ向けたいのですが。………何故、おさんどんさんの様な」<br />
「はっはっは、家を任せている家政婦さんが帰郷してしまってな」<br />
「………帰らせて頂きます」<br />
「おぉ、哀れな老人をこの広大な空間に一人で残すと言うのかね」<br />
「微塵も哀れと思いませんが。………致し方ない、少しだけ手を貸しましょう」<br /><br />
「………結菱先生。書棚から、古い写真が見つかったのですが」<br />
「ん、どれ。――ふむ………懐かしいモノを見つけたな」<br />
「この方が、先生の弟殿、ですか。そして、一緒に映っている女性が」<br />
「――うむ、弟………二葉の婚約者だ。いや、だった、だな」<br />
「………お会いになられないのですか?此方の女性は、今も………」<br />
「もう、そういう歳ではないさ。私も。恐らく、彼女も」<br />
――君はどうなのかね。枯れるには早かろう?」<br />
「私は………どうなのでしょうね。自分では、判断が付けられない状態です」<br />
「いい訳だな、その言葉は。それとも、まだ迷走を続ける子供かね、槐君」<br />
「………くく、言葉が辛辣なのは、己と重ねているからですか」<br />
「過去の、な。――まぁいい。さっさと終わらせて、………ふむ、成人指定ビデオでも借りてみるかね」<br />
「枯れていたのではないのですかっ!?――と言うか、中学生や高校生じゃあるまいし」<br />
「はっはっは、最近のは様々な趣向があるそうだぞ。ほれ、君の好きな――」<br />
「若 奥 様 ☆――はっ!?」<br />
「よぅし、先生頑張っちゃうゾー」<br /><br />
「く、所詮男二人では終われなんだか。すまない、槐先生。遺憾だが、鑑賞会は中止だ」<br />
「そも本気だったのですか!?」</p>
<p> </p>
<hr /><p><br />
90:年始の保守を致 ―すのだわ ―すわぁ <br /><br />
「明けまして――」<br />
「おめでとぉ。………毎年思うんだけど、年が明けるのって目出度いの?」<br />
「慣用句に難癖つけるんじゃないのだわ」<br />
「だってぇ、別に私は目出度くも何ともないし。――まぁ、振袖はちょこっと嬉しいけど(くるん」<br />
「そうね。ふふ、紫地の着物が、銀色の髪によく映えて――」<br />
「――ぁん、胸………襟元が崩れてくるぅ??」<br />
「………ふーん」<br />
「その点、貴女はきちっと着こなしてるわねぇ。流石と言うか」<br />
「ほー。………何がどう流石なのか、私の目を見て説明してくれるかしら、水銀燈さん?」<br />
「え、え?こういう儀礼的?と言うか、作法?みたいなのは、よくできてるなぁ、ってぇ………」<br />
「………そう。私の短慮だったのね。気にしないで」<br />
「………??――そう言えば、めぐや巴も上手よねぇ。私も奇麗にきこなしたいわぁ………」<br />
「………(ぴきぴき。――さっき言っていた事だけれど」<br />
「胸?」<br />
「違う。――『年が明けるのって目出度いの』って。<br />
あぁいう風に言いだしたのは、西暦1001年頃が起源らしいのだわ」<br />
「へぇ、どうして?」<br />
「当時、疫病や天災が毎月の様に起こっていたの。だから、人々は、<br />
『次の年もなんとか迎えられた』っていう事で、『明けましておめでとう』と言いあったのだわ」<br />
「うぅん、なるほどぉ、納得できたわぁ」<br />
「そ。でも、みんなには言わない方がいいわよ?」<br />
「どうして?こう言う話って、ふとした時に――」<br />
「今適当に作った、でっちあげだもの」<br />
「………………し、真紅ぅぅぅ!(がぅがぅ」<br /><br />
「さーて、今年の甘い保守シリーズは、<br />
『真紅、三国の覇者になる』『みっちゃんの恋物語』『巴、大人になる』の三本でお送りするのだわ」<br />
「も、もう騙されないわよぉ!(がるるぅぅ」</p>