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「《Interlude―墓前にて―》」(2008/02/03 (日) 06:02:41) の最新版変更点
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――やあ。久しいな。<br>
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《Interlude―墓前にて―》<br>
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突然君のもとを訪れると、よく怒られていたものだ。女の子はおめかしの時間が必要だから、前以て連絡を入れておけ、とな。――怒っているか?<br>
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さて、先ずは君に詫びなければならん。矢張、電車の中のだけではどうも腑に落ちなかったのでな。<br>
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<br>
――あの時、僕は君から、逃げた。泣いている君から、逃げた。戦場に向かう僕を引き留めようとした腕を、僕は振り払って仕舞った。腑抜けの僕は、君の気持ちを汲み取る器の大きさを持ち合わせていなかった。『それはできん』と、君の腕を――振り払った。<br>
<br>
君には、嘸かし悲しい思いをさせてしまった――こんな台詞じゃ言い尽くせない事は分かっている。…でも、言葉が出てこない。<br>
相応しい――と言ったら大袈裟だが、少くとも、もっと形容出来る言葉は有る筈なのに、出て来ないのだ。<br>
<br>
――やめよう。こんな御託ばかり並べてもどうにかなる訳ではないからな。僕の罪が消えるわけでは無い。<br>
何時からだったろうか、僕がこんなに面倒な性格になったのは。<br>
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済まなかった。ごめん。<br>
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――こうして、君のもとへ『言葉』を送った。果たして、届いているのだろうか……否、届いているのだろうな、きっと。だって、言葉には、たましいが込もっているのだからな。<br>
後は僕が一生をかけて償わなければならない。――だから、今はこれで赦してくれ。<br>
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久々に、電車に乗ってな。昨日の話だ。なんとなく、乗りたくなってな――笑わないでおくれよ。<br>
其処で、一人の女性に出逢ったんだ。珍しい瞳の色をしていた。実に可愛――…や、何でもない。そんな言葉、彼女には似合わんのでね。<br>
お転婆と言うか、意地っ張りと言うか…兎に角、あんな性格の娘は、そうそう居ないだろう。<br>
<br>
――彼女にも、亡くした人が居てね。妹、だそうだ。写真を見せて貰ったんだ。君に、よく似ていた。何と言うか…凛とした印象でな、心の強そうな人だった。<br>
彼女は妹を大層愛していたよ。羨ましいほどに…<br>
<br>
<br>
それでな、互いのハンカチーフを交換したんだ。何故かは――訊くな。小っ恥ずかしい。まあ、それで彼女に洗って返さなければならんのだが…逢える筈も無い人と約束などしてしまって、どうしようというのだろうな、僕は。<br>
――君は、あの娘にまた逢えると、思うか?――や、下らん話だった。もう、逢えんだろうな。…まあ、此のハンカチーフは、大切に仕舞っておくさ。<br>
<br>
<br>
――此処に来ようと思って、良かった。此処に来なければきっと、死ぬまで後悔の念に囚われて居たのだろうな。――あの娘には、感謝しなければな。<br>
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君は、後悔しているのか?君は、どんな事を胸に抱きながら、そっちに行ってしまったのだ…<br>
教えてくれ――君は、一体何処に居るのだ。笑っているのか。楽しく、過ごしているのだろうか……<br>
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――また来る。<br>
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――また、来ちゃったです。<br>
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《Interlude―墓前にて―》<br>
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また来たね、って私の事を冷やかすのですよね、貴女は――ええ、また来てやったですよ。感謝するです。<br>
此処に来るのも何回目なんですかね…私は未だ、妹離れが出来てないんですかね。ふふっ。<br>
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<br>
最近ね、料理が上手くなったって、おばばに言われたんですよ。この間なんかですね、目分量で牛肉五百グラムぴったし計り取ったんですよ?<br>
良いお嫁さんになれるって。…全く、おばばも恥ずかしい事を言いやがるですよ。<br>
おじじは、相も変わらず時計を弄くってばかりです。偶には、おばばの手伝いをして欲しいものです。もう、歳なんですから。今は未だ、私が付いているから何とかなっているとは言っても、もし私があの家を離れる事になったら――まあ、無いですよね。ふふっ。<br>
<br>
<br>
今日、電車に乗ったんですよ。理由は、特に無かったですけど。なんとなく、乗ってみたくなって――あ、笑うなですよ!<br>
其処で、とある男と相席したんですよ。あまり背は高く無くてですね――あ、でも私よりは高かったですかねえ――、眼鏡を掛けていて、みすぼらしい袴を着て――あ、でも何やらとっても古いものだったらしいですけど――、何か野暮臭え野郎だったんですよ。<br>
でも、何処か饒舌で、物腰も柔らかくてですねえ――あっ、勘違いするなですよ!?これは別に褒めてる訳じゃあ無くて…そう、そういう部分を全部引っ括めたら、何だか浮浪者みたいだったんですよ!<br>
そしたら、私の事も浮浪者だって!全く…失礼極まり無い野郎なんですよ。<br>
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<br>
――その人も、亡くした人が居たのですよ。結婚をする約束をしたそうなのですが…<br>
あの人も、何と言うか――私と同じだなあって、気がするのですよ。あの人の背中には、その人の影がちらついていたです。<br>
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<br>
……………<br>
そこまで想われているなんて、羨ましいです……私も――わ、私も負けねぇ位、貴女の事、大好きなのですよ。<br>
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もう、良い歳なのですがね…<br>
<br>
――あ、そう言えばですね、その人と、ハンカチーフを交換したんですよ。貴女の話をしていたらつい、涙が出ちゃってですね。何と、その人がハンカチーフなぞ持っていたのですよ?全く、妙な所で気障なんですよね。<br>
それでですね、その人も話をしたんですよ。――泣いていたです。でも、全然格好悪くなど無かったです。好きな人の為に無くなんて、良いじゃないですか。<br>
――御免なさい、ハンカチーフ、貸しちゃったです。貴女に初めて貰った、大切なプレゼントだったですのに。ぜったい、返して貰わなきゃですね。<br>
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ふふ。私は、行くところができたですよ。<br>
――馬鹿ですよね、あの人も。名は明かさないなんて格好付けて、しっかりと名前、書いてあるんですよ。<br>
あの人は、家業の呉服屋を継いだそうなんですがね…あいつ、小さな呉服屋なんて、嘘吐きやがったです。<br>
――そう、彼処ですよ。<br>
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今度、行ってくるです。ハンカチーフ、返して貰いに。それに、あの人の事、そんなに嫌いじゃ、ねえですから。――きっと、綺麗に仕舞ってくれているですよね。<br>
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――今度来るときは、その話をするですよ。請うご期待、です。<br>
――それじゃあね。<br>
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――やあ。久しいな。<br>
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突然君のもとを訪れると、よく怒られていたものだ。女の子はおめかしの時間が必要だから、前以て連絡を入れておけ、とな。――怒っているか?<br>
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さて、先ずは君に詫びなければならん。矢張、電車の中のだけではどうも腑に落ちなかったのでな。<br>
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――あの時、僕は君から、逃げた。泣いている君から、逃げた。戦場に向かう僕を引き留めようとした腕を、僕は振り払って仕舞った。腑抜けの僕は、君の気持ちを汲み取る器の大きさを持ち合わせていなかった。『それはできん』と、君の腕を――振り払った。<br>
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君には、嘸かし悲しい思いをさせてしまった――こんな台詞じゃ言い尽くせない事は分かっている。…でも、言葉が出てこない。<br>
相応しい――と言ったら大袈裟だが、少くとも、もっと形容出来る言葉は有る筈なのに、出て来ないのだ。<br>
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――やめよう。こんな御託ばかり並べてもどうにかなる訳ではないからな。僕の罪が消えるわけでは無い。<br>
何時からだったろうか、僕がこんなに面倒な性格になったのは。<br>
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済まなかった。ごめん。<br>
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――こうして、君のもとへ『言葉』を送った。果たして、届いているのだろうか……否、届いているのだろうな、きっと。だって、言葉には、たましいが込もっているのだからな。<br>
後は僕が一生をかけて償わなければならない。――だから、今はこれで赦してくれ。<br>
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久々に、電車に乗ってな。昨日の話だ。なんとなく、乗りたくなってな――笑わないでおくれよ。<br>
其処で、一人の女性に出逢ったんだ。珍しい瞳の色をしていた。実に可愛――…や、何でもない。そんな言葉、彼女には似合わんのでね。<br>
お転婆と言うか、意地っ張りと言うか…兎に角、あんな性格の娘は、そうそう居ないだろう。<br>
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――彼女にも、亡くした人が居てね。妹、だそうだ。写真を見せて貰ったんだ。君に、よく似ていた。何と言うか…凛とした印象でな、心の強そうな人だった。<br>
彼女は妹を大層愛していたよ。羨ましいほどに…<br>
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それでな、互いのハンカチーフを交換したんだ。何故かは――訊くな。小っ恥ずかしい。まあ、それで彼女に洗って返さなければならんのだが…逢える筈も無い人と約束などしてしまって、どうしようというのだろうな、僕は。<br>
――君は、あの娘にまた逢えると、思うか?――や、下らん話だった。もう、逢えんだろうな。…まあ、此のハンカチーフは、大切に仕舞っておくさ。<br>
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――此処に来ようと思って、良かった。此処に来なければきっと、死ぬまで後悔の念に囚われて居たのだろうな。――あの娘には、感謝しなければな。<br>
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君は、後悔しているのか?君は、どんな事を胸に抱きながら、そっちに行ってしまったのだ…<br>
教えてくれ――君は、一体何処に居るのだ。笑っているのか。楽しく、過ごしているのだろうか……<br>
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――また来る。<br>
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――また、来ちゃったです。<br>
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また来たね、って私の事を冷やかすのですよね、貴女は――ええ、また来てやったですよ。感謝するです。<br>
此処に来るのも何回目なんですかね…私は未だ、妹離れが出来てないんですかね。ふふっ。<br>
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最近ね、料理が上手くなったって、おばばに言われたんですよ。この間なんかですね、目分量で牛肉五百グラムぴったし計り取ったんですよ?<br>
良いお嫁さんになれるって。…全く、おばばも恥ずかしい事を言いやがるですよ。<br>
おじじは、相も変わらず時計を弄くってばかりです。偶には、おばばの手伝いをして欲しいものです。もう、歳なんですから。今は未だ、私が付いているから何とかなっているとは言っても、もし私があの家を離れる事になったら――まあ、無いですよね。ふふっ。<br>
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今日、電車に乗ったんですよ。理由は、特に無かったですけど。なんとなく、乗ってみたくなって――あ、笑うなですよ!<br>
其処で、とある男と相席したんですよ。あまり背は高く無くてですね――あ、でも私よりは高かったですかねえ――、眼鏡を掛けていて、みすぼらしい袴を着て――あ、でも何やらとっても古いものだったらしいですけど――、何か野暮臭え野郎だったんですよ。<br>
でも、何処か饒舌で、物腰も柔らかくてですねえ――あっ、勘違いするなですよ!?これは別に褒めてる訳じゃあ無くて…そう、そういう部分を全部引っ括めたら、何だか浮浪者みたいだったんですよ!<br>
そしたら、私の事も浮浪者だって!全く…失礼極まり無い野郎なんですよ。<br>
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――その人も、亡くした人が居たのですよ。結婚をする約束をしたそうなのですが…<br>
あの人も、何と言うか――私と同じだなあって、気がするのですよ。あの人の背中には、その人の影がちらついていたです。<br>
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そこまで想われているなんて、羨ましいです……私も――わ、私も負けねぇ位、貴女の事、大好きなのですよ。<br>
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もう、良い歳なのですがね…<br>
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――あ、そう言えばですね、その人と、ハンカチーフを交換したんですよ。貴女の話をしていたらつい、涙が出ちゃってですね。何と、その人がハンカチーフなぞ持っていたのですよ?全く、妙な所で気障なんですよね。<br>
それでですね、その人も話をしたんですよ。――泣いていたです。でも、全然格好悪くなど無かったです。好きな人の為に無くなんて、良いじゃないですか。<br>
――御免なさい、ハンカチーフ、貸しちゃったです。貴女に初めて貰った、大切なプレゼントだったですのに。ぜったい、返して貰わなきゃですね。<br>
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ふふ。私は、行くところができたですよ。<br>
――馬鹿ですよね、あの人も。名は明かさないなんて格好付けて、しっかりと名前、書いてあるんですよ。<br>
あの人は、家業の呉服屋を継いだそうなんですがね…あいつ、小さな呉服屋なんて、嘘吐きやがったです。<br>
――そう、彼処ですよ。<br>
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今度、行ってくるです。ハンカチーフ、返して貰いに。それに、あの人の事、そんなに嫌いじゃ、ねえですから。――きっと、綺麗に仕舞ってくれているですよね。<br>
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――今度来るときは、その話をするですよ。請うご期待、です。<br>
――それじゃあね。<br>
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