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水銀燈の野望 烈風伝 ~三好追討編~」(2008/01/21 (月) 22:41:51) の最新版変更点

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<p><あらすじ><br> <br> 時は戦国の世。備前国に「薔薇乙女」と呼ばれる8人の姉妹がいた。<br> 天下統一の野望を抱く長女・水銀燈は、謀反によって一躍戦国大名にのし上がる。<br> 念願の上洛を果たし、将軍足利義輝を助けることを宣言した水銀燈は三好軍を次々に撃破。<br> さらに松永久秀の降伏により多聞山城を手に入れ、徐々に畿内での勢力を増していくのであった。<br> <br> <br> <本編に登場する主な史実武将><br> <br> ○安宅冬康(あたぎ ふゆやす/生年不詳~1564)<br> 三好長慶の実弟。安宅家を継ぎ、淡路水軍を統率して活躍したが松永久秀の讒言を信じた長慶によって殺された。<br> 連歌の名人としても知られ「集外三十六歌仙」の一人として数えられている。<br> 本編では長慶の死後宗家に叛旗を翻し、三好三人衆と水銀燈の双方を相手に孤軍奮闘する。<br> <br> <br> <br> ――永禄六年二月。<br> <br> 水銀燈の多聞山城入城と松永久秀の降伏に伴い、大和の諸将はこぞって薔薇乙女家の傘下に入った。<br> 金「これで大和の勢力の大半は当家に従うことになったかしら」<br> 蒼「松永弾正殿の謀反、それに翠星石の調略も効いたみたいだね」<br> 巴「とはいえ、高取山城の松倉重信は未だに旗幟を明らかにしていないけど」<br> 松倉重信はもと筒井家の重臣であり、主家が三好軍によって大和から追われた後も高取山城に籠り続けていた。<br> 銀「そうなのよねぇ。ここは軍勢を送って屈服させ、国内の安定を図るべきかしら……」<br> 松永久秀「お待ちくだされ」<br> 声を発したのは、水銀燈の家臣団に加わって間もない久秀であった。<br> 久秀「兵を動かすまでもございませぬ。この久秀が松倉殿を当家の傘下に引き入れて見せましょうぞ」<br> その言葉通り単騎高取山城に向かった久秀は重信を説得、臣従させることに成功した。<br> これを見て、情勢を観望していた他の武将たちも相次いで水銀燈に降伏。<br> こうして大和全域は水銀燈の支配下に入ったのである。<br> 紅「義興の死から一月あまり……これで私たちは一戦もせずして大和を平定したことになるわね」<br> 薔「それもすべて、松永弾正殿の働き……」<br> 雪「噂に違わぬ、見事な智謀の持ち主ですわ」<br> ジ「しかし何を考えているのか、いまいち分からない御仁だよな……あれ? そういや翠星石は?」<br> <br> 翠「一介の地侍が、随分とお働きのようですねぇ」<br> 城内の庭を散策していた久秀に、翠星石が声をかけた。<br> 久秀「おお。誰かと思えばいつぞやの娘御か」<br> 翠「その呼び方はやめるです。今はお前の主君の妹ですよ?」<br> 久秀「ははは、これは失礼。お許しを……翠姫様」<br> 急に家中での通称で恭しく呼ばれ、思わず頬を赤らめる翠星石。<br> 翠「ふ、ふん。わかりゃーいいんです……それはそうと、おめぇに聞きたいことがあって来てやったのです」<br> 久秀「ほう。それはまた如何なることで?」<br> 翠「興福寺で会った時、正体を隠して翠星石に声をかけたのは何故ですか?」<br> 久秀「その事にござるか。……あの頃、儂は既に三好家を見限っていた。城の一つも手土産に何処ぞの大名に寝返ろうと思うてな」<br> 池の鯉に餌をやりながら、久秀は答えた。<br> 久秀「そんな折、大和の諸将を説いて回っている娘がいると聞いての。すぐに水銀燈様の調略と察したわ」<br> 翠「そこでその娘を通じて意思を伝えようとした、というわけですか。随分回りくどいことしやがるですねぇ」<br> 久秀「下手に使者に正式に会っては、三好方に勘付かれる怖れがあったゆえな」<br> 翠「しかしその娘……つまり翠星石が水銀燈の妹だと、どうしてわかったです?」<br> 久秀「さてのう、それは自分でもよう分からぬわい……強いて言えば、この儂と同じ匂いをそなたに感じた故、かもしれぬな」<br> 翠「しっ、失礼な! この可憐で清楚な翠星石を、おめぇみたいな腹黒爺ぃと一緒にするなです!」<br> 久秀「ほう、これは……この弾正としたことが、見立て違いでござったか? 失敬失敬」<br> ははは、という高笑いを残し、久秀はその場を後にした。<br> その後姿を、怒りに震えながら睨みつける翠星石。<br> 翠(あの腹黒爺ぃが、ただ当家に仕えてる訳ねぇです。絶対何か企んでるはず……必ず化けの皮ひん剥いてやるですぅ<br> <br> ――永禄六年四月。<br> <br> 水銀燈は幕府より大和守護職に補任され、大和国の防備を固めつつ戦乱で荒廃した領内の開発に勤しんでいた。<br> 衝撃的な報せが届いたのはそんな折のことだった。<br> 久秀「今月はじめ、阿波勝瑞城にて三好長慶が身罷ったとのことにござる」<br> 銀「長慶が……」<br> 実弟と嫡子を立て続けに失った長慶は重い病を患い、ついに回復することなく世を去った。享年41――<br> 蒼「将軍家を脅かした宿敵ではあったけれど、最期は悲痛なものだったね。なんだか同情しちゃうな」<br> 紅「で、三好家は誰が継ぐことになったの? もう嫡男の義興は居ないのだし」<br> 久秀「長慶の養子となった三好義継にござる」<br> 義継は長慶の甥にあたるが、まだ元服したばかりの十三歳の少年である。<br> 久秀「恐らくは三人衆の画策でありしょう。義継を傀儡にして家中の実権を握ろうという魂胆かと」<br> その時、家臣の一人が広間に駆けつけてきた。<br> 家臣「申し上げます! 河内国高屋城にて安宅冬康が謀反、三好三人衆は敗れ和泉国に逃げ込んだとのことにございます!」<br> 安宅冬康は長慶の弟の一人である。義継の家督相続を後押しした三人衆に反発しての謀反であった。<br> 雪「これで三好の結束は完全に崩壊……まさに弾正殿の予見通りになりましたわね」<br> 翠「自分でも十分一役買ってやがるですけどねぇ」<br> ちくりと嫌味を言うのを忘れない翠星石。<br> 確かに、実質的に三好家をここまで追い込んだ張本人は久秀であるといえた。<br> 久秀「これは手厳しい……しかしこれは好機ですぞ。すぐに河内、和泉を攻め、三好勢を畿内から一気に駆逐すべきかと」<br> 銀「わかったわ。早速軍勢を集めるのよぉ。あとジュン、アナタは姫路城に一度戻ってもらえるぅ?」<br> ジ「え? こんな時にいいのか?」<br> 銀「播磨には代官を置いてるとはいえ、主力はずっと畿内にいるからねぇ。一度西国を固めておいて欲しいのよ」<br> ジ「それもそうだな。わかった、すぐに向かうよ」<br> <br> ――永禄六年五月。<br> <br> 水銀燈はおよそ五千の軍勢を引き連れて河内へ出陣。<br> 安宅冬康の立て籠もる高屋城を囲んだ。<br> 銀「敵の兵力はたかだか二千……全軍で力攻めすれば容易く落ちそうねぇ」<br> しかし、城方は意外にも頑強な抵抗を見せた。<br> 特に堺で調達され大量に配備された鉄砲が、水銀燈の騎馬部隊を散々に苦しめたのである。<br> 一週間に及ぶ戦闘で、気が付けば水銀燈の直属兵は半数近くが戦闘不能に陥っていた。<br> 銀「よ、よくも私の可愛い部下達を……許さないわぁ!」<br> 馬上で激昂する水銀燈だが、そう言っている間にもすぐ脇を何発もの銃弾がかすめていく。<br> 蒼「落ち着いて、水銀燈! ここは一度態勢を立て直そうよ!」<br> 銀「ぐっ……退けっ! 退くのよぉ!」<br> 安宅勢の抵抗はなおも激しく、二十日が過ぎても城は陥ちなかった。<br> <br> 巴「意外な苦戦ね……」<br> 金「こ、このままでは非常にまずい気がするかしらー」<br> 薔薇乙女軍の用意している兵糧はひと月分に過ぎず、このまま城が落ちなければ撤退するほかないのだ。<br> 蒼「敵を甘く見ていたね……ここは一度撤退して、雪華綺晶達と合流するのも手かも」<br> 雛「うゅー! ここで逃げるのはなんかいやなのー!」<br> 銀「雛苺の言う通りよ。このままで終わらせやしないわぁ……」メラメラ<br> 金「うぅっ……なんだかまた惨劇の予感かしら……」<br> <br> 翌日。水銀燈は高屋城に対する攻囲態勢を不意に緩め始めた。<br> なかには旗印をしまい込みはるか後方へ退く部隊まであった。<br> 冬康「どうやら敵は撤退準備を始めたようだな。これでいくらか寿命が延びたか」<br> 寄せ手の攻撃がないままさらに数日が過ぎ、籠城戦が始まって二十八日目の朝。<br> 黒く厚い雲がにわかに空を覆い、大粒の雨を降らせ始めた。<br> その中で大地を叩きつけるような雨の音に紛れ、城に近づくおびただしい数の影があった。<br> 銀「うふふ、天運を信じて待っていた甲斐があったわ……全軍、突撃よぉ!!」<br> 水銀燈の号令により、撤退すると見せかけていた薔薇乙女軍は一斉に城に襲い掛かった。<br> 城方は慌てて鉄砲を手に取り防戦しようとするが、多くは雨のせいで火縄が湿って使い物にならない。<br> 薔薇乙女軍の足軽部隊に無残に討ち取られていくばかりである。<br> 蒼「鉄砲に頼り過ぎたのが命取りになったね……いくよ!」<br> 蒼星石隊、巴隊、金糸雀隊、雛苺隊のそれぞれが躍動し、次々と防壁を突破していく。<br> 水銀燈もまたそれまでの鬱憤を晴らすかのように城内を蹂躙していった。<br> 銀「そらそらぁ! どいつもこいつも地獄に叩き落としてあげるわぁ!」<br> 冬康「くそっ! もはやこれまでか……」<br> やがて本丸が完全に包囲されると、冬康と家臣らは力尽きたかのように自らの命を絶った。<br> 一ヶ月近くも落ちなかった城は、こうして雨の日のわずか一日の強攻で陥落したのである。<br> 蒼「今回は大雨様々だったね……ホントに冷や冷やしたよ」<br> 金「まったくかしら。もしもあのまま雨が降らなかったらどうするつもりだったのかしら?」<br> 銀「あら、そんなことはこれっぽっちも考えなかったわぁ。だって、雨乞いは雨が降るまで続けるものなのよぉ?」<br> 巴「その例え話はなんだか違う気がするけど……」<br> <br> ――永禄六年七月。<br> <br> 水銀燈は軍を進め、畿内での三好勢の最後の砦である岸和田城を攻撃した。<br> 圧倒的な勢い薔薇乙女軍に対し、三好勢の戦意は乏しく城はあっけなく陥落。<br> 三好三人衆のうち三好長逸は討死、岩成友通は降伏、三好政康は逃亡し四国まで落ち延びた。<br> 銀「三好家はこれで畿内での足掛かりを失った……これで合戦も一段落、といったところかしらね」<br> <br> 翌月、水銀燈は京へ凱旋。<br> 将軍義輝に拝謁し、自ら戦勝の報告を行った。<br> 義輝「これほどの短期間で、よくぞ三好一党を打ち破ってくれた。そちの戦いぶり、まことに見事であったぞ」<br> 銀「恐れ入りますわ」<br> 義輝「そちを御相伴衆並びに河内守護職に任じ、こたびの働きに報いたいが……他に何ぞ望むところはあるか?」<br> 銀「ではお言葉に甘えて、ひとつだけぇ……堺の街に当家の代官を置くことをお許しいただきたいですわ」<br> 義輝「なんと……それだけで良いのか?」<br> 水銀燈の意外な要求に、ぽかんと口を開ける義輝。<br> てっきり探題などの幕府の要職か、畿内二、三ヶ国の守護職くらいは要求してくるものと思っていたのである。<br> 義輝「左様なことならば苦しからざるぞ。……本当にそれだけで良いのか?」<br> 銀「はい。有難き幸せに存じます♪」<br> 水銀燈が辞した後、義輝は傍らに控える明智光秀に言葉をかけた。<br> 義輝「水銀燈はまことに欲の無い者よのう。越後の上杉輝虎と良い勝負じゃ」<br> 光秀「如何にも。まこと上様は良き臣下に恵まれておられまする」<br> だが光秀の胸中はその言葉とは裏腹に、水銀燈への畏怖に満ちていた。<br> (何より先に堺を押えようとは……なかなか思いつかぬことよ)<br> 堺では多くの商人によって全国の物品が取引され、南蛮からの商船も往来していた。<br> そこに税をかければ莫大な収入となる。水銀燈の狙いはそれであった。<br> (水銀燈がこのまま上様の力となってくれれば心強いが、いつまでもそれが続くものかどうか)<br> かつて洛中に君臨した三好氏を一年足らずで四国へ追いやったことで、水銀燈の印象は世間にいっそう巨大なものに映っていた。<br> 誰もが水銀燈を畿内における新たな覇者と見るようになったのである。<br> いまやその領国は山陽、畿内で合わせて六ヶ国にのぼり、支配領域では武田家や上杉家を凌ぐ最大の大名であった。<br> <br> その後、水銀燈は三好討伐戦の論功行賞を行った。<br> 銀「真紅には河内・和泉の二ヶ国を任せるわぁ。それと合戦のときは副将として別働軍を率いてもらうことになるかもね」<br> 紅「了解したのだわ」<br> 銀「雛苺は真紅のもとで堺の奉行になって頂戴。」<br> 雛「うぃー」<br> 銀「翠星石、蒼星石には摂津の諸城を守ってもらおうかしら。山陽と畿内を結ぶ地域だから、慎重にねぇ」<br> 翠「任しとけ、ですぅ」<br> 蒼「期待に添えるように頑張るよ」<br> 銀「きらきー、ばらしー、金糸雀、巴にはそれぞれ畿内で所領をあげるわぁ」<br> 雪「ありがたきしあわせ、ですわ」<br> 金「これでカナも一城の主、かしらー」<br> 銀「そして……大和攻略に一番功のあった松永弾正には、大和一国をあげる。国内の整備、よろしくねぇ?」<br> 久秀「過分なる御沙汰を賜り、恐悦至極にござる。大和のことは諸事、この弾正にお任せくだされ」<br> 水銀燈は大和を今後の畿内支配における最重要地域と見ていた。<br> その統治を、古くから大和に所領を持つ久秀の手に委ねたのである。<br> この他、ジュンは水銀燈の直轄地である山陽三ヶ国の総奉行となり、内政を一任された。<br> <br> 三好討伐の事後処理をひととおり終えた水銀燈のもとに、姫路城のジュンから報せが届いた。<br> 銀「どうやら西国に不穏の動きがあるようね。備前にしきりと細作が出没しているらしいわぁ」<br> 細作とはいわゆる忍者のことである。<br> 銀「真紅ぅ、悪いけど一度播磨に下ってくれない? もし敵に攻め入られたらジュンだけでは心もとないしぃ」<br> 紅「それは言えてるわね……承知したのだわ」<br> <br> 畿内の戦乱にひとまずの決着がついた矢先、今度は中国において新たな騒乱の気配があった。<br> その影に数々の陰謀が渦巻いていることを、水銀燈はまだ知らなかった。</p>

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