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「夏と女王様と間接キス」(2008/01/17 (木) 12:28:36) の最新版変更点
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<p>「あー……喉渇いたー……」<br>
眩しく照りつける太陽の下、 夏独特の蒸し暑さを感じながら、 僕は一人呟いた。<br>
体育で思いっきり酷使された身体は、今すぐにでも水分を欲している。<br>
しかし、 連日の真夏日により水道は断水中。まったく、 日本の梅雨は何をしていたのやら。<br>
そんなワケで、 僕は一滴も水が落ちてこない蛇口を恨めしそうに見つめながら、 近くに腰を下ろしていた。<br>
すると、 急に視界が歪む。それと同時に目の辺りに走る冷たい感触。<br>
「うおっ!」<br>
突然の感覚に、 思わず声が溢れた。<br>
それと重なるように、 悪戯っぽい笑い声が聞こえてくる。<br>
すると、 すっ、 と先ほどまで目を覆っていたものが取れた。<br>
その正体はペットボトルだった。それも中身はミネラルウォーター、 まさに今一番欲しい物No.1である。<br>
そしてその先には、 これまた悪戯っぽい、 笑顔が一つ。<br>
「ヒッヒッヒ……ずいぶん情けない声出してるですね」<br>
ニヤニヤしながら話すその少女とは、 ご近所さんで尚且つ同級生という、 見事な腐れ縁の間柄だ。けれども、 いや、 だからこそかもしれないが、
なんだかんだでよく一緒にいたりする。<br>
もちろん、 今みたいな悪戯も日常茶飯事だ。<br>
<br>
「うるさい。性悪」<br>
そのニヤニヤが気に食わず、 一応反論してみる。 もちろん、 効果なんてないのだが。<br>
「ん?反抗するつもりですか?あーあ、 せっかくコレあげようと思ったのに」<br>
なんとも胡散臭い溜め息を吐きながら、 見せ付けるようにペットボトルをぷらぷらと振る。<br>
非常にムカつくが、 それが喉から手が出るほど欲しいのは確かだ。だけど負けるな僕。我慢だ、 我慢……。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
「どうですか?翠星石様」<br>
なんとも情けないが、 やっぱり喉の渇きには勝てなかった。<br>
僕は女王様の奴隷その1となって肩を揉みながら、 ペットボトルをねだり続けている。<br>
「そうですねぇ……少しは働いてくれたみたいだし、 コレ、 あげるです」<br>
俺に肩を揉ませながら、 手に持ったペットボトルを掲げ、 エセ女王様は呟いた。<br>
それを見て、 『さすが、 翠星石様は分かってらっしゃる』<br>
なんて感謝してやろうと思った瞬間――……。<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
なんと、 エセ女王は褒美のペットボトルを飲み始めたのだ。<br>
それも凄い勢いで、 半分くらいまで一気に飲み干しやがった。<br>
ぷはっ、 なんてサラリーマンがビール飲んだ時のような声を出して口を離すと、 半分ほど残ったそれを、 僕の前に突き出す。<br>
<br>
「はい、 残りはあげるです」<br>
突然の出来事と、 予想外の事態に、 僕が返事できないでいると、 彼女は不思議そうな顔をして言った。<br>
「どーしたです?要らないですか?」<br>
いや、 欲しいのは山々なんだが……。<br>
「そりゃ要るけど……一応これって間接キス……」<br>
半分停止した頭で、 無理矢理ながらも言葉を搾り出すと、 彼女は笑いながら言い返した。<br>
「アハハ。なに乙女みたいな事言ってるです。……それとも、 翠星石と間接キス、 イヤですか?」<br>
少し上目使いに見つめられて、 不覚にも一瞬ドキリ、 としてしまう。何考えてんだ、 俺。<br>
「あ、 いや、 別にダメなワケじゃないんだけどさ。お前はイイのか……んっ」<br>
言い切る前に何かで口を塞がれた。唇に感じる柔らかい感触。汗の匂いと甘い香りの二つが、 鼻をくすぐる。<br>
それがキスだと判るのに、 時間はいらなかった。<br>
<br>
彼女は、 ただ呆然とする俺から唇を離すと、 ペットボトルを無理矢理俺に押し付けた。<br>
「こ、 これで、 別に間接キス、 大丈夫ですよ?」<br>
真っ赤な顔でそう言い放つと、 くるりと踵を返し、 どこかへ走っていってしまった。<br>
俺は熱くほてった身体に対象的な、 冷たいペットボトルを、 ぎゅっと握りしめる。<br>
それは何とも言えないほど、 心地良かった。</p>
<p>「あー……喉渇いたー……」<br>
眩しく照りつける太陽の下、 夏独特の蒸し暑さを感じながら、 僕は一人呟いた。<br>
体育で思いっきり酷使された身体は、今すぐにでも水分を欲している。<br>
しかし、 連日の真夏日により水道は断水中。まったく、 日本の梅雨は何をしていたのやら。<br>
そんなワケで、 僕は一滴も水が落ちてこない蛇口を恨めしそうに見つめながら、 近くに腰を下ろしていた。<br>
すると、 急に視界が歪む。それと同時に目の辺りに走る冷たい感触。<br>
「うおっ!」<br>
突然の感覚に、 思わず声が溢れた。<br>
それと重なるように、 悪戯っぽい笑い声が聞こえてくる。<br>
すると、 すっ、 と先ほどまで目を覆っていたものが取れた。<br>
その正体はペットボトルだった。それも中身はミネラルウォーター、 まさに今一番欲しい物No.1である。<br>
そしてその先には、 これまた悪戯っぽい、 笑顔が一つ。<br>
「ヒッヒッヒ……ずいぶん情けない声出してるですね」<br>
ニヤニヤしながら話すその少女とは、 ご近所さんで尚且つ同級生という、 見事な腐れ縁の間柄だ。けれども、 いや、 だからこそかもしれないが、
なんだかんだでよく一緒にいたりする。<br>
もちろん、 今みたいな悪戯も日常茶飯事だ。<br>
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「うるさい。性悪」<br>
そのニヤニヤが気に食わず、 一応反論してみる。 もちろん、 効果なんてないのだが。<br>
「ん?反抗するつもりですか?あーあ、 せっかくコレあげようと思ったのに」<br>
なんとも胡散臭い溜め息を吐きながら、 見せ付けるようにペットボトルをぷらぷらと振る。<br>
非常にムカつくが、 それが喉から手が出るほど欲しいのは確かだ。だけど負けるな僕。我慢だ、 我慢……。<br>
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「どうですか?翠星石様」<br>
なんとも情けないが、 やっぱり喉の渇きには勝てなかった。<br>
僕は女王様の奴隷その1となって肩を揉みながら、 ペットボトルをねだり続けている。<br>
「そうですねぇ……少しは働いてくれたみたいだし、 コレ、 あげるです」<br>
僕に肩を揉ませながら、 手に持ったペットボトルを掲げ、 エセ女王様は呟いた。<br>
それを見て、 『さすが、 翠星石様は分かってらっしゃる』<br>
なんて感謝してやろうと思った瞬間――……。<br>
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なんと、 エセ女王は褒美のペットボトルを飲み始めたのだ。<br>
それも凄い勢いで、 半分くらいまで一気に飲み干しやがった。<br>
ぷはっ、 なんてサラリーマンがビール飲んだ時のような声を出して口を離すと、 半分ほど残ったそれを、 僕の前に突き出す。<br>
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「はい、 残りはあげるです」<br>
突然の出来事と、 予想外の事態に、 僕が返事できないでいると、 彼女は不思議そうな顔をして言った。<br>
「どーしたです?要らないですか?」<br>
いや、 欲しいのは山々なんだが……。<br>
「そりゃ要るけど……一応これって間接キス……」<br>
半分停止した頭で、 無理矢理ながらも言葉を搾り出すと、 彼女は笑いながら言い返した。<br>
「アハハ。なに乙女みたいな事言ってるです。……それとも、 翠星石と間接キス、 イヤですか?」<br>
少し上目使いに見つめられて、 不覚にも一瞬ドキリ、 としてしまう。何考えてんだ、 僕。<br>
「あ、 いや、 別にダメなワケじゃないんだけどさ。お前はイイのか……んっ」<br>
言い切る前に何かで口を塞がれた。唇に感じる柔らかい感触。汗の匂いと甘い香りの二つが、 鼻をくすぐる。<br>
それがキスだと判るのに、 時間はいらなかった。<br>
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彼女は、 ただ呆然とする僕から唇を離すと、 ペットボトルを無理矢理僕に押し付けた。<br>
「こ、 これで、 別に間接キス、 大丈夫ですよ?」<br>
真っ赤な顔でそう言い放つと、 くるりと踵を返し、 どこかへ走っていってしまった。<br>
僕は熱くほてった身体に対象的な、 冷たいペットボトルを、 ぎゅっと握りしめる。<br>
それは何とも言えないほど、 心地良かった。</p>