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<p>とある街の賑やかなメインストリート、その片隅に実に古ぼけたお店がありました。<br>
お店の名前は『薔薇華園』<br>
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第5話【黒と紅の薔薇は散財の香り】<br>
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八人姉妹に憑かれてから数日が過ぎた。<br>
逆に言えば数日しか経ってないのに、アイツらを見ても驚かなくなっている自分の図太さと人間の適応力につくづく感心している……しているんだけど、流石にこの状況は…<br>
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『ほらほらほらぁ!どうしたのよぉ真紅ぅ!?』<br>
『くっ…そのニヤニヤ笑い、泣き顔にしてあげるわ!』<br>
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店内の高価な品々が宙を舞い、あちこちでガッチャンガッチャン何かが砕け散っている。<br>
この光景をこう、無心で眺めていると、なんとなく祇園精舎の鐘の声が聞こえて来る…気がする。<br>
まあ、諸行無常じゃなくて残酷無慈悲な響きがするけど。 <br>
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『はあ、はあ、き、今日の所は、これくらい、に、しとくわぁ…』<br>
『はあ、はあ、思いっきり、負け台詞よ、それ…』<br>
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漸く終わったか。<br>
他の奴らは巻き添え食わないように、ちゃっかり金庫に逃げ込んでいたりする。<br>
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「この惨状は2人で何とかしろよ?」<br>
『はあ?喧嘩売ってきたのは真紅よぉ?』<br>
『私に非はないわ。水銀燈が片付けるべきよ。』<br>
「ごちゃごちゃ言ってないで2人でやれよ。あの妙な力使えばすぐだろ?でなきゃ紅茶にヤクルト買うの止めるぞ。」<br>
『う…し、仕方ないわねぇ…』<br>
『やれば良いんでしょう、やれば…』<br>
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好物を上手く使えばコントロール出来なくもない事は最近発見したんだが…<br>
如何せん、金がかかるのが欠点だ。<br>
初めて会った時に冷蔵庫を荒らしたのは、まあ当然なんだがこいつらだった。 <br>
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『痛っ!』<br>
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突然真紅が悲鳴をあげて指を抑える。<br>
破片で指を切ったのか。<br>
僕が声をかけるより早く、水銀燈が慌てて駆け寄った。<br>
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『大丈夫!?見せてみなさい!』<br>
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真紅の手をとり、傷口を見ると安心したように溜め息をついた。<br>
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『良かった。そんなに深い傷じゃないわね。こうしておけばすぐに良くなるわ。』<br>
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水銀燈は真紅の指をパクリとくわえる。<br>
なるほど、唾液で消毒兼血止めか。<br>
にしても…顔を名前のごとく赤らめた真紅の指を吸う水銀燈。<br>
なまじ2人とも可愛いだけに、男の自分が見てはいけないような光景だな…<br>
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『見てないで絆創膏持ってくるのだわ!(///)』<br>
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仲がいいのか悪いのか。<br>
喧嘩する程…ってヤツなんだろうな、きっと。 <br>
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それから数日たった昼下がり。<br>
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ピンポーン<br>
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郵便物が届いたみたいだな。<br>
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『桜田さんですね。荷物でーす。着払いなんでお願いしますね。』<br>
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…?<br>
ダンボール4箱も?<br>
領収書を見たら意識が一瞬遠のいた…<br>
なんで0が4つも並んでいるんだよ!?<br>
目眩を起こしながら払うと運び…やたら軽いのと重いのがあるな。<br>
開けてみると…ヤクルトが詰まったのが2箱、茶葉が詰まったのが2箱…<br>
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『…犯人はお前らだな!?』<br>
『真紅、英国王室御用達ですってぇ。』<br>
『水銀燈、乳酸菌10倍増しだそうよ?』<br>
『買い(ねぇ)(ね)』ポチッ<br>
『ぎゃああああ!?』<br>
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こうして。<br>
パソコンを前に仲良く並んだ2人が注文した山のような品々を前に、返品なりクーリングオフなり出来ないか途方に暮れる日々が暫く続くのだった…<br>
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続く</p>