「Another RozenMaiden 第１話 幼馴染」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら
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<p><a title="anotherrozenmaiden " name=
"anotherrozenmaiden "></a>アリス。<br>
それは究極の少女。<br>
それは永遠のもの。<br>
誰もが追い求める究極の愛の形。<br>
<br>
そして、二人の少女のアリスをめぐる戦いが今、幕を開ける。<br>
<br>
Another RozenMaiden<br>
第１話 幼馴染<br>
<br>
？「JUMぅ。起きなさいよぉ。」<br>
ゆさゆさ。僕の体が揺れる。声の主は水銀燈。<br>
毎朝、眠っている僕を起こしに来てくれる。<br>
銀「もう８時過ぎちゃうわよぉ。」更に揺れが激しくなる。<br>
ここは抵抗するのが男というものだ。<br>
JUM「それなら、明日の８時でいいよ。」適当な理由を付けて抵抗する。<br>
銀「何を言っているのよぉ。おばかさぁん。」突如、日差しが差し込んでくる。<br>
水銀燈は僕が抵抗すると、必ずカーテンを開けてくるのだ。<br>
僕は布団を被って日差しに耐える。<br>
銀「もぅ！」布団に手を入れた水銀燈が、僕の鼻を摘む。<br>
これには堪らず、僕は観念してベッドから出る。<br></p>
<br>
<p>
JUM「おはよう。水銀燈」戦うこと約10分、ようやく朝の挨拶をする。<br>
銀「JUMぅ。おはよぉ。」疲れたのか、水銀燈の顔は赤くなっている。<br>
銀「もっと、早く起きてくれればいいのにぃ。」水銀燈が頬を膨らませる。<br>
僕は、それを指先でつっついてやる。水銀燈の頬から息が漏れる。<br>
銀「もぅ。JUMったらぁ。」水銀燈の頬が、更に膨れ上がる。<br>
一見、怒っているように見えるがそんなことはない。<br>
お互いこのやり取りには、もう慣れているのだ。<br>
水銀燈と二人暮らしを始めて、３年目になるからだ。<br>
銀「先に居間に行っているわぁ。」<br>
僕の着替えを見ないように気遣っているのか、<br>
くるりと向きを変え水銀燈が部屋から出る。<br>
銀「早く来ないと、朝ごはん冷めちゃうわよぉ。」<br>
少し声が遠い、階段からだろう。僕は急いで着替えると部屋を出た。</p>
<br>
<p>居間に入ると、水銀燈が食卓に着いて待っていた。<br>
銀「早くぅ。のろまは嫌いよぉ。」言葉とは裏腹に水銀燈は笑顔を向けてくる。<br>
JUM「すぐ行くよ。」僕は急いで席に着く。<br>
銀「頂きますぅ。」<br>
JUM「頂きます。」二人で同じ台詞を言うと、食事に箸を付ける。<br>
今日の朝食はご飯と味噌汁、それに野菜炒めだ。<br>
JUM「美味い。」素直な感想を述べる。<br>
銀「良かったわぁ。」水銀燈が嬉そうな表情になる。<br>
銀「味とか、薄くなかったぁ？」少し不安げに、水銀燈が尋ねてくる。<br>
JUM「大丈夫だよ。」一応は、だが。正直言えば、もう少し濃い方が良い。<br>
銀「頑張った甲斐があるわぁ。JUMって、以前は醤油飲んでいたしねぇ。」<br>
水銀燈曰く、昔の僕は醤油を飲んでいたそうだ。<br>
放任主義の家庭に育った僕は、ジャンクフードばかりを食べる生活を送っていた。<br>
長期に渡る乱れた食生活の末、いつの間にか味覚障害を起こし、<br>
濃い味に物ばかりを食べる様になっていたらしい。<br>
それを知ったのは、初めて水銀燈の料理を食べた日だ。<br>
当時の僕は、水銀燈の料理に殆ど味を感じなかった。<br>
そこで、料理に普段と同じ量の醤油を掛けたところ<br>
『JUMは醤油を飲んでいる』と言われてしまった。<br>
その後、濃い味は体に良くないと散々説教を喰らう羽目になり、<br>
治療と称してヤクルトを大量に飲まされてしまった。<br>
どうやら乳酸菌が高血圧防止に良いらしい。本当かは知らないが。<br>
味覚の方はというと、３年間の生活の中で現在も更生中というわけだ。<br>
JUM「ご馳走様でした。」考え事をしていた為、いつの間にか食べ終えてしまう。<br>
味は良く分からなかった。決して薄いからという訳ではないが。<br>
銀「はい。ヤクルトぉ。」食卓から立つ前に、ヤクルトを渡してくる水銀燈。<br>
どうやら、ヤクルトは食後に飲むのが最適らしい。<br>
JUM「ありがとう。」 僕はヤクルトを受け取ると、いつも通り一気飲みをする。</p>
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<p>
思ったよりも早く支度が終わり、食後の休憩を取りながら迎えが来るのを待つ。<br>
もうすぐ水銀燈の妹たちが僕らを迎えに来るのだ。<br>
それを待って合流し、全員で学園に向かうというのが習慣になっている。<br>
水銀燈の実家は、この家よりも学園が遠い。<br>
また、この家は水銀燈の実家と薔薇学園の通り道に位置する。<br>
そのため、水銀燈の妹たちは必ずこの家の前を通るのだ。<br>
ピンポーン。程なくして玄関のチャイムが鳴り、<br>
マイクを通じて真紅の声が聞こえてくる。<br>
紅「着いたのだわ。早く支度をして出てきて頂戴。５分以内よ」<br>
いつもと変わらず、真紅が急かしてくる。<br>
JUM「みんなが来たぞ。」僕は台所の奥で食器を洗う水銀燈に、<br>
真紅らが到着したことを伝える。<br>
銀「すぐ行くわぁ。」パタパタと駆けて、水銀燈が台所から出てくる。<br>
エプロンを外し終えた水銀燈に荷物を渡すと、二人並んで玄関に立つ。</p>
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<p>JUM「行ってきます。」<br>
銀「行ってきますぅ。」僕の後に水銀燈が続いて言う。<br>
誰も居ない家に挨拶を済ませる。この家には僕と水銀燈しか住んでいないからだ。<br>
両親は外国暮らし、３年前までは姉と二人で暮らしていた。<br>
しかし、姉は大学進学で寮に移り住むことになり、この家は僕一人になってしまった。<br>
こうなると当然、親に引き取られ外国へ行く羽目になるのだが、僕は断固拒否した。<br>
何年も会っていない両親より、ずっと大切なものがここには沢山あるからだ。<br>
徹底抗戦の末、両親からある条件を取り付けることができた。<br>
内容は『頼れる人間の同居』というものであった。<br>
この話を幼馴染である水銀燈が、どこからか聞きつけこの家に住み着いてしまったのだ。<br>
そして水銀燈が押し掛けて来て以来、何故か両親からの連絡は途絶えてしまう。<br>
不安を感じ、両親と連絡を取ると事態は思わぬ方向に進んでいた。<br>
僕の知らぬ間に『頼れる人間の同居』その人間に水銀燈が選ばれていたのだ。<br>
こうして水銀燈との同居が成立し、今に至るのである。<br>
銀「JUM。ぼーっとしている暇は無いわよぉ。」水銀燈の言葉で現実に引き戻される。<br>
気を取り直すと、僕は玄関に置いてある８０円を掴み、皆の待つ外へと出た。</p>
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<p>
雛「おはようなのー。」扉から出ると雛苺が飛びついてくるが、<br>
すっと回り込んだ水銀燈に阻まれてしまう。<br>
蒼「水銀燈、JUM君。おはよう。」蒼星石が清々しい笑顔で挨拶をしてくる。<br>
紅「出てくるまでに･･･6分30秒。次は今より１分半早くなさい。」<br>
懐中時計を見ている真紅が不機嫌そうに言う。<br>
翠「全く、仕方ない奴らですぅ。」パンを咥えたままの翠星石。そのまま喋ると･････。<br>
翠「あう･････です。」喋れば当然、咥えたままのパンは落ちる。<br>
翠「翠星石の････貴重な食料が泥だらけですぅ。」<br>
地面に落ちたパンは、ほんの小さな欠片。勿論、食べられる状態ではない。<br>
翠「チビ人間が、翠星石を喋らせるからいけないのです！」 <br>
訳の分からない言いがかりをしてくる翠星石。<br>
翠「チビ人間！何か食べる物を出しやがれ！ですぅ！！」<br>
翠星石が掴みかかってくる。 このまま放置すると後でうるさい。<br>
仕方ないので家に上がらせてやり、水銀燈に頼んで朝食を振舞う。<br>
</p>
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<p>
蒼「ごめんね、JUM君。翠星石もさっき起きたばかりだから。」<br>
蒼星石が申し訳なさそうに謝ってくる。<br>
JUM「気にしてないよ。」翠星石は最初から、僕の家で朝食を取るつもりだったのだろう。<br>
金「今日も遅刻かしらー。」思わぬトラブルに、金糸雀は早くも冷や汗をかいている。<br>
数分後。食事を終えた翠星石が家から出てきた。<br>
翠「水銀燈！料理の味が濃過ぎるのです！！」<br>
今日の朝食は、翠星石が食べると味の濃い部類に入るらしい。<br>
銀「やっぱりぃ。」水銀燈の見解も、翠星石のそれに一致するようだ。<br>
翠「おめーは、JUMを高血圧にするつもりですか！？」水銀燈に突っかかる翠星石。<br>
銀「JUMに合わせているんだけどぉ。もっと更正しないとねぇ。」 <br>
金「それより策士の意見を聞いてほしいかしら。もう学園に行かないと遅刻かしらー。」<br>
二人の会話を金糸雀が遮る。金糸雀はもう冷や汗ダラダラだ。<br>
肉体派でない為、走るのはゴメンなのだろう。 <br>
翠「全部チビ人間が悪いです。」澄ました顔で言う翠星石。<br>
性悪は何でも僕のせいにするつもりらしい。<br>
翠「大体からして、チビ人間が翠星石の食事を邪魔するから･･････。」尚も悪態を吐く。<br>
しかし、時間的にそれを聞いている余裕は無い。<br>
紅「文句は良いから、さっさと行くのだわ。」 <br>
翠星石の言葉が終わるのも待たずに走り出す皆。<br>
翠「みんな待つですぅ！」一人取り残された翠星石の叫び声が聞こえる。<br>
</p>
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<p>
銀「JUMぅ。早過ぎるわよぉ。ちょっと待ってよぉ。」 <br>
水銀燈との距離が開く。どうやら、何かを飲みながら走っているようだ。<br>
JUM「水銀燈。何飲んでいるんだ？」走るペースを落として水銀燈に近づき、尋ねてみる。<br>
銀「勿論ヤクルトよぉ。65mlしかないんだもの、味わって飲まなきゃダメよぉ。」<br>
水銀燈は、いまだに朝食後のヤクルトを大事に飲んでいるらしい。<br>
銀「一気飲みなんて外道よぉ。JUMにも少し分けてあげるわぁ。」<br>
そう言うと水銀燈が残りのヤクルトを僕に向け、いきなり飲ませてくる。<br>
JUM「うわっ。」突然のことに僕は容器を落とし、中身を零してしまう。<br>
銀「50億のL.カゼイ菌が･････勿体無いわぁ。」<br>
落とした容器を摘むと、名残惜しそうにコンビニのゴミ箱に放り込む水銀燈。<br>
そんな水銀燈が愛らしく、僕は軽く肩を抱いてやる。誤魔化しの意味も含めて。<br>
ふと、近くにあったコンビニの中を覗いてみる。<br>
コンビニ内の時計、指す時間は8時55分。もう遅刻寸前だ。<br>
急いで傍の自販機に、むき出しのまま持っていた80円をぶち込む。<br>
時間は後5分。今日のヤクルト休憩は無しだ。<br>
JUM「急ぐぞ！」僕は水銀燈の手を引くと学園に向け駆け出した。<br>
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<p>
教室に駆け込むと辺りを見回す。梅岡はまだ来ていないようだ。<br>
紅「9時2分。2分オーバーね。」懐中時計を片手に、真紅の厳しいチェックが入る。<br>
翠「水銀燈とイチャイチャしてやがるからですぅ。」翠星石の視線が痛い。<br>
JUM「梅岡が居なければ問題ない。」適当な言い訳をし、水銀燈を伴って席に着く。<br>
水銀燈も同時に隣の席に座る。手を伸ばし、先程購入したヤクルトを２本共渡してやる。<br>
銀「１本はJUMの分よぉ。」その内の１本を水銀燈が返してくる。<br>
自販機のヤクルトは80円で2本セットなのだ。<br>
JUM「ありがとう。」僕はヤクルトを受け取ると、いつも通り一気飲みをする。<br>
梅岡に見つかると後が面倒だからだ。証拠隠滅の為、ゴミ箱に空容器を投げ込む。<br>
ガラガラガラ。扉が開く音が鳴り、梅岡が教室に入ってくる。<br>
梅「出席を採るぞ。」ここまでに間に合えば遅刻ではない。<br>
梅「金糸雀は今日も欠席と。」早速出席を採り始める梅岡。<br>
金「カナは、ちゃんとここに居るかしらー！」金糸雀が席から立ち上がり、声を荒げる。<br>
梅岡が次々と生徒の名を呼ぶ。そろそろ水銀燈の番だ。<br>
水銀燈は性懲りも無く、まだダラダラとヤクルトを飲んでいる。<br>
梅「水銀燈！また、ヤクルトを飲んでいるのか！」案の定、梅岡に気づかれてしまう。<br>
銀「気遣ってくれなくても大丈夫よぉ。ヤクルトは一日に何本飲んでも良いのよぉ。」<br>
そういう意味じゃないだろ！と言いたいが、<br>
僕は黙って水銀燈のヤクルトを摘み上げる。</p>
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翠「JUM！一気するですぅ！！」その様子を見ていた翠星石が突然叫びを上げる。<br>
翠星石は水銀燈から取り上げたヤクルトを、飲めと言うのだ。<br>
間接キス、恐らくそれが見たいのだろう。<br>
クラスの連中も悪乗りし、一気やら飲めやらと声を上げる。<br>
昔に見慣れた光景だ。クラスの連中を無視すると水銀燈の荷物を漁る。<br>
荷物の中のペットボトルに手が触れる。当然、容器の中身はヤクルト。<br>
僕はペットボトルの蓋を開けると、ヤクルト容器の中身を移す。<br>
翠「つまんねーですぅ。」露骨に悪態をつく翠星石。<br>
ここで感情を露わにすれば僕の負けだ。<br>
JUM「ヤクルトは処分しました。出席の確認を続けてください。」<br>
僕は勤めて淡々とした口調で言う。<br>
梅「あ、ああ･････。」出番がなくなった梅岡は、あっさりと引き下がる。<br>
銀「JUMぅ。飲んじゃってもいいのにぃ。」がっかりとした表情の水銀燈。<br>
水銀燈は、公衆の面前で間接キスを見られたいのだろうか。<br>
ただでさえ、僕と水銀燈は目立つのだ。<br>
これ以上目立っては何かとマズイと思うのだが。<br>
水銀燈のヤクルトを、全く飲みたくなかったと言えば嘘になるのだが。<br>
やがて出席の確認を終えた梅岡が口を開く。<br>
これが、これから始まる事件の発端となるのである。<br>
Another RozenMaiden 第１話 幼馴染 終</p>
