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『新説JUN王伝説~序章~』第26話」(2007/10/13 (土) 21:32:39) の最新版変更点

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<p>ジ「はぁ…はぁ…」<br> 白い息を吐きながら道なき道を歩くジュン。<br> 彼はいま円谷に渡された地図をもとにある山麓を訪れていた。<br> 山を登り始めたのは早朝だというのに太陽はすでに頭上高らかに輝いている<br> ジ「くそっ…本当にこんなとこに人が住んでるのかよ?<br> っていうか…迷ったとかマジで勘弁だぞ。」<br> 確かに地図はある…しかし肝心な山に入ってからの道筋は書かれておらずただその山の頂上付近に目的地があることしかわからないのだ<br> ジ「こりゃ最悪今夜は野宿かもな…はぁ…。」<br> <br> ジュンはそんな事態を考え深く溜め息をつく。<br> …そのときであった、彼の耳に微かだがせせらぎのようなものが聞こえてきたのである<br> ジ「これは…まさか!」<br> ジュンは感覚を研ぎ澄ませながらその音の方角へと走った。<br> そして数分ほど進んだとき、彼の目の前には山を流れる渓流が飛び込んできたのであった<br> <br> ジ「か…川だ。助かった!」<br> ジュンは河原に荷物を下ろすとその冷たい水を手ですくい口に運ぶ<br> ジ「ふぅ…生き返る…」<br> 険しい山道を歩き続けたことで渇いた喉を清らかな水で癒やしジュンはようやく落ち着きを取り戻した</p> <dl> <dd><br> <br> ジ「とりあえず…何か食うものでも捕まえないとな。」<br> 一息をついたジュンはゆっくりと立ち上がると冷たい流れに足を浸す<br> ジ「うぅっ…冷て!」<br> すぐに背筋を凄まじい冷たさが駆け巡る。<br> しかしジュンはザブザブと川の中を歩くと流れを遮っていた大岩に掌を置いた。<br> そして…<br> ジ「確かこうやって………覇ぁっ!!」<br> 瞬間、ジュンの掌から放たれた衝撃が水を伝い波紋を広げる。<br> そしてその数秒後、岩の下から数匹の魚がぷかりと浮かび上がってきたのだ<br> <br> ジ「おっと…危ない危ない。」<br> ジュンはそれを川に流される前に広い集めると素早く川から上がった<br> <br> ジ「確かガッチン漁とかいうんだよな…釣り○チ三平読んでて助かったよ。」<br> ガッチン漁とは岩影に身を潜めた魚を岩をハンマーなどで叩くことで気絶させて捕まえる古くから伝わる川漁である。<br> 食料を手に入れたジュンは早速枯木を拾い集めると、持参したライターでそれに火を点ける<br> <br> ジ「ふぅ…」<br> 暖かな火が彼の冷えた体を乾かすころ、串に刺され炙られた魚がジュウジュウと美味そうな音を立てていた <br> <br> ジ「案外僕ってアウトドア向きなのかもな…ははっ。」<br> 焼けた魚で遅い朝食を取りながらそう呟いたそのとき…<br> <br> 『パキリ…』<br> <br> ジ「ん?」<br> 突然背後から聞こえた音に振り返るジュン。<br> するとそこには一頭の黒い巨大な影がこちらを見ていた。<br> そう、それは日本最強クラスの危険度を誇る野獣・熊であった<br> <br> ジ「おいおい…何で真冬に熊がいるんだよ…?」<br> 本来ならとうに冬眠しているはずの熊を前にジュンは顔をしかめる<br> <br> 熊『人間よ…何故この森に来た?ここは我等が暮らす場所…人間が来るべき場所ではない…』<br> 熊の言葉がジュンの持つソロモンの指輪を介して脳に流れ込む。<br> 普通の人間ならばここで腰を抜かして逃げ出すところだが、ジュンは至って冷静だ<br> <br> ジ「無断でお前たちのテリトリーに入ったことは謝る。すまない…。」<br> 熊『ほぅ…貴様、我等の言葉がわかるのか。ならば話が早い…我が手を下さぬうちに早々にこの山を降りるのだ。』<br> <br> 熊はそう言うと鋭い目つきでギロリとジュンを睨む。 <br> <br> だがジュンは小さく息を吐くと獣にも負けぬ鋭い眼光で熊を睨み返した<br> <br> ジ「悪いが僕も『はいそうですか』と帰る訳にはいかないんでね…<br> お前がやるというのなら、倒してでも通るつもりさ…。」<br> 熊『ほぅ…人間如きが我に挑むだと…?<br> なかなか面白い冗談を言うな…。』<br> ジ「本気さ…僕も無駄な争いはしなくないが、避けられないのなら仕方ない。」<br> 熊『ふっ…調子に乗るな!小僧めがぁああああああああッ!!』ブォン!<br> 瞬間、熊の持つ巨大な掌がジュンを襲う。<br> その爪は生物の肉を一撃で引き裂き致命傷を与えるには充分すぎる破壊力を持っている。<br> だが…<br> ジ「ふっ…」<br> <br> 『バシイィ!!』<br> <br> 熊『なっ…!?』<br> 熊は驚愕した。これまで自分の爪はいくつもの獲物を一撃で引き裂いてきた…<br> なのにその必殺の一撃はいま一人の生身の少年によって片手で受けられているのだから<br> <br> 熊『そ…そんな馬鹿な…!我は認めんぞ!!』<br> 動揺した熊は腕に更なる力を込める。<br> その力でもってそのまま受けられた手を切り裂くつもりだ。<br> しかし、いくら力を込めてもジュンの腕は動かない <br> <br> ジ「無駄だ…お前の力じゃ僕を倒せない。」<br> ジュンが冷ややかな目を熊へと向ける。<br> それは強者が弱者に向ける哀れみに似た瞳であった<br> <br> 熊『ふ…ふざけるなぁあああああ!!』<br> その言葉に激怒した熊はもうひとつの武器である牙をジュンの首筋に向けて放った。<br> だが…<br> ジ「うわたぁっ!!」<br> 熊『ぐぶぁっ!!』<br> それを遥かに凌ぐ速さで繰り出されたジュンの拳が熊の頬を殴りつけたのだ。<br> 熊は口から血飛沫と数本の牙を飛ばしながら後ろへと吹き飛び、体を崩した<br> <br> ジ「…わかっただろう?お前では僕には勝てない。」<br> 熊『ぐっ…くそ、殺せ…!』<br> 熊もそれを悟ったのかジュンに止めを促す<br> ジ「勘違いするな、僕にも非はあるんだし…僕はただ大人しくここを通してくれたらいいんだよ。」<br> 熊『この私に…情けをかけるというのか…?』<br> ジ「だからそうじゃないって!言ったろ?僕は無駄な争いはしたくないだけなんだ。」<br> 熊『お…おぬし……』<br> <br> 熊はもう一度ジュンを見据えたが彼の野生の勘を持ってしてもジュンが決して嘘を言っていないことは明白であった<br> <br> 熊『ふっ…どうやら本心のようだな…珍しい人間だ。<br> おぬし…名は?』<br> ジ「ジュン…桜田ジュンだ。」<br> 熊『ジュン…か…。して、おぬしは何故この山に?』<br> ジ「あぁ…この山にいるっていうある人を探しているんだ。」<br> 熊『…人?』<br> その言葉に熊はピクリと反応する<br> <br> ジ「何か知ってるのか!?」<br> 熊『おぬしが探しているのは恐らく…あの方であろうな。』<br> ジ「あの方?」<br> 熊『そうだ…我等が唯一敬意を抱いている人間だ。この山にいる人間といえばあの方しかおるまい…』<br> 人を寄せ付けぬこの山にいながら獣たちからも敬意を寄せられる人間。<br> そう聞いたジュンもまたその人こそが目指す円谷の師であるという確信を抱いていた<br> <br> ジ「な…なぁ、悪いんだけど…」<br> 熊『おぬしの言いたいことはわかる。火を消したら私について来い。<br> その人のところまで案内しよう…。』<br> ジ「あ…あぁ、助かる!」<br> <br> 早速たき火を消したジュンは熊の案内で再び険しい山道を登っていった。 <br> <br> そして数時間後…<br> <br> <br> 熊『着いたぞ。この先におぬしが目指す場所がある。』<br> ジ「ここが…」<br> <br> 熊が目を向けた先には山頂へと続く苔むした長い石段があった<br> ジ「ありがとう。助かったよ。」<br> 熊『礼には及ばん。では私はここで失礼しよう…』<br> ジ「あぁ。あと…すまなかったな。顔、大丈夫か?」<br> 熊『気にするな…これは私の力が足りなかったせいだ。<br> 私もまだまだということだな…』<br> ジ「ならいいけど…」<br> 熊『ふっ…では達者でな。』<br> <br> ジュンに別れを告げると熊は元来た道をゆっくりと引き返し森へと消えていった<br> <br> ジ「よし…。」<br> 熊を見送ったジュンは石段を一歩ずつ踏みしめて登ってゆく。<br> そして最後の石段を踏むと、彼の目の前には広い敷地に建てられた古寺が現れた<br> <br> ジ「ここか…。」<br> ジュンはゆっくりとその境内へと歩み寄る。<br> だがそこに人のいる気配はない<br> <br> ジ「すみませーん!誰かおられますかー!?」<br> 念のため叫んでみたがジュンの声は静かな山に虚しく響くだけであった<br> <br> ジ「本当にここで合ってるのか…?誰もいないじゃないか…。」<br> 寺を覗きこみながらジュンが呟いたそのときであった…<br> <br> ?「ほぅ、客人とは珍しい…」<br> <br> ジ「!?」<br> 突然背後に人の気配を感じたジュンは慌てて振り返る。<br> するとそこには僧の服に身を包んだ初老の男性が立っていた<br> <br> ジ(いつの間に背後に!?全く気配を感じなかった…!)<br> 男「若い人がこんな山奥までどうなされた?」<br> 鋭い目を向けるジュンに男は静かに口を開く<br> <br> ジ「あ…あの、貴方は?」<br> 男「見ての通り、この寺の住職だ。して…君は?」<br> ジ「僕は桜田ジュン…円谷先生の勧めでここに来ました。」<br> 男「円谷……そうか、君は英二の生徒か。」<br> ジ「は…はい。」<br> 男「それで…私に何か用かね?」<br> <br> 男は少し目を細めながらジュンに問う<br> ジ「は…はい、僕は先生に言われてここにいる先生の師という人に拳の修行をつけていただくために来ました!」<br> <br> その問いかけに答えるジュン。<br> すると男はしばし黙った後、ジュンの横をすり抜け寺へと入ろうと歩みを進めながら言った<br> <br> 男「帰りなさい。ここは君が来るべき場所ではない…。」<br> ジ「!?<br> どういう事です!?」<br> その理不尽な答えに声を上げるジュン。<br> だが男は振り向くこともなく言葉を続けた<br> <br> 男「言葉の通りだ…君には家族や友がいるだろう。<br> 帰るべき場所がある者に…この場所は似合わない。」<br> ジ「それは…どういう意味ですか?」<br> 男「生半可な力では…ここでの修行は務まらない。<br> 最悪、君は命を落とす危険があるだろう。」<br> ジ「!」<br> 男の言葉に反応するジュン。だがジュンも負けじとそれに反論する<br> <br> ジ「そんなの、覚悟はできてます!!そうでもしなきゃ、今より強くなんてなれない!」<br> そう答えたジュンの言葉に男は小さく息を吐くとゆっくりと振り返り言った<br> <br> 男「なら、君は考えたことはあるかね?君がいなくなることで悲しむ者がいることを…」<br> ジ「!?…そ…それは……」<br> 男の言葉にジュンは口を紡ぐ<br> <br> 男「若いな…君はまだ若すぎる。早く山を降りなさい。ここは夜が早い…」<br> <br> 男は再びジュンに背を向けると寺へと入ってゆく<br> ジ「……待ってください。」<br> だがそれをジュンの言葉が遮った<br> <br> 男「まだ…何かあるのかね?」<br> ジ「確かに僕には自分を心配してくれる友達や家族がいます…。<br> でも!その全てが消されてしまうかもしれないんだ!!僕が止めなきゃ…僕が強くならなきゃみんなが!!<br> 僕はそんなこと絶対に許さない…それを止めるためならどんな苦しみだって喜んで受けてやる!<br> だから…だから僕は今よりも強くならなきゃいけないんだ!!」<br> ジュンは叫んだ。心の底から叫んだ。<br> それはジュンが決めた決意…ジュンの抱いた偽りなき本心であった<br> <br> ジ「だから、僕にここで修行させてください…お願いします!!」<br> 男「……」<br> しばし辺りに無言の時が流れる。<br> その沈黙を破ったのは男の声であった<br> <br> 男「いいだろう…その決意、この俺が試してやろう。」<br> ジ「そ…それじゃあ…!」<br> 男「勘違いするな。俺はまだお前に修行を付けると決めたわけではない。<br> そうするかどうかは、これから試させてもらおう……<br> はぁっ!!」バッ!<br> <br> 男は天高く跳躍するとひらりと身を翻し、広い庭の中央へと降り立った<br> <br> ジ「は…はい!」<br> ジュンは慌ててその場へと駆け寄ると庭にて男と対峙した<br> <br> ジ「その体捌き…やはり貴方で間違いはないようですね。」<br> 男「いかにも…英二を引き取り育てたのは他でもないこの俺だ。」<br> ジ「それを聞いて安心しました。絶対に、貴方に認めさせてみせます…。」<br> ゆっくりと構えるジュン。その瞳に激しい闘志が宿る…<br> <br> 男「来い…少年よ。お前の覚悟、この俺が見定めてやろう…」<br> 男もまた左手を真っ直ぐ突き出し、右拳を腰に引き構えを取った<br> <br> 厳「この“獅子吼焔流”師範代・大鳥厳がなッ!!」<br> <br> <br> <br> 続く…<br> <br></dd> </dl>

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