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「とある少女の日記」(2007/10/09 (火) 01:30:32) の最新版変更点
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<p>私は窓の向こう側に憧れた。<br>
私は病気だ。<br>
よく解らないが、心臓の病気らしい。<br>
物心ついた時からこの病室が私の世界の全てだった。<br>
両親は助からないと諦めたか、それともまだ助けようと頑張っているのか。<br>
年に数回しか会えないから諦めたんだろう。<br>
後は死の宣告を更新し続ける医者と、パートタイムの笑顔の看護士。<br>
それが私の世界の住人だ。<br>
だから私は窓の向こう側を見続けた。<br>
向こうには私が欲しがった物があったから。<br>
私が居た証は何だろう。<br>
誰にも知られる事無くこの空虚な箱の中で朽ち果て、日記だけが残るんだろうか?<br>
<br>
今日時計が止まった。<br>
電池切れみたい。<br>
飾られていた花を供えてお葬式をした。<br>
私もこんな風に唐突に止まるんだろうか。 <br>
<br>
朝の時間。<br>
何時ものように病院の前を学生が登校していく。<br>
その姿を観察するのはもはや日課。<br>
今日もまた、男子学生が向こうから歩いてくる。<br>
彼の周りには何時も複数の女の子がいて、音が届かないここからでも解る位に大騒ぎをしている。<br>
私が憧れた物。<br>
私が望んだ物。<br>
私が得られない物。<br>
それが今日も通り過ぎていく。<br>
不思議な事で、そんな彼らを見ることが私の1日の楽しみとなっている。<br>
その姿が見られない土日は憂鬱で死にそうだ。<br>
きっと彼らを見ている時だけ、私は窓の向こう側に居るんだろう。<br>
姿を見送ると夕方の下校の姿を楽しみにする事にして、不味い食事をとる事にしよう。 <br>
<br>
<br>
急だけど死ぬことにした。<br>
夕べ医者がまた更新をしに来た。<br>
いい加減飽き飽きしたし、最近発作も頻繁になってきて苦しいからそろそろ終わりにしたい。<br>
ただ死ぬだけじゃつまらないから、窓の向こう側に行ってみることにしよう。<br>
朝の検診が終わると薬を飲まず、寝間着っぽくない服に着替える。<br>
目を盗んで玄関にたどり着いた。<br>
ここから未知の世界。<br>
私の憧れた世界が広がっている。<br>
その一歩は途方もなく怖かった。<br>
時間をかけてようやく病院の門まで来れた。<br>
人に混じって歩き出したが、私はとても遅い。<br>
周りの人は事も無げに歩いているのに私の速度は亀のよう。<br>
<br>
ここでは私は何も得られない。<br>
だから私は窓から見続けてたんだ。<br>
改めて思い知った。<br>
そんな事は日記をつけ始めた時から解っていたのに。<br>
<br>
そう思って元来た道を引き返す。<br>
途中見慣れた顔が近づいて来るのが見えた。<br>
彼らだ。<br>
私は精一杯の意地を張ってしゃんと立ち歩き出す。<br>
目があうこともなくすれ違った。<br>
同じ場所に居た、それだけでここまで来た意味はあったかな、そう思えてちょっとだけ救われた気分。<br>
<br>
『ちょっと、なんで上の空なのかしら?』<br>
『今すれ違ったコねぇ?ああいったタイプが好みだったのぉ?』<br>
『ほっほう、それは見逃せねえですねぇ…』<br>
<br>
思わず吹き出してしまう。<br>
笑いなから振り返ると締め上げられる彼と目があった<br>
彼女達も気がついて曖昧な笑顔を浮かべる。<br>
これで私が死んでも、彼らは私を覚えていてくれるだろうか?<br>
急に息苦しくなり、自由がきかなくなった体が倒れ込むのを感じながら、ふとそんな事を思った。<br>
<br>
気がつくと私の世界に戻って来ていた。<br>
側には医者がいて、お説教をされる。<br>
残念、死に損なってしまったみたい。<br>
医者と入れ替わりに彼らが入ってくる。<br>
驚いて身を起こすと、彼らが君を担ぎ込んだ命の恩人達だよ、と出て行く医者が教えてくれた。<br>
御礼をし終えた時、時計が目に映る。<br>
お葬式をした後電池は入れなかったから誰かが入れたのだろう。<br>
既に昼過ぎで、彼に学校をサボらせてしまった事に気づいた。<br>
彼らは笑いながら気にするなと言い、また説教をされてしまった。<br>
<br>
それから彼らはよく遊びに来てくれて、空虚な私の生活に彩りが生まれた。<br>
時計は生き返り、私も憧れた物を得られたから、もう少し足掻いてみよう。<br>
書いていた日記を閉じ、窓の向こうを見ると彼らがやってくる。<br>
<br>
『よ、遊びに来たよ。』<br>
『あら、いらっしゃい。』</p>