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苦難 八番目」(2007/06/14 (木) 21:30:41) の最新版変更点

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<p> <br>  まぁ一杯飲んでいけや。<br>  と、言って鬼は、巨大な朱塗りの杯に酒を並々と注ぎ一人の人間に差出す。<br>  一人の人間は、少々困った表情をしてこう言う。<br> 「人間にゃぁ人間の杯があるかしら」<br>  そう言って、懐から鬼の持つ杯よりも遥かに小さい同じ朱塗りの杯を取り出し鬼に見せた。<br>  ソレを見て、鬼は笑う。<br>  人間ってぇヤツは、身体も弱けりゃ精神も弱い。それに酒にも弱いのか。と<br>  一人の人間は、酒樽になみなみとある酒を自分の朱塗りの杯で掬いつつ鬼に言う。<br> 「おんしらにゃぁおんしらの。人間にゃぁ人間の量ってもんがあるかしらぁ?」<br>  その言葉に、そりゃそうだちげぇねぇな! と、鬼は杯を満たす酒を一気に飲み干し<br>  酒樽を軽々と片手で持ち杯に注ぎいれる。<br>  ソレを見て焔の様に揺らめく黒髪の鬼が、お前飲みすぎだぞ? と、苦笑しながらに言う。<br> 「それにしても変かしら」<br>  と、人間が言うと酒を相変わらず飲み干す鬼とは黒髪の鬼が、何が変なのか尋ねる。<br> 「月輪(がちりん)の下にて……八乙女たる私とおんしらが共に酒を飲むと言う事柄かしら」<br>  その言葉に、そりゃぁ……そうだなぁ。と、苦笑を返す黒髪の鬼。<br>  まぁ、変だが。不味くはない酒だろう? と、黒髪の鬼はクイッと月を見上げる。<br> 「……まぁおんしらと飲む酒は」<br>  人間は、そこで言葉を止め酒を一口のみ黒髪の鬼と同じように月を見上げて呟く。<br>  不思議と不味く無い……と<br>  おい! 潤! 酒がねぇぞ!!<br>  バカヤロウ!! 部侍威蛇!! 百もあった樽殆ど一人であけんじゃねぇ!!!<br>  んだとコラァ!!!<br> 「……まぁ……少々煩さぁが……何時か遠い日に、おんしらとまた飲みたいもんかしら」<br>  一生懸命酒を造った人間に謝れこの野郎!!<br>  しるかボケェ!!! 火狗幡阿蛇狗食らわせんぞ!!!<br>  んだとぉ!! 武瑠魔にいいつけてやろうか!!<br>  ゴメンナサイ。カンベンシテクダサイ。<br> 「……少々じゃなくて本当に煩いかしら」<br>  と、人間はクスリと鬼のやり取りを見て笑うのだった。<br> <br> <br> <br> <br> <br> <br>  奇妙な啼き声で笑う鳥の様な姿を持つ化物。<br>  鳥の様な翼で空を飛び餌になる人を探しては襲い食らう。<br>  それは、古来よりハーピーなどと言われる存在。<br>  ハーピーが、鳥の様な翼で空を飛び今宵も餌を探していた。<br>  しかし、宵の空から大地を見るが……あるのは、閑散としたコンクリートジャングルと<br>  そのコンクリートジャングルを仕切る様に出来たアスファルトの道のみ。<br>  ハーピーは、絶対的に違和感を覚える。<br>  人の気が無い。あの煩い鉄の馬が一騎たりともはしっちゃぁ居ない。<br> <br>  ふと、ハーピーは視線を自分よりも下に存在するビルの屋上に移す。<br>  其処には、一人の金色の派手な服を着た餌がいた。<br>  ハーピーは、絶対的な違和感を無視しようやく見つけた餌。<br>  しかもキラキラと光る美味そうな餌に凶った(まがった)笑みを浮かべる。<br>  鈍い音の羽ばたきを一つし方向転換するハーピー。<br>  そして、ビルの屋上に居る餌目掛けて急降下を開始した。<br>  やっと餌にありつける。<br>  パーピーは、そんな事を思いながらやはり凶った笑みを浮かべて堕ちていく。 <br>  何時もの様に餌を見つけて。何時もの餌の狩り方。<br>  この堕ちる速度に、餌が気づいた時にはもう既に遅く……凶悪な一撃に餌は生き絶える。<br>  その死肉を啄ばむ様に喰らいまた次の餌を探す。<br>  何時もならもう餌の死肉を喰らっていた。<br>  だけど、ハーピーは喰らえなかった。<br>  堕ちた先の餌は、ゆっくりとした動作でハーピーに向けて手を天に翳す様に向けた。<br>  あぁ、その細く柔らかい腕から喰らって欲しいのか? と、思いながら凶った笑みを深めるハーピー。<br>  そして、餌の天に翳す様に伸ばした手から何かが……ハーピーを貫いた。<br>  何が起こったのかわからない。そんな表情を浮かべ捩れる様に堕ちるハーピー。<br> <br> 「あっけないかしら」<br> <br>  と、捩れ堕ちるハーピーを見ながらに呟くのだった。<br> <br> 「アレかしら。お酒が飲みたくなるかしら」<br> <br>  そう言いながら思い出すのは、あの平城京の羅城門で鬼達と酒を飲んだ事。<br>  実際は、自分の記憶ではなくそれは始まりの者の記憶だが……<br>  一人で飲むのもつまらないかしら~と、一つ伸びをした後ビルを後にする。<br> <br> <br> <br> 「あぁ金糸雀君? 君が英語が苦手なのはよぉく知っているのだがね?」<br> <br>  と、潤は教卓に手を突きながらに言う。潤にそう指摘されビクッと身体を一度振るわせる金糸雀。<br> <br> 「今は歴史の時間だ。わかるね? 金糸雀君?」<br> 「は、はいかしら~」<br> 「廊下にたってなさい」<br> 「はいかしらぁ~」<br> <br>  潤にそういわれトボトボと教室から出て行く金糸雀。<br>  廊下に立ち窓から見える外の景色を眺めながら金糸雀は思う。<br>  いつか、また一緒に酒を飲む日が来るのかしら? 潤? <br> <br> <br></p> <hr> <br> <br> 【NGシーン】<br> 「あぁ……金糸雀君? そ、その酒瓶はなにかね?」<br> 「お酒かしら! 恐山で造られてる名酒かしら!」<br> 「いや……そうでなくてだね? 今は授業中であって。<br>  そもそも君は、未成年だろうが!」<br> 「ソンナモン関係ないかしらー! 金乙女は、代々記憶を受け継いでるのでオーケーかしら!」<br> 「んなわけあるかぁ!!!!」

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