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「桃紅」(2007/05/26 (土) 12:51:21) の最新版変更点
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<p>『桃紅』 <br />
<br />
ここは真紅の家。今日も今日とて、僕は下僕稼業に精を出している。 <br />
「真紅~紅茶煎れようか?お前の好きなダージリンを買ってきたぞ」 <br />
「…」 <br />
本日のお嬢様は御機嫌が麗しくないようだ。 <br />
「…おっ、『クイズ魔法学園』見てるのか。」 <br />
「…」 <br />
「この金髪の回答者、なんとなく真紅に似てるよな。(胸も小さいし)」 <br />
「…」 <br />
「…なぁ、いいかげん機嫌直してくれよ…」 <br />
「!」 <br />
鈍い衝撃が頭を貫く。 <br />
「ぐあッ!グーで殴るなよグーで!」 <br />
金髪で胸控えめなこのお嬢様は、拳を固めたままつぶやいた。 <br />
「真紅はここにはいないわ」 <br />
「はぁ?」 <br />
「そう、私は……ピンク。ピンクよ。真紅じゃあないのだわ」 <br />
「はァ~??」 <br />
なるほど今日はピンクのTシャツを着てはいるが…安直すぎるセンスだが、韻を踏んでいて不思議に似合う名前だ。 <br />
「それより喉が乾いたわ。紅ち…コーヒーを入れて頂戴」 <br />
「今紅茶って言いかけダふッ!脇腹は勘弁しろよ…」 <br />
あげ足を取る暇さえ与えてくれずに、突き刺すような視線でこう言った。 <br />
「四の五の言わないでさっさとしなさい…!」 <br />
もしかしてお月様ですか?喉元まで来ていた言葉だったが、口に出すまでには至らなかった。僕がお星様になってしまうからだ。</p>
<p>「ほい、できましたよっと」 <br />
「あら。早いわね。」 <br />
労いの言葉をかけもせず、御所望のできたてコーヒーを口に含む。 <br />
「……ッ!ゴホッ!ゴホッ!苦いのだわ!苦いのだわ!」 <br />
「あぁ、僕はいつもブラックだからそのままだしちゃッあべし!鳩尾は危険だろ…」 <br />
「ほんとに!あなたは!鈍感すぎるのだわッ!!」 <br />
「そ、そんなに怒るなよ。今砂糖持ってくるから…」 <br />
「いらないッ!」 <br />
「なんなんだよ…もう勝手にしろ!」 <br />
つかのま、部屋に沈黙が訪れる。 <br />
「……グスッ」 <br />
沈黙を破ったのは、真紅の… <br />
「…泣いてるのか?」 <br />
「泣いてないッ!」 <br />
赤くした目でこちらを睨むと、ばふっと勢いよくソファーにうつ伏せになってしまった。 <br />
そんな真紅を尻目に、僕はカマをかけてみることにした。 <br />
「なぁ…まさか、今日学校で水銀燈と仲良くしてたから機嫌悪いんじゃ…」 <br />
「ッ!うぅぅ~!グスッ」 <br />
どうやら図星のようだ。 <br />
<br />
「…ヤキモチか?」 <br />
一呼吸置いてから、金色の髪が襲い掛かってくる。避ける間もなく、額にみみずをこさえてしまう。 <br />
「自惚れるんじゃあないのだわッ!!」 <br />
そう言い放った真紅の顔は、名前の通り真っ紅だった。いや、ピンクか。 <br />
<br />
「わかったわかった。悪かったよ」 <br />
自然と、笑みがこぼれた。 <br />
「何を笑ってるのよ!」 <br />
まだうっすらと涙を浮かべる真紅は、ずい、と僕との距離を縮めてくる。 <br />
「安心したんだよ。」 <br />
同時に、真紅の手を取り、一気に引き寄せる。その距離も一気にゼロとなる。 <br />
「な、何をするのよ急に…!」 <br />
離れようとする真紅を、力ずくで抑えつける。 <br />
「ちょ…離しなさいって…」 <br />
「僕が」 <br />
「え…?」 <br />
「僕が真紅以外の女の子に手を出すわけないだろう?僕が好きなのは、真紅だけだ。」 <br />
「ジュン…」 <br />
抵抗していた手が緩み、潤んだ瞳は一点に僕の目を見つめる。そして、その華奢すぎる体の全てが、僕に預けられた。 <br />
<br />
「……っと、とうぜんよ!当然だわ!この私の魅力にかなう者なんて!」 <br />
バッと僕から離れると、紅くしたままの顔で不自然なまでに大きな声でそう言った。 <br />
「さっ!口直しに紅茶を用意なさい!」 <br />
「ははっ。はいはい」 <br />
どうやらいつものお嬢様に戻られたようだ。 <br />
ふと、背中に柔らかい感触。 <br />
「私、ジュンを信じてるからね…ありがと…」 <br />
さて、今日もはりきって下僕を続けるとしますか。 <br />
「(あててんのよ…わかりづらいかもしれないけど…)」</p>