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『ひょひょいの憑依っ!』Act.8」(2007/03/12 (月) 01:12:28) の最新版変更点

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<p><br>   『ひょひょいの憑依っ!』Act.8<br> <br> <br> カナ縛りに捕縛された真紅は、声ひとつ出せず、指の一本すら動かせず……<br> 出来ることと言えば、にじり寄るビスクドールに、恐怖の眼差しを向けることだけ。<br> <br> 「来たわ来たわ来たわ。ついに、この時が来ちゃったかしらー!」<br> <br> 人形に取り憑いた金糸雀が、嬉々として、言葉を紡ぎだします。<br> 地縛霊として、ずっとアパートの一室に閉じこめられていた彼女にしてみれば、<br> 自分の意志で思いどおりに歩き回れることは、この上ない喜びでした。<br> でも、所詮は人形の身。まだまだ、不便なことが多々あります。<br> <br> 「苦節5年――やっと手に入れた自由だもの。これを活用しない手はないかしら」<br> <br> わけても『死』という烙印は、とてつもなく重い枷でした。<br> 自由になりたい。胸を焦がす渇望を潤したいのに……独りでは、何もできなかった日々。<br> でも、自由への扉を開く鍵――真紅の身体――は、今、目の前に転がっているのです。<br> <br> 気持ちよく晴れた休日には、ジュンと並んで公園を散歩したり――<br> ウィンドウショッピングとしゃれ込んだり、カフェでランチを楽しんだり――<br> その気になりさえすれば、今まで出来なかった、切望していたコト全てが可能。<br> ああ……『生きている』ことは、なんて素晴らしい!<br> <br> 「幸せを掴むのは、この金糸雀かしら。貴女なんかじゃ、決してない!」<br> <br> ぐっ! と両手で拳を握りながら、金糸雀は舐めるように、真紅を眺め回します。<br> そして、徐に歩み寄ると……恐怖に歪んだままの真紅の頬に、そっと触れました。<br> 赤ん坊を想わせる小さな手で、優しく撫で上げる仕種は、どこまでも愛しげ。<br> けれど、人形の唇は仕種と正反対の、酷薄な嗤笑を湛えていたのです。<br> <br> 「すべすべの肌……瑞々しくて、柔らかくって。<br>  髪も艶やかでキレイだし、宝石のように澄んだ蒼い瞳もステキかしら~♪」<br> <br> ふ……と、人形の双眸が、夢見るように細められます。<br> 金糸雀の声音も、満足そうな陶酔を、ありありと匂わせておりました。<br> <br> 「この身体さえあれば、カナは生まれ変われる。人生を、やり直せる。<br>  ジュンの恋人になって、結婚して、それから――彼の赤ちゃんを……<br>  やぁん♪ 恥ずかしいかしらぁ~」<br> <br> やおら、頬を染めてクネクネ身悶えする人形。<br> この超常現象まっしぐらな状況では、もう何でもアリです。<br> 人形が喋ろうが、赤面しようが『よきカナよきカナ』の一言で片づいてしまいます。<br> <br> <br> ――ふざけないでっ!<br> しかし、当然のことながら、真紅は激しい憤りに駆られておりました。<br> 身体を乗っ取られるばかりか、少なからず想いを寄せる幼なじみまで奪われるなんて、<br> とんでもない屈辱です。到底、看過できるものではありません。<br> カナ縛りにさえ遭っていなかったら、こみあげる怒りに身体を戦慄かせて、<br> 自分勝手な戯言をほざく金糸雀を一喝し、張り倒していたことでしょう。<br> <br> 真紅の本心くらい、金糸雀もとっくに察していたハズです。<br> それでいながら、優位に立つ者の余裕か、金糸雀は悠然と真紅の顔を両手で挟み込みました。<br> <br> 「さぁて……そろそろ、いただきマンマ。明るい家族計画を、始めちゃおうかしら。<br>  口移しに、カラダを下さい――かしらぁ~」<br> <br> 古い角川アニメ映画のキャッチコピーみたいなことを言って、人形は真紅との距離を縮めてゆきます。<br> <br> <br> ――やめて! 来ないでちょうだい!<br> <br> 真紅はココロの中で必死に叫び続けますが、効果なし。<br> カナ縛りは、金糸雀の執念を反映したかの如くに、真紅の身体をガッツリ抑えつけています。<br> 瞬きすら出来ず、乾いてゆく視界は、だんだんと近付いてくる人形の顔を凝視するだけ。<br> 朱で塗装されたおちょぼ口からは、なにやら白い真綿状のモノが、ちろちろと……。<br> それは、いわゆるエクトプラズムと呼ばれる物質でした。<br> <br> あんな得体の知れないモノが、自分の唇を割って侵入してくる。<br> そう思うだけで、潔癖な性格の真紅は、おぞましさに総毛立ってしまいました。<br> <br> <br> ――イヤ! 気持ち悪い! いやぁっ!<br> <br> 無意味と解っていても、しっかりと口を閉じたつもりになって、侵入を拒む真紅。<br> けれど、人形の繰り出すエクトプラズムは、容赦なく桜色の瑞々しい唇に辿り着きました。<br> 生温かく、ふわふわした触感のソレは、ぺろんぺろんと真紅の口元を舐めたくります。<br> まるで品定めでもするかのように、何度も……何度でも……執拗に。<br> <br> <br> ――こんな奴に……悔しい……でもっ……。<br> <br> いつまでも抵抗は続かないでしょう。このままでは、もう――<br> 好き放題に蹂躙された挙げ句に、何もかもが奪い尽くされてしまう。<br> 握りつぶされてしまった、あのブローチのように、彼との思い出すらも消されてしまう。<br> 自分という存在が破壊される。それは真紅にとって、とても怖ろしいことでした。<br> <br> <br> ――早く来て……お願いよっ! もう……私……。<br> <br> <br> <br> <br> ――――ジュンっ!<br> <br> ふと……誰かに呼ばれたような気がして、ジュンは目を覚ましました。<br> 室内は真っ暗。枕元のディジタル電波時計は、午前零時を十五分ほど回っております。<br> こんな夜中に名を呼ばれるのも不自然で…………寝惚けたのでしょうか。<br> 釈然としないまま、再び枕に頭を沈めたものの、なんとなく胸騒ぎがして寝付けません。<br> その段になって、ジュンは厄介な同居人の存在を思い出しました。<br> <br> 「そう言えば、金糸雀はどこに居るんだ」<br> <br> 半身を起こして辺りを見回しますが、姿はモチロン、気配すら感じられません。<br> またシャワーでも浴びているのかとバスルームに行ってみましたが……もぬけの殻。<br> 大して広くない室内を、隈無く探したものの、遂に彼女を発見できませんでした。<br> <br> 「この部屋から、出られっこないハズだけど」<br> <br> 皓々と明かりを点した室内を、ジュンはもう一度、眺め回しました。<br> そこで漸く、あのビスクドールが無いことに気付いたのです。<br> <br> 「まさか……あいつ、人形に乗り移って外出したのか」<br> <br> ジュンの胸中で、急激に膨らんでいく嫌な予感。<br> 真紅に連絡を取ってみようとしたら、携帯電話まで無くなっているじゃあーりませんか。<br> 金糸雀の仕業としか考えられません。どうやら、ただの散歩などでは、なさそうです。<br> 着信履歴から、めぐの存在を突き止め、悪さを働きに行ったか……。<br> それとも、携帯の電話帳に登録してある住所を辿って、真紅のところへ……?<br> <br> ジュンは即座に、前者の可能性を否定しました。めぐの住所は登録されていませんから。<br> 対して、真紅の方は、金糸雀に敵愾心を抱かれています。<br> <br> 「あーもうっ! なんなんだよ……この嫌な気分は」<br> <br> 居ても立ってもいられず、ジュンは深夜も憚らず真紅の部屋に行くため、身支度を始めました。<br> 春は名のみの、風の寒さや。夜はまだ冷え込みますから、油断できません。<br> ベッドに放り出してあった、いびつなセーターを着込んで、ジャンパーを羽織りました。<br> <br> 「取り越し苦労であってくれよ」<br> <br> 独り言を吐いて、ジュンはアパートを飛び出し、真紅のマンションを目指したのです。<br> <br> <br> <br> <br> 深夜の商店街に人影はなく、悠々と走ることが出来ました。<br> このペースで行けるならば、あと10分くらいで真紅のマンションに着けるでしょう。<br> 問題があるとすれば、運動不足気味の身体が、どこまで保つか。<br> <br> (それと、妨害が入らな――)<br> <br> ジュンが、邪魔者の姿を脳裏に思い描こうとした、次の瞬間っ!<br> <br> 細い脇道から、もの凄い勢いで、ナニかが飛び出してきたじゃあーりませんか。<br> 全くの不意打ちでしたので、直撃を食らったジュンは、豪快にすっ転んでしまいました。<br> 罵声を喉元で抑えつつ、ぶつかってきたナニかを睨め付けると……<br> <br> 「……いったぁ~い……」<br> <br> いきなりビンゴ! あの、左目を眼帯で隠した娘が、尻餅をついていたのです。<br> しかも、彼女が履いていたスカートは、太股までめくれ上がっていたから、さあ大変。<br> <br> 網膜に焼き付く、眩しいシルクの白。柔軟剤も使ってるのかっ?!<br> ああ……水色のストライプが入っているような、いないような。<br> 忽ち、あらゆる意味で、ジュンの頭に血が昇りました。<br> 見てはいけない、でも見たい。葛藤に苦しむこと0.7秒。<br> 結局、赤面した顔を背けて、照れ隠しに罵倒を浴びせることしか出来ませんでした。<br> <br> 「いきなり飛び出してくんなよっ! 僕は急いでたのに――」<br> 「…………見たでしょ」<br> 「あん?」<br> 「ひどい辱めを受けた…………責任とって」<br> 「なんで、そうなるんだよっ!」<br> <br> 冗談じゃありません。勝手にぶつかってきたクセに、難癖つけるとは言語道断。<br> これでは当たり屋です。サッカーでアズーリがカテナチオです。(意味不明)<br> <br> 「う、うるさいなっ。急いでるって言ったろ! お前なんかに構ってられないんだ」<br> <br> ――なんて言いつつも、手を差し伸べてしまうのがヘタレクオリティ。<br> 彼女を立ち上がらせたジュンは、服の汚れを払うのもそこそこに、背を向けました。<br> <br> 「と、とにかくさ……今度から気を付けろよな」<br> 「無駄に優しいね。やっぱり…………スケコマシ」<br> 「違うっ! あーもう、付き合いきれるかっ!」<br> <br> 癇癪を起こして走り去ろうとするジュン。その背中に投げ付けられる、眼帯娘の嘲り。<br> <br> 「どうせ叶わぬ恋なのに、ね」<br> <br> 叶わぬ恋とは、ジュンと真紅のことでしょうか。<br> まさか、真紅の身に危機が迫っているとでも?<br> <br> <br> もう、ジュンは真紅のこと以外、考えられませんでした。ひたすらに全力疾走。<br> やっとの想いで、真紅のマンションに到着した時には、息も絶え絶えでした。<br> でも、立ち止まってなど、いられません。重い脚を引きずり、エレベーターに向かいます。<br> <br> その時でした。暗い夜道を、ふらふらと歩いてくる、二つの人影を見つけたのは。<br> 正体が判然としなかったのも束の間、彼我の距離が縮まるにつれて、相手の顔が見えてきます。<br> それはよく見知った人物……めぐと水銀燈ではあーりませんか!<br> <br> これから金糸雀と対峙しようという時に、なんという偶然。<br> あの眼帯娘とぶつかっていなかったら、間違いなく行き違いになっていたでしょう。<br> そう考えたら、先程のアクシデントも怪我の功名というもの。<br> ジュンだけでは金糸雀に太刀打ちできませんが、この二人が居れば、心強い限りです。<br> 早速、声を掛けようとした矢先、彼女たちもジュンに気付きました。<br> <br> 「あれぇ? 桜田くんじゃない。こんな夜遅くに、奇遇ね。どうしたの?」<br> 「鈍いわねぇ、めぐ。夜這いに決――」<br> 「違うから」<br> <br> 毎度のことながら、この二人、だいぶ酔っ払っているようです。<br> ……が、モノは考え様。これなら『ガス欠』ならぬ『酒気切れ』は起きないでしょう。<br> 彼女たちの戯れ言をバッサリ一刀両断にして、ジュンは緊迫した事態を伝えました。<br> <br> 「そんなワケで、一緒に様子を見に行って欲しいんだ」<br> 「なるほど、切羽詰まってるのね。水銀燈、貴女なら見つけられるんじゃない?<br>  地縛霊だったら、依り代を使っても魂が土地に引かれっぱなしのハズよ」<br> 「…………ええ。あるわね、不自然なカタチの魂が。<br>  普通、魂は真円なのに、ひとつだけ楕円が混じってるわ。あの歪んだ魂が、多分――」<br> <br> 言って、水銀燈は徐に、真紅の部屋の辺りを指差します。<br> 不吉な予感が、確信に変わった瞬間、エレベーターに駆け込む三人。<br> 目的の階に着いても、深夜ですのでドタバタ喧しくはできません。<br> もどかしさに胸を焦がしながら足音を忍ばせ、やっとこさで真紅の部屋に辿り着くなり、<br> ジュンはドアノブを握りました……が、当然の事ながら施錠されております。<br> <br> 「どうしよう。管理人さんに、スペアキーで開けてもらうしかないのか」<br> 「ここまで来といて引き返すなんて、バカじゃない?」<br> <br> ぐい! と、ジュンを押し退けた水銀燈が、ドアの前に立ちます。<br> そして、どこから取り出したのか、ひとひらの黒い羽根にキスをして、<br> 水銀燈は鍵穴に羽根を宛いました。<br> すると、ソレは見る間に鍵穴に吸い込まれて……<br> <br> 夜の静寂の中、ドアロックが外れる音が、やけに大きく聞こえました。<br> <br> 「さ、開けてあげたわよ。さっさと踏み込みなさい」<br> 「え? 僕が先頭かよ」<br> 「当然でしょぉ? 当事者なんだから」<br> <br> 仰る通り。ジュンが行かずして、誰が金糸雀を説得し、真紅を護ると言うのか。<br> ジュンはドアを開けるなり、靴を脱ぐのも面倒くさげに、呼びかけました。<br> <br> 「真紅っ! 居るんだろ?」<br> <br> 通路の奥、簾で仕切られたリビングからは、明かりが漏れています。<br> しかも、なにやらガタガタと慌てたような物音まで、聞こえてきました。<br> 真紅が居る。ジュンは、小走りに通路を進み、簾を掻き分けます。<br> <br> <br> ――そして、衝撃の光景を、目の当たりにしたのです。<br> <br> <br> ぐったりと仰向けに横たわる、ネグリジェ姿の真紅。<br> 彼女の胸の上には、あのビスクドールがのし掛かって顔を近付け――<br> あろう事か、今にもキスしようとしてるじゃあーりませんか。<br> <br> 「やめるんだ、金糸雀っ!」<br> <br> 短く怒鳴って、走り出すジュン。<br> そんな彼の脇を追い越していく、帯状の黒い固まり。<br> 驚いて足を止めたジュンが見たモノは、束となり空を斬る、無数の羽根でした。<br> 振り返れば、それは水銀燈の背中に広げられた黒い翼から、放たれています。<br> <br> 狙いはモチロン、金糸雀が宿っている人形の破壊です。<br> <br> 「誰よ貴女っ! 邪魔しないで欲しいかしらっ! 出番よ、ピチカート」<br> <br> 金糸雀は火の玉を憑依させたパラソルを広げて、黒羽根の猛射を防ぎます。<br> パラソルで覆われていない真紅の身体に、あわや羽根が突き刺さりそうになって、<br> それを目にした水銀燈は、攻撃を止めざるを得ませんでした。<br> <br> その隙を、金糸雀が見逃してくれるハズもなく……<br> 素早くパラソルを畳むや、槍のように構えて、素早い跳躍で水銀燈に迫ったのです。<br> 咄嗟に、翼を前面に掲げて防御する水銀燈。<br> <br> でも、それはフェイクでした。金糸雀の本当の狙いは、彼女の後ろ――<br> 水銀燈に力を与えている禍魂憑きの娘、めぐでした。<br> <br> 「あはははっ。将を射んと欲すれば、まず馬を射よ。兵法の基本かしら!」<br> 「きゃぁっ!」<br> 「め、めぐっ?!」<br> <br> 火の玉が憑依して青白く燃え立つパラソルは、正しく一撃必殺の魔槍。<br> 金糸雀は一切の迷いなく、めぐの心臓めがけて、突きを繰り出します。<br> めぐさえ屠ってしまえば、水銀燈など陸に上がったカッパ同然。敵じゃありません。<br> その後は、ゆっくり真紅の身体をゲットしてハッピーエンド一直線です。<br> <br> 酔いが回って、足元のおぼつかないめぐは、この突きを躱せやしない。<br> 金糸雀は高を括って、勝利を確信しました。<br> しかし――<br> <br> <br> 「ダメだっ!」<br> めぐと金糸雀の間に割って入る、一陣の風ならぬ影。<br> <br> 「ジュンっ?!」<br> <br> 金糸雀が、悲鳴にも似た驚きの声をあげました。自殺行為もいいところです。<br> 咄嗟にパラソルを逸らしたのですが、間に合いません。<br> 両腕を広げて立ちはだかるジュンの左肩を掠めて、一瞬、青白い炎が広がりました。<br> ほんのりと鼻を突く、化繊と肌が焼ける臭い。<br> ジュンは激痛に顔を歪めながら、足元に降り立った金糸雀を睨め付けます。<br> <br> 「いい加減にしろ! お前は、もう死んだ人間なんだぞ! いつまでも彷徨ってるなよっ!」<br> <br> ジュンを見上げる人形の眼が見開かれ、じわりと溢れてきた涙が、頬を流れ落ちます。<br> <br> 「そんな……酷い。カナは……ジュンの側に居たい。一緒に暮らしていたいかしら。<br>  普通の女の子として、ささやかな幸せが欲しいだけ……ただ、それだけなのに……<br>  死んだ人間は、人を好きになっちゃいけないの?<br>  幸せを夢見ることすら許されないの?」<br> <br> 胸を締め付ける、金糸雀の哀切。ジュンは少しの間、応えに窮してしまうのでした。<br> </p>
<p><br />   『ひょひょいの憑依っ!』Act.8<br /> <br /> <br /> カナ縛りに捕縛された真紅は、声ひとつ出せず、指の一本すら動かせず……<br /> 出来ることと言えば、にじり寄るビスクドールに、恐怖の眼差しを向けることだけ。<br /> <br /> 「来たわ来たわ来たわ。ついに、この時が来ちゃったかしらー!」<br /> <br /> 人形に取り憑いた金糸雀が、嬉々として、言葉を紡ぎだします。<br /> 地縛霊として、ずっとアパートの一室に閉じこめられていた彼女にしてみれば、<br /> 自分の意志で思いどおりに歩き回れることは、この上ない喜びでした。<br /> でも、所詮は人形の身。まだまだ、不便なことが多々あります。<br /> <br /> 「苦節5年――やっと手に入れた自由だもの。これを活用しない手はないかしら」<br /> <br /> わけても『死』という烙印は、とてつもなく重い枷でした。<br /> 自由になりたい。胸を焦がす渇望を潤したいのに……独りでは、何もできなかった日々。<br /> でも、自由への扉を開く鍵――真紅の身体――は、今、目の前に転がっているのです。<br /> <br /> 気持ちよく晴れた休日には、ジュンと並んで公園を散歩したり――<br /> ウィンドウショッピングとしゃれ込んだり、カフェでランチを楽しんだり――<br /> その気になりさえすれば、今まで出来なかった、切望していたコト全てが可能。<br /> ああ……『生きている』ことは、なんて素晴らしい!<br /> <br /> 「幸せを掴むのは、この金糸雀かしら。貴女なんかじゃ、決してない!」<br /> <br /> ぐっ! と両手で拳を握りながら、金糸雀は舐めるように、真紅を眺め回します。<br /> そして、徐に歩み寄ると……恐怖に歪んだままの真紅の頬に、そっと触れました。<br /> 赤ん坊を想わせる小さな手で、優しく撫で上げる仕種は、どこまでも愛しげ。<br /> けれど、人形の唇は仕種と正反対の、酷薄な嗤笑を湛えていたのです。<br /> <br /> 「すべすべの肌……瑞々しくて、柔らかくって。<br />  髪も艶やかでキレイだし、宝石のように澄んだ蒼い瞳もステキかしら~♪」<br /> <br /> ふ……と、人形の双眸が、夢見るように細められます。<br /> 金糸雀の声音も、満足そうな陶酔を、ありありと匂わせておりました。<br /> <br /> 「この身体さえあれば、カナは生まれ変われる。人生を、やり直せる。<br />  ジュンの恋人になって、結婚して、それから――彼の赤ちゃんを……<br />  やぁん♪ 恥ずかしいかしらぁ~」<br /> <br /> やおら、頬を染めてクネクネ身悶えする人形。<br /> この超常現象まっしぐらな状況では、もう何でもアリです。<br /> 人形が喋ろうが、赤面しようが『よきカナよきカナ』の一言で片づいてしまいます。<br /> <br /> <br /> ――ふざけないでっ!<br /> しかし、当然のことながら、真紅は激しい憤りに駆られておりました。<br /> 身体を乗っ取られるばかりか、少なからず想いを寄せる幼なじみまで奪われるなんて、<br /> とんでもない屈辱です。到底、看過できるものではありません。<br /> カナ縛りにさえ遭っていなかったら、こみあげる怒りに身体を戦慄かせて、<br /> 自分勝手な戯言をほざく金糸雀を一喝し、張り倒していたことでしょう。<br /> <br /> 真紅の本心くらい、金糸雀もとっくに察していたハズです。<br /> それでいながら、優位に立つ者の余裕か、金糸雀は悠然と真紅の顔を両手で挟み込みました。<br /> <br /> 「さぁて……そろそろ、いただきマンマ。明るい家族計画を、始めちゃおうかしら。<br />  口移しに、カラダを下さい――かしらぁ~」<br /> <br /> 古い角川アニメ映画のキャッチコピーみたいなことを言って、人形は真紅との距離を縮めてゆきます。<br /> <br /> <br /> ――やめて! 来ないでちょうだい!<br /> <br /> 真紅はココロの中で必死に叫び続けますが、効果なし。<br /> カナ縛りは、金糸雀の執念を反映したかの如くに、真紅の身体をガッツリ抑えつけています。<br /> 瞬きすら出来ず、乾いてゆく視界は、だんだんと近付いてくる人形の顔を凝視するだけ。<br /> 朱で塗装されたおちょぼ口からは、なにやら白い真綿状のモノが、ちろちろと……。<br /> それは、いわゆるエクトプラズムと呼ばれる物質でした。<br /> <br /> あんな得体の知れないモノが、自分の唇を割って侵入してくる。<br /> そう思うだけで、潔癖な性格の真紅は、おぞましさに総毛立ってしまいました。<br /> <br /> <br /> ――イヤ! 気持ち悪い! いやぁっ!<br /> <br /> 無意味と解っていても、しっかりと口を閉じたつもりになって、侵入を拒む真紅。<br /> けれど、人形の繰り出すエクトプラズムは、容赦なく桜色の瑞々しい唇に辿り着きました。<br /> 生温かく、ふわふわした触感のソレは、ぺろんぺろんと真紅の口元を舐めたくります。<br /> まるで品定めでもするかのように、何度も……何度でも……執拗に。<br /> <br /> <br /> ――こんな奴に……悔しい……でもっ……。<br /> <br /> いつまでも抵抗は続かないでしょう。このままでは、もう――<br /> 好き放題に蹂躙された挙げ句に、何もかもが奪い尽くされてしまう。<br /> 握りつぶされてしまった、あのブローチのように、彼との思い出すらも消されてしまう。<br /> 自分という存在が破壊される。それは真紅にとって、とても怖ろしいことでした。<br /> <br /> <br /> ――早く来て……お願いよっ! もう……私……。<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> ――――ジュンっ!<br /> <br /> ふと……誰かに呼ばれたような気がして、ジュンは目を覚ましました。<br /> 室内は真っ暗。枕元のディジタル電波時計は、午前零時を十五分ほど回っております。<br /> こんな夜中に名を呼ばれるのも不自然で…………寝惚けたのでしょうか。<br /> 釈然としないまま、再び枕に頭を沈めたものの、なんとなく胸騒ぎがして寝付けません。<br /> その段になって、ジュンは厄介な同居人の存在を思い出しました。<br /> <br /> 「そう言えば、金糸雀はどこに居るんだ」<br /> <br /> 半身を起こして辺りを見回しますが、姿はモチロン、気配すら感じられません。<br /> またシャワーでも浴びているのかとバスルームに行ってみましたが……もぬけの殻。<br /> 大して広くない室内を、隈無く探したものの、遂に彼女を発見できませんでした。<br /> <br /> 「この部屋から、出られっこないハズだけど」<br /> <br /> 皓々と明かりを点した室内を、ジュンはもう一度、眺め回しました。<br /> そこで漸く、あのビスクドールが無いことに気付いたのです。<br /> <br /> 「まさか……あいつ、人形に乗り移って外出したのか」<br /> <br /> ジュンの胸中で、急激に膨らんでいく嫌な予感。<br /> 真紅に連絡を取ってみようとしたら、携帯電話まで無くなっているじゃあーりませんか。<br /> 金糸雀の仕業としか考えられません。どうやら、ただの散歩などでは、なさそうです。<br /> 着信履歴から、めぐの存在を突き止め、悪さを働きに行ったか……。<br /> それとも、携帯の電話帳に登録してある住所を辿って、真紅のところへ……?<br /> <br /> ジュンは即座に、前者の可能性を否定しました。めぐの住所は登録されていませんから。<br /> 対して、真紅の方は、金糸雀に敵愾心を抱かれています。<br /> <br /> 「あーもうっ! なんなんだよ……この嫌な気分は」<br /> <br /> 居ても立ってもいられず、ジュンは深夜も憚らず真紅の部屋に行くため、身支度を始めました。<br /> 春は名のみの、風の寒さや。夜はまだ冷え込みますから、油断できません。<br /> ベッドに放り出してあった、いびつなセーターを着込んで、ジャンパーを羽織りました。<br /> <br /> 「取り越し苦労であってくれよ」<br /> <br /> 独り言を吐いて、ジュンはアパートを飛び出し、真紅のマンションを目指したのです。<br /> <br /> <br /> <br /> <br /> 深夜の商店街に人影はなく、悠々と走ることが出来ました。<br /> このペースで行けるならば、あと10分くらいで真紅のマンションに着けるでしょう。<br /> 問題があるとすれば、運動不足気味の身体が、どこまで保つか。<br /> <br /> (それと、妨害が入らな――)<br /> <br /> ジュンが、邪魔者の姿を脳裏に思い描こうとした、次の瞬間っ!<br /> <br /> 細い脇道から、もの凄い勢いで、ナニかが飛び出してきたじゃあーりませんか。<br /> 全くの不意打ちでしたので、直撃を食らったジュンは、豪快にすっ転んでしまいました。<br /> 罵声を喉元で抑えつつ、ぶつかってきたナニかを睨め付けると……<br /> <br /> 「……いったぁ~い……」<br /> <br /> いきなりビンゴ! あの、左目を眼帯で隠した娘が、尻餅をついていたのです。<br /> しかも、彼女が履いていたスカートは、太股までめくれ上がっていたから、さあ大変。<br /> <br /> 網膜に焼き付く、眩しいシルクの白。柔軟剤も使ってるのかっ?!<br /> ああ……水色のストライプが入っているような、いないような。<br /> 忽ち、あらゆる意味で、ジュンの頭に血が昇りました。<br /> 見てはいけない、でも見たい。葛藤に苦しむこと0.7秒。<br /> 結局、赤面した顔を背けて、照れ隠しに罵倒を浴びせることしか出来ませんでした。<br /> <br /> 「いきなり飛び出してくんなよっ! 僕は急いでたのに――」<br /> 「…………見たでしょ」<br /> 「あん?」<br /> 「ひどい辱めを受けた…………責任とって」<br /> 「なんで、そうなるんだよっ!」<br /> <br /> 冗談じゃありません。勝手にぶつかってきたクセに、難癖つけるとは言語道断。<br /> これでは当たり屋です。サッカーでアズーリがカテナチオです。(意味不明)<br /> <br /> 「う、うるさいなっ。急いでるって言ったろ! お前なんかに構ってられないんだ」<br /> <br /> ――なんて言いつつも、手を差し伸べてしまうのがヘタレクオリティ。<br /> 彼女を立ち上がらせたジュンは、服の汚れを払うのもそこそこに、背を向けました。<br /> <br /> 「と、とにかくさ……今度から気を付けろよな」<br /> 「無駄に優しいね。やっぱり…………スケコマシ」<br /> 「違うっ! あーもう、付き合いきれるかっ!」<br /> <br /> 癇癪を起こして走り去ろうとするジュン。その背中に投げ付けられる、眼帯娘の嘲り。<br /> <br /> 「どうせ叶わぬ恋なのに、ね」<br /> <br /> 叶わぬ恋とは、ジュンと真紅のことでしょうか。<br /> まさか、真紅の身に危機が迫っているとでも?<br /> <br /> <br /> もう、ジュンは真紅のこと以外、考えられませんでした。ひたすらに全力疾走。<br /> やっとの想いで、真紅のマンションに到着した時には、息も絶え絶えでした。<br /> でも、立ち止まってなど、いられません。重い脚を引きずり、エレベーターに向かいます。<br /> <br /> その時でした。暗い夜道を、ふらふらと歩いてくる、二つの人影を見つけたのは。<br /> 正体が判然としなかったのも束の間、彼我の距離が縮まるにつれて、相手の顔が見えてきます。<br /> それはよく見知った人物……めぐと水銀燈ではあーりませんか!<br /> <br /> これから金糸雀と対峙しようという時に、なんという偶然。<br /> あの眼帯娘とぶつかっていなかったら、間違いなく行き違いになっていたでしょう。<br /> そう考えたら、先程のアクシデントも怪我の功名というもの。<br /> ジュンだけでは金糸雀に太刀打ちできませんが、この二人が居れば、心強い限りです。<br /> 早速、声を掛けようとした矢先、彼女たちもジュンに気付きました。<br /> <br /> 「あれぇ? 桜田くんじゃない。こんな夜遅くに、奇遇ね。どうしたの?」<br /> 「鈍いわねぇ、めぐ。夜這いに決――」<br /> 「違うから」<br /> <br /> 毎度のことながら、この二人、だいぶ酔っ払っているようです。<br /> ……が、モノは考え様。これなら『ガス欠』ならぬ『酒気切れ』は起きないでしょう。<br /> 彼女たちの戯れ言をバッサリ一刀両断にして、ジュンは緊迫した事態を伝えました。<br /> <br /> 「そんなワケで、一緒に様子を見に行って欲しいんだ」<br /> 「なるほど、切羽詰まってるのね。水銀燈、貴女なら見つけられるんじゃない?<br />  地縛霊だったら、依り代を使っても魂が土地に引かれっぱなしのハズよ」<br /> 「…………ええ。あるわね、不自然なカタチの魂が。<br />  普通、魂は真円なのに、ひとつだけ楕円が混じってるわ。あの歪んだ魂が、多分――」<br /> <br /> 言って、水銀燈は徐に、真紅の部屋の辺りを指差します。<br /> 不吉な予感が、確信に変わった瞬間、エレベーターに駆け込む三人。<br /> 目的の階に着いても、深夜ですのでドタバタ喧しくはできません。<br /> もどかしさに胸を焦がしながら足音を忍ばせ、やっとこさで真紅の部屋に辿り着くなり、<br /> ジュンはドアノブを握りました……が、当然の事ながら施錠されております。<br /> <br /> 「どうしよう。管理人さんに、スペアキーで開けてもらうしかないのか」<br /> 「ここまで来といて引き返すなんて、バカじゃない?」<br /> <br /> ぐい! と、ジュンを押し退けた水銀燈が、ドアの前に立ちます。<br /> そして、どこから取り出したのか、ひとひらの黒い羽根にキスをして、<br /> 水銀燈は鍵穴に羽根を宛いました。<br /> すると、ソレは見る間に鍵穴に吸い込まれて……<br /> <br /> 夜の静寂の中、ドアロックが外れる音が、やけに大きく聞こえました。<br /> <br /> 「さ、開けてあげたわよ。さっさと踏み込みなさい」<br /> 「え? 僕が先頭かよ」<br /> 「当然でしょぉ? 当事者なんだから」<br /> <br /> 仰る通り。ジュンが行かずして、誰が金糸雀を説得し、真紅を護ると言うのか。<br /> ジュンはドアを開けるなり、靴を脱ぐのも面倒くさげに、呼びかけました。<br /> <br /> 「真紅っ! 居るんだろ?」<br /> <br /> 通路の奥、簾で仕切られたリビングからは、明かりが漏れています。<br /> しかも、なにやらガタガタと慌てたような物音まで、聞こえてきました。<br /> 真紅が居る。ジュンは、小走りに通路を進み、簾を掻き分けます。<br /> <br /> <br /> ――そして、衝撃の光景を、目の当たりにしたのです。<br /> <br /> <br /> ぐったりと仰向けに横たわる、ネグリジェ姿の真紅。<br /> 彼女の胸の上には、あのビスクドールがのし掛かって顔を近付け――<br /> あろう事か、今にもキスしようとしてるじゃあーりませんか。<br /> <br /> 「やめるんだ、金糸雀っ!」<br /> <br /> 短く怒鳴って、走り出すジュン。<br /> そんな彼の脇を追い越していく、帯状の黒い固まり。<br /> 驚いて足を止めたジュンが見たモノは、束となり空を斬る、無数の羽根でした。<br /> 振り返れば、それは水銀燈の背中に広げられた黒い翼から、放たれています。<br /> <br /> 狙いはモチロン、金糸雀が宿っている人形の破壊です。<br /> <br /> 「誰よ貴女っ! 邪魔しないで欲しいかしらっ! 出番よ、ピチカート」<br /> <br /> 金糸雀は火の玉を憑依させたパラソルを広げて、黒羽根の猛射を防ぎます。<br /> パラソルで覆われていない真紅の身体に、あわや羽根が突き刺さりそうになって、<br /> それを目にした水銀燈は、攻撃を止めざるを得ませんでした。<br /> <br /> その隙を、金糸雀が見逃してくれるハズもなく……<br /> 素早くパラソルを畳むや、槍のように構えて、素早い跳躍で水銀燈に迫ったのです。<br /> 咄嗟に、翼を前面に掲げて防御する水銀燈。<br /> <br /> でも、それはフェイクでした。金糸雀の本当の狙いは、彼女の後ろ――<br /> 水銀燈に力を与えている禍魂憑きの娘、めぐでした。<br /> <br /> 「あはははっ。将を射んと欲すれば、まず馬を射よ。兵法の基本かしら!」<br /> 「きゃぁっ!」<br /> 「め、めぐっ?!」<br /> <br /> 火の玉が憑依して青白く燃え立つパラソルは、正しく一撃必殺の魔槍。<br /> 金糸雀は一切の迷いなく、めぐの心臓めがけて、突きを繰り出します。<br /> めぐさえ屠ってしまえば、水銀燈など陸に上がったカッパ同然。敵じゃありません。<br /> その後は、ゆっくり真紅の身体をゲットしてハッピーエンド一直線です。<br /> <br /> 酔いが回って、足元のおぼつかないめぐは、この突きを躱せやしない。<br /> 金糸雀は高を括って、勝利を確信しました。<br /> しかし――<br /> <br /> <br /> 「ダメだっ!」<br /> めぐと金糸雀の間に割って入る、一陣の風ならぬ影。<br /> <br /> 「ジュンっ?!」<br /> <br /> 金糸雀が、悲鳴にも似た驚きの声をあげました。自殺行為もいいところです。<br /> 咄嗟にパラソルを逸らしたのですが、間に合いません。<br /> 両腕を広げて立ちはだかるジュンの左肩を掠めて、一瞬、青白い炎が広がりました。<br /> ほんのりと鼻を突く、化繊と肌が焼ける臭い。<br /> ジュンは激痛に顔を歪めながら、足元に降り立った金糸雀を睨め付けます。<br /> <br /> 「いい加減にしろ! お前は、もう死んだ人間なんだぞ! いつまでも彷徨ってるなよっ!」<br /> <br /> ジュンを見上げる人形の眼が見開かれ、じわりと溢れてきた涙が、頬を流れ落ちます。<br /> <br /> 「そんな……酷い。カナは……ジュンの側に居たい。一緒に暮らしていたいかしら。<br />  普通の女の子として、ささやかな幸せが欲しいだけ……ただ、それだけなのに……<br />  死んだ人間は、人を好きになっちゃいけないの?<br />  幸せを夢見ることすら許されないの?」<br /> <br /> 胸を締め付ける、金糸雀の哀切。ジュンは少しの間、応えに窮してしまうのでした。</p>

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