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「第二章『正義』」(2006/03/09 (木) 17:46:06) の最新版変更点
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あいつは僕らの生活にはあまり干渉しない。酒と少しのつまみだけもって部屋にこもってる。<br>
それが堪らなくムカツク。何様だ?当たり前のように食料を要求、終いには預金にまで手をつけやがった。<br>
どうしてだよ、なんで何も言わないんだ、ねぇちゃん。<br>
どうすれば、どうすればあいつはいなくなる?<br>
「ジュン!ジュン!」<br>
「どうかした?」<br>
「どうかした?じゃないわよ!あなた変よ?ずっと怖い顔してたわ」<br>
感情を顔に出さないというのは難しいな<br>
「大丈夫なの?」<br>
「あぁ、大丈夫」<br>
「それよりどこに行くのだわ?」<br>
今日は約束のデートだ。私服の真紅は新鮮で、朝合ったときは柄にもなくドキッとしてしまった。<br>
「そうだな、映画でも見に行こうか?」<br>
「それなら、くんくん探偵の新作が発表されたのだわ!それを見に行きましょう」<br>
くんくん探偵、彼はまさしく天才、事件解決の裏にくんくんありと世間は騒いでいる。<br>
鋭い洞察力に観察眼、そして優れた推理力。気になることは全て自分で確認するという行動力。<br>
正直彼を相手に完全犯罪をする事は不可能だろう。<br>
有名になると同時に本やドラマなどが作られる。今では映画まで作られるほどだ<br>
「くんくんは天才よ」<br>
これは真紅の口癖だ。彼女は中学の時からくんくんに惚れ込んでいる。<br>
「くんくんか、好きだなお前も」<br>
「うるさい下僕ね、いいからついて来るのだわ!」</p>
<p>「ちょっとまった!」<br>
「どうしたんだ、くんくん探偵」<br>
「どら猫警部、何か違和感を感じませんか?」<br>
「どういうことだね」<br>
「ガイシャの首を見たまえ!」<br>
・<br>
・<br>
・<br>
話はクライマックスになるにつれテンポを上げていく。<br>
「違う!俺じゃない!!!」<br>
「それではこれをどう説明する!」<br>
「うっ…」<br>
追い詰められる犯人、次々と矛盾を突いていく探偵。<br>
正直面白い、どんどんのめり込んで行く…</p>
<p>「やはりくんくんは天才なのだわ」<br>
「意外と本格的だよな」<br>
「あら、それは当たり前よ!実話を元に作られているんだもの」<br>
「そうなの?フィクションじゃないんだ」<br>
「当たり前よ、くんくんの解決した事件を忠実に再現してるのだわ」<br>
現実に起きた事件か…。もし犯罪を、やつを抹消したとしたなら僕も映画の犯人のように追い詰められ、そして…<br>
だめだ、やるからには完全犯罪を。発覚はすべての崩壊を意味する…<br>
「ジュン!ジュン!」<br>
「えっ?」<br>
「まったくしっかりして欲しいのだわ。私とデートじゃ不満でも?」<br>
「そ、そんなことないよ!楽しいって」<br>
「嘘だわ、さっきから浮かない顔ばかり…」<br>
「真紅…」<br>
だめだ、今はデートに集中するんだ!<br>
「ごめん。ご飯でも食べに行こうぜ?おなか減ったろ」<br>
「…」<br>
「ほら、ほら。奢るからさ」</p>
<p><br>
「~♪」<br>
「…ドンだけ食うんだよ」<br>
テーブルに並べられた料理のあまりの量にメマイがした<br>
「あら、御代はジュンもちだから私はかまわないわ」<br>
「お、おまっ、僕は高校生だぞ!そんな余裕ないっての」<br>
「ふふっ、主人を悲しませた罰なのだわ」<br>
「悲しかったのか?」<br>
「だ、誰が!」<br>
「素直じゃないなぁ」<br>
人から見たら仲の良いカップルだろうか?互いに軽口を言い合いながらも楽しく同じ料理を食べる。<br>
真紅とずっとこうしていたい</p>
<p>「今日は楽しかったのだわ。」<br>
「僕も楽しかったよ」<br>
真紅は僕にそっと口付けをする。<br>
「!…」<br>
「…鈍感な下僕にはこれぐらいが丁度いい告白でなくて?」<br>
真紅の顔が真っ赤だ。僕の頭は対照的に真っ白だ。<br>
「えと、その、あの…」<br>
真紅は恥らいながらも僕の眼を見つめている、応えなくては…<br>
「スッ、スキdヨ!!」<br>
しまったぁ、ここで噛むなんて…<br>
「ぷっ。何緊張してるのよ」<br>
「だって、いきなり」<br>
「嫌だった?」<br>
「とんでもない!好きだよ、真紅のこと」<br>
もう一度キスを交わす、今度は長く</p>
<p>「ただいま~♪…?」<br>
幸せが吹っ飛ぶ。部屋が暗い、すすり声が聞こえる。次いで聞こえる怒声。<br>
「金って要ってるんだ!!!早く出せ!」<br>
「この間、渡したばかりですが…」<br>
ドガッ!<br>
「キャッ!!」<br>
「使っちまったんだよ!」<br>
ねぇちゃんがマズイ!悲鳴の聞こえたほうへ急ぐ。奴だ、姉に手を出しやがった!<br>
「ねぇちゃん!」<br>
「ジュン君!きちゃだめ!」<br>
奴と目が合う。どす黒い、欲で濁った眼。<br>
ふと記憶がよみがえる。<br>
---------<br>
ピンポーン<br>
「ジュン君出てくれるぅ?」<br>
「わかったよ」<br>
ガチャッ……!?<br>
「久しぶりだな、坊主。ねぇちゃんいるか?」<br>
「ウッ……ハイ、イマス…」<br>
奥へと上がって行く叔父。依然とは違う。荒んでいて酒臭い<br>
どうしてここに?連れ戻しに来たの?怖い、眼が…怖い<br>
その夜<br>
奴がうちに居候することになった。交通事故で家族を失ったとか…その日から悪夢が始まった。<br>
何もすることなく部屋を占拠する。二階には常に酒のにおいが充満している。<br>
少しは同情した、同じ境遇だったから…<br>
---------<br>
だが、その同情は今そぐに憎悪に掻き消された。<br>
「ねぇちゃんに何をしてる!」<br>
「ちっ!金だよ金!遺産相続したんだろ?」<br>
「最初から金目当で来たのか?」<br>
「それ以外に何がある!お前らが俺の家から出なければ、その金は俺のになってたんだよ!!」<br>
狂ってる。すぐに殴り飛ばしたい。金欲しさに僕の幸せを壊しやがって…<br>
「やるのか?コブシを握り締めて、」<br>
嘲笑するかのように僕をからかう。<br>
だめだ…僕には出来ない。あの目で見られると足が竦む。<br>
「餓鬼が調子に乗りやがって。おい、金だ!」<br>
叔父は姉の財布の中の札を全て取り出し家を出て行く。<br>
悔しい、こんなに悔しいことはない。何も出来てないじゃないか…姉さえも守れない。<br>
後ろから呼び止める声がしたが無視して部屋に上がる。</p>
<p>『やる…』</p>
<p>姉を守るため、幸せを取り戻すため…<br>
あいつは悪だ、対抗する僕は正義だ。誰にも文句は言わせない。奴になくて僕にある力がひとつある。</p>
<p>力なき正義は無力…<br>
正義に裏打ちされた力が最も実効性のある解決策…<a title=
"seigi" name="seigi"></a></p>