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『粉雪のドレス~聖夜の奇跡~』<br>
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彼は私を置いて行ってしまった---。<br>
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彼は3年前に自分の夢を追い求め海外に旅立ってしまった---。<br>
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彼は聖夜の夜に街から出て行った---私を残して。<br>
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「必ず戻ってくる・・・だから待っていてくれ」<br>
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彼は荷物を手に私の体を優しく抱き締めてくれた。<br>
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「うん・・・翠星石はずーっと待ってるですよ・・・JUM」<br>
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私は彼のぬくもりを確かめる為に彼の体を強く抱き締める、それが最後の抱擁であるかのように。<br>
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そうして・・・彼は旅立ってしまった---。<br>
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あれから3年、彼は世界的デザイナーとしてパリコレ常連の超有名ブランド会社専属デザイナーとして世界中にその名を知られた存在となった。<br>
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私はそれ以来、毎年同じ日・同じ時間に彼を待ち続けた---でも彼は戻ってこなかった。<br>
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彼は世界的デザイナーとして多忙な日を過ごしているのだろう、例え聖夜と言えども休まる日は無いだろう。<br>
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<p>---今年を最後にしよう。<br>
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そう毎年思い続けるも今年もついつい足がそこへと向かってしまう。<br>
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---来ない待ち人を待つ為に。<br>
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「あ、雪ですぅ・・・」<br>
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私は空から降る粉雪を手に乗せて呟く、それはあまりに脆い物・・・まるで私の心のよう。<br>
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3年前に彼を乗せた列車が駅から出て行く・・・今年も彼は戻ってこなかった。<br>
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---もう・・・終わりにしよう。<br>
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そう思い駅に背を向けた時、余りにも懐かしく暖かい声が聞こえた。<br>
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「ただいま・・・翠星石・・・」<br>
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涙が目に堪ってくる、商店街のイルミネーションがグシャグシャに混ざり合う。<br>
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「JUM!!JUM!!」<br>
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私は人前にも関わらず泣きながら彼に抱き付く、そして彼の胸の中で3年分の涙を流し続ける。<br>
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<p>「翠星石・・・これを受け取って欲しい」<br>
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そう言って彼が私に差し出したのは銀の指輪と---粉雪のように真っ新で白いドレス。<br>
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粉雪ねぇ、心まで白く染められたなら---二人の永遠を分け合う事が出来たのかい?<br>
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今宵は聖夜、多くの人達に主が与えたもう奇跡が舞い降りる---次に奇跡が舞い降りるのは貴方の番かも。<br>
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~fin~</p>