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「幕間~不器用な二人~」」(2006/12/24 (日) 18:46:00) の最新版変更点

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<p>「幕間~不器用な二人~」<br> <br> 紅王国初代国王・真紅、紅王国第一近衛騎士団長・桜田JUM----。<br> <br> 表面上は主従の間柄であるこの二人、しかし主従関係を取っ払ってしまえば後に残るのは「男と女」。<br> <br> 何とも解りやすい構図である、つまり真紅はJUMに対して特別な感情を抱いていた、されど真紅はその感情が何なのか理解出来なかった。<br> <br> 王として騎士に恋愛感情を抱くなど禁忌を犯すが如し危ない綱渡り。<br> <br> またJUMも真紅に対して淡い恋心を抱いていた、しかし己が心中を明らかにするのは今の地位・名誉全てを捨てなければいけない程の危険な賭に他ならない。<br> <br> そんなある日紅王国建国記念日としてロイエンタールでは盛大な祭りが開かれていた、今日だけは兵も故郷に帰ることを許されるなど真紅の名君ぶりが遺憾なく発揮されていた。<br> <br> そして真紅はその祭りにお忍びで参加することとなり、JUMはその護衛として真紅に付き従うはめになったのだ。<br> <br> J「はぁ~・・・何とも盛大な祭りでございますな」<br> 真「そうね、余は幾度か城の中からではあるが見たことはある」<br> J「はっ・・・左様でございますか」<br> 真「JUM、あれは何かしら?」<br> J「はい、陛下・・・あれは大道芸と言う物で己の技で生業を立てる流浪の民にございます」<br> 真「なかなか面白いわね、あ!!JUM!!あれは何かしら?」</p> <br> <p> 次から次に質問攻めを繰り返す真紅、その姿は平民の服で覆っているも彼女から仄かに漂うお嬢様オーラまでは隠しきれなかった。<br> <br> 道行く人々が真紅を見るたびに感嘆の溜息を付く、それもやむなき事であった。<br> <br> まるで焼き上がったばかりの陶器のように白く透き通った肌に淡い桃色の唇、そして晴れ渡る蒼空の如し青き瞳。<br> <br> 文字通り絶世の美女を絵に描いたような容姿に人々は求愛の眼差しや天上人を見るかのような眼差しを真紅へと向けていた。<br> <br> 一通り露天や出し物を見て回り(JUMのまだ少ない給金も6割近く搾り取られた)、二人は広場のベンチに腰掛けた。<br> <br> JUMは真紅の後ろに控えて立っていた、その時真紅の口から溜息が漏れるの微かに耳にした。<br> <br> J「陛下?お疲れでございましたら城へお戻りになられては?」<br> 真「いいえ、JUM・・・喉が渇いただけなのだわ」<br> J「左様でございますか・・・」<br> 真「JUM、淑女が喉が渇いたと申せば騎士たるもの飲み物を買ってくるのが普通ではなくて?」<br> J「はっ・・・しかし陛下、僕の財布はもう・・・」<br> 真「情けないわね、どうせ夜な夜な街に出て売女でも買ってるのでしょうね」<br> J「陛下、お言葉ですが・・・僕は陛下にお仕えしてから滅多に城から出る事はありませぬ!!その発言は流石に撤回して頂き存知奉ります!!」<br> 真「王が言う事は真実なのだわ!!身の程を知りなさい、JUM!!」<br> J「っ・・・左様にございますか」<br> 真「興を殺がれたのだわ・・・もういいわ、JUM・・・城に戻って待機しておりなさい」<br> J「・・・陛下がそう仰るのであれば・・・ではこれにて失礼仕ります」<br> </p> <br> <p> 如何に温厚なJUMと言えども真紅の心ない一言に頭に血が上った、大事な人にそのような目で見られるのはとてもじゃないが耐えきれる物では無かった。<br> <br> 真「全く・・・JUMときたらまだまだ未熟なのだわ!!」<br> <br> 真紅がバン!!と机を叩いて怒りを露わにしたその怒りはJUMに向けられた物ではなく---素直では無い自分自身へと向けられし物であった。<br> <br> と、その時向こうから何人もの付き人を従えた見るからに『俺は貴族なんだぞ!!』と言う気にくわないオーラを撒き散らした一団がやってきた。<br> <br> 付き人A「おい、そこの女!!ベジータ子爵様がお前を所望しておられる!!付いて参れ!!」<br> 真「ベジータ子爵?・・・あぁ、あの落ち目の貴族の事かしら?」<br> 付き人B「なっ!?女!!子爵様の御前にてその様な無礼な発言、許さぬぞ!!」<br> 真「無礼なのは貴様等だ!!余を誰と心得る!!当王国の女王にしてローゼン家の第五姫・真紅なるぞ!!」<br> 付き人A「真紅様だぁ?HAHAHAHA!!笑わせるぜ!!お前如き見窄らしき女が女王であれば俺は皇帝陛下様だ!!」<br> ベ「これこれ、そんなにうら若き乙女を虐めるでないぞ・・・女、そんな強気なのも嫌いじゃないぞ?」<br> 真「はい?」<br> ベ「ふふふ、恐れる事は無いぞ?優しくするぞよ♪フヒヒヒヒwww」<br> 真「は、離しなさい!!このM字禿!!」<br> <br> しかし真紅は見るからに質の悪そうな付き人達に腕を捕まれて無理矢理馬車に乗せられて拉致されてしまったのだ。<br> <br> その頃JUMは冗談にムキになった事を恥じながら露店街の中をブツブツ言いながら歩いていた。<br> </p> <br> <p>露天商「おっ!!兄ちゃん兄ちゃん!!」<br> J「はい?何ですか?」<br> 露天商「さっき綺麗な彼女と歩いていただろう?これまけておくからプレゼントしてやれよ!!」<br> <br> そう言って露天商が差し出したのは琥珀で出来た髪飾りであった、きっと真紅の流れるような金髪に似合うであろうと露天商が選んでくれたのである。<br> <br> で、結局まけるだのなんだの言ってぼったくりに近い額で---買ってしまった。<br> <br> 平民A「ちょっとちょっと!!」<br> J「はい?(今度はなんだよ・・・)」<br> 平民B「あんたの彼女、ベジータ子爵に連れて行かれてしまったよ!!」<br> J「何ですって!?」<br> 平民C「ベジータ子爵と言えばモテナイくせに女たらしで有名だからねぇ・・・」<br> J「そのベジータ子爵の館はどこに!?」<br> 平民A「ワルザスの丘に・・・」<br> <br> それを聞くや否やJUMは馬借(馬を貸す商人)より駿馬を借り受けワルザスの丘にあるベジータの館目掛けて駆けていった。<br> <br> その速さはまさに光る風を追い越しそうな程であった、別に光る風を追い越したら待っている何かを見たい訳でもない。<br> <br> ただ守りたい人がいる、否---守らなければならない人がいる。<br> </p> <br> <p> ワルザスの丘は首都・ロイエンタール郊外北方5kmに位置する小高い丘でその上にポツンと建っているのがベジータ子爵の屋敷である。<br> <br> ちなみに子爵とは王より与えられる爵位(五爵)の第四位に位置する爵位で、貴族としては決して高い物では無い。<br> <br> J「これがワルザスの丘か・・・見るからに悪趣味だな」<br> 兵A「何者だ!!ここはベジータ子爵様の屋敷ぞ!!用の無き者は立ち去るがよい!!」<br> J「女王陛下であらせられる真紅様の代理としてベジータ子爵様に火急の用がある!!開門!!」<br> 兵B「は、ははっ!!斯様な事情とは存ぜぬとは言え、ご無礼をお許しください!!」<br> J「うむ、ご苦労!!職務に励むのは兵の義務である!!今後とも励め!!」<br> 兵A&B「ははっ!!」<br> <br> JUMは門番達に一喝し門を開けさせた、こうでもしなければ屋敷に入れそうも無かったからである。<br> <br> 兵A「なぁ・・・あの人もしかして軍のお偉いさんじゃないか?」<br> 兵B「あぁ、きっとそうだ・・・ベジータの野郎に何かしらお咎めがあったに違いないだろう」<br> 兵A「だろうなぁ・・・あいつ少しやりすぎてるからなぁ・・・」<br> 兵B「だな、さっきもすげぇ美人を無理矢理連れ込んだからなぁ・・・きっと爵位取り上げだろうな」<br> 兵A「まぁ、俺達には関係無いがね」<br> 兵B「それもそうだな・・・」<br> <br> 咄嗟の機転で真紅の名前を出してあっさりとベジータの屋敷に侵入出来た、後は中に入って真紅を救い出すだけとなった。<br> <br> JUMは覚悟を決めるかのように息を吐くと勢いよく戸を開けた、開けて直ぐそこは凄惨な光景が広がっていた。<br> </p> <br> <p> 壁に頭から突っ込んだ者もいれば・間接が曲がってはいけない方向に曲がっている者・泡を吹いて気絶してる者、一体自分がいない間に何が起こったのか想像したくない状況であった。<br> <br> 真「あら?JUM、遅かったのね」<br> J「へ、陛下・・・これは一体・・・」<br> 真「ちょっと待ってて頂戴・・・直ぐ済むわ」<br> <br> グラウンドゼロの中で平然とした顔で紅い悪m・・・ゲフンゲフン金髪のあどけない少女が笑顔で立っていた。<br> <br> そしてもう一人、真紅の足下でビビりまくって失禁してる哀れな子羊の襟に真紅が手を伸ばして片手で吊り上げた。<br> <br> ベ「く、苦しい・・・」<br> 真「ゲス野郎、耳の穴かっぽじってよく聞きなさい・・・お前がやった事は国家反逆罪に値する、本来ならこの場で去勢した上に市中引き回しにしてから死罪にしてもまだ足りないわ」<br> べ「きょ、去勢!?」<br> 真「だが、今の余は機嫌が良い・・・特別に恩赦を与えてやる、明日の早朝までに余の王国から失せろ・・・いいな?」<br> べ「は、はいいいい!!」<br> <br> 真紅は片手でベジータを吊し上げ脅し文句を浴びせると満足したように地面に叩き付けた。<br> <br> 真「JUM、帰るわよ」<br> J「は、ははっ!!」<br> 真「あら?JUM、その髪飾りは?」<br> J「え?あ、いや・・・その」<br> 真「いい人への贈り物と言う所かしら?」<br> J「いえ、既にこの身は国家に捧げてるので・・・」<br> 真「そう?じゃあソレは余が貰うわ・・・JUM、付けて頂戴」<br> J「はい、では失礼致します・・・」<br> <br> JUMは真紅の後ろに回りその流れるような金髪に直に手を触れその人の為に買った髪飾りを付けてあげる。<br> </p> <br> <p> JUMは真紅の綺麗な髪から漂う薔薇の香りによって沸き立つ衝動を何とか抑えつけた---抑えなければ自分も半殺しにされると思わざるを得なかった。<br> <br> 二人は屋敷を出ると真紅はJUMの乗ってきた馬に乗り、JUMはその馬の手綱を引張って街へと歩み始めた。<br> <br> 真「JUM、速くしないと午後の紅茶の時間に間に合わないのだわ」<br> J「ですが陛下、街まで後5kmもあるのですぞ?夕暮れまでに到着すればいいのですが・・・」<br> 真「そう、じゃあこうすればいいのだわ・・・JUM、馬に乗りなさい」<br> J「はい?ですが陛下は・・・」<br> 真「・・・余はそなたに掴まってるわ」<br> J「はぁ・・・左様でございますか、では失礼致します」<br> <br> 真紅はJUMの腰に手を回し振り落とされないようにしっかりと掴まった、JUMはまだ沸き立つ衝動を何とかこらえて馬を街へと駆けさせた。<br> <br> 真「・・・ありがとう、JUM・・・」<br> J「ん?何か仰られましたか?」<br> <br> 好都合な事に風を切る音で真紅の心からのされど消え入るような言葉は掻き消された、真紅は振り返るJUMから目線をそらした。<br> <br> 真「な、何でも無いわ!!速くしないとお茶の時間に遅れるのだわ!!もっと速度をあげなさい!!」<br> J「はっ!!ではしっかりと掴まっていてください!!」<br> 真「ちょっとJUM!!キャッ!!・・・舌を噛んだのだわ」<br> </p> <br> <p> そして再び時は動き出す、真紅が港にて雛苺と共にJUMと巴が戻るのを待っていた頃に進む。<br> <br> 雛「うよ?」<br> 真「どうしたのかしら雛苺?」<br> 雛「真紅って髪飾り付けてたの?」<br> 真「えぇ・・・去年からね」<br> 雛「へぇ~、とっても似合ってるの~!!」<br> 真「そう?」<br> 雛「うん!!それヒナにも頂戴!!」<br> 真「だ、ダメなのだわ!!コレは大切な物なのだわ!!」<br> 雛「大切な物?お父様から貰った物なの~?」<br> 真「いいえ、雛苺・・・これは大切な人に貰った物だから貴女にはあげられないのだわ」<br> 雛「うゆ~・・・」<br> 真「雛苺もその時がくれば解るのだわ・・・」<br> 雛「うぃ~、何か難しいの~・・・」<br> <br> 真紅はクスリと微笑むと自慢の長い金髪を掻き上げる、その髪に光る髪飾り---それはあの時白馬の騎士が私にくれた素敵な贈り物であり思い出が詰まっていた髪飾りであった。<br> <br> JUMが直ぐそこまで来ているそんな気がする、さて彼をどんな顔をして迎え、どんな言葉をかけてあげればいいかしら。<br> <br> 真紅はそう思いながら一歩踏み出す---私の愛しい貴方を迎える為に・・・。<br> </p> <br> <p><<次回予告>><br> <br> 水銀燈より渡された文書の内容---それはこの大戦の大きな分岐点となる。<br> <br> だがそれはこの大戦において大いなる陰謀のほんの序章に過ぎない。<br> <br> 次回、薔薇乙女大戦・・・「第六章前編~薔薇乙女会議~」・・・この会議がサーガの方向性を左右する・・・。<br> </p>

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