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「新説JUN王伝説~序章~」第5話<br>
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黒王号がジュンの家に仕えて数日の時が経った…<br>
ジ「はぁ…やっぱ慣れるもんじゃないな…」<br>
黒『ははは、私のことは自転車か何かと思われて結構ですよ?』<br>
ジ「いや、こんなゴツい自転車はないだろ…」<br>
パカラ…パカラ…<br>
黒王に乗り学校に向かうジュンの前に二人の少女が現れる<br>
雛「おはよーなの~♪ジュンに黒王さん。」<br>
ジ「あぁ、雛苺か、おはよう。」<br>
雛苺を不良から助けた翌日から彼女は黒王のことを「黒王さん」と呼び親しんでいる<br>
巴「おはよう、桜田君。その光景もなかなか見慣れてきたわ…」<br>
ジ「柏葉…言うなよ。」<br>
あれから毎朝ジュンは黒王号にまたがり登下校している…最初こそ拒んだジュンだったが黒王号のあまりの熱意についに根負けしたのだ。<br>
黒王曰わく『主をお守りするのは当然の務め』だそうだ…<br>
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蒼「あ、ジュン君に雛苺、柏葉さん、おはよう。」<br>
しばらく行くと次のクラスメートの蒼星石たちが話しかけてきた<br>
ジ「蒼星石か、おっす。」<br>
翠「こら、チビ人間!翠星石もいるですよ!?」<br>
ジ「はいはい、おはようさん。」<br>
翠「きいいいぃ~!!何ですかそのやる気のない挨拶は!?」<br>
蒼「まあまあ、翠星石落ち着きなって。」<br>
この双子の姉妹のやりとりはジュンの毎朝のお馴染みである…<br>
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黒『我が主…毎回思うのですがこの娘、貴方に対して少々無礼ではありませぬか?』<br>
黒王号が翠星石を睨む…<br>
翠「なっ…何ですぅ!?こん馬畜生は…」<br>
ジ「こいつはそういうやつなんだ…多目に見てやってくれ…」ボソッ<br>
蒼「もう、駄目じゃないか…馬は結構頭がいい動物なんだよ。きっと君がジュン君に怒鳴ったから怒っちゃったんだ。ごめんね、黒王。」<br>
蒼星石が黒王号の鼻を撫でる<br>
黒『むぅ…全く同じ双子とは思えませんね…蒼星石殿のほうがよっぽどしっかりしている。』<br>
ジ「はは…そりゃ違いないな…」<br>
巴「さて、みんな急がないと遅刻しちゃうわよ?」<br>
翠「げっ!やべぇですぅ!!」<br>
蒼「走るよ!?翠星石。」<br>
雛「あ~ん、待ってなの~!!」<br>
少女たちが走っていくのを見た後…<br>
黒『さぁ、我々も急ぎますよ?我が主。』ダッ<br>
黒王が疾走する…それはまさに漆黒の弾丸のようであった<br>
先を行く蒼星石たちを一瞬で追い越し更に加速した黒王号はバイクや車を尻目に駆け抜けていった…<br>
黒『着きましたよ、我が主…我が主?』<br>
学校に到着した黒王号が振り向いた時ジュンは口から半分魂を出した状態であった…<br>
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黒『今朝は申し訳ありませんでした…』<br>
下校時間となり迎えに来た黒王号は今朝の失態に頭を下げた…<br>
ジ「もういいよ、けど明日からはもっとゆっくり走ってくれていいから。」<br>
黒『…はい。』<br>
しばらくしてジュンは家に着き、黒王号を小屋に繋ぐと家に入った<br>
ジ「ただいま~…」ドドドドド…<br>
の「ジ…ジュジュジュンくうぅ~ん!!大変なのよおぉぉう!!」<br>
家に入るなり姉が狂ったように自分に飛び込んできた<br>
ジ「僕は姉ちゃんが一番大変な気がするんだが…どうしたの?」<br>
の「ああぁ~!そぅ!銀行が強盗でテレビで翠星石ちゃんがえらいことにいぃ!!」<br>
ジ「銀行が…強盗で…翠星石が……なんだって!?」<br>
ジュンは靴め脱がずにリビングに駆け込んだ。そこには近所の銀行に強盗が人質をとって立てこもったというニュース中継が流れていた…<br>
レポーター「今現在確認されている情報ですと、犯人グループは銀行の職員の他に芝崎翠星石さん、蒼星石さんら数人を人質に立てこもって…」<br>
ジ「蒼星石まで……くっ!!」ダッ<br>
ジュンはすぐに外に飛び出し黒王号の小屋の前に出て<br>
ジ「黒王号!!お前の力を貸してくれ!!」<br>
あらん限りの声で叫んだ…<br>
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黒『ど…どうされましたか?そんなにお急ぎになられて…』<br>
ジ「翠星石と蒼星石が強盗に人質にされている…」<br>
黒『何ですって!?』<br>
ジ「頼む…僕一人では彼女たちを助けることはできない、お前の力が必要なんだ!!」<br>
ジュンは大切な友を守りたい…ただそれだけしか見えない瞳を黒王に向けた<br>
黒『当然です…私は貴方様の楯であり剣、貴方様の命とあらばこの黒王!神にさえ牙を向きましょう!!』<br>
ジ「黒王…すまない。」<br>
ジュンは自分のためにそこまで仕えてくれる黒王に感謝し頭を下げた<br>
黒『頭をお上げください…拳王たるもの、常に前を見つめ胸を張り凜となさるべきです。…さて、そうと決まれば貴方様に渡さねばならぬものがあります。』<br>
黒王は小屋の中から黒いマントと水牛のように長い角のついた兜を持ってきた<br>
ジ「…これは?」<br>
黒『我が血筋に代々伝わる拳王の衣です…民衆に拳王のお姿を気安く晒すわけにはいきません故…さぁ、お纏いください。』<br>
ジ(うぅ…ちょっと恥ずかしいが仕方ないか…///)<br>
ジュンは言われるままそのマントと兜をつけた…<br>
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ジ「これでいいのか?」<br>
黒『おぉ…何と凛々しきお姿…』<br>
ジ(…そうかなぁ?結構ブカブカだぞ…)<br>
黒『さぁ、お乗りください!!お二人が貴方を待っております!!』<br>
ジ「よし!」<br>
ジュンは黒王号にまたがる<br>
ジ「黒王…遠慮はいらない、全力で飛ばせ。」<br>
黒『え?ですが…』<br>
ジ「構わない…命令だ。」<br>
黒『…御意。』<br>
刹那、黒い巨体が疾走を始めた…その速度は朝の時よりも激しく加速し併走する快速電車を楽々と追い抜いていく…<br>
ジ「待ってろよ…二人共…」<br>
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一方…犯人が立てこもる銀行内は不安と恐怖に染まっていた…<br>
犯人A「おらぁっ!さっさと逃走用の車を用意しねぇとコイツら一匹ずつぶっ殺すぞ!?」<br>
犯人B「ひゃははは♪俺は別に今殺してもいいぜ?」ジャキ…<br>
店員「ひいいぃ…」<br>
犯人C「まぁ待てよ…大事な人質だ、殺しちゃまずい。」<br>
各自手に銃を持った3人の男が不適に笑う…<br>
翠「うぅ…警察は何をやってやがるですか?」<br>
蒼「落ち着いて、翠星石…きっと大丈夫だから。」<br>
怯える姉を気遣う蒼星石…だが彼女も先ほどから足の震えが止まらないでいた…<br>
犯人B「おいこら!てめぇら何話してやがる!?」<br>
犯人の一人が彼女たちに詰め寄る…<br>
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翠「ひいぃ!寄るじゃねぇですぅ!!馬鹿!不細工!モブキャラ~!!」<br>
翠星石はパニックを起こし男に罵詈雑言を吐き散らす…だがこれが男の怒りを買ってしまった<br>
犯人B「んだとぉこら!!舐めんなよクソアマがあぁ!!」ヒュン<br>
彼女目掛けて男の拳が飛ぶ…<br>
バキィ!!<br>
蒼「きゃあっ!!」だがそれを蒼星石が庇った<br>
翠「蒼星石!!…この…妹に何しやがるですかぁ!?」<br>
翠星石が涙を流して叫ぶ<br>
犯人B「あぁ?知るかよ…そいつが勝手に飛び出してきたんだろ?…じゃあ改めて♪」<br>
男は今度は翠星石に矛先を向ける<br>
蒼「翠…星石…逃げて…」<br>
翠「ふざけんなですうううぅ!!」ダッ<br>
怒った翠星石が勇気を振り絞り男に突進するが…<br>
犯人B「…へっ」<br>
翠「なっ!?」<br>
犯人B「おらよっとぉ。」<br>
ガシィ<br>
翠「きゃあ!!」<br>
男はあっさりとそれを交わし彼女の長い髪を掴んだ<br>
翠「あぅ…ぐぅ、離しやがれ…ですぅ…」<br>
犯人B「やだね…ん~、いいねぇその表情…ゾクゾクくるぜ♪」<br>
翠星石は男の目に恐怖した…そこにはすぐにでも自分を痛めつけんとする悪魔がいたからだ…<br>
今ここに自分を助けてくれる白馬の王子様はいない…翠星石を絶望が塗り込めていった…<br>
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蒼「…翠星石…」<br>
蒼星石もまた目の前でいたぶられんとする姉を見ながら何もできない自分に絶望と失意の涙を浮かべていた…<br>
その時だった…<br>
銀行内に流れる中継が一気に騒がしくなる<br>
犯人A「んだぁ?サツでも来やがったか?」<br>
犯人C「俺ちょっと様子見てくるわ…」<br>
犯人の一人が銀行の入り口に近付く<br>
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レポーター「な…何でしょうこれは!?う…馬です!巨大な黒い馬が突如…ああぁ!!」<br>
犯人C「はぁ…って何だありゃああああ!!??」<br>
男が見た光景は人ごみを飛び越えながら猛スピードでこちらに迫ってくる巨大な黒い影であった…<br>
その直後…<br>
『ガッシャアアアアアアアアァァァン!!』<br>
凄まじい音と共にその影が銀行内に飛び込んできた<br>
グシャアア…<br>
犯人C「あべしっ!!」<br>
そしてその黒い影の蹄を顔に受けた男が奇声をあげて宙を舞う<br>
犯人A「な…なんだなんだあぁぁ!?」<br>
犯人B「どうなってんだこりゃあぁ!!」<br>
困惑する犯人と人質たち…その視線を一心に集める黒い影…それに跨る黒いマントと黄金の兜を付けた少年が叫ぶ…<br>
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ジ「翠星石!!蒼星石!!大丈夫か!?」<br>