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第七十八話 JUMと六女」(2006/11/08 (水) 07:04:10) の最新版変更点

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<p>「一つ屋根の下 第七十八話 JUMと六女」</p> <br> <br> <p>「お早う御座います。滝川クリスタルです。」<br> 僕は、朝一番のニュースをパンをかじりながら見ていた。学校のある日の朝というのは憂鬱だ。<br> 「はい、兄さん。お砂糖は入れる?」<br> 「いや、いいよ。眠いからそのまま飲む。」<br> 蒼姉ちゃんがコトリとコーヒーを置いてくれる。制服にエプロン姿が朝から目の保養になる。<br> 「ふ~ん、連続タシーロ犯逮捕ねぇ……しかしまぁ、物騒と言うか何て言うか。蒼も気をつけなよ?」<br> 「え、僕?僕は大丈夫だよ。わざわざ僕を狙う人なんて居ないだろうし。」<br> そう言ってニコッとする蒼姉ちゃん。相変わらず控えめといえば聞こえはいいが、自分に自信がなさ過ぎる人だ。<br> そう思ってるのは本人だけで、蒼姉ちゃんは男子にも人気あるんだけどなぁ。最近出番のないべジータを<br> 筆頭に。そんな事思ってると、後ろからドタバタと走ってくる音が聞こえる。<br> 「JUMにぃ~~~!!」<br> ヒナ姉ちゃんか。僕はコーヒーをすする。うん、苦い。そして熱い。まぁ、目覚ましにはいいだろう。そう思っていると<br> 急に背後を何者かに……まぁ、ヒナ姉ちゃんだろうケド。急襲された。<br> 「JUMにぃ~!JUMにぃのぼりなのぉ~!!」<br> 背中にガバッと抱きつき、よじよじと頭に登ってくる。それは何時もの事だからいいんだ。問題はタイミングな<br> わけで。僕は飲んでいたコーヒーを盛大にひっくり返していた。<br> 「うあっちゃあああああああああ!!!!!!」<br> 「うよ?北斗の拳?」<br> それはゆあっしゃー。あれってゆーはしょっくらしいけど。僕にはゆあっしゃーにしか聞こえない。<br> 「に、兄さん!?え、えっとえっと……そ、そうだ。とりあえず制服脱いで!!」<br> 蒼姉ちゃんが慌てて僕の胸元によって、少し慌てながら制服を脱がしていく。ちなみに、我が校の冬服の<br> 男子の制服はブレザーだ。基本的にはカッターシャツ+カーディガン+ジャケット。朝食時だったので、<br> カッターとカーディガンだけ着ていたが、コーヒーでビショビショだ。</p> <br> <p><br> さて、騒ぎを聞きつけたのか銀姉ちゃんがヒョッコリ顔を出す。制服なトコを見ると用意は万全みたいだ。<br> 「なにぃ?何の騒ぎぃ………ちょ、ちょっとぉ蒼星石!!雛苺の居る目も前で……しかも朝から!?」<br> 何を勘違いしてしているのか、何だか戯言を抜かしてるが放置しとこう。<br> 「う…ご、ごめんなさいなの…」<br> ヒナ姉ちゃんが後ろでシュンとしてる。ああ、もう。そんな顔されると怒るに怒れない。<br> 「ん~……カッターは洗えばいだろうけど、カーディガンはクリーニング出した方がいいね。僕帰りに寄って<br> くるよ。それまで、予備のなかったっけ?」<br> 「探してみる。カッターも着替えなおさないとだしな。ほら、ヒナ。もういいから。学校行く準備しろよ?」<br> 「うい……」<br> 僕は部屋に戻る。うわ、ちょっと胸とお腹が赤い。火傷はしてないと思うけど。今日は朝から災難だなぁ。</p> <br> <p>「おはよう、雛苺。桜田先輩。どうしたの?」<br> ヒナ姉ちゃんと登校中、柏葉と合流する。柏葉は未だにシュンとしてるヒナ姉ちゃんを見て首を傾げている。<br> 「う…ヒナ失敗しちゃったの……JUMにぃのかーでぃがん……」<br> 「カーディガン?そういえば、先輩着てないですね。どうかしたんですか?」<br> 「ん~、まぁ色々と…な。しかし、急に寒くなったな。」<br> 昨日一昨日までは、結構暖かかった気がするんだけど、今日は朝から寒い。秋を通り越して冬が来た気が<br> するくらいだ。やっぱりカーディガンなしは寒い。僕は、両手でゴシゴシと腕を擦る。<br> 「本当に寒そうですね。あ、あのぉ……そ、その私でよければ人肌で……」<br> 上目遣いをしながら柏葉が言ってくる。どう対処すべきか……とりあえずスルーだな。<br> 「お、学校着いたな。ヒナもさ、僕はもう気にしてないからさ。それじゃあ、またな。」<br> 僕は柏葉とヒナ姉ちゃんを後にして教室に向かう。柏葉が小さく「チッ」と言った気がするが気にしないどこう。<br> 気になるのはヒナ姉ちゃんの方だ。やっぱり気にしてるのか、ずっと俯いて元気のないままだった。</p> <br> <p><br> さて、時間は流れて六時間目。黒板にはでっかく「自習」と書かれてあり、先生はいない。真面目に受験<br> 勉強してる生徒も居るが、適当に遊んで時間を潰してる生徒が殆どだ。とりあえず、笹原は何故か<br> 廊下に立たされている。まぁ、それは何時もの事だから全く気にしない。少し辺りを見回す。<br> 「…………す~……す~……」<br> 少し離れたところでめぐ先輩がスヤスヤと寝息を立てて寝ていた。流石は、アリス大学の医学部に進学を<br> 決めてるだけあって余裕だ。僕はそんなめぐ先輩をじーっと見る。長い黒髪が実に綺麗だ。<br> 普段は結構はっちゃけてるけど、黙ってれば本当に美少女だ。しかし、本当に心地良さそうに寝てるなぁ。<br> もう二度と起きないんじゃないかって言うくらい……冗談で言ったけど大丈夫だよね……?<br> ちゃんと起きるよね、めぐ先輩……僕はめぐ先輩を見てると、逆に自分の心臓の方が先に止まりそうな<br> 気がして慌てて目を逸らす。何かフワッとめぐ先輩から出た気がするが、絶対気のせいだ。<br> 逸らした視線の先には銀姉ちゃんが居た。銀姉ちゃんは耳にイヤホンをさして、PSPをカチカチと真剣に<br> プレイしていた。何やってるんだろうな~っと考えて、理解。恐らくモンスターハンターだろう。<br> 銀姉ちゃんに限らず、他の姉妹も軒並みはまってるようで、気がつくとリビングでテーブルに座って<br> みんなプレイしている。合言葉は「そうだ、狩りに行こう」だ。<br> さて、僕は何しようか……と考える。僕は自慢じゃないが大学は決まってない。いや……そもそも最近<br> 忘れがちだけど、僕はまだ一年のはずだ。最近兄妹になれちゃったが、本来は姉弟だ。<br> きっとこれは、長い長い夢。そう考えると勉強する気なんて起きる筈がない。<br> となると、する事は一つ。睡眠だ。僕は、腕を枕に机に向かってうつ伏せる。寝よう……………<br> そう思って目を瞑るが眠れる気がしなかった。先ず、何と言っても寒い。僕は今日ほどカーディガンの<br> 存在を思った事はない。人は何故失ってから気づくのだろう……教室は暖房効いてるけど、それでも寒い。<br> 寝たら死ぬぞ!!って感じだ。結局、僕はボケーッとしたまま六時間目を過ごすしかなかった。</p> <br> <br> <p> 帰り道、僕は北風に晒されながら帰路を急いでいた。やばい、これは寒い。心なしか朝より寒い気がした。<br> カッターシャツの上にジャケットを羽織ってはいるが、それでも寒い。もう冬だなって思う。<br> 「JUMにぃーーーーー!!!」<br> 後ろからバタバタ走る音が聞こえたと思えば、急に背中に重力がかかりほんのり温かくなる。<br> こんな事するのはヒナ姉ちゃんしかいない。少し元気になったんだなって思うとホッとする。が……<br> 「なぁ、ヒナ。引っ付くのはいいんだが……離れないのか?」<br> 「うーとね……今日はヒナのせいで、JUMにぃが寒い思いしちゃったから…だから、ヒナがJUMにぃの<br> カーディガンになるの!JUMにぃ、あったかい?」<br> ヒナ姉ちゃんは僕の背中にしがみ付きギューッと抱きしめてくる。<br> 「ん、前が少し寒いけどな。」<br> 僕がそう言うと、今度は僕の前に移動して同じようにギューッとしてくる。温かいな……僕はそう思った。<br> まぁ、恐らく柏葉の入れ知恵だろうけど、多分ヒナ姉ちゃんなりに何とかしようって思ったんだろうな。<br> 僕は、僕を全面から抱きしめてるヒナ姉ちゃんの頭を撫でながら歩く。<br> 「なぁ、ヒナ?もしさ、僕がヒナのお兄ちゃんじゃなくって、弟だったらどうする?」<br> 僕の胸に顔を埋めていたヒナ姉ちゃんは顔をあげて僕の顔を見る。<br> 「う?JUMにぃがヒナの弟だったら?うーとね……うー……」<br> ヒナ姉ちゃんは真剣に考えている。考えて考えて考えて……そして、正に純粋無垢と言える笑顔<br> を向けて言った。<br> 「うっとね、ヒナよく分からないけど……JUMにぃが兄でも弟でも、だぁい好きなのーー!!」<br> ヒナ姉ちゃんが太陽のような笑顔を向ける。僕はそれだけで何だか暖かくなった気がした。<br> END</p>

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