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十一話「階段」」(2006/11/01 (水) 13:00:38) の最新版変更点

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短編「図書館」シリーズ十一話「階段」<br> <br> 突然だが、私、真紅は図書委員だ。<br> 元々本が好きで、中一のときに初めて図書委員になり…<br> 気が付けば図書室、そして図書委員の常連となり早3年。<br> その間に図書室仲間ともいうべく、同じく本の好きな友達連も出来て、<br> 図書館をよく利用する人の顔もかなり覚えた。<br> これは、そんな私の図書室でのある日の話。<br> <br> 階段。階段である。もちろん怪談でも会談でもない、階段。<br> 図書室の中央吹き抜けにある階段を、私はスタスタ降りていく。<br> 眉間にはきっとしわが寄っているだろう。それはなぜなら……<br> <br> 雛「美味しそうなの~!」<br> 金「しーかしら!いつもいってるけど、図書室は静かにしなきゃいけないかしら!」<br> 雛「でもでも、このお菓子すっごく美味しそうなのよ!<br>   こんな本が図書室にあったなんてヒナしらなかったのよー!」<br> <br> 聞こえてくるのは騒々しい声。何時もの元気な二人組みが、今日は下階で騒いでいるのだ。<br> 階段の、折り返しの踊り場から見下ろせるのは、床のカーペットに座り込んだ金と緑の二人の頭。<br> <br> 下階の床に足が着き、一つ大きく深呼吸。<br> 眉間のしわをもみ消しながら階段の裏に回りこんだら、そこには何時もの二人組……<br> <br> 薔「……(=゚ω)ノ ぃょぅ」<br> <br> ではなくて、なんと三人組。<br> 珍しいことに、薔薇水晶も二人と並んで料理の本を見下ろしていたのだ。<br> <br> 紅「あなたたち、知り合いだったの?」<br> <br> 思わず注意を忘れてそんな質問をしてしまう。<br> 主に上階が生息地域の金糸雀&雛苺と、下階メインでカウンターにもめったに立ち寄らず、<br> 学年も違う薔薇水晶。そんな彼女達が仲良く本を見下ろす姿に少し驚いてしまったのだ。<br> <br> 薔「うん。ええと……絵本、教えてもらった」<br> 紅「ああ、このまえの」<br> <br> そういえば、雛苺は童話や絵本が好きだった。<br> 知り合ったときの詳細はわからなかったけれど、大人しい薔薇水晶に何時もの調子でまとわりついて<br> 「お勧めの絵本」を見せる雛苺の姿は容易に想像できた。<br> <br> 薔「だから、今日はお礼……」<br> 紅「お礼?」<br> 薔「おなかがすいた、って言ってたから……料理の本」<br> 紅「……正直、それはどうかと思うのだわ」<br> <br> 空腹を訴える人間に料理の本。一体何の嫌がらせか。<br> 表情を見るに、きっと彼女に悪気は無いのだろうけれど。<br> <br> 雛「あ、真紅なのー! みてみて、これおいしそーなのよ!」<br> <br> まあ、そのお礼をされた雛苺本人が、まったく気にしていない様子なので、<br> 問題は無いのだろう。多分。<br> そして、その声を聞いてやっと私に気がついたか、金糸雀が慌てて振り向いた。<br> <br> 金「真紅! ちゃ、ちゃんと注意してたかしら! でも雛苺ったら全然聞いてくれないかしら~!」<br> <br> っと、そう、私は彼女達に注意をしに来たのだった。<br> 珍しい組み合わせに気を取られて忘れかけてしまうとは不覚。<br> 薔薇水晶がかすかに笑みを浮かべてこっちを見ている気がするけれど、とりあえず無視。<br> <br> 紅「……コホン。二人とも、しゃべるにしても、注意するにしても声が大きすぎよ。<br>   図 書 室 で は 静 粛 に 」<br> <br> 言いながら、二人の頭にぽん、と手を下ろす。<br> <br> 雛「ごめんなさいなの~」<br> 金「ごめんなさいかしら~」<br> <br> 二人とも非常に素直でとてもよろしい。<br> <br> 紅「それじゃあ、私はもう上に戻るわよ。静かにね?」<br> 雛金「はいなのー(かしらー)」<br> <br> そして私は階段を上る。<br> <br> 薔「真紅……後で、一緒に、帰ろう?」<br> <br> 踊り場に立ったとき、薔薇水晶から声がかかる。<br> <br> 紅「ええ、わかったわ。帰るときに呼んで頂戴」<br> <br> 今度は比較的静かに本を眺める二人。<br> その頭を見下ろしながら、私は見上げる薔薇水晶に小さく手を振って、<br> 再び階段を上り始めた。<br> <br> 次回「青空」<br> <br> <おまけ><br> <br> 銀「あらぁ。何処かで声がすると思ったら、下に行ってたのねぇ」<br> <br> 階段を上りきると、丁度カウンターから返却本を戻しに出てきた水銀燈先輩と鉢合わせ。<br> 何時もの如く、抱えられるだけ、伸ばした腕の指から顎まで大量の本を積み上げている。<br> 本人いわく、何度もカウンターと書棚を往復するのが面倒なだけ、とのことだけれど、<br> 傍から見ると少し間抜けな感じがしてついつい、笑ってしまいそうになる。<br> 笑うときっと「なによぉ」と、ぶすくれそうな気がするから、決して笑わないけれど。<br> <br> 紅「ええ、またあの子達が騒いでいたので」<br> 銀「いつも元気よねぇ……その有り余る元気、この年寄りに分けてもらいたいくらぁい」<br> <br> 積み重ねた本を顎で押さえて移動しながら先輩はそんな言葉を漏らす。<br> <br> 紅「その年で年寄りなんて言ってたら、50代、60代の方々に失礼なのだわ」<br> <br> 苦笑しながら横に並んで、顎の下から数冊分を抜き取って運ぶ。<br> <br> 銀「ありがとぉ」<br> 紅「いえいえ」<br> <br> そして、適当に回って本を返却した後に<br> <br> 銀「あ、帰り一緒に帰らなぁい?」<br> <br> 先輩にも声をかけられた。<br> <br> 紅「ええ。薔薇水晶も一緒でよければ」<br> <br> なので、私は素直にこう答えたわけなのだけれど。<br> なぜか先輩は複雑な顔をしてしばらく考えた後…<br> <br> 銀「いいわぁ。一緒に帰りましょぉ」<br> <br> にっこりと、満面の笑みでそう答えたのだった。<br> <br> 余談。この日の帰りはやたらとクラスメイトや知り合いに逃げられた。普通に挨拶をしただけなのに。<br> やっぱり二人から抱きつかれていたからかしらね……?<br>

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