「第五十四話 JUMとお弁当」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら
「第五十四話 JUMとお弁当」(2006/09/21 (木) 22:39:05) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<p>「一つ屋根の下 第五十四話 JUMとお弁当」</p>
<br>
<br>
<p>
「おっべんとう～♪おっべんとう～♪みんなで仲良くおっべんとう～なの～！」<br>
音楽室だから歌ってるのか。それとも得意の即席の歌なのか。ヒナ姉ちゃんがご機嫌に歌っている。<br>
「このシートをしいてっと……あ、真紅地べたでもいいかな？」<br>
「構わないわ。こんな時に椅子で食べるのも無粋でしょう？」<br>
蒼姉ちゃんが家から持ってきたのか大きなシートを敷く。敷き終わると、みんなで靴を脱いで座る。<br>
「さ、お弁当の登場ですよ～。翠星石と蒼星石が一生懸命作ったですぅ。」<br>
輪を作って座ったみんなの中心にドスンと大きな重箱が置かれる。すげ。１，２，３……５段重ねだ。<br>
「後は……きらきーが帰ってくるのを待つだけ……」<br>
例のパンを買いに行ったキラ姉ちゃんはまだ戻ってきていない。でも、先に食べるわけにも行かない。<br>
そう思ってると廊下を走る足音が聞こえる。ガラガラとドアが開けば、大きな紙袋を持ったキラ姉ちゃんが居た。<br>
「お待たせですわ。ふふふっ、見てくださいな。１０個も買えましたの！！」<br>
おお、１０個とは凄い。多分、キラ姉ちゃん手段を選ばなかったんだろうなぁ。事実、後から聞いた話だが<br>
そこには鬼がいたそうな。<br>
「ちょ、ちょっとキラキー。１０個はいいですけど、お弁当食べれるですか？キラキーが食べると思って<br>
たくさん作ってきたんですよ？ほら。」<br>
翠姉ちゃんが重箱をトントンと５段全部を広げる。５段中、３段がお握り。残り２段がオカズとなっていた。<br>
確かに、これはキラ姉ちゃんが居ないと完食は厳しそうだ。<br>
「問題ありませんわ。何故ならば……はい、これはJUMの分。」<br>
と、キラ姉ちゃんは紙袋の中からホイップクリームパンを取り出すと、僕に手渡した。成る程、触るだけで生地の<br>
薄さ。それに反して感じる重量から中身が凄い事が分かる。キラ姉ちゃんは僕だけじゃなく、姉ちゃん達<br>
みんなにパンを配り始めた。<br>
「……雪華綺晶？これは？」<br>
真紅姉ちゃんがパンを見ながら言う。ああ、そういえば真紅姉ちゃんは意外に甘党だったな。<br>
何だかんだで食べたかったに違いない。<br>
「こんな美味しそうなモノを独り占めなんて勿体無いですわ。ですから、幸せをお裾分けです。」<br>
キラ姉ちゃんはニッコリ笑って言った。</p>
<br>
<p>「わ～、ありがとうなの～！」<br>
ヒナ姉ちゃんは心底嬉しそうに言う。銀姉ちゃんは珍しく目をパチクリさせている。<br>
「嬉しいけどぉ……本当にいいの？」<br>
「もちろんですわ。みんなで食べた方が美味しいに決まっておりますから。」<br>
そんな銀姉ちゃんにキラ姉ちゃんは清清しいまでに答えた。<br>
「えへへ～、実はカナも競技に夢中で全然味わえなかったかしら。」<br>
うん、クリームは顔に付きまくってたしね。<br>
「でも！食べるのは一番最後ですよ？デザートですぅ。先ずはみんなでお弁当食べやがれですぅ。」<br>
翠姉ちゃんが言う。そうだ、パンは何時でも食べれそうな気もするが、お弁当はそうもいかない。<br>
「じゃあ、食べようか。いただきます。」<br>
蒼姉ちゃんが言う。みんなもそれに合わせていただきますの大合唱となった。<br>
「翠星石、玉子焼きはどこかしら～？」<br>
「んなもん、自分で探せです……そこですよ。」<br>
「あら、随分油の少ない唐揚げね。ギドギドじゃなくて食べやすいのだわ。」<br>
「えへへ、それは僕が揚げたんだよ。ちょっとコツがあってね。今度教えてあげるよ。」<br>
そんな感じで和気藹々と昼食が進んでいった。僕はお握りを掴み、ガブリと一気に喰らう。基本的に女の子用<br>
で小さめのお握りは。一度で半分くらい食べれた。中にはおかかが入っていた。<br>
残りの半分を口の中に入れ、唐揚げを摘む。うん、美味しい。ジューシーな唐揚げが絶妙だ。<br>
「JUM君、どうかな……唐揚げ美味しい？」<br>
蒼姉ちゃんが僕の顔を覗き込むように言う。やっぱり、作り手としては気になるんだろう。<br>
「うん、凄く美味しいよ。さすがは蒼姉ちゃんって感じ。蒼姉ちゃんはいいお嫁さんになるよね。」<br>
僕はそう言う。仕方ない。率直にそう思ったんだから。だが、蒼姉ちゃんはボン！と音が聞こえそうなほど<br>
顔を真っ赤に染めていた。<br>
「お、お嫁さん？ぼ、僕が？いやそんな……その…嬉しいけど…照れちゃうなぁ。JUM君のお嫁さん…なんて。」<br>
あれ？僕は僕のなんて言ってない様な気がするけど……</p>
<br>
<p>
「む～～～！！JUM、翠星石には何かないんですか！！？？」<br>
翠姉ちゃんが眉間に皺を寄せながら言う。何を怒ってるんだろう。<br>
「ん？美味しいよ、翠姉ちゃんのも。ほら、この玉子焼きとか最高だよ。」<br>
「あ……JUM君、それ僕が作った奴…」<br>
うわ、自爆。翠姉ちゃんが益々イライラしていくのが見て分かる。<br>
「うよ……翠星石が怖いのぉ……」<br>
「ふぅ…JUMは……乙女心が分かってない……」<br>
ヒナ姉ちゃんは怯えてるし、薔薇姉ちゃんには呆れられてる僕。うん、今回は僕が悪かったな。全面的に…<br>
「もういいですぅ！！JUMなんか知らんです！！」<br>
翠姉ちゃんはプリプリしながらお握りを豪快にガッツク。自棄食いする女性ってあんな感じか～。いや、そんなの<br>
はどうでもいいか。ん？翠姉ちゃんの頬っぺたに白い粒が…<br>
「翠姉ちゃん。」<br>
「何ですか！？ひゃっ？」<br>
僕はすっと指先で翠姉ちゃんのほっぺたに触れる。プニッとして柔らかい。指を離すと御飯粒が一つ付いてきた。<br>
「ほら、御飯粒ついてたからさ。」<br>
「う…あ、ありがとうですぅ…」<br>
でだ。取ったのは良いけど、これどうしよう。捨てるのも何だしな。そんじゃあ……<br>
「んな！！！？？？」<br>
ボンと音が今度は翠姉ちゃんがする。さすが、双子。リアクションが似てるなぁ。<br>
「な・な・な・何してるですかぁ！？捨てればいいじゃないですかぁ！な、何でわざわざ食べるですかぁ！？」<br>
今度は取った御飯粒を僕がそのまま食べた事にご立腹らしい。顔を真っ赤にして翠姉ちゃんが言う。<br>
「いや、勿体無いかなと思って……」<br>
「～～～～～～～！！？？ばかーーーー！！」<br>
いや、本当。何を怒ってるんだろう。</p>
<br>
<p>
「ふぅ、美味しかったわね。あれだけあったのに全部なくなったわね。」<br>
真紅姉ちゃんが食後の紅茶を飲みながら言う。ほんと、よくあれだけの量がなくなったもんだ。<br>
「遠足とかと一緒だね……みんなで食べると何時もより何倍も美味しい……」<br>
うん、翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんの腕もあるだろうけど、やっぱりみんなで食べたのが一番の調味料だった。<br>
「さ、お待ちかねのクリームパンを食べるかしら～。」<br>
カナ姉ちゃんが目を輝かせて両手でしっかりとパンを持っている。う～ん、結構お腹一杯だけど…<br>
それでもクリームパンを食べたい欲求の方が大きい。本当に美味しい食べ物って魔法がかかってる気もする。<br>
と、その時音楽室のドアが開かれる。いたのは。柏葉とめぐ先輩だった。<br>
「あ、やっぱりここに居たね水銀燈達。お邪魔していいかな？」<br>
「いいわよぉ。入りなさぁい。」<br>
銀姉ちゃんが二人を招きいれる。うわぁ、やっぱりめぐ先輩って白いなぁ。不健康そうな色白じゃなくて、<br>
何て言うのかな。健康そうな魅力的な肌の白と言うか。<br>
「トゥモゥエ！トモエも、ヒナと一緒にくりぃむぱん食べようよ。ヒナの半分あげるね。」<br>
「いいの？雛苺のでしょう？」<br>
「うん、でもトモエと一緒に食べた方がきっと美味しいの！だから、半分コなの～！」<br>
ヒナ姉ちゃんがニコニコしがらパンを半分に割る。中からトローリと濃厚そうなカスタードクリームと、白いホイップ<br>
クリームが出てくる。柏葉はそれをヒナ姉ちゃんから受け取る。<br>
「ふふ、二人は仲良いね。あ～あ、私にもこんな仲のいい友達がいたらなぁ～。」<br>
「……分かってるわよぉ。めぐは私と半分コしましょう？」<br>
めぐ先輩がわざとらしく銀姉ちゃんを直視しながら言う。すると、めぐ先輩はニヤリと笑う。<br>
「ううん、わざわざ半分コしないでもいいよ。」<br>
「は？じゃあ、どうするのよぉ。」<br>
「決まってるじゃない。水銀燈のく・ち・う・つ・し♪ほら、何時もみたいに熱いキッスぅ～。」<br>
「な…なななな何言ってるのよぉ！JUMの前で変な事言わないでよぉ！めぐのおばかさぁん！！」<br>
いや、本当。銀姉ちゃんを唯一弄くれる凄いお人だな。めぐ先輩は。</p>
<br>
<p>
「雛苺、ほっぺにクリームついてるよ。とってあげるからジッとしててね。」<br>
「うよ……ん～、くすぐったいのぉ～。」<br>
「ああ～ん、水銀燈。私のほっぺにもクリームついちゃったぁ～。ぺロッて舐めてとってぇ～。」<br>
「はぁ……貴方ほぉんとうにイカレてるわねぇ。」<br>
そんなこんなで、柏葉とめぐ先輩を交えての昼食もそろそろ終わりだ。<br>
「ふぅ……お弁当も美味しかったですし、ホイップクリームパンも食べれて私、大満足ですわ。」<br>
良かったね、キラ姉ちゃん。でも、これあくまで体育祭だからお忘れなく。<br>
「明日は応援合戦もあるから、早めに食べて着替えないとね。」<br>
「蒼姉ちゃんも応援合戦出るんだ？やっぱり学ラン？」<br>
「へへぇ～、それは明日のお楽しみだよっ。」<br>
そうか、明日は応援合戦か。僕は文化祭の方が忙しすぎて参加できなかったけど、うちのクラスはべジータや<br>
桑田さん。薔薇姉ちゃんも応援合戦に参加するはずだ。<br>
「JUMは……女の子の学ランフェチ…？だったら……明日は貰った……」<br>
薔薇姉ちゃんはグッと拳を握る。何を貰うか知らないけど、薔薇姉ちゃんは学ランて事なのかな？<br>
「気が早いわね、貴方達。それよりも今日の午後の競技があるでしょう？」<br>
真紅姉ちゃんは体操服でも、本を読んでる。ある意味、読書中毒者だな。<br>
「ふっふっふ、午後のあのメイン競技は必ずカナの作戦でいただきかしら！」<br>
「おっと、今年は翠星石も負けないですよ？何せ今年は蒼星石も一緒ですからね。」<br>
「ああ、アレがあったわねぇ。アレは得点大きいから稼いでおきたいわねぇ。」<br>
２，３年生組がなにやら話を進める。僕には何の話かさっぱり分からない。<br>
「ねぇ、姉ちゃん。何の話？午後のメイン競技って何さ？」<br>
「あらぁ、JUMは知らないのねぇ。学校全体競技の一つ……『乙女騎馬戦』よぉ！！」<br>
END</p>
