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第四十八話 JUMと店番」(2006/09/13 (水) 21:09:19) の最新版変更点

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<p>「一つ屋根の下 第四十八話 JUMと店番」</p> <br> <br> <p>文化祭も二日目。僕は特別教室棟の家庭科室にいる。<br> 「よぉ、JUM。今日は午前中一緒に店番頼むぜ!」<br> べジータが言う。そう、僕は今日の午前中は店番だ。これは誰でも回ってくるから仕方ない。<br> まぁ、案外店番も文化祭の醍醐味じゃないかとは思うけどね。<br> 「みんな頑張ってるな!!先生、クラスが団結して嬉しいよ。先生思うんだ。友達ってのは・・・」<br> 梅岡のいつもの講義が始まる。まぁ、誰も聞いちゃいないが。とりあえず、壁にでも話しておいてください。<br> 「JUM……やっほ~…」<br> 薔薇姉ちゃんがメイド服を着込んで僕の側に来る。<br> 「ん、薔薇姉ちゃん……あれ?薔薇姉ちゃんって午前はオフじゃないっけ。」<br> 確か、薔薇姉ちゃんは午前中は自由時間のはずだ。何でメイド服着てるんだ?ああ、着たまま校内を歩いて<br> 宣伝か何かかな?<br> 「あのね……桑ぴーに変わってもらったの……だって…JUMと回りたいから…」<br> 薔薇姉ちゃんが頬を染めながら言う。そういえば、うちのクラスは薔薇姉ちゃんと桑田さんのダブル看板を<br> 常に一人は店に置いてる。まぁ、客寄せってやつだね。<br> 「薔薇姉ちゃん……じゃあ、午後は一緒に回ろうね。」<br> 「うん……午後は……姉妹の誰にもJUMは渡さない……」<br> 薔薇姉ちゃんが意気込む。そういえば、昨日約束したもんな。よっぽど僕と文化祭回りたいんだろうなと<br> 若干自惚れながらも、やっぱり嬉しい。<br> 「………俺もナンパにいくか…」<br> 隣で恨めしそうに僕を見ていたべジータがぼやく。まぁ、止めないよ。好きにしてくれ。<br> 「はいは~い、そろそろお客さん入れるよ~!今日も頑張ろうね~~!!」<br> クラスの女子が言う。よし、頑張るかな。</p> <br> <p>「花丸ハンバーグ二つはいりま~~す!!」<br> 花丸ハンバーグか……ハンバーグの形はできてるから焼くだけだ。ただ、ハンバーグって微妙に焼くの難しい<br> よね。上手く焼かないと中まで火が通らないしね。生焼けとか出せたもんじゃない。<br> 「JUM……雛苺と巴が来てるよ。さっきのハンバーグ……二人のだよ……」<br> 僕はチラっと客席を覗く。そこには、楽しそうに談笑しているヒナ姉ちゃんと柏葉がいた。<br> そういえば、昨日行くとか言ってたな。律儀な奴だなぁ、柏葉は。<br> 「よし、じゃあハンバーグソースを多めにかけてあげようかな。」<br> 「分かりにくいサービスだね……それ……」<br> 御もっともです。どうせなら卵二つとかのがいいかな?<br> 「そういえば、キラ姉ちゃんは来ないのかな?真っ先に来そうだけど。」<br> 僕は来ればあっと言う間に食品が無くなりそうな食欲魔人を思い浮かべる。<br> 「うん……キラキーは……自分のクラスでたくさん食べてる……後で見に行こうね……」<br> ああ、そういえばそうか。僕は思い出した。キラ姉ちゃんのクラスはフードファイトだ。チャンプがあんなか細い<br> 女の子なら挑戦者も多かろう。きっと、今頃満面の笑みで挑戦者を薙ぎ払っているであろうキラ姉ちゃんを<br> 想像する。うん、何ともミスマッチな絵だ。並み居る爆食の男たちの屍の上に立つ眼帯をした謎の美少女。<br> う~む……笑えるようで笑えないな。身内としては。</p> <br> <p> 「ふぅ~……結構客来るよな。腕が痛くなってきたよ。」<br> 時間は11時30分ごろ。交代にはまだ時間がある。そんな時、二人の訪問者が現れた。<br> 「よぉ~、やってるですかぁ?」<br> 「お邪魔します、JUM君。」<br> 翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんだ。二人は客席でなく調理場にズカズカ入ってくる。<br> 「翠姉ちゃんと蒼姉ちゃん?客席はあっちだけど?」<br> 「翠星石達はメイドさんなんざ興味ねぇですよ。」<br> ああ、まぁ確かに。あっても弟として困るけどね。<br> 「ほれほれ、JUM。翠星石達はこっちで食べるから何か作るですぅ。ん~……ハンバーグがいいですかね。」<br> 「じゃあ、僕もハンバーグ。出来るかな?JUM君。」<br> 僕は在庫を見る。あれ……?ないぞ……ハンバーグ人気あったからなぁ。<br> 「ごめん、ハンバーグないや。べジータ、すぐ作ってくれ。」<br> 「おう、了解だ!!」<br> べジータ達がいそいそとハンバーグを作り始める。お客さんには少し待ってもらうかな。<br> 「そんなわけで、ハンバーグ以外ならすぐ出来るけど。どうする?」<br> 「……じゃあ、JUMが今から作れですぅ。二人分。翠星石が見ててやるですぅ。えーと……ハゲ!JUMを<br> 借りるですよ?」<br> 「は……ハゲ……」<br> あ、べジータ凹んでる。まぁ、M字ハゲには変わりないからフォローはいいかな。<br> 「ごめんね、べジータ君。JUM君少し借りていいかな。」<br> 「はい、喜んで!!どんどん使ってください蒼嬢!!」<br> そして変わり身の早い奴だ。仕方ない。僕もハンバーグ作るかなぁ。</p> <br> <p>「…………」<br> タマネギを刻む。何て言うか……翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんに凝視されながら作るハンバーグは随分緊張する。<br> 「あーもー!JUMは包丁の使い方が全然ですぅ!!」<br> 翠姉ちゃんがプリプリする。そんな事言われてもなぁ。僕も普段から料理してるわけじゃないし。<br> 「仕方ねぇですぅ。翠星石が……そのぉ…て、手取り足取り教えてやるデス……か、勘違いするんじゃねぇです<br> よ?不味いハンバーグ作られたら迷惑だからですぅ……」<br> そう言いながら翠姉ちゃんは僕の後ろに立ち……そして、後ろから抱きしめるように僕の体を包んだ。<br> 僕の腕にそって翠姉ちゃんの腕が回される。僕の肩にちょこんと可愛らしい顔を置く。背中には……胸が…<br> 翠姉ちゃんの体温と、匂いが僕を刺激する。やべ……調理中に前屈みは勘弁だ。<br> 「…翠星石?ちょっとくっつき過ぎじゃないかな?」<br> 蒼姉ちゃんが少し眉をひそめて言う。ナイスフォロー蒼姉ちゃん。でも、翠姉ちゃんにその声は届かなかった。<br> 「しょ、しょーがねぇです!!手取り足取り教えるんですから。え、エロイ事考えたら承知しねぇですよ!」<br> それは無理ってもんですよ、翠姉ちゃん。翠姉ちゃんの柔らかく程好く大きい胸が背中に当たりっぱですから。<br> 「い、い、いいですか?包丁はこう……やるですぅ。」<br> 翠姉ちゃんの白い手が僕の手を上から包み、僕の手と一緒にタマネギを切っていく。一体感って言うのかな。<br> 変な意味じゃなく、僕は今翠姉ちゃんと一つなんだなって……そう思った。<br> 「左手は添えるだけ……じゃなくて、こう丸めて猫の手ですぅ……」<br> 左指も翠姉ちゃんの手が包み込む。そして、握り拳を作るように丸まっていく。<br> 「JUM……あったかいですぅ…」<br> 翠姉ちゃんがぽそっと小さな声で、きっと僕にだけ聞こえるように言った。<br> 「うん……僕も温かいよ。翠姉ちゃん…」<br> だから…僕も小さくそう返した。きっと、僕等はそれだけでいいんだって。そんな気がした。</p> <br> <p>「さ、さぁ教えてやった通りにやれですぅ!!」<br> 僕の背中から離れた翠姉ちゃんは少し顔を赤く染めながら言う。よし、教わったとおりに…でも、緊張する。<br> そのせいか、包丁は僕の左手の人差し指に切れ目を作った。次の瞬間、血が滲み出てくる。<br> 「っつ!!?」<br> 僕は思わず指を口に入れる。口の中に鉄の味が広がる。深いか?いや、そうでもないと思うけど…<br> 「JUM君!?ちょっと見せて!」<br> 蒼姉ちゃんが座っていた椅子からガタンと立ち上がって血相を変えて僕の手を見る。まだまだ指から血が滲み<br> 出てくる。うわ、すっぱり切れてるな。そんな事を思ってると、僕の人差し指は急激に温かくなった。<br> 「ちゅぷっ……ちゅっるっ……」<br> 「そ、蒼姉ちゃん!?」<br> 僕の左手の人差し指は蒼姉ちゃんの口の中に入っていた。僕は一瞬で思考回路が吹っ飛ぶ。何だ!?<br> 指を蒼姉ちゃんの舌が這う。結構気持ちいいんだな…いや、そうじゃない。<br> 「んっ……ちゅぷ…」<br> 蒼姉ちゃんが上目遣いで首を傾げてどうかな?って目で聞いてくる。うわ、姉ながら可愛すぎる。そんな顔<br> されたら…いやいや、僕は何考えてるんだ!?と、ようやく蒼姉ちゃんが指を離してくれる。<br> 「んっ……ごめんね、JUM君。咄嗟の事でさ。あ、絆創膏っと……これを貼って…これで大丈夫だよ!」<br> 蒼姉ちゃんが輝く白さの笑顔で言う。僕はきっと顔が赤い。熟れたトマトみたいだろうな、きっと。<br> 「蒼星石……やっぱり侮れないですぅ…」<br> ボソリと翠姉ちゃんが言う。あーまー…今回は引き分けでいいんじゃない?どっちも正直、ドキドキした。<br> 「そ、そうか!!その手があったか!!よぉし俺も!!!………うぎゃああああああ!!!」<br> 「うわぁ!?べジータが手首切ったぁああ!!衛生兵!アバム!手当て!保健室!救急車ーーー!!」<br> 「大丈夫かべジータ!!よし、先生が舐めて傷口を消毒してやるぞ!!」<br> 「へ?やめ……アーーーーッ!!!??」<br> ・・・・・・馬鹿か?あいつは。</p> <br> <p>「ご馳走様ですぅ~!」<br> 「有難う、JUM君。ご馳走様。」<br> さて、何とか完成したハンバーグは無事に二人のお腹の中に入った。いやはや、無事に完成してよかった。<br> ちなみに、ベジータは手首をスッパリ切りながらもすぐに回復していた。<br> 「俺は戦闘民族サイヤ人の王子だからな。」<br> とか意味不明なこと言ってたが……まぁ、梅岡の唾液が利いたとも思えない。多分、あいつの気合だろう。<br> 「それで……美味しかったかな?」<br> 僕は姉ちゃん達に聞く。正直、作った身としては一番気になるところである。<br> 「そうですねぇ、翠星石には敵わないですけど……まぁ、合格にしておいてやるですぅ。」<br> 「美味しかったよ。JUM君が僕等の為に作ってくれたんだもん。美味しくないはずがないよ。」<br> 二人は笑いながら言う。よかった。ダメ出しは出なかった。<br> 「ふう、よかったぁ。そういえば、二人とも劇は主演じゃないの?」<br> 僕はふと、そんな事を思い出す。確か、ツンデレラって劇の主演だったはずだ。<br> 「ずっと劇してる訳じゃねぇですよ。今日は午後から公演ですぅ。」<br> 「そうなんだ。じゃあ、午後からは薔薇姉ちゃんと見に行こうかな。」<br> 折角だしね。見に行かないと損だ。でも、翠姉ちゃんは言う。<br> 「来ないでいいですよ。」<br> 「翠星石。ごめんね、JUM君。来るなって意味じゃなくてね。明日、文化祭の閉会セレモニーあるでしょ?<br> その時に特別キャストでやらせてもらう事になったんだよ。だから、JUM君はその時に見てねって事だよ。」<br> 「そういうことですぅ。そんなわけだから、今日は適当に回っとけですぅ!」<br> 何だ、ビックリした。普通に拒絶かと思った。でも、最後に体育館でやるなら、そっちで見た方がいいな。<br> 翠姉ちゃんと蒼姉ちゃんはクラスに戻っていく。<br> 「みんなお疲れ様!!じゃあ、メンバー交代しようか!!」<br> 桑田さんが現れる。ようやく店番交代だ。<br> 「JUM……一緒に行こう……」<br> 薔薇姉ちゃんがメイド服のままだ。ああ、宣伝か。でもいいや。それも文化祭の楽しみだ。さ、どこ行こうかな。<br> END</p>

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