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『きみとぼくと、えがおのオレンジ』~第1話~」(2006/09/06 (水) 16:10:14) の最新版変更点

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「なつかしいな…」<br> 「うん、懐かしいねぇ。」<br> <br> それはアルバム<br> まだ真新しい革表紙<br> 人工革の匂い<br> やわらかい手触り<br> <br> それは思い出<br> 出会いの記憶<br> あの日の夕陽<br> あの日の朝日<br> あの日の笑顔<br> 二人過ごした時間<br> <br> それは薔薇水晶<br> 僕の彼女<br> 僕の大切な女性<br> 腕に抱きしめる暖かい感触<br> 柔らかい肌<br> 柔和な微笑<br> <br> <br> 「ねえ、ジュン?」<br> 振り向く、薔薇水晶。<br> その瞳、不安で、儚げで。<br> 「なんだ?」<br> 「ジュンは本当にあたしでよかったの?」<br> 「変な事聞くなぁ。一体どうしたんだよ?」<br> 「んーん、ただ聞きたくなっただけ。あたしなんかで良かったのかなって。」<br> 「お前しかいないよ。僕には薔薇水晶しかいない。」<br> 僕は後ろから彼女を優しく壊れないように、だけど強く誰にも離されない様に<br> 抱きしめる。柔らかくて暖かい感触を感じ取る。<br> 薔薇水晶を感じる。<br> 「でも、まだあたし達大学生だよ?あたし達、きっと卒業の時には―――」<br> 「離さない、就職難でへーこら言おうが何だろうが僕はお前を離さない。」<br> 僕は彼女の言葉を切り、抑え込む。<br> 「僕は約束したんだから、薔薇水晶を離さないって。それにだ、まぁ……<br>  惚れた弱みというかなんというか………うむぅ……」<br> 恥ずかしいもんだ、こういう事言うのは。<br> 「あ……えへへ……うん……うん、そうだね。あはは、何だか思い出しちゃった。」<br> 「何をだよ?あ、恥ずかしいのは禁止な。って……ん。」<br> 首を振り僕の腕を解いた薔薇水晶。そして僕の首に腕を回し抱きついてくる。<br> 「恥ずかしくないよ、ジュンがあのとき言ってくれた事思い出したの。」<br> 「ああ………」<br> 僕も薔薇水晶の背中に腕を回し引き寄せるように抱く。<br> 脳裏に浮かぶあの日の情景。<br> <br> 「もしジュンがいなかったらね、きっとあたしは昔のまんまだったよ……<br>  不思議だね、まるでギャルゲみたいだよね……」<br> 「んー、ムードぶち壊しだな、おい。」<br> 「えへへ♪でもね、本当なんだよ。あんな恥ずかしくてだけど嬉しい台詞<br>  なんてゲームのなかでしか聞いた事なかったんだもん。」<br> 首を少し傾け微笑む。だけどすぐに僕の胸に顔をうずめてしまう。<br> 「あたしはあれでジュンにべた惚れしました。ジュンが大好きで大好きで<br>  大好きで大好きになってしまいました。だからね、だからこそ不安に思うんだ。<br>  これがいつか壊れちゃうんじゃないのかなって。いつか、ううん、<br>  明日にでもジュンがいなくなるのかなって、不安になっちゃうんだ。」<br> ぎゅうと、僕の服を握り締める手。僕はそれをなだめるように髪を撫でる。<br> 「…………ないって。」<br> 「あるよ……きっと。」<br> 「もしあるとしても、僕は、今はそんな事考えなくても良いと思うけどな。」<br> 口をついて出た。<br> 「…………」<br> 「未来の事なんて誰にもわからない、だから僕は現在(いま)を大事にしたい。<br>  僕が薔薇水晶に惚れて、薔薇水晶が僕を好きになってくれて、それで<br>  今はこうやってほとんど同棲状態。それが今のすべて。それでお腹いっぱい。」<br> 「ジュン………」<br> 薔薇水晶が瞳に涙を浮かべ僕を見上げる。<br> <br> 「不安に思う事なんてない。まあ、そりゃ、別れる事もあるかもしれないけど<br>  今は知ったこっちゃない。僕は今、薔薇水晶といれて幸せだからさ。<br>  薔薇水晶はどうなんだ?」<br> 「あたしも……幸せ。」<br> 僕は薔薇水晶の涙を拭ってやる。<br> 「なら大丈夫。不安に思う事なんてない。」<br> 「うん、そう……だよね。でも……でも、もし不安にまた思ったら………?」<br> まだ不安げな表情で僕を見上げる薔薇水晶。<br> 「なら、こうするだけだ。」<br> 「え?あ………ん……」<br> 口付け、キス。唇と唇を重ねあうだけの行為。<br> 少し驚いた薔薇水晶もその行為に浸る。<br> はじめた僕もその行為に浸る。<br> お互い目を瞑り、唇でお互いの温度を感じあう。<br> 長い時間そうしあって、名残惜しそうに離す。<br> 「………ん。ジュンはだいたん……」<br> そう言いながらも嬉しそうに僕を見上げてくれる薔薇水晶。<br> 「でも、不安はなくなったろ?」<br> 「うん……でも、少し不安かな。」<br> 「そか。それなら、もう一回………」<br> 「ジュン………ん……」<br> <br> では御伽噺をしよう<br> <br> これは僕と薔薇水晶の出会いのお話<br> <br> まるで三文芝居の様な出来すぎたお話<br> <br> だけどこれは幸せな夢物語<br> <br> 始まりは青とピンク<br> <br> 閉ざした函<br> <br> 終わりはオレンジ<br> <br> 開かれた函<br> <br> <br> 『きみとぼくと、えがおのオレンジ』<br>

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