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『雪月花』―思い出と約束の丘―」(2006/09/06 (水) 14:15:04) の最新版変更点

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『雪月花』―思い出と約束の丘―<br> <br> 「・・・はぁ」<br> ジュンは今、ある山に来ている。『秋冬山』ここは季節によっていろんな景色をみせてくれる。<br> 夏休みの自由研究になるものをジュンはこの山に探しにきたのだ。今は夏、周りの木々は青々と茂っている。<br> 山の中に入ってどれくらい経っただろうか。ジュンの頭上に雨が降ってきた。<br> 「うわ!」<br> ジュンは森の中を走り出した。少し走っていると近くに山小屋があり、ジュンはひとまずそこに逃げ込んだ。<br> 「何だよ。夕立か?」<br> ジュンはそう言いながら空を睨む。もうしばらく雨は降り続きそうだった。ジュンは山小屋の中に入ると、<br> 近くにあったいすに座る。ぼおーっと外の様子を見ているとなんだか眠気が襲ってきた。ジュンはその眠気に<br> 勝てず、眠りに落ちていった・・・<br> 「……ん、んん?」<br> 眠ってからどれくらい時間が経っただろうか?ジュンは目を覚まし窓の外を見た。<br> 「・・・・え?な、なんだこれ・・・?」<br> ジュンは慌てて扉を開けた、目の前はありえないことになっていた。見渡す限り雪で覆われていた。<br> 今さっきまで夏だったはずなのに、今は凍えるほど寒い雪山になっている。<br> (・・・どうなっているんだ?とにかく山を下りよう)<br> そう決めたジュンは山小屋を出た。しかし、周り一面真っ白の雪だけでまったく道が分からない。<br> 普通ならばもう一度どうするか考えるべきだったのだが、こんな状況でパニックになっていたジュンはただ闇雲に歩き始めた。<br> ――――もう、どれくらい歩いただろう。右も左も分からない。見えるのはただ一面の雪。<br> ジュンはとうとうその場に立ち尽くしてしまった。<br> (もう・・・だめだ。・・・・?)<br> そう諦めていたとき、かすかな声が聞こえた。間違いなく人の・・・女の人の声だ。ジュンは声の聞こえる方へ歩いていった。<br> <br> 「・・・~♪・・・~~♪・・・・~~~♪」<br> 声が聞こえる。とても澄みきった綺麗な声。ジュンは引き寄せられるようにその方角へ歩いていく。<br> どんどん、声が近くにきている。そして、ある開けた場所に出た。<br> そこには一人の少女がジュンに背を向けて歌を歌っていた。ジュンはその歌に聞惚れてその場に立ち尽くしていた。<br> (・・・・なんだろう?この歌聞き覚えがある・・・)<br> ジュンはこの歌になぜか懐かしさを感じた。<br> 「~~~~♪~~~~♪~・・・?」<br> 少女はジュンの気配にきずいたのか歌を止めジュンのほうに振り向いた。<br> 「あなたどうしたのですか?こんなところで?」<br> 「・・え?いや。その・・・」<br> 振り向いた少女はとても綺麗だった。雪のような白い髪に白い肌。おもわず見とれてしまっていた・・・<br> 「あ、あの、ちょっと道に迷ちゃって。できれば道を教えてほしいんだけど・・・」<br> 恥ずかしくて、おずおずとしゃべるジュン。<br> 「よろしいですわよ。私の後についてきてください」<br> そんなことは気にせず少女は、にこやかに応えた。<br> 少女はどんどんと先に進んでいく。まるでここが自分の庭のように・・・。ジュンはその後についていく。<br> 「でも、綺麗な歌だね」<br> 「え?なにがですか?」<br> ジュンの言葉にきょとんとする少女。だからジュンはもう一度少女に言った。<br> <br> 「さっき会った場所で歌ってたやつ」<br> 「そ、そうですか?」<br> 少し恥ずかしそうにする少女。この話題をはぐらかすように少女はしゃべりだした。<br> 「あ!そういえば、まだ自己紹介していませんでしたわね。私は雪華綺晶と申します。あなたのお名前は?」<br> 「僕はジュン。桜田ジュンっていいます」<br> その名前に雪華綺晶は『ぴく』っと反応した。<br> 「桜田・・・・ジュン?」<br> 雪華綺晶は少し驚いた表情を見せたが、すぐにまた元のにこやかな顔にもどっていた。<br> <br> <br> 少し歩くとそこには、今さっきまでジュンがいた山小屋が見えてきた。その山小屋の前で雪華綺晶が振り向いた。<br> 「ここで一度、休憩をしませんか?」<br> 「うん。そうだね」<br> 雪華綺晶の申し出にジュンも賛成した。だいぶ日も傾きかけている。それに、ここに戻ってくるまでに体が相当冷えてしまっていた。<br> ジュンは山小屋の中に入り火を焚いた。火が点き薪が燃え始めたが、まだ部屋の中は寒い。ジュンが身震いすると<br> 雪華綺晶がジュンに寄り添うように体を傾けた。<br> 「ちょ、ちょっと雪華綺晶さん!?」<br> 慌てるジュン<br> 「ふふ。呼び捨てでいいですわよ?……なにか…お話をしましょう?」<br> 「話っていわれてもなぁ」<br> 「なんでもいいですわよ?普段の生活のことでもいいので私に聞かせてください」<br> 「そんなんでいいなら・・・・でも、聞いても楽しくないとおもうぞ?」<br> そう、ジュンは付け加えて話始めた。学校のことや、テレビのことなど、ここ最近あったことをジュンは話した。<br> 「・・・・ま、こんなところかな?あんまり面白くなかっただろ?」<br> 「いいえ。とっても面白かったですわ」<br> ジュンの苦笑いに雪華綺晶は首を横に振り笑顔で答えた。<br> <br> なら、私もひとつお話をしますわ。・・・・昔々一人の女の子がいました。その子はもともと肺が弱く、そのせいで<br> 都会には住めず空気の綺麗な山の中でしか生活できなかったのです。その子は毎日山の中で一人で遊んでいました。<br> けれどある日、ハイキングに来た家族と出会いました。その家族と女の子の家族は気が合い、数日の間女の子の住んでいる<br> 家に泊めてもらうことになったのです。その女の子はその家族の少年と仲良くなりました。たった数日でしたが、女の子と<br> 少年は日が暮れるまで遊びました。・・・・そして少年の家族が帰るとき女の子は駄々をこねたのです・・。<br> 『ずっと一緒にいたい』<br> って。そう言って女の子は家を飛び出しました。それを見た少年は女の子を必死に追いかけました。そして少年はやっと<br> 女の子を見つけました。その場所はこの数日間一緒に遊んだ原っぱ。そこに女の子は泣きながら立っていました。<br> 少年は言いました。<br> 『一緒に帰ろう?』<br> その言葉に女の子はこう言ったのです。<br> 『ずっと一緒に居てくれる?』<br> そのお願いに少年は<br> 『ごめん』<br> としか言えませんでした。それは自分の力ではどうにもできないと、その答えに女の子はまた泣き出しました。<br> その顔を見て、少年はあるひとつの約束をしたのです。<br> 『また絶対に会いにくるから!』<br> その約束をして少年は帰っていきました。そして女の子は約束を信じてずっと待っていました。しかし、女の子は少年ともう一度<br> 会えることはありませんでした・・・・。」<br> <br> <br> 雪華綺晶はそう話すと、ゆっくりとジュンのほうを向いた。薪が燃え、ぱちぱちと音をたてている。<br> 窓からは柔らかな月の光が部屋に差し込んでいる。ジュンは少しの間のあと口を開いた。<br> 「なんか、悲しい話だな」<br> その言葉に雪華綺晶はこう答えた。<br> 「あら、この話にはまだ先がありますのよ」<br> その言葉にジュンは『へ?』というような顔をして雪華綺晶に聞く。<br> 「じゃぁその先はどうなったんだ?」<br> 「それはまだ秘密です。・・・ふふ」<br> 「なんだよそれ。・・・あはは」<br> そのあと二人は他愛もない話をした。その後、ジュンが寝るのを確認して雪華綺晶は起き上がった。そしてジュンの方を見る。<br> その顔はとても悲しい目をしていた・・・<br> 「さようなら・・・・」<br> そう一言呟いて雪華綺晶は山小屋を後にした。<br> <br> <br> そのころジュンは夢を見ていた。誰かと遊んでいる夢。鬼ごっこをしているみたいだ、相手は女の子のようだった。<br> その子の後姿しか見えないので顔が判らないない。ただ、そのときの自分の顔はとても楽しそうに見えた。<br> 夢の中でジュンは、必死にその子の顔を思い出そうとする。やっとその子を捕まえた。その子がこちらを向こうとしたそのとき<br> 目の前が真っ白になりなにも見えなくなってしまった。・・・日の光が顔に差し込み、ジュンは目が覚めてしまった。<br> 「・・・・ん」<br> ちょっとずつ意識がはっきりしてくる。そのかわりに今さっきの夢の内容がどんどん消えていく・・・<br> はっきりと目が覚めるころには、夢の内容はほとんど忘れてしまっていた。<br> 「いつの間にか寝てたのか。・・・・・?雪華綺晶は?」<br> ジュンは自分の隣に居たはずの雪華綺晶がいないことに気がついた。その瞬間、さっきの夢が走馬灯のように甦ってきた。<br> それと同時に全てを思い出す。<br> 「そうか、そういうことだったのか!・・・・くっ!」<br> ジュンはすぐさま山小屋を飛び出した。<br> <br> <br> ジュンは森の中を駆けた。森の中の景色も変わっている。夏の日差しを受けて雪が徐々に溶けはじめている。<br> それはまるであの子と会える時間を表すかのように・・・<br> すべてを思い出した今では道に迷うことはない。あの思い出と約束の場所にジュンは必死に走った<br> <br> <br> そして、着いた場所はあの子と出会った場所・・・そこにはあの子『雪華綺晶』がいた・・・。<br> ジュンは雪華綺晶のそばまで近ずき、一言呟いた。<br> 「きらきー」<br> その声に雪華綺晶はジュンの方へ振り向いた。<br> 「やっと・・・思い出してくれたんですね」<br> 「ごめん。今になって思い出して・・・・」<br> 謝るジュンに雪華綺晶は首を横に振った。<br> 「いいんですわ。だってこうしてジュンとまた会えたんですもの。それに・・・」<br> 「それに?」<br> 「ジュンは言ってくれましたもの。『歌が綺麗だね』って。だから、私を忘れていてもジュンの優しい気持ちは変わってないんだなぁって」<br> 「きらきー・・・」<br> ジュンは雪華綺晶に触れようとしたが、その手はあっさりとすり抜けてしまう。<br> 「………!!」<br> 「もう触れられないんですね・・・」<br> そう言うと雪華綺晶はジュンにそっと抱きついた。<br> 「・・・・きらきー」<br> ジュンも包み込むようにして雪華綺晶を抱きしめる。<br> 「あの昔話の続きを教えましょうか」<br> 「・・・・・」<br> 「女の子はずっと少年を待ち続けました。来る日も来る日も。しかし、少年は来ませんでした。そして女の子は決めたのです。<br> 少年に会いに行こうと。女の子は山を下り少年の町へ向かったのです。<br> けれど、女の子にはやはり町の空気には耐えられず、結局少年とは会えずにこの世を去ったのです。しかし女の子は諦めませんでした。<br> 女の子は神様に祈り続けました。『もう一度少年に会わせて下さい』と。その願いは叶えられて幸せな時を過ごしたのでした。<br> めでたし、めでたし・・・・。」<br> <br> <br> ジュンの目には涙が溢れていた。とめどなくただひたすらに涙を流していた。<br> 「・・・うっ・・ごめん。きらきー・・・ひぅっ」<br> ジュンは泣きながら謝った。謝ってもゆるしてもらえないのはわかっている。けれど謝らずにはいられなかった。<br> 「いいのジュン・・・・。だから・・・」<br> 「きらきー・・・・」<br> 見上げる雪華綺晶にジュンはそっと口付けをした。触れているようで触れられない美しくも悲しい口付け・・・・。<br> 唇を離すと雪華綺晶は、目に涙を溜めながらにっこりと笑った。<br> 日の光が強くなるにつれて雪華綺晶の姿がどんどん透けていく・・・。<br> 「ジュン・・ひとつだけお願いがあるの・・」<br> 「・・・なんだ?」<br> 「私のことをたまにでいいから思い出してほしいの。このな子と出会ったって。一緒に遊んだんだって。」<br> 「うん。絶対に忘れない」<br> 「・・・ありがとう」<br> ジュンの言葉に雪華綺晶は微笑んだ。さっきの笑顔とは違う、心から喜んだ笑顔だった。<br> 「ジュン?今度生まれ変わったら、また一緒に遊ぼう?」<br> 「ああ」<br> どんどん雪華綺晶が消えていく・・・<br> 「そして、一緒に暮らそう?」<br> 「・・・ああ!!」<br> 「・・・ジュン。大好き!!!」<br> その言葉と同時に雪華綺晶は目の前から消えてしまった・・・・。<br> 「きらきー・・・」<br> ジュンは雪華綺晶がいたその場所をじっと見つめる。そこには小さいけれど、白い花が誇らしげに咲いていた・・・・。<br> <br> <br> <br> <br> 『秋冬山』ここは季節によっていろんな景色をみせてくれる。<br> この山には一部の登山家しかしらない場所がある。<br> その場所は辺り一面白い花が咲き乱れ、まるで雪が積もっているように見えるらしい。<br> その花は、一年中花を咲かせている。<br> それはまるで・・・・誰かを待ち続けてるかのように・・・・・。<br> <br> ―終わり―<br>

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