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第六話 「許し」」(2006/08/13 (日) 21:28:07) の最新版変更点

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<p>第六話 「許し」<br> <br> <br> ―早朝<br> 何時も通り早くに起き病院へ行く為<br> 身支度を整えそして軽い朝食を取る。<br> 5分ほどして食べ終わり顔など洗い歯を磨き<br> 靴を履き出て行く。<br> 病院へと行くのが慣れてる事が悲しく思う。<br> オディールの事を考えるのが嫌になり<br> 無意味に周りの風景を見て気を紛らわせる。<br> 店の看板や登校途中の学生。<br> 掃除をしてる人など。<br> しかしそんな物を見てもやはりオディールの事を忘れずにいられなかった。<br> 罪を償う為にも自分に殺してと言ってくるオディール。<br> 私はそれにどう応えればいいのだろう?<br> オディールはもうすぐ退院。<br> そうなると警察に行く事になるだろう。<br> それまでに、時間で言うともう数日ぐらいだろう。<br> それまでにオディールを、どうするか考えなければ。<br> 答えを教えてくれる人は居ないのだから。<br> 周りの景色を見るのをやめオディールについて考える。<br> 合意の上での殺人は悪い事なのか?<br> 仮に私はオディールを殺してもそれは悪いことなのか?<br> 一体どうなのだろう?<br> 死刑の代わりを私がするだけの違いだ。<br> <br> 殺そうか?<br></p> <p>考えてる内に病院へと着く。<br> 自動ドアを潜り抜けエレベーターに乗る。<br> ドアが開いたので降りて薔薇水晶の病室へと向かう。<br> 今日も歌がする。<br> 二つの歌声、オディールとメグさん。<br> こんなにも美しい声のオディール。<br> 優しかったオディール。<br> 実の母を殺したオディール。<br> 大切なばらしーちゃんを殺したオディール。<br> 私は殺すべきなのか?<br> ドアをノックする。<br> 返事は何時も通り無い。<br> ドアを開けて入っていく。<br> <br> 「おはようですわ、ばらしーちゃん。」<br> <br> ベッドに横たわる薔薇水晶に近付いていく。<br> 顔を触ったりしても反応が無い。<br> 鞄から取り出した串で髪をといていく。<br> 体を拭いてあげたり着替えさしたりする。<br> その時ふと思う。<br> 起きなければ・・・死んでるのと同じ?<br></p> <p>薔薇水晶は起きない。<br> いつ起きるかわからない。<br> もしかしたら起きないかもしれない。<br> 起きないまま一生を過ごすというのは死んでるのと<br> 同じじゃないだろうか?<br> つまりオディールは<br> オディールはオディールは<br> <br> ばらしーちゃんを傷付けたんじゃなくて“殺した”<br> <br> 殺した人の罪は殺したという罪の重さにある。<br> って事はその罪を理解する事が罰。<br> 殺した事を理解されるのは殺された時だけ。<br> じゃあ、私が罰を与えましょうか?<br> 拳を強く握りオディールをどうするかだけ考え続ける。<br> 病室のドアが開く。<br> 私はハッとしてドアの方を向く。<br> 其処には真紅がいた。<br> 相変わらず言葉は出ないようで紙にメッセージを書いて<br> 喋りかけてくる。<br> <br> “久しぶりなのだわ、雪華綺晶”<br> 「・・・久しぶりですわ。」<br> <br> そう言うと真紅は雪華綺晶の隣の椅子に座ってくる。<br> ・・・何を考えてたんでしょう?私は・・。<br> そんな事してもばらしーちゃんは起きないのに。<br></p> <p>涙が出そうになるが堪える。<br> “オディールを殺す”<br> そんな事を考えるのはやめて再び薔薇水晶の<br> 髪をときだす。<br> 真紅は何も言わないというより言えないのだが<br> 黙ってそれを見続けている。<br> 暫くして髪をとくのをやめじっと椅子に座る。<br> いつ目覚めるかはわからないがじっと待ち続ける。<br> そんな中真紅が紙を渡してくる。<br> 何が書いてあるのかと思い紙を見る。<br> <br> “あの歌は何なのだわ?”<br> <br> やはり真紅も気になるのか。<br> <br> 「水銀燈の親戚の人が入院してて・・。<br>  その人と向かいの雛苺の親戚の人がずっと歌ってるのですわ。」<br> “そうなの・・・。水銀燈に雛苺、あの子らの親戚まで・・。”<br> <br> 真紅は暗い表情を見せる。<br> 私の他にも自分の友達の大変な思いをしてると<br> 思ったからだろう。ほんと友達思いだと思う。<br> <br> 「少し・・・会いに行きましょうか?」<br> “えっ?”<br></p> <p>私はきょとんとしてる真紅を置いて<br> 椅子から立ち上がりドアの方へと向かう。<br> 慌てて真紅も追いかけてくる。<br> <br> “お邪魔してもいいの?”<br> 「ええ、前にもお会いしたことがあるので大丈夫だと。」<br> <br> そんな会話をしながら歌のする方へと向かっていく。<br> オディールの名が掲げられてるドアを視界に入れず<br> 柿崎さんの部屋をノックする。<br> <br> 「誰?」<br> 「白い天使ですわ。」<br> <br> そう言いながらドアを開けて入っていく。<br> 真紅は頭の上に?マークを浮かべるとでもいうのか<br> 疑問そうに思いながら私について来る。<br> <br> 「入っていいなんて言っても無いのに勝手に入るなんて<br>  とんだ天使さんね。」<br> 「いけなかったですか?」<br> 「ううん、そんな事無いよ。歓迎するわ。」<br> <br> ベッドの上に座る柿崎さんと喋りながらベッドの方へと向かう。<br> 柿崎さんがベッドの下から椅子を二つ取り出してくれたので<br> 私たちは座ることにする。</p> <br> <p>「この人、水銀燈の友達の真紅ですの。」<br> “初めまして、よろしくなのだわ。”<br> 紙に挨拶を書いて渡してくる<br> 真紅を疑問そうに見る。<br> 初対面の人なら思ってもしょうがない。<br> <br> 「彼女声が出ないのですわ。」<br> 「そうだったの・・・御免なさい悲劇の女王様。」<br> “・・・?”<br> 「アリスに出てくる首切り女王では無くまるで<br>  シンデレラのような悲劇を経た女王様。<br>  あなたなら私に生きる意味を教えてくれる?」<br> “???”<br> <br> 真紅は何を言ってるか理解できてないようだ。<br> 無理も無い、しかし柿崎さんが少し変わってくれて嬉しい。<br> 前ならアリスのシンデレラのように首でも切り落としてくれるの?<br> とでも聞きかねないからだ。<br> そうだ、二人に聞いてみよう。<br> <br> 「柿崎さん、真紅、私ってどうすればいいのだと思います?」<br> <br> そう言うと二人はこっちを向いてくる。<br> <br></p> <p>「どういう事?その前に前から思ってたんだけど<br> 私の事柿崎じゃなくてメグって呼んでね。あなたもね。」<br> “わかったのだわ。”<br> 「ええ、わかりましたわメグ。」<br> 「ふふ・・・で、どう?いう事どうすればいいって?」<br> <br> 私はオディールの事を話す。<br> 親を殺したという事、ばらしーちゃんを傷付け・・いや殺したも同然な事。<br> そして私に自分の事を殺して欲しいといってくる事。<br> 二人は黙って私の話を聞く。<br> <br> 「私は・・・どうすればいいのでしょう?」<br> <br> 気付くと泣いていた。<br> 涙で前がよく見えない。<br> しかし真紅が顔を思いっきりはたいたお陰で<br> 涙が散りようやく見えるようになる。<br> <br> “殺すなんて考えるのは駄目に決まってるわ!”<br> <br> 目が見えて見えたのは怒り狂った真紅が私に<br> 自分の言葉を書いた紙をつきつけてきている所。<br> 真紅は紙を手前に戻し何か書くと私に再び見せる。<br> <br> “薔薇水晶が喜ぶと思うの!?”</p> <br> <p>思わない。<br> ばらしーちゃんが私が人を殺すなど言って<br> 喜ぶ訳が無い。そう思うから、私はオディールを殺していない。<br> けど、それは隠してるだけ。<br> 殺したいという気持ちを隠してるだけで消えていない。<br> 気付いたら私は殺すという事しか考えれてない。<br> <br> 「わかってますわ・・・けど・・・憎くて!許せなくて!」<br> <br> 泣いてるせいでうまく声が出ないが力を込めて叫ぶ。<br> 病院だから静かにしなくてはいけないなんて事は考えず<br> 自分の気持ちを兎に角主張したくて。<br> <br> 「そう思うのしょうがないよ。」<br> <br> ベッドの上で座ってるメグが言う。<br> こんな雰囲気に関わらず笑ったままだ。<br> <br> 「憎いなら誰でも殺したいって思うもんね。」<br> <br> 真紅がメグに掴み掛かる。<br> 笑いながらこんな事を言うメグに怒りを覚えたからだろう。<br> 私はメグの体はただでさえ弱いのを知ってるので<br> 真紅の手をメグの体から離す。</p> <br> <p>「御免ね、怒らしちゃった?」<br> <br> 真紅は黙って睨む。<br> <br> 「話を戻すね、白い天使さんはオディールが殺してとばっか言ってる内に<br>  殺してしまおうかと思うようになったんだよね?死を望むオディールを。」<br> <br> 黙って頷く。<br> <br> 「じゃあオディールが殺してなんて言わない様に説得したみたら?<br>  そしたら天使さんも殺したいと思わないようになるかもよ?<br>  説得出来なかったらオディールに会うのをやめなよ。<br>  会ったら殺したいと思うだけなんだし。」<br> <br> 説得する。<br> オディールが殺されて償いたいなんて言わない様になれば<br> 私はこの衝動を抑えれるのだろうか?<br> それが無理だとしても数日会わなかったらオディールはもう<br> 退院して刑務所かどっかに送られるだろう。</p> <br> <p>「ね、どう?」<br> <br> メグがまだ笑ったまま尋ねてくる。<br> こんな事を笑いながら言ってくるなんて。<br> ある意味この子は凄く恐ろしいかもしれない。<br> <br> 「悪く・・・無いですわ。」<br> 「なら今行ってきなよ。また気持ちが変わるかもよ?」<br> 「・・・そうしますわ。」<br> <br> そう言い雪華綺晶は立ち上がる。<br> <br> 「真紅は待っていて下さい、私一人で説得します。」<br> <br> 真紅は黙って頷く。<br></p> <p> 「説得出来たら一番いいね。そうなるよう祈っとくよ。」<br> <br> 後ろからメグが言ってくる。<br> 私は後ろを向きつつ頷きドアを開けて<br> オディールの部屋へと向かう。<br> 何かやらしいがドアに聞き耳を立てる。<br> どうやら雛苺は来てないようだ。<br> 彼女が居なくて本当によかった。<br> 私はそう思いノックをする。<br> <br> 「雪華綺晶です。」<br> <br> 私はそれだけ言うと黙って入る。<br> 入った先にはオディールが居た。<br> 昨日のように私に会っても発狂したりしない。<br> 精神安定剤か何か飲まされたのだろうか?<br> <br> 「殺して・・・くれるの?」<br> <br> その言葉で心の奥深くから殺気が沸いてくる。<br> しかしそれを私は抑えオディールに向かって言う。<br> <br> 「もう殺してなんて言わないで!」<br> <br> オディールはきょとんとしている。<br> 続けて雪華綺晶は言う。<br> <br> 「死んでも何もなりません!から殺しなんかしません!」<br> </p> <p>精一杯の言葉だった。<br> 殺気を抑えての必死な言葉。<br> 必死な気持ち。<br> その気持ちをオディールは笑いながら崩してきた。<br> <br> 「じゃあ聞くけど・・・あなたはそうかもしれないけど<br>  薔薇水晶さんはどうだと思う・・・?」<br> 「・・・何が言いたいのです。」<br> 「雪華綺晶さん、あなたが私を恨んでても殺したくないって思うのはわかる・・・。<br>  けど恨んでるのはあなただけじゃない。<br>  一番恨んでるのは薔薇水晶さんじゃないの・・・?」<br> 「・・・!」<br> 「轢かれた人が・・・一番恨んでるに決まってる。<br>  それこそ・・・あなたとは格別なぐらいの・・・恨み。」<br> <br> 気持ちが崩れそうになる。<br> <br> 「私を・・・苦しめて・・・苦しめて・・・そして殺したい。<br>  薔薇水晶さんはきっとそう思ってるわ・・・。」<br> <br> もう、そんな事言わないで。<br> <br> 「もしかしたら薔薇水晶さんが目覚めたら・・・私の事殺すかもしれないわ。<br>  妹の手を・・・血に染めたくないよね?」<br></p> <p>枕の下から何かを取り出してくる。<br> それは何か薬が入った小瓶。<br> <br> 「だからあなたが私の事・・・殺してよ・・・。<br>  この薬飲ましてくれるだけで・・・いいわ。」<br> <br> やめて、やめて、やめて。<br> もう何にも言わないで。<br> <br> 「苦しめたいなら・・・殴り殺したっていいし。<br>  兎に角どうしてくれたって・・・いいよ。」<br> <br> オディールは小瓶を渡してくる。<br> <br> 「殺して。」<br> <br> 抑えられなくなった。<br> 抑えていた殺気が湧き出した。<br> 雪華綺晶は瓶をゆっくり開けると<br> 何粒か手に乗せる。<br> 一粒で充分なのに何粒も乗せるのは<br> それだけオディールの憎いという事だろう。<br></p> <p> ばらしーちゃんには運転手は死んでたとだけ伝えればいい。<br> そう思いながら手に乗せた薬をゆっくりとゆっくりと<br> オディールの口へと運んでいく。<br> オディールは笑いながら小さな口を開ける。<br> 雪華綺晶はその口にゆっくりと、ゆっくりと<br> 死の薬を運んでいく。<br> しかし口の前で薬を思いっきり握る。<br> <br> 「どうしたの・・・?殺さないの?」<br> <br> オディールを思いっきり殴った。<br></p> <p>「・・・!」<br> <br> オディールはベッドの向こう側に落ちる。<br> 何が起きたか一瞬わからなかったが少しして理解する。<br> そしてベッドの上へもう一度上がった。<br> <br> 「どうしたの・・・?」<br> <br> 雪華綺晶は握ってた拳を開ける。<br> 薬がパラパラと床へと落ちる。<br> <br> 「何してるの・・・?」<br> <br> 雪華綺晶は何も言わずに後ろを向いた。<br> どうやら泣いてるようだ。<br> <br> 「殺してくれるんじゃないの・・・?」<br> <br> 黙ってドアの方へと歩く。<br> オディールの言葉を無視して。<br> <br> 「ねぇ・・・何で・・・?」<br> <br> 雪華綺晶は振り向かないまま答えた。<br> <br> 「ばらしーちゃんは・・・殺したいなんて・・・思いませんわ・・・。<br>  優しい子ですもの・・・強い子ですもの・・・。」<br></p> <p> 「・・・けどあなたが殺したいのは違いないでしょう?」<br> <br> 雪華綺晶はドアのノブに手をかけながら言った。<br> <br> 「殺したい!憎い!憎らしい!けど・・・けど・・・。」<br> <br> 一息おいて言う。<br> <br> 「一度仲良く喋った・・・あなたの歌を聞いた・・・一度あなたと笑った・・・。<br>  だから・・・殺せる筈ないじゃないですか・・・そんな人を・・・。」<br> <br> そのまま床に膝をつき泣き続ける。<br> 暫く泣いた後雪華綺晶は立ち上がりノブに手をかける。<br> <br> 「もう・・・私に近付かないで下さい。」<br> <br> それだけ言うとノブを回して出て行った。<br> 走ってメグの部屋へ急いで駆け込む。<br> 中に居た二人は泣きながら駆け込んできた私を見て驚いている。<br> <br> “どうしたの!?”<br> <br> 真紅はそう紙を見せて言うと急いで駆けつけて来る。<br> メグは布団の上できょとんとしていた。<br></p> <p>二人に事情を話しどうにか落ち着く。<br> 私は椅子の上でハンカチで涙を拭いていた。<br> <br> “大変だったのね・・・・”<br> <br> 黙って頷く。<br> <br> 「けど良かったね、偉いよ天使さん。」<br> <br> 相も変わらず笑ったまんまでメグは喋りかけてくる。<br> 何故こうもずっと笑ってられるのだろう?<br> <br> 「雪華綺晶どーこーなーのー?」<br> <br> そんな事を考えてる内に雛苺の声が廊下から聞こえてきた。<br> いい年して病院の廊下で騒ぐとは。<br> そんな事より雛苺にはなんて説明しよう?<br> 私がオディールに会いたくないなんて言ったら理由を聞いて来るはずだ。<br> どうしよう?<br> <br> “私が説明してくるわ。”<br> <br> 真紅が私に紙を見せる。<br> すると部屋の外へと行こうとする。<br> <br> 「・・・真紅。」<br> “休んでなさい。”<br></p> <p>「・・・感謝しますわ。」<br> <br> 真紅はドアを開けて雛苺に説明しに行った。<br> 彼女は本当に優しい、心の底から感謝しよう。<br> <br> 「女王様優しいね。」<br> <br> 女王様というネーミングはやめといた方が良いと<br> 思いながらメグの方を向く。<br> <br> 「休んでなよ天使さん、疲れたでしょ?」<br> 「・・・そうさしてもらいます。」<br> <br> 流石に色んな事があって疲れた。<br> 少しだけ眠ろう・・・。<br> 私の意識は沈んでいった。<br> ・・・暫く寝てたのでしょうか?<br> 何かの音で目を覚まし思う。<br> ガサガサという音がしたのでそれで目が覚めたのだった。<br> 目を開けてみる。<br> メグが何か薬を飲んでいる。<br> 病気の薬だろうか?そんな事を考えてたが<br> 小瓶を見てそれが違うと気付く。<br> オディールから没収し、二人の目の前で説明しながら<br> バッグにしまった自殺用だと思われる薬。<br> メグはそれを飲んでいた。<br> そしてゆっくりとメグの体は倒れていった。<br></p> <br>

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