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【卒業、思い出、女子高生、放課後】」(2006/08/13 (日) 17:41:08) の最新版変更点

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人と人とが出会うこと。それは、私たちに必要なことで、とても、尊い。<br>  支えてくれる人が居る。夢を語り合える人が居る。愛を、囁ける人が居る。<br>  だから、人は出会いに運命を感じ、手を取り合って、未来への道を選ぶのだ。<br> <br>  とても、感傷的な言葉。感傷に浸るのは、あまり好きではなかったはずなのだけど。<br>  そう。私は、出会えた。この高校という、ある意味、一つの世界の中で、ともに笑い、ともに泣き、そして、キスできる人を見つけた。<br>  だから、寂しさとは無縁の日常だったのだ。騒がしすぎるそれは、とてもとても楽しくて、私には笑顔を見せなかった思い出なんて、思い出せない。<br>  喧嘩もしたけど、それでも、今は笑顔でそれを話せる。それが、どれだけすごいかなんて、今日にならないとわからなかった。<br> <br>  今日。そう、今日は、とても特別な日に違いなかった。ある人は始まりだと言うだろうし、ある人は、終わりだと言うだろう。<br>  私は、どちらだろう、と考える。どちらも、正しいのだろう。それは、人と出会うのなら、必然に起こることだから。<br>  ……ああ、つらい。別れという言葉を、無意識に避けていたようだ。それを考えるだけで、心が悲鳴をあげる。<br>  別れなんてない方がいいのに。永遠に、あの、温かい、みんなが傍に居てくれる世界が続けばいいのに。<br>  それは、果てしなく、きっと、誰だって思う、途方もないこと。子供のころ、描いていた夢と同じくらいの、純粋な願い。<br> <br>  幸せな日々というのは、その時一瞬ではないのだ。一つ一つ、積み重ねてきたから、そこに幸せと呼ばれる、実態のないものが存在する。<br>  だから、みんな幸せを手に入れるために努力する。少なくとも、私は努力してきた。<br>  思い出は、きっと語ろうと思えば、いつまでも語れるに違いない。私の周りに居た、彼女たち、という限定だけど。<br> <br>  たとえば、私は、紅茶好きの少女と、一緒に紅茶を飲んだことがある。その香りを、今も覚えている。<br>  たとえば、私は、歌を歌うのが好きな少女と、一緒に歌を歌ったことがある。その音を、今も覚えている。<br>  たとえば、私は、とても綺麗な花を育てた双子と、一緒に自然を感じたことがある。その感触を、今も覚えている。<br>  たとえば、私は、元気のいい子供のような二人と、一緒に卵焼きと、苺大福を食べたことがある。その味を、今も覚えている。<br>  ――たとえば、私は、私と同じ少女と、私が世界で一番好きな人と、夕焼けを見に行ったことがある。その風景を、私は、一生忘れない。<br> <br> <dl> <dd>  窓を開ける。今は、いつも校庭から聞こえていた声も聞こえず、ただ、寂しさが聞こえてきていた。<br>  そよそよと、風は私を通り抜け、そしてどこかに行ってしまう。どこに行くのだろう。それは、この綺麗な夕焼けよりも、向こう側なんだろうか。<br>  夕焼け。よりによって、この日に、こんな綺麗な夕焼けだなんて、世界はきっと、気が利きすぎている。気の利かせすぎは、いじわるだ。<br>  ……だけど、私は、この夕焼けも、きっと生涯忘れることはないんだろうな、と思う。今までで、一番ではないけど、二番目には、綺麗な夕焼けに見えたから。<br> <br>  放課後の教室。ずっとずっと煌いた日々が、私に語りかけてくる。<br>  文化祭のこと。クラスで、コスプレ喫茶なんてやって、あの人がとても可愛いデザインをして、クラス中から褒められて、嬉しそうにして。<br>  それで、少し嫉妬してしまいそうになったけれど、やっぱり、でも、それは、私にとっても、きっと、みんなにとっても、嬉しいことに違いなくて。<br>  体育祭のこと。私が転んで怪我をしてしまったとき、あの人は真っ先に駆けつけてくれて、そのままお姫様抱っこで、保健室まで連れて行ってくれた。<br>  とても恥ずかしかったけど、とても嬉しくて、保健室でちょっといい雰囲気になった。もっとも、その後、邪魔されてしまったけど。<br>  クリスマスのこと。学校でクリスマスパーティーをした。本当なら、私は、あの人と、あの子と三人でしたかったんだけど、まあ、楽しかったから、いい。<br>  でも、未だに、私はあの時、あの人にキスをしたことを誰にも話していない。話したら、きっとまずいことになる。<br>  バレンタインのこと。あの人が、モテてモテて、しょうがなかったから、いらない争いが起きた。今思えば、誰が最初に渡しても、大して変わらない気がする。<br>  それはつまり、私が大人になったのかなぁ、と思うけど、たぶん、違う。大事なことが、そういうことではないということに気づいただけだろう。<br> <br>  ――ああ、とても、素敵な日々だった。<br> <br>  私は、この素敵な時間を、ビー玉とか、透明で、いつでも覗ける、綺麗なものに閉じ込めておきたい。<br>  悲しいときとか、嬉しいときとか。ありとあらゆるとき、私は、そのビー玉を覗くのだ。ああ、幸せな日々だ、と、思い出しながら。<br> <br></dd> <dd>  私は、屋上に行くことにした。きっと、今屋上は、見惚れてしまう綺麗な茜色に染まっている。<br>  歩く。特に、感慨はないような気がしたけど、心なしか、歩く速さは、いつもよりも遅かったかもしれない。<br>  壁の傷。休み時間に、ここで約束したわけではないのに、廊下に集まってくる仲間。そんなことが、どうしようもなく嬉しかった。<br> <br>  階段をのぼる。いつだったか、ここで肝試しなんかもした。真夜中で、真っ暗で、ここはとても怖い場所だった。<br>  あの時は、あの人が傍に居てくれたから、怖くなかったけど、……今は、どうかな。怖くはない。だけど、うん、正直に言えば、寂しい。<br>  寂しい。そうか。この、胸の真ん中が、ぽっかりと空いたような感じは、寂しい、という言葉で表されるものだったのか。納得。納得したけど、つらい、かも。<br> <br>  そんな思考をしているうちに、私は屋上までたどり着いた。後は、ドアを開けるだけ。<br>  開けるだけなんだけど、それが何故かためらわれた。開けて、もしも夜だったらどうしよう。綺麗な綺麗な夕焼けではなく、冷たい冷たい夜だったら。<br>  もしも、本当に夜だったら、私は泣いてしまうだろう。何故か、なんて考えるまでもなく、寂しくて、寂しくて、みんなの名前を呼び続けるのだ。<br>  どうか、その夜が、朝が来る夜でありますように。私は、心からそう願った。願うことは、とても綺麗だ。だから、きっと神様だって叶えてくれる。<br> <br>  そして、ドアを、開ける。<br> <br>  強く吹く風に、そっと響く音がある。もう風は私を通り抜けない。体で、私はそれを受ける。遠い日の、優しい旋律が、風の中に響いている。 <br> <br> <br></dd> <dd>  もう、忘れてしまったけど、私は、もともと、一人だった。一人で、泣いているしかない少女だった。<br>  私は、一人になれる屋上が好きで、その屋上から見える、夕焼けが大好きだった。<br> <br>  いつからだろう。その夕焼けを見るのが、一人から、二人になったのは。<br> <br>  それは、とても優しい懐古。今はもう、きっと必要ない回顧。私が、ここで一人で夕焼けを見るのは、これで最後。<br>  後は、言うまでもなく、みんなと一緒に見るのだ。これから、それぞれが、それぞれの夢のために分かれてしまうけど、それでも、みんなと、この景色を、もう一度見る。<br> <br>  ああ、……夜が下りてくる。幕が下りるように、緩やかに、夕焼けを消していく。<br>  だから、無性に叫びたくなる。消さないで。これ以上、消さないで。私の、大事な思い出を。大事な、とても大事な幸せな日々を――。<br>  それは、意味がないけど、意味がなくたって、私はここで叫ばなきゃいけなかった。逢いたくても、もう簡単に逢えなくなってしまう人が居る。<br>  そんなことを、当たり前のように扱う世界。逢いたいのに逢えないのが、どれだけつらいことか、世界は知らないんだろう。だから、こんなことができるんだ。<br> <br>  だから、さあ、立ち上がれ。空を見上げろ。茜色が藍色に変わっていく空に、叫ぶんだ。私たちの絆を。私たちの、幸せを。<br> <br> 「私は、」<br> <br>  ……ああ、夢が、想い出に変わる前に、どうか、神様。<br> <br> 「私は、幸せでしたーーーーーーーーーー!」<br> <br> <br>  肩で、息をする。あはは、もう、満足。満足で、満足で。私は、涙が、出て――<br> <br> 「私だって、幸せだったわーーーーーーーーー!」<br> 「私だって、幸せだったわよぉーーーーーーーーーー!」<br> <br> 「え?」<br>  叫び声が聞こえた。とても優しい、心から優しい叫び声。<br> <br> 「僕だって、幸せだったーーーーーーーーーー!」<br> 「私も、幸せでしたですーーーーーーーーーー!」<br> <br>  みんながみんな、何故か目が赤くて。<br> <br> 「ヒナも、幸せだったのーーーーーーーーーー!」<br> 「カナだって、幸せだったかしらーーーーーーーーーー!」<br> <br>  だけど、みんながみんな、とても幸せそうな顔をしていて。<br> <br> 「私も! とても、幸せだったんだよ! 貴方に、負けないくらいーーーーーーーーーー!」<br> <br>  彼女だって、とても、幸せそうな顔をして。<br> <br>  そして、そして、あの人は――<br> <br> 「薔薇水晶ーーーーーーーーーー!」<br> <br>  あの人は、私の名前を、呼んでくれた。<br> <br></dd> <dd>「僕は、みんなと居る日々が好きで!」<br> <br> 「うん、」<br> <br> 「僕は、みんなと笑いあえるこの場所が大好きで!」<br> <br> 「うんっ」<br> <br> <br> 「僕は、君が居てくれて、とても幸せだったーーーーーーーーーー!」<br> <br> <br> 「ジュン……っ」<br>  ジュンの胸に飛び込む。もう、いい。もう、大丈夫だ。そうだ。何も、心配することなんて、なかった。<br>  絆がある。私たちには、いつまでもいつまでも切れない絆がある。その絆は、この場所で過ごした、あの幸せな日々は、きっと、永遠にある。<br> <br>  だから――<br> <br> 「行こう、ジュン」<br> 「ああ、行こう、薔薇水晶」<br> <br>  だから、手を繋ごう。一緒に。みんなで。新たな想い出と、もっと素敵な絆を作るために。<br> <br>  もっと、幸せな日々を、築けるように。<br> <br> <br>  end.<br> <br> <br> <br> <br> 【そしてもっと幸せな騒がしい日常】<br> <br> <strong><font color= "#008000">以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします</font></strong>:おまけ:【そしてもっと幸せな騒がしい日常】 :2006/08/06(日) 22:30:43.52 ID:qHmZUT8K0</dd> <dd> 「っていうか何二人してイチャついてやがるんですか。今から卒業パーティーで打ち上げなんだから、そういうのやめるです!」<br> 「そうなのー。そうしないと、翠星石が嫉妬して大変なことになるのー」<br> 「こら、おばか苺! 何を言ってやがるです!」<br> <br> 「いやでも、翠星石の言うとおりだよ。みんなで楽しもう?」<br> 「そ、蒼星石? そのはさみは何なのかしら?」<br> 「…………知りたい?」<br> 「や、やっぱり遠慮するかしらー!?」<br> <br> 「まったく、最後まで騒がしい連中だこと」<br> 「あらぁ、さっきまでわんわん泣いてた、どっかの誰かさんが一番騒がしかったような気がするわぁ」<br> 「ああ、それは自分のことを言っているね」<br> 「……うるさいっ」<br> 「お互い様よ。……何、決着でもつける?」<br> 「上等よぉ。表出なさい」<br> <br> 「ジュン。薔薇水晶」<br> 「ん、雪華綺晶」<br> 「――何二人してイチャついてんだコラァ!!」<br> 「ごふっ!?」<br> 「ずるいずるいずるいずるい! 私だって、イチャついてやるー!」<br> 「ジュンは渡さないもんっ」<br> 「あ、ちょ、薔薇水晶――」<br> <br>  ちゅ。<br> <br> 「「「「「「「あーーーーーーーーーー!」」」」」」」<br> <br>  そんな、幸せな日々。どうか、神様。この優しい日々が、いつまでも続きますように。<br> <br></dd> </dl>

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