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第48話「血、肉、骨」」(2006/08/12 (土) 16:15:15) の最新版変更点

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<p> 人が笑っている。<br>  目の前で、低い声を上げて。<br>  笑われる事は慣れているものの、やはり気持ち良いものではない。<br>  況してや、押し殺すような声なら尚更だ。<br> 苛立つ心を抑え、目の前の人に話しかける。</p> <br> <p>J「要は何を俺に求めてるんだ?」<br> 人「簡単です、あのお方にプログラミングされた事を、実行する事です」<br> J「内容は?と聞いているんだが」<br> 人「そういう事なら、御心配なく」<br> 人「私を杖の状態にし、ジュン様の体内に取り入れる事です」</p> <br> <p>  体を全体的に改変し、脳内のデータ化や、体の収縮拡張を繰り返したこの身でも。<br>  人に体を弄られるのは、やはり厭というもので。<br>  寧ろ、前の事が有るから、トラウマになりそうな所であるが。<br>  コレも仕事のうちだ、と割り切り。<br>  自分も随分、楽観的思考になったと思い。<br> ため息をつく。</p> <br> <p>J「それで、具体的には?」<br> 人「私を杖の常態にし、貴方の体の何処かに刺すのです」</p> <br> <p> ついに、ローゼンとか言う奴は、凶行に出たか。<br>  いくら俺が、数回死にそうになったからって。<br>  俺の体に、外部的調教を施しに出るとは。<br> 全く、何て時代になったもんだ。</p> <br> <p>J「痛い?」<br> 人「大丈夫ですよ、死にはしません」<br> J「痛いんだな? 其れは。」<br> 人「大丈夫ですよ、臓器が数十秒間、使い物に為らなくなるだけで」<br> J「其れは・・・勘弁して欲しいんだが」<br> 人「大丈夫ですよ、死にはしません」</p> <br> <p> こんな押し問答を、数十秒繰り返し。<br>  エンドレスで、この会話が続く事に気が付き。<br>  さっさと、覚悟を決める事にした。<br>  何処が良いかと考えたが、やはり此処はオードソックスに、腹の胃の所をやってもらう事にした。<br> 此処なら多分、余り痛くは・・・無い。</p> <br> <p>J「それじゃあ、腹を頼む。」<br> 人「判りました。」</p> <br> <p> そう言うと、人は形状を解き。<br>  杖となり、宙に浮く。<br>  久しぶりに見た其れは。<br>  其れなりに大きくなって、尚且つ肥大化して見えた。<br>  目の錯覚だと、思いたかった。<br>  しかし、杖が目の前に来て。<br> 其れが目の錯覚ではない事に、多少の絶望と焦燥感を感じた。</p> <br> <p>杖「それでは、入りますので・・・」<br> J「・・・フグッ!アッカハッ!!アッ!・・・」</p> <br> <p>  ドスッ!という鈍い音と共に、地下に絶叫が響いた。<br>  せめて、こんなステータスの上げ方をするなら。<br>  神経を切ってくれればと、薄れ行く意識の中で考えていた。<br>  杖が何か言ってる様な気がしたが、どうでもいい気がして意識が途切れた。<br>  頭の中で、涙の数だけ、強くなれるの~♪がエコーした。<br> 気がした。</p> <br> <p>  その頃上の階では、あの8人が食事を食堂でとっていた。<br>  ジュンが何処かに行ってしまったが、飯を取らなくてはまともに活動が出来ない。<br>  此処で皆有る事に気がつく、最近飯を食べる量が急増した気がしてきた。<br>  しかし、体はどんなに食べても太らない、否、太れないのかもしれない。<br>  体の中で常に何かが変化し、変化させられているのが判るが。<br>  如何なっているのかが、サッパリ判らない。<br>  判りそうで判らない、もどかしいと彼女等は思った。<br>  此処最近、血を怖がらなくなって来ている。<br>  其れが、良い事なのか悪い事なのかは、判らない。<br>  しかし、其れを判別するのを、遮るものがある。<br>  生への渇望、死への恐怖、そして何より。<br>  本能の強大な、生に対する美意識。<br>  しかし、殺すという事に対する、罪悪感もある。<br>  結局は、如何しようも無いのだけど・・・<br>  数名が、心の中でため息をつき。<br> 数名が自己険悪に陥った。</p> <br> <p>数名(不毛・・・だよねぇ・・・)<br> 数名(はぁ・・・)</p> <br> <p> そんな方法でしか、解決できないのも。<br> 仕方が無いといったら、仕方が無いのだが・・・</p> <br> <p> その頃ジュンは、所々破けた服を見て。<br>  変な気を起こした奴だと、間違えられるか如何か検討をしていた。<br>  此処は地下の数階、服が無いことは無い。<br> 唯其れは、如何見ても人のタキシードです、如何も有難う御座いました。</p> <br> <p>J「何を考えているんだ? あいつは・・・」</p> <br> <p>  此処を出るには申し分ない、しかし、生理的に厭なものが有る。<br>  しかも普段着慣れない服だ、何処ぞのやくざ風にも成りかねない。<br>  ・・・汗は・・・かかないか、やっぱり。<br> 少し安心した。</p> <br> <p>J「人の服を着るのは・・・やっぱ厭だなぁ・・・」</p> <br> <p> そんな事を言いながら、タキシードを着る。<br>  ・・・おおっ!?意外とピッタリだ・・・<br>  何かしっくり来るな・・・何だこの優越感は?<br>  そんな事を考えながら、ジュンは地下の道を行く。<br>  何時もよりも少しばかり、ジュンは自分が少しばかり偉くなった気がした。<br>  しかし、唯服が良くなっただけという事実に気がつき。<br>  ガックリと肩を落とし、盛大にため息を吐いた。<br>  あの後、杖の人格が新しい人格として、ジュンの中に入ってきた。<br>  ・・・正直、入ってくる時の感覚は、厭だ。<br>  弄られる事自体好きじゃない。<br> 最も、自分で弄るのは論外だが。</p> <br> <p>J「・・・やっぱりトラウマか・・・」</p> <br> <p> ・・・まぁ、アレは生き地獄の言葉に尽きる。<br>  麻酔を全身に満たし、気絶しきれない精神で全身を弄られるのを見届ける。<br>  こんな酷い地獄は、煉獄にも無いかもしれない。<br> ここで、口の中に出した、紅く染まった体液を吐く。</p> <br> <p>J「んー・・・良し」</p> <br> <p> 其れは言わば、麻薬と呼ばれそうな代物であり。<br>  暇な時は、口の中に半麻薬ような効果の体液を出し。<br>  其れを、口の温度を上昇させ、霧にして肺に入れて楽しみ。<br>  楽しんだ後は、口から血で効果を打ち消して吐く。<br>  最も、体内の細胞はコレ位では、一つたりとも死にはしない。<br>  序に、中毒症状も無い。<br>  完璧に、作用だけを楽しむものなのだ。<br> 毒素など必要ない。</p> <br> <p>J「・・・はぁ」</p> <br> <p>  けれども、血で作用を打ち消すのは、精神的に厭だからだろう。<br> 例え其れが、中毒作用が無くとも。</p> <br> <p>J「如何したものかな・・・」</p> <br> <p>  其れを止められない自分も厭だが、結局暇な時はコレをしている。<br>  最も最近は、暇な時が無かったので、コレをしなかったのだが。<br> 久しぶりにしてみた其れは、結構良いものだった。</p> <br> <p>J「さて、行くか。」</p> <br> <p>  最後に力を入れて言い放ち、ジュンは其処を走り去った。<br>  最もコレを見た人は、一人も居なかった。<br> 誰一人として。</p> <br> <p>  ジュンが上に向かっている頃、上から何かが落ちてくる。<br>  ふと見ると其れは白い、触ってみるとフワフワしている。<br> 何かと思っていると、其れの気配は何処かへ消えて行った。</p> <br> <p>J「・・・はて・・・?」</p> <br> <p> しかし、其れを気にする前にある事に気がつく。<br>  お腹すいた。<br>  やはり喰える内に、喰って置くのが基本である。<br>  走って食堂まで向かった。<br>  その頃、彼女等は久しぶりの風呂に歓声を上げて。<br>  風呂に数名が飛び込み、数名が丁寧に体を洗っていた。<br> 風呂には、静かにしなさいという罵声と、女子がはしゃぐ声だけが響いた。</p> <br> <p>J「さて、と」</p> <br> <p>  数分で食堂にたどり着くと、食べるものを抱えて席に座る。<br>  基本的に食べる数は、人格の人数分。<br> だが、本当に其れで良いのか分からない、判らないので。</p> <br> <p>J「頂きます」</p> <br> <p> ざっと、10人前食べる事にした。<br>  大食い?そんな事気にしない。<br>  さて、この食い物は何処に消えていくのやら。<br>  6人前を食べた頃そう思った。<br>  まぁ、良いかと思った。<br>  そしてまた、一人分を食い漁る。<br>  やっぱり、肉類は血が少し残ってる方が良い。<br>  牛の肩の肉を食べながら、ふとそう思った。<br>  骨は、少し血が残ってて、噛み具合が良いな。<br> 食堂に口の中で、骨が砕ける音が、少し響いた。</p>

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