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「薔薇乙女戦記」第一話」(2006/08/01 (火) 17:11:45) の最新版変更点

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「薔薇乙女戦記」第一話<br> <br> <br> 目の前には、風車と麦畑が広がっている。<br> 金色に輝いて見える麦の海は、どこまでも吹き抜ける風でそよいでいた。<br> 周囲には、小高い山々、そして森。<br> 緑豊かなこの国の名は、アリス・ケーニクライヒ。大陸の端に存在する小さな王国だ。<br> そして、先ほどから麦畑を見渡している青年は、この国の貴族。<br> 名前はジュン。<br> <br> 一見平和そうなこの国は、今、周辺国の圧力と、国内に出没しはじめた賊の脅威に脅かされている。<br> ただ今はっきりと言えることは、この王国が滅びかけているということだけだ。<br> <br> 我が国の国王が名君と称えられたのは先代までの話で、実際、今の王は名君とは程遠かった。<br> 指導者は民を想い、民の声を大事にしなくてはならないはずだが、現在の国王、<br> 先代国王ローゼンの一人娘、雪華綺晶は、そんなことなど知る由もないようで、<br> 王政は迷走を続けている。<br> <br> これはジュンの憶測に過ぎないが、ローゼンは何らかの陰謀に巻き込まれ、<br> 謀殺されたのではないだろうか?<br> ジュンの父は、元々国王の相談役だったが、他の貴族たちの罠に嵌められ、<br> 宮廷を追われ、財産を剥奪され、狭い領地で領民と共に畑を耕すという、<br> 貴族らしからぬ貧しい日々を送ることになった。<br> <br> だがこれは、国王の地位を纂奪せんとする他の王侯貴族が、経験不足の雪華綺晶を<br> 王位に据えるために、父を罠に嵌めたということではないだろうか?<br> <br> ---だとすれば、父はさぞ無念だったことだろう。<br> 自分が追放されなければ、国王の命を守れたかもしれないのだ。<br> <br> しかし、真相を確かめてみない限り、ジュンの考えは憶測のままだ。<br> ローゼンが「殺害」された証拠さえ掴めれば、雪華綺晶を操り、<br> 王国を乗っ取らんとする不届きな輩はいなくなる。<br> <br> 王国の為を思うなら、真相を解き明かすべきだ。<br> ジュンが屋敷にある自室にこもる時間は、日に日に増えていった。<br> <br> 王侯貴族の中にも、現在の政治に不満を持つものがいるはずだ。<br> 内部事情を知る者の協力は絶対に必要になってくるだろう。<br> <br> もし、このことで完全に貴族の地位を失えば、ジュンは父に向ける顔がない。<br> とんでもない親不孝者だと自分でもわかっている。<br> ---それでも、父の無念を晴らしたい。<br> そして、荒れ果てたこの国の、かつての栄華を取り戻すため、命をかける覚悟はできている。<br> <br> <br> これは、守るべきもの全てをかけた戦いだ。<br> ジュンは、いわゆる騎士と呼ばれる存在ではない。<br> しかし、ジュンの戦う理由は騎士の戦うそれと等しかった。<br> 騎士は、己が国と、君主と、一族の誇りをかけて戦うものなのだ。<br> <br> ジュンは決意した。この国を、変えてみせると---<br> <br>

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